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八条学園怪異譚

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第二十五話 飛ぶ魚その七

「だから絶対にお駄目よ」
「ううん、そういうところもしっかりしてるね」
「特に駄目なのは」
 それは何かというと。
「ゴキブリよ」
「うちもよ」
 聖花もゴキブリの名前を聞いてむっとした顔で言う。
「あれは絶滅させないとね」
「一匹見たら百匹は始末しないとね」
「一匹でもお店にいたらアウトだから」
「食中毒と同じだけ危険よ」
「殆ど地雷だな、おい」
 一本だたらは一つ目で突っ込みを入れた。下駄をはいた脚は一本だが手は二本という格好でそこにいる。
「二人共ゴキブリ嫌いなんだな」
「嫌いも嫌いも超嫌い」
「巨人の次に嫌いよ」
 二人は巨人が第一に嫌いらしい。
だがゴキブリはどうかというと。
「お店の敵だからね」
「絶対の存在を許したらいけないから」
「というかね、ゴキブリって何でこの世にいるのか」
「迷惑そのものよ」
「普通さ、ゴキブリとかより妖怪とかを嫌がらない?」
 ここで言ったのは塗り壁だった。
「君達は違うんだね」
「えっ、だって妖怪さん達とはお友達だし」
「怖くないし」
「というか親しいしね」
「そんなことないわよ」
「そう、だからね」
 二人にしては妖怪は怖くない、しかしゴキブリはだというのだ。
「一匹でもよ、出たらお店は終わりだから」
「ゴキブリはお店の天敵だから」
「この世で一番厄介じゃない」
「それで怖くないってね」
「徹底しとるのう、まことに」
 砂かけ婆はそんな二人にある意味感心していた、そしてだった。
 その二人に言ったのである。
「店の娘に相応しいわ」
「うん、是非そうなりたいって思ってるわ」
「だってお店で生きてるから」
 二人も確かな顔で砂かけ婆に答える、そこには確かな意志があった。
 その意志を見せた二人に博士はまた言った。
「それでじゃが。ゴキブリのことは置いていてな」
「はい、泉ですね」
「今度は水族館に行こうって思ってます」
 二人はすぐに博士に答える。
「それから次は植物園に行こうって思ってます」
「後も色々と」
「要するにあれじゃ。この場合の泉とはな」
 それはどうかというとだった。
「扉じゃな、出入り口じゃ」
「こちらの世界と妖怪さん達が元いた世界ですね」
「それですよね」
「世界といっても同じじゃ」
 博士は少し聞いただけでは容易にはわからない例えも出した。
「学園の中、そしてじゃ」
「外の世界ですよね」
「学園の外の」
「この学園も世界なのじゃよ」
 博士は二人に話していく。
「壁に囲まれておるからわかりやすいかのう」
「あれっ、それって何か」
 ここでふと気付いた愛実だった。それで博士に対して話した。
「中国とかヨーロッパの」
「町じゃな」
「アラビアもでしたよね」
「東南アジア以外のユーラシアの殆ど全部じゃな」
「城壁に町が囲まれてますよね」
「城塞都市というのじゃ」
 日本には殆どない町である、そして城だ。
「日本では平城京や平安京がそうじゃったがな」
「後はあれですね」
 聖花もここで言う。 
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