武で語るがよい!
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約束と家族会議
Side 士郎
今日は僕がコーチ兼オーナーをしている、翠屋JFCとなのはが通っている清祥小学校の
サッカー部との練習試合が行われる予定になっている。
今回の練習試合の目的は我が翠屋JFCと清祥サッカー部の戦力強化する事だ、特に翠JFCは近々積極的な攻撃で有名な桜台JFCとの試合があるので、同じく攻撃的なプレーを主とする清祥サッカー部との練習試合を、清祥サッカー部の部長兼翠屋JFCキーパーである久川君に僕から頼んでおいたのだ。
久川君は、僕からの頼みを聞いた時は難しい顔をしたが直に練習試合を承諾してくれた
だが、彼の表情を見て無理をしているのでは? と考えた僕は久川君に『断っても大丈夫だよ?』と言ったが彼は焦ったように『え、あ! ち、違いますよ』と返答し、先ほどの理由を説明してくれた。
どうやら、翠屋JFCに参加する自分を除いた9人の内3人はフォワードポディションのレギュラーメンバーに採用されているので、清祥サッカー部の攻撃が弱くなって練習試合にならないかもしれないと考えたからだそうだ。
確かに……攻撃が売りのチームからフォワードを引き抜けば、かなり弱体化するだろう
久川君の説明を聞き、理由が分かったので別のチームに練習試合を持ちかけようか? と考えて時である、今まで悩んでいた久川君から、是非この練習試合を組んで欲しいと言ってきたのである。
理由を聞くと、『清祥サッカー部のレギュラーを引き継ぐ後輩達に経験を積ませたい』と久川君は照れ臭そうに返答した。
……素晴らしい、流石はサッカー部のキャプテンを務めるだけあって、これからの後輩の事をちゃんと見据えている、と感心しつつ、お互いに手を取り合い練習試合の日程を組んだのである。
そして、練習試合当日……
清祥サッカー部のメンバーは人数不足のため、一人の助っ人を連れて試合に臨んできた
だが、その助っ人は見るからに家のなのはと同じ位の歳の少年だった。
近くにいる久川君に彼は誰か聞こうと視線を落とす、するとそこにはため息を吐いる久川君の姿があった。
「どうしたんだい? 久川君?」
「士郎さん……多分……いや、絶対今日うちのチーム負けますよ」
そう言って憂鬱そうな目で助っ人に来た少年の事を見つめている
うちのチームが負ける? そんなにあの少年は強いのだろうか? そう思い久川君に尋ねてみる
「彼は誰なんだい? 見たところ3年生位だと思うのだけど」
「あぁ、はい、アイツの名前は神田誠っていう名前で士郎さんの娘さんの、なのはちゃんと一緒のクラスですよ。
見た目は普通の小学3年なんですが……神田は兎に角スポーツ全般が恐ろしく強いんです
以前神田をサッカー部にスカウトしようとPK戦をしたんですが……0対10で完敗しました……」
最初の方は坦々と話していた久川君だったが彼を……神田君の事を話していくに連れて
久川君の周りにドンヨリとした空気が漂っていく……
「だ、大丈夫かい、久川君?」
「ッは! す、すみません、少し気落ちしてました」
そう言って久川君は自分の頬を両手てで叩き、気合を入れ直していた
パン! パン! と頬を叩き終えた久川君は真剣な表情に切り替わり、グラウンドに入っていった
それにしても、神田君かぁ……うちのチームは防御からカウンターを狙うことを主としているチームだ。当然、守りを重視したチームになっている、そのキーパーを務めている久川君にPK戦で完勝するとは……。
一体どれほどの実力を持っているのだろうか? という期待と共に試合開始前のブザーが鳴り、お互いの選手はグラウンドの中央に集まり礼をした
……「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」……
グラウンドに選手達の声が木霊し、翠屋JFCのキックオフで試合が始まった
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試合が始まってからもう15分が経とうとしている
清祥サッカー部はフォワード不足もあり、中々得点が入らないでいた。
一方、翠屋JFCはうまくパスを繋いで良いように責めていたのだが……得点が入らない
傍から観れば0対0と接線のいい試合なのかもしれない……だが、それは違う
ディフェンスのポディションに着いている神田君が、こちらの攻撃をほとんどを潰していっているのが今の状況なのだが……もし神田君がオフェンスのポディションに着いたら、こちらのチームが負ける。そう思うほどに神田君の動きは凄まじい……
だが、そんな神田君を見ていて自分の目がどんどんと険しいものに変わっていくのを感じる。彼は動きに無駄が無さ過ぎる……そしてサッカーというスポーツをしているにも関わらず、彼には全く隙が無い……隙と言っても今回の隙とはサッカーにおける隙などではなく、戦いなどに用いられる隙の事だ、それを彼はあの歳にしてかなり身に付けている。
あれだけの隙の無さだ、恐らく戦闘技術も相当なものだろう……そんな考えが頭を過ぎっている間に試合も後半5分を切ろうとしていた。
そんな時だ、清祥サッカー部から『誠! もういいぞ! 攻めてくれ!』という声が聞こえてきた。
すると、神田君はディフェンスからオフェンスにポディションを変更し、こちらのディフェンスをいとも簡単に突破して行く、そして、ゴールキーパーの久川君の前へと迫って行き、坦々とゴールを決めてしまった。
その後は、攻めようとする翠屋JFCの行動を全てカットし、同じオフェンスの仲間とパスを繋いだり、強烈なミドルシュートでゴール特点を稼いで行き、試合は終った
結果は0対3でこちらの負けで終った……
しかし、今日の事を教訓に生かそうと皆を集めこれからの改善を皆に伝える。
聞いてる選手の中には『自分達より強い年下に対し負けていられない』と闘志を燃やす者や『神田を助っ人に呼ぶとか、反則だろう……』と愚痴る選手もいる。
まぁ、愚痴りたくなる気持ちも分からなくも無い、流石にあの動きに付いて来れる小学生は存在しないと言えるほどなのだから……。
そして、試合後の反省会も終わり、僕は清祥サッカー部の元えと足を運んだ
その理由は唯一つ、神田誠という人物がどの様な存在なのかを確かめる為である
僕は過去に護衛の仕事で色々な国に行き、そして色んな人と接してきた……
その中には良い人も居た、だが当然悪い人も居る……実際問題、戦闘をしたことなんて数えれない程だ。
そういった経験を積んだ僕の目に、彼の技術はひょっとしたら何処かの工作員やヒットマンなのでは?と疑いの目で映ってしまうのである。
さらに彼は、なのはとクラスメートだという事を久川君から聞いている
『なのはの安全の為にも彼の正体を知らなくては』と決意して行動したのだ。
彼の元まで歩み寄り、周りに居た清祥サッカー部の面々には僕から発せられる雰囲気で離れてもらったそして簡単な挨拶していき、周囲に安全を確認してから質問した。
「君は一体……何者だい?」
Side out 士郎
あ~あぁ、なるほど……そういうことね。
士郎さんから問い掛けられた時に、『え!? 転生者である事がバレたか!?』と思って咄嗟に見聞色の覇気を使って士郎さんの思考を読んだが納得した。、
流石は元凄腕の剣士だ、たかだかサッカーのプレーを見ただけで俺の戦闘技術の高さに気づくとは……。
まぁ、何にしてもこの状況が続くのは空気が重いから適当に牽制しとくか?
「何者とは何ですか? 僕は清祥大学付属小学校3年生の神田誠ですよ?
さっき自己紹介したじゃないですか、元御神流の剣士さん?」
「ッ! 君はやはり!」
《裏の世界の人間……もう既にこの歳で染まっているのか!》
そう言いながら? そう思いながら? 士郎さんは目を険しくするだけで無く
握手している俺の手に力を込め、俺の右手を封じてきつつ、戦闘の構えに入り
どんな事が起こっても対応できる状態に持って行っている……
「あぁ、勘違いしないでくださいよ?
僕は別に何処かの工作員でも無いし、ヒットマンでも有りませんよ?
それに裏の世界の人達なんて会ったことも会話したことも無いんですから」
「それを信じろと? 悪いけど君を信頼することは出来ないよ」
《こちらの考えを読んできた?……いや、考え過ぎだな
恐らく彼はこういった状況に場慣れしているのだろう……なのはと歳が変わらない、こんな少年が……》
「まぁまぁ、そう言わずに……それにこんな所で僕と戦闘する気ですか?
此処には清祥サッカー部や翠屋JFCの面々が沢山いるんですよ? だから物騒な事は止めましょ?」
そう言いながら、士郎さんの目の前に自分の左手を翳し制止を促しつつ
士郎さんの後ろの方に見える、清祥サッカー部や翠屋JFCの面々を観ながら士郎さんに問い掛ける。
「あぁ……分かった」
《クッ! 彼の言うとおりだ……一般の人、それも小学生にこれから起こるかもしれない惨劇を見せる訳にはいかない》
士郎さんは苦虫を噛んだ表情をするも、構えを解き、俺の右手を解放した
解放された右手は少し赤くなり、じんじんと痛みが走るが気にしない。
「理解して頂き、ありがとうございます
さて、今の貴方に対して僕の潔白を口で証明するのは難しいでしょう
だから……後日、僕と……いや、俺とコイツで勝負しませんか?」
そう言って俺は未だ鋭い目つきの士郎さんに、自分の右拳を前に出す
士郎さんは俺の突然の提案に眉毛がピクリと動き出した。
「……それはどういうつもりだい? まさか、殴り合いでもしようと言うのかな?」
《彼は一体何を考えている? 殴り合い?……いや、殺し合いを望んでいるのかもしれない……》
「あぁ、6割方当たりですね、でも、俺の望んでいるのは殴り合いではなく……真剣勝負です。やっぱり、貴方みたいに戦闘慣れしてる人や武道に携わる人なら、話し合いよりも真剣勝負の方が相手の真意とかを見分けやすいでしょ?」
俺は無邪気な笑みを溢しながら士郎さんに自分の考えを言い放つ
すると、士郎さんは俺の言葉を聞き、驚いた様に目を見開いた。
「……君は一体……何を考えているんだい?」
《分からない、どうして彼はそんな無邪気な笑みをしている……いや、彼はひょっとしたら……》
「何を考えているかですか? あはは! 強いて言えば貴方の御神流の剣術と戦ってみたいですね。俺は今、自分の力がどの位なのかを憶測では無く、勝負の中で実感したいって思っています。
それに、貴方だって一人の剣士です、強い人と力量を比べ合いたいと心の何処かで思っているはずです。だからこそ、己の磨き上げた武と武で語り合いませんか?」
俺は先ほどよりも無邪気な笑みを浮かべ、士郎さんへ挑戦状を叩き付けている
今まで俺は戦闘らしい、戦闘は先日あった熊との一戦だけだし、対人戦なんてした事も無いだが、今目の前に元剣士とは言え、この世界でトップクラスの実力を持っていた剣士がいるのだ。
自然と笑みも零れてくる……あぁ、何か気分がどんどんと高揚しいく
そんな俺の事を察したのだろうか、士郎さんの目つきは険しいものから穏やかなものに代わって行く
「あはは!……どうやら僕は誤解していたようだね、君を疑ってすまなかった
そして、その挑戦喜んで受けさせて貰うよ」
《一人の剣士としてか……ふ、何とも面白い事を言う少年だ》
士郎さんはこちらに頭を下げ、謝罪をしてきた。
まぁ、誤解させるように発言してしまったのは自分なので、罪悪感で胸がチクチクと痛むが取り合えず誤解は粗方解けたようである。
さらに、士郎さんは俺の挑戦を承諾してくれた、その言葉を聞いた瞬間から、自分の中で歓喜の声がどんどんと揚がっていくのを感じる
「はい! ありがとうございます!
コレ俺の携帯番号なので、士郎さんの都合の付く日が決まったら、電話してきてください」
そう言って俺は近くにあった自分の鞄からメモ用紙とペンを取り出し、自分の電話番号を記入して士郎さんに手渡した
「あぁ、すまないね、僕も喫茶店の経営をしているから、そういう気遣いは助かるよ」
《さて、何時ごろ店を開けれるだろうか? 取り合えず桃子さんに相談してみるか》
「いえいえ、当然の事ですよ……それじゃあ俺はもう帰りますね」
「気を付けて帰るんだよ」
「はい、それじゃあ、お疲れ様でした」
俺は士郎さんに別れの挨拶をして、グラウンドを後にした
Side なのは
鈴木先生からフェレットの無事を伝えられた後、私達3人は鈴木先生の案内に従ってフェレットとの面会したのですが、残念な事にフェレットは私達を数回見た後、直に眠ってしまいました。
鈴木先生が言うには『恐らく、今までの疲れが一気に来てしまっている』とのことでした
私達3人は『じゃあ、そっとしておいてあげよう』と診察室の外に出て、これからのフェレットの処遇について話し合いました。
結果としてフェレットを食べる危険が有る犬や猫を飼いない、私の家がこの3人の中では一番妥当なのでは? ということで今私はフェレットを飼うのに一番の障害に成るであろう、お父さんを晩御飯の時間に『フェレットを飼っても良い?』とお願いしているところです。
「お父さん、フェレットを飼っても良いかな?
あの、その……家は喫茶店の経営をしているからペットが厳禁なのは分かってるんだけど……」
「フェレット? フェレットって何だい、なのは?」
あんまり我が儘を言わない私が勇気を振り絞って言ったお願いは
『フェレット? 何それ?』というお父さんの表情と言葉で私に返ってきました。
お父さんの一言で私だけでなく、お兄ちゃんやお姉ちゃんも椅子から滑り落ちそうになりました。
「お、お父さん、フェレットていうのはイタチの仲間だよ、昔はペットとして結構人気あったんだよ」
「あぁ、イタチの仲間か、すまんな美由希助かったよ
んーイタチの仲間か……なのははどうして急にフェレットを飼おうと思ったんだい?」
お姉ちゃんからのアドバイスでイタチがどういう動物なのか理解したお父さんは、当然の如く私にペットを飼いたいと思った理由を尋ねてきました。
「えっと……今日ね、アリサちゃんとすずかちゃんと一緒に塾に行く途中で怪我したフェレットを見つけて、獣医さんに診せに行ったんだけど……
担当した獣医の先生が『そのフェレットは飼い主に捨てられた可能性が有る』って言ってて……それで、引き取り手が見付からない場合は保健所に連れて行かれちゃうかもしれないて言ってたの……。
だから……もし、飼い主が見付からなかったらフェレット飼ってもいいかな?」
鈴木先生は診察室出る私達にフェレットがどの様な経験をしてきたのか
そして、これからフェレットにどの様な事が起こるのか、私達3人は説明を受けていました。その説明も在って私達は『何とかしなきゃ!』と思い、3人で話し合ったとういう訳です。私の説明を受けて腕組みをしながらお父さんが『んー』と考え込んでいます
「あなた、なのはが滅多にしない我が儘なんですから、許してあげましょうよ?」
「桃子さん……よし!
もし、なのはがそのフェレットのお世話をちゃんと出来るなら許可しよう」
お父さんはお母さんの言葉を聞き、決心した様に目を見開くとフェレットを飼っても良いと言ってくれました。その言葉を聞いた瞬間に自然と笑みが零れていくのを自分でも感じます。
「本当! ありがとう、お父さん! お母さんも協力してくれてありがとう!」
「いいのよ、なのは」
「よかったね、なのは」
お母さん、お姉ちゃんの順に私に言葉が返ってきます
お母さんとお姉ちゃんは笑顔で私に微笑み掛け、今まで空気だったお兄ちゃんも祝福してくれます。
自分の無茶なお願いを許してくれたお父さんは終始笑顔で私を見守るかの様に見つめています。そんな中、食事を再開し日常会話をしていく中でお父さんから質問が投げかけられました。
「そう言えばなのは、なのはのクラスに居る神田君ってどういう感じの子だい?」
「ッ! (ゴクゴク)……はぁはぁ、 な、何で、お父さんが神田君の事しってるの!?」
お父さんの急な質問に、口に含んでいた食べ物が虹のアーチェを描きそうになるのを必死に堪え、水を飲んでリラックスしたところで私はお父さんに質問し返します。
質問に質問で返すのは普段あんまり好きじゃないですが、今回ばかりはそうも言っていられません。
「いや、今日サッカーの練習試合の時に助っ人として相手チームに彼が入ってきてね
ディフェンスに居れば鉄壁、オフェンスに居れば誰も止めれない、そんな状況に持っていかれて結果は0対3で負けたんだ、その後、彼と話す機会が在ってね、二人で会話したんだよ」
お父さんは今日在った清祥サッカー部vs翠屋JFCの練習試合の様子を簡単に説明しくれました。どうやら、その試合の後に神田君と会話したそうです。
試合の説明を聞いて『凄いな~』というより『あはは……』と内心納得してしまいます
以前、学校の体育のサッカーの時間に同じ様なことをしていたので、もう苦笑いしか出ません。
「凄……その子ってなのはと一緒の歳何だよね?
じゃあ、そこまでサッカー上手なら将来はプロのサッカー選手とかになるのかな?」
「それほどサッカーが上手いんだ、ゆくゆくはそうなるんじゃないか?」
お父さんの話を聞いていたお姉ちゃん、お兄ちゃんから賞賛の声が揚がっています
でも、私的に『それはどうだろう?』と心の中で別の事を思います。
確かに神田君はサッカーが上手ですが、野球やバスケットなどの他のスポーツでもそれは言えます。
スポーツ音痴な自分でも判る位、彼のプレーは他の子より優れているのですから……
「お姉ちゃん、お兄ちゃん、多分だけど……神田君はプロのサッカー選手に成らないと思うよ? だって、神田君サッカー部に入って無いし、それに他のスポーツもさっき、お父さんが話していた位は一通りできるよ? よく体育の時間やお昼休みにやってるの観た事あるもん」
私は思った事をそのままお姉ちゃんとお姉ちゃんに言いました。
すると、何故だか家族全員の視線が自分に一身に集まるのを感じます……いや、現に見られています。
お母さんとお姉ちゃんからは期待の目で……
お兄ちゃんは眉毛をひくつかせながら、怪しむかの様な目で私を見てきます
お父さんは……なぜだろう? 腕組みをしながらこれでもか、という位眉毛を逆立てながら考え事をしている
「あれれ、もしかしてなのは……その神田君の事好きなの」
すると突然一番左に座っているお姉ちゃんから予想もしない一言が私に飛び交ってきました。最初は何を言われたかよく判りませんでしたが、お姉ちゃんの声が私の頭でリフレインされようやくその言葉の意味を理解した瞬間、顔が自然と赤くなっていくのを感じます
「ち、違うもん! 神田君は唯のクラスメイトだもん!
というかお姉ちゃん! さっきの会話をどう聞いたらそうなるの!?」
お姉ちゃんの先ほどの発言に私は非難の声を浴びせます……しかし
「えーだってさっきの話どう聞いても……ねぇ、お母さん」
「ふふふ、そうね怪しまれても文句は言えないわね」
何故だか、お母さんはお姉ちゃんの方を援護しています
さらに、お母さんの発言に私以外の皆がコクコクと頭を縦に振ります
此処に私の味方は居ないのだろうか? そんな悲痛な感情が少し湧いてきます
「それに神田君って言葉遣いが荒い時があるし、授業も真面目に受けていない時が在る子だよ!? だから、クラスメイトだけど、私からお話ししたことなんて無いもん!」
私は率直に私の神田君の評価を口にする
今日アリサちゃんが神田君の事を律儀な人だと言っていたが正直、半信半疑だ
私の評価は先ほど言った様に少々不良の面が在るという所である
だから……正直怖いと思うので私からお話ししに行った事は一度も無い
「神田君は中々に確りした子だし、言葉遣いもそれなりに出来てたぞ、なのは?
特に重要な……いや、緊迫した状況の中で彼は常に冷静で状況把握が上手かった
彼以上に頭が回る小学生は居ないと思うぞ?」
今まで難しく考え込んでいたお父さんが急に会話に参加し始めた
それも、神田君に肩を持つ様に私に話しかけてくるお父さん……
そんなお父さんを観た家族は驚愕したかの様にお父さんを見つめます、それもそうでしょう。なぜなら、お父さんの発言を傍から見たら相手として認めた様に聞こえるのですから
「え?……お父さんが認めた?」
「あらあら、なのは今度その神田君って子紹介してね」
「お、お母さん! なのはと神田君はそういう関係じゃないの!」
お姉ちゃんはただただお父さんの言葉に唖然とし、
お母さんは神田君への興味がより一層高まってしまったようです、お母さんの誤解を解くのに躍起になっている中、お兄ちゃんは一人だけ真剣な目をしてお父さんを見つめています。
「父さん……俺は父さんが一回合って会話しただけの子に父さんがそれほどの評価をするとは思えない。
最初はサッカーの事を評価しているのかと思っていたけど……違うんだろ?」
「あぁ、恭也の言うとおり、僕が神田君を評価したのはサッカーの方では無い。
もちろん、サッカーの事を全然評価していない訳じゃないんだが……それ以上に引かれるモノが彼には有る、それは戦う事への強い好奇心とそれに見合った力を持っていることだ」
私とお姉ちゃん、お母さんで先ほどの事を会話しているとお父さんとお兄ちゃんから
『おや?』と思えるような会話が私の耳に届きました。
お姉ちゃんとお母さんも自然とお父さんの話に耳を傾けています
「戦い?……その神田君とやらは、なのはと同じ小学3年生なんだろ?
そんな少年が戦い……それに、戦いに見合った力とはどういう事だ、父さん?」
「僕も直接戦ったとかではなく、彼の動きを見たり、実際に対面して肌で感じた事なんだが……彼は、神田君は強い、その実力は恐らく僕や恭也以上だ……」
「な! そんな馬鹿な!?」
お父さんの話を聞いて、驚きのあまりお兄ちゃんは席を立ってしまいました
お兄ちゃんだけじゃなくて私やお母さん、お姉ちゃんも驚いています。
剣術や武道に対する知識の浅い私ですが、私のお父さんやお兄ちゃん、そしてお姉ちゃんはかなり強い人だと周りの人からよく言われていて、もはや敵無しとまで言われているのです。
そんな私の家族以上に強い? あの神田君が? 驚きつつもやはりそれは言いすぎなのでは? と私は思いながらお父さんの言葉に耳を傾けます
「お父さんや恭ちゃんよりも上……でも、憶測なんでしょ、お父さん」
「あぁ、だが、実力がある程度有るのは確かだ
それで、今日彼から挑戦状みたいに『真剣勝負をしてくれ』とお願いされてね、それを承諾したんだ」
「しょ、勝負って父さん! そんな実力も判らない様な子が相手なんて!
どちらかが大怪我でもしたらどうするのさ!」
その言葉に、自分でも気が付かない内に膝に乗せていた両手が自然と握り拳を作り、少しだけ小刻みに揺れるのが分かる……この感情はなんだろう? いや、もう自分で分かっている。
この感情は不安と恐怖が混ざりあったものなのだろう……『お父さん』そして『大怪我』
どうしてもこの二つのキーワードが並ぶと、いつもこうなってしまう……寂しかった、悲しかった虚勢を張って、ただただ家族に良い子を演じてた日々を思い出してしまうからだ
「その点については問題ない、彼の実力はさっきも言ったが僕以上の可能性が高い
そして僕の実力は恭也、お前がよく理解しているだろ? それに神田君に言われんだよ
『貴方だって一人の剣士です、強い人と力量を比べ合いたいと心の何処かで思っているはずですだからこそ、己の磨き上げた武と武で語り合いませんか?』……とね
この言葉を聞いて、正直自分と彼に驚いたよ。
もう忘れていた、このただただ力量の比べ合いへの欲求がまだ自分の中に残っていたこと
そして、それを思い出させてくれた彼にね。
だから、大人気ないと思いつつも、今の僕は彼に勝ちたいと思っているんだよ、恭也」
お父さんの今まで見た事の無い力強い瞳、そして力強い言葉……何とも言えない安心感が私を包む。
それを感じ取るだけで自然と手の振るえが納まる、他の皆も私と同じものを感じ取ったのだろう皆の顔に不安や戸惑いの表情は綺麗さっぱり無くなっていた。
「……分かったよ、父さん、ただし! 勝負の審判は俺がやる、それは譲れない!」
「あぁ、審判をやれるのは恭也位だからな、頼んだぞ」
そういってお父さんはお兄ちゃんに向かって手を差し伸べ、お兄ちゃんはそれを握り
硬い握手を交わしました。
「久しぶりに燃えてるね、お父さん、その勝負がんばってね」
「ふふふ、本当ね、こんな士郎さん久しぶりに見たわ」
そう言って、お姉ちゃんとお母さんは微笑んでいます。
それを受けたお父さんは気恥ずかしそうに頬を人差し指でポリポリと掻いています
皆、お父さんへ激励の言葉やへ笑顔を向けているのです、私も負けていられません。
「お父さん」
正直戦いなんて、お父さんにはして欲しくない、だが今は精一杯の笑顔でお父さんを励まそう。そして、激励の言葉を送ろう
「がんばってね、絶対勝ってきてよ?」
「あぁ、任せろなのは、お父さんは強いからな!」
私のエールに応えるかの様にお父さんは右腕に力拳を作り
―――優しく微笑みました。
後書き
「未だになのはが魔法少女化してないのかよ!」と思う人も居るとは思いますが多分
次で魔法少女化しますのでご了承ください。
後、今回文字数が多いように感じますが最後まで見ていただき、ありがとうございます
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