DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第3章:武器屋トルネコと幼女騎士リューラ
第7話:犬狐激闘
(レイクナバ)
トルネコSIDE
私とリューラさんはまたもやレイクナバへと戻ってきた。
何故かというと…狐に化かされた事に気付いた私達は、未だ騙され続けているドン・ガアデを救い出すべく、再度狐の村へ乗り込もうとしたのだが、どれほど森を歩いても狐村には辿り着けず、あれ程出られなかった森を簡単に脱出出来てしまうのだ。
見破った我々を近付けないように、あの狐が妖力を張り巡らせているのだろう。
困った我々は思案し、一つの答えに到達する。
“狐は犬が苦手!”と言う答えに。
更に私は、故郷レイクナバのトム爺さんが、大型の猟犬を…確かシベリアン・ハスキーを飼っていた事を思い出した!
その為、犬をお借りしようと戻ってきたのだ。
「トム爺さん、お願いがあるのですが…」
「ん…おぉトルネコではないか!? 聞いたぞ、ワシの息子を助けてくれたと…ありがとう。本当にありがとう…」
だ、誰から聞いたのだろうか?
脱獄を手助けした事がバレたら、私は大変な事になるぞ…
私が事の重大さに悩んでいると…
「あ、トルネコさん!」
奥からトム爺さんの息子…ジェリーがヒョッコり顔を出し嬉しそうに話しかけてきた。
もしかして犯人はコイツ?
「あの時はありがとうございます。お陰でレイクナバに戻ってくる事が出来ました! これからはレイクナバで慎ましく暮らそうと思ってます」
にこやかな顔で挨拶するジェリー…私は慌てて奴の胸ぐらを掴み、トム爺さんから少し離れ小声でコイツに話しかける。
「お前…何ベラベラ脱獄の事を喋ってるんだ!? そんなことしたら、私まで犯罪者ではないか!」
「だ、大丈夫ですよ…オレも流石に脱獄したなんて言ってないですから…詐欺を働いたなんて親父には言えないですよ!」
「じゃぁ何でトム爺さんは私に感謝してるんだ!? 『脱獄させてくれてありがとう』って意味じゃないのか!?」
「ち、違いますよ! オレ、親父には…『仕事も見つからず住む場所も無くし路頭に迷っている所をトルネコさんに助けられた。キメラの翼を貰い、故郷で静かに親孝行しろって言われた』って言ったんです!」
なるほど…確かに罪を犯して投獄された挙げ句、脱獄して戻ってきたと言うよりは、親は安心しますね。
「どうしたんじゃ二人とも?」
私とジェリーが角で内緒話をしているのが気になったらしく、リューラさんと共に不思議そうな顔で此方を見ているトム爺さん。
「い、いえ…何でもありません。もう親には迷惑をかけるなよ…と言っていたのです」
「そうかそうか…後は嫁さんを見つけてくれれば言う事無しなんじゃが…ふぁふぁふぁ!」
1ミクロンも疑ってないトム爺さん…幸せそうに笑って納得している。
「お爺さん…犬…貸してください。…狐退治に…必要」
自分の身を守るのに必至で、すっかり目的を忘れていた私の代わりに、リューラさんが此処へ来た本題を伝えてくれた。
「犬?…トルネコさん、オレの犬を必要としてるの? キメラの翼のお礼もあるし、自由に連れて行って構わないよ。ただ…トーマスはオレや親父以外には懐かないから…大丈夫かな?」
大丈夫じゃない…
ジェリーが居ない間、トム爺さんに散歩を頼まれ、何度も尻を囓られた事がある。
本当はあんな犬、連れて行きたくないのだけど…背に腹は代えられない。
私が過去を思い出し嫌な気分になっていると、ジェリーが飼い犬トーマスを連れて戻ってきた。
最初はジェリーにじゃれついてたトーマス…
しかし私の姿を見るや、急に牙を剥き唸り声を上げだした。
………ダメかもしれない。
「可愛い!」
私が咄嗟に尻を隠した時、唐突にリューラさんがトーマスに抱き付き撫で回している。
小柄なリューラさんよりも大きい犬…噛み付かれたら生死に関わるだろう。
慌ててリューラさんを離そうとしたが、トーマスが嬉しそうにリューラさんを舐め回す。
なんと驚いた事に、あれ程他人に懐かない犬が、初めて会うリューラさんに懐きじゃれついている。
「あぁ、これなら大丈夫ですね。トルネコさんだけじゃムリでも、此方のお嬢さんが一緒なら、トーマスも暴走する事がないでしょう」
ぼ、暴走って…どんな躾をしているんだお前は!
(ボンモール北の森)
私達はトーマスを連れ再度狐の村を目指し森の中へと入って行く。
犬はリューラさんに任せ、彼女の隣を歩いていると…
「う~…」と犬が牙を剥き噛み付きそうになる。
でもリューラさんの側にいないと敵からの攻撃で危険な為、森の中を探索する事に支障が出てしまう。
どうしようかと悩んだ結果、“ハスキー・ナイト”を完成させる事が出来た!
つまり、小柄なリューラさんを犬(シベリアン・ハスキー)に乗せ、手綱を締めてもらうって事です。
作戦は大成功。
私が隣を歩いても、犬全く気にすることなく嬉しそうに歩いている。
少女に乗っかられ喜ぶとは…前世は変態野郎だったに違いない!
そんな事を考えていると突然犬が森の中に向かい走り出した!
勿論乗っているリューラさんを連れてなので、私が独りぼっちに…
本気で怖かったので、慌てて後を追います!
すると…
あんなに探し回っても見つからなくなっていた狐の村が、犬の力により簡単に出現しました!
そして犬は村長の家に…
私も何とかついて行き、村長の家に入ります。
そこでは角の方で蹲り犬に脅えるオジさんが…
「ぎゃー! や、止めてくれ…オイラは犬が苦手なんだ!! 頼む…あっちに行ってくれ!! あぁ…じ、神通力が……」
私が走り追った疲れで肩で息をしていると、周囲の景色が歪み森の中が出現する。
此処までは前回と同じ結果だ。
後はサクッとリューラさんが腰の剣で狐を始末すれば万事解決ですね!
「ご、ごめんなさい…オ、オイラ…」
「何で…人を騙したんだ!?」
犬に脅えながら謝る狐…それを冷徹な瞳で見下ろし質問をするリューラさん。
「オ、オイラ…他の狐には無い、凄い神通力を持ってるんだ…でも誰もそれを認めてくれなくて…だ、だから凄い事を見せてやろうと思って…」
何たる勝手な言い分!
「そんなの…ダメ! 悪戯はいけない…」
リューラさんは犬から下りると、犬を少し離れた所で待機させ、狐と同じ目線で話し出す。
何をしているのだろうか? 一思いに殺せば良いのに…
「みんなに認めてほしいなら…みんなの役に立つ事を…」
「みんなの役に立つ事? た、例えば?」
これから死ぬお前に、そんな事は関係ないだろう!
「………何だろう? 私のお父さんだったら…直ぐに思い付くのだけど…」
「では貴女のお父さんは何処に?」
「そ、それが…はぐれちゃったの…だから世界を旅し…捜しているの…」
あ、あの…
身の上話はもう良いでしょう。
こうやって時間を稼いで、逃げだそうと考えているんですよ、そいつ!
「あの…じゃぁオイラも貴女のお父さん捜しを手伝っても良いですか? オイラの能力を役に立て、みんなに認めてもらう方法を聞きたいです!」
「………うん。是非一緒に行きましょう!」
あれ?
気が付くとリューラさんは剣を納め、床で蹲る狐に手を差し伸べ和解が成立してしまっているぞ。
そ、そんな事をしてドン・ガアデを解放出来なかったらどうするんですか!?
「こ、此処は何処だ…? リ、リサーは何処行った!? 私の可愛いリサーは、何処へ行ってしまったんだ!?」
すると森の奥から、フラつきながらドン・ガアデが現れ周囲を見渡す。
幻影彼女を捜しなから…
私が何かを言おうとした時…狐がリューラさん視線を合わせ頷き、ドン・ガアデに話しかける。
「ごめんなさいオジサン。貴方が見ていたリサーと言う女性は、オイラが作り出した幻影なんだ……ふん!」
そう言うと、腕(前足?)を振り女性へ変身してみせる。
「お、おぉリサー!!」
「ふん!」
愛しのリサーが現れて抱き付こうとした瞬間、狐は再度腕を振り変身を解き元の姿へ戻ってしまう。
「そ、そんな…私は本当に愛してたのに…」
ガックリ項垂れるドン・ガアデ…
コイツ…童貞か?
女一人にこれ程入れ込むなんて…
人生の殆どを女性にもてない時を過ごしてきたのか?
いい加減我に返ってもらいたいものだ!
「あのドン・ガアデさん…よろしいのですか、こんな所で油を売っていて…ボンモール王に橋の修理を依頼されたんでしょう? 怒ってましたよ王様…一向に橋が直らないって」
遠回しに『早く橋を直せ童貞野郎!』って意味を含ませたのですが…王様の事を話題に出したのが幸いしたらしく…
「そ、そうだった! 拙い…こうしては居られんぞ! こ、殺されてしまう!!」
と、大慌てで森を抜けて行った。
うむ…これで第一関門突破かな?
次は、ボンモールの軍隊が侵攻する前に、エンドールのお姫様にリック王子の書簡を渡し、戦争を回避させなければ!
さぁ~て…忙しくなってきたぞ!
そう言えば…
どうするんだろうか…この狐。
まさか一緒に連れて行くなんて事には…
トルネコSIDE END
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