SAO<風を操る剣士>
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第一部 --SAO<ソードアート・オンライン>編--
第六章 《圏内事件》
第41話 マイホーム2
前書き
次の投稿は早く出来るように心がけます!
※現在1話から順々に話の書き方を修正中です。
修正といっても話の内容を変えるわけではないのでそのまま読み進めても大丈夫です。
前書きに『■』←このマークがあれば修正完了で、『□』←このマークがある場合修正中、なければ修正前ということでよろしくお願いします。
俺はその日、見慣れない天井を見ながら目を覚ました。
ここはどこだ? ――と思うのと同じくらいに、自分がベットではなく布団で寝ていることに気づく。
そうだ……俺は自分の家で寝てたんだっけな。確か、二階にはベットもあったけど懐かしいから布団を敷いて寝た…………ような気がする。
……それにしても良い匂いだ。家の中に和を感じさせる畳の匂いが広がっていて――深呼吸をすると、シリカの匂いと一緒に鼻の中一杯に匂いが広がる。
………………ん? ……シリカの匂い?
ふとした疑問と、そういえば左腕がやけに重たいような気がしたので、俺が自分の左側に顔を向けると――シリカがいた。
ピナもシリカの脇で邪魔にならないように寝ている……が、問題なのはそこじゃない。
シリカは俺の腕を枕にして、背中とお腹のあたりにシリカの腕の感触みたいなのがあるから分かるが、両手を俺の身体に回して抱き付いた状態で寝ていた――――下着姿でな!
しかも俺もパンツ一丁だし……な、何があったんだ!? もしかして、大人の経験を……いや待て、ちゃんと昨日のことを思い出せ……俺にそんなこと出来るわけないんだ!(悲しいことにヘタレだから)
昨日は確か家を買ってからシリカを呼んで、それからお風呂に……ヤバい、思い出すだけで顔が熱くなってくるな……えっと……それからシリカの為に頑張ってキスを何回もして………………ダメだ、そのあとの事が思い出せない!
それでも頑張って思い出さないと……ええと……あの後、のぼせそうになって二人で出てそれから先に布団を敷こうと思い、布団を敷いたあと…………あれ? マジでその後の記憶がない……。
……よし、落ち着いて今の俺の思い出した記憶と状況を検証してみよう。
1・お風呂を上がるときに俺は服を着た? ――多分パンツは穿いたと思う。
2・シリカはその時どんな姿だった? ――残念ながら全く記憶がないが、俺と同じく下着くらいは着ただろう(そうであると信じる)
3・あの時俺たちはどんな状態だった? ――少なくとも俺はキスとお風呂のせいでのぼせて、頭が痛くなってきてた。
……なるほど、落ち着いて考えてきたら大体予想がついてきたぞ。
多分、俺たちはお互い頭が痛い中、頑張って二階のベットじゃなくて下の布団を敷いたんだ。あの時はシリカの格好に気を回せなかったのを、ぼんやりとだけど覚えてる。
そして敷いた後、そのまま限界を迎えて布団の上にダウン――と、そんな感じか?(というかそうであってほしい)
念のために右手を動かしてウィンドウを出して《倫理コード解除》の履歴で確認しても、俺が倫理コードを解除した痕跡は無い。
つまりいくら夫婦だからって、俺がさっき一瞬想像してしまったことは起こってないということだ。
「ふぅ……よかった」
安心してため息をつきながら、気恥ずかしくてよく見ていなかったシリカの顔を再度見直す。
落ち着いて考えてみたら……こんな可愛い子と現実じゃないとはいえ、何回もキスしたんだよな。
そういえば、俺がシリカの寝顔を見るのは珍しいことかもしれない……ほとんど俺はシリカに起こしてもらってたし。
そう考えると、シリカの寝顔とその唇から目が離せなくなる。
――シリカの唇、柔らかかったな。もう一回くらいなら…………って! 何考えてんだ俺! 寝てる時にしたらダメだろ!(寝てなくてもどうだか分からないけど……)
俺は必死に今考えたことを首を振り追い出し、これからどうするか考える。
時間を確認すると午前六時五十八分……あと少しでシリカがアラームをセットしている時間だ。
……仕方ない。
そう思い俺は急いでウィンドウを出し、シリカのアラームの画面にする。……よし! やっぱり七時ジャストに鳴るようになってる!
確認してからすぐにウィンドウを閉じて、俺は残りの時間を大人しく寝たふりをして待つことにした。――すると数分経ち、
「ん……ふぁぁ、………………あれ? …………ふぇぇぇぇ!!?」
アラームに気づいたように小さな声を出して起きたと思ったら、暫くして状況が分かったらしく、慌て始めるシリカ。
……悪いけど、ここは寝たフリをして逃れようと思ったのだが、
「え? あ、あれ? あたしなんで……シュ、シュウさんと…………と、とりあえずシュウさんが起きないうちに…………あれ? もしかして、シュウさん……起きてます?」
なんでだかシリカにバレてしまう。なんでだ!?
「シュウさーん、顔赤いですよー……そろそろ目を開けた方がいいんじゃないですか?」
シリカの奴さっきまで慌ててたのに、多分寝起きで頭働いてないで、俺と一緒に寝ていただけだと思ってるからこんなにも早く素に戻れたな。
自分の格好は確認した素振りは無かったしな(薄目を開けて確認した)。
「……本当に目を開けて良いんだな? なら開けるぞ」
「何を言ってるんで……あっ! ちょ、ちょっと待って下さい!」
そこでやっと自分の恰好に気づいたのか、再び慌てだすシリカの腕をつかみ起こして向かい合って座り、ちょっとした悪戯心でシリカにイジワルをすることに決める。
俺は目を開けてシリカに向けて笑いかけ(上手く出来てたかは謎だが)ながら言った。
「シリカ、昨日は楽しかったね」
「き、昨日!? え、ええとな、何が……」
やっぱり俺と同じで昨日のことをすぐには思い出せないシリカは、自分の恰好と俺の言葉に慌てながら必死に思い出そうとする。
その隙に俺はシリカにさらに近づく。
「なんだよ、昨日の温泉でのこと忘れちゃったのかよ」
「お、温泉……あ……えっ……と、ということは、あたしたち……えーー!?」
「………………ごめん、やりすぎた」
さすがに顔を真っ赤にして驚くシリカを見て、やりすぎだと後悔した。
好きな女の子をこういう冗談でイジワルするのは、さすがに悪い気がしたからだ。
「……へっ? シュ、シュウさん?」
「ちょっとイジワルしすぎた。ごめん。……とりあえず服を着てくれ、話はそれからだ」
「は……はい……」
「それじゃあ、向こうで待ってるから……」
そう言って俺は立ち上がり、シリカに背を向けてキッチンへ向かう。
そういえば、昨日の昼から何も食べてなかった……そりゃ腹減るわけだ。
そんな事を考えながら、俺は手軽に食べられる物をテーブルに並べてシリカを待った。
====================
部屋で服を着てきたシリカと、手軽に食べられるものとして用意したパンを食べながら、さっきの事について話した。
「もう、本当に焦りましたよ……」
「ごめんな……」
「別にいいですよ。結果的にはあたしの事を考えて止めてくれたことは嬉しかったですし……それに、約束しましたから……」
「約束?」
「もう忘れちゃったんですか! 温泉であたしに言ってくれた『現実《リアル》でも絶対に会おう』って約束してくれたじゃないですか!」
シリカが顔を赤くして俺に怒ってきた。……確かにキスしながら言ったなー、俺。
「いや忘れてないって、ただ……物凄く恥ずかしいから思い出すのを躊躇っただけで……」
「そ、それはお互い様ですよ……」
そう言ってから、俺とシリカは無言になってしまった。
……なんだ、恥ずかしいような照れくさいような居心地の悪さは。
そうやって暫く無言でいると、シリカが思い切ったように俺に言ってきた。
「シュ、シュウさん!」
「な、なんだよ……」
「あの……家の中見て回りませんか? そういえば、よく見てなかったですし……」
「……そういえばそうだな」
昨日も中をよく見る前に温泉に行っちゃったしな。
「なら見回るとしますか」
「はい」
そう言って俺たちは椅子から立ち上がり、家の中を見て回ことにした。
見回ってみると家は二階建てで、一階全部と二階の少しが和風で、残りはSAOのほとんどの家と変わらないデザインの家具やベットがあった。
一階にしかキッチンはないが、俺とシリカの料理スキルでもすべて使いこなせるか分からないほどの道具と大きさだった。
そのキッチンの大きさはなんと一階の約1/4はあり、一階の残りはさっきまで寝ていた十六畳くらいの畳の部屋とテーブルなどが置いてある広間。そして温泉に行くための部屋(脱衣所など)で終わっている。
今思えば、よくこんな家を格安で買えたな……死にそうな思いしたけど。
それで俺はシリカと家を見回った後、さっきのテーブルに戻り座りながらシリカが用意してくれたお茶を飲んでいた。
「一通り見て回りましたけど、広いですね。このお家」
俺がお茶に和んでいたら、俺と同じくお茶を飲んでいたシリカが聞いてきた。
その意見については俺も――
「そうだな。見て回るだけで結構時間かかったし」
――と、そんな風に感じずにはいられなかった。
「今日からこの広い家があたしたちのモノなんですよね……」
「イヤか?」
「いえ……ただ、あまり実感がなくて……」
「まあ、その内なれるよ。……あ~あ、現実《リアル》でもこんな家に住みたいよ」
俺が椅子の背もたれに背中をつけながら伸びをしてそう言うと、シリカが『クスッ』と笑いながら、
「そうですね。あたしもこんな家に現実《リアル》で住みたいです。シュウさんと」
と言ってきた。
…………これって、もしかして……
「シリカ……もしかして、それって……現実《リアル》でのプロポーズ……?」
「え…………ち、ちちち違いますよ!!?」
俺の言葉に遅れて反応しながら赤くなるシリカ。
「いや、でもその言い方だと……」
「違います! 間違えただけです! あ、でもだからといってシュウさんと暮らしたくない訳じゃないですよ! ただ、その……えっと…………ううっ、何が言いたいんだろ、あたし……」
顔を真っ赤にして慌てたシリカは、両手を前で左右に振りながら否定するが、その内テーブルに顔をつけて俺に顔を見せないようにしながら、頭を抱え始める。
……なんというか、今のシリカは……とっても表情がコロコロ変わって可愛く、そして面白かった。
「…………」
「って、何笑ってるんですか! シュウさん!」
そんな風にシリカを黙ってみていたら、シリカが目線に気づいて恥ずかしがりながら怒ってきた。
笑ってるつもりは全然なかったが、感情表現がオーバーなSAOではあまり感情を隠せないので、多分笑っているのだろう。
「そんなつもりはなかったんだけど……まあ確かに現実《リアル》でも、こうやってシリカと喋ったりしたいよな。……結婚はその内考えるとして」
「そ、そうですよね! そ、その他にもあたし、シュウさんと一緒に買い物に行ったりとかもしたいんです!」
俺が意見に同意すると、シリカは気をすぐに取り直して、すぐに他の現実《リアル》に帰ってからやりたいことを言い始める。
俺はそのシリカのやりたいことを聞いて、前々から考えていたことに覚悟が付いた。
「そうだな。俺もシリカと一緒に現実《リアル》で歩き回ったりしたいな。……だからさ、シリカ」
「シュウさん?」
「……そのためには、早くゲームをクリアしなきゃだよな?」
「……そう、ですけど……?」
シリカは俺が何を言おうとしているのか分からないのか、首を傾げる。
「なら、さ……流石に今更フロアボス攻略には無理だけど、迷宮攻略は参加しないか? それなら人に会わなければ良いだけだし、会ったとしても本気を見せなければ良い」
「え……でもそれは、他のプレイヤーとレベルの差がつくから止めよう……って前にシュウさんが言ったじゃないですか。だからフィールドボスを倒した後は、迷宮に行かないで遊んだり、別の場所でモンスターを倒してたんじゃないですよ。それなのにどうして……」
「早くこのSAOをクリアするためだよ。今、シリカと話して覚悟がついた」
今までは差が開きまくったら、フィールボスの事がバレてシリカが危険な目に合うんじゃないかと思っていたから迷宮に行かなかったけど……今更ながら自分が物凄いバカだったって思い知らされる。
覚悟を決めてから気づいたが……《ビーター》と《フィールドボス事件》の事で俺は多分ほとんどのプレイヤーに恨まれている。
けどシリカは恨まれてないから……なんて考えていたけど、さっき俺が言ったようにバレなきゃいいのだ。
すでに同じ《ビーター》のキリトよりレベルが上になってるんだから、他の一般プレイヤーにとっては今でも俺は十分恨まれる対象で、それが少し差が開いた所でそんなに変わるもんじゃない。
だったらもっと差を開いて、前のキリトのようにいくらプレイヤーに襲われても死なないようにした方がずっと安全だ。
その方が早く攻略が進むとは言い切れないけど(他のプレイヤーがレベルを上げにくくなるからな)、それでもここで何もしないよりは、早くクリア出来ると信じたい。
なので――
「どうする? 正直、迷宮攻略に行ったからってクリアが早く出来る保証もないし、バレたらシリカも危険な目に合うかもしれない――だから、シリカがこの事については決めてくれ」
と、シリカにどうするか真剣に聞く。
「シュウさん、そんなの答えは決まってますよ。――行くに決まってるじゃないですか!」
「…………や、ヤケに速い決断だな」
俺としてはもう少し考えてほしかったんだが……こんなに真剣に考えてた俺がバカみたいじゃないか。……バカなんだけどさ。
「やっぱりあたしも何もしないより、その方が早くクリアできると思いますから」
「そうか……なら、次の層のフィールドボスを倒したら、そのまま迷宮に向かおうか」
「はい!」
こうして俺たちは久しぶりに迷宮攻略に行くことを決めた。
そうして話し合いが終わり、夜寝るときに――
……でも、このことはあいつにも知らせないとな。もう気づいてたみたいだし。
――俺はシリカと手をつなぎながら、友達の黒い剣士の事を考えながら眠りについた。
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