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SAO<風を操る剣士>

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第一部 --SAO<ソードアート・オンライン>編--
第六章 《圏内事件》
  第40話 マイホーム1

 
前書き
久々に更新です。4月は忙しくて……本当にすいませんでした!
次の更新はこれほど遅くないけれども、早くもないです。

※現在1話から順々に話の書き方を修正中です。
修正といっても話の内容を変えるわけではないのでそのまま読み進めても大丈夫です。
前書きに『■』←このマークがあれば修正完了で、『□』←このマークがある場合修正中、なければ修正前ということでよろしくお願いします。 

 



「シリカ、やっぱり俺たちにはまだ……」
「な、何言ってるんですか……あ、あたしはもう服を脱いでるんですよ。は、はやくしてください……」
 シリカの顔はこれでもかというほど赤く、俺に言ってきた声も消えそうなほど小さい。
「あ、あんまり見ないでください……恥ずかしいです……」
「ご、ごめん」
 恥ずかしそうに自分の身体を腕で隠しながら、シリカが言ってくる。俺もその言葉を聞き目を離そうとするのが、シリカの控えめな身体から目が離せないでいた。
 なので、誤魔化すように聞いてみた。
「……後悔しないんだな」
「はい。シュウさんとなら……いいです」
「…………分かった。俺も男だ。ここまでシリカに言われて引くわけにはいかないよな」
「シュウさん……」
「なら、シリカは先に……」
「……逃げないで下さいよ」
 そう言いながらも、シリカは俺に背を向けて歩き出す。
 俺はそんなシリカを見ながらウィンドウを出し服を脱ぎ、準備をしてからシリカの後を追う。

 するとシリカはすでに座りながら、
「……やっぱり緊張します……」
 と、言ってきた。
 本当に緊張しているんだろう。声が少し震えて、身体に見るからに力が入っている。
 ……俺が頑張るしかないか。
「……そんなに緊張するなよ。身体の力抜(ちからぬ)いてろ」
「シュウさん……ありがとうございます。シュウさんも緊張してるのに」
「べ、別に俺の事はいいんだよ……そ、それよりちゃんとイヤだったら言ってくれよ?」
「はい」
 シリカが頷くのを見てから、俺は指を慎重(しんちょう)に動かしていく――すると、
「あっ……ん」
 シリカが少し苦しそうな声を出した。
「や、やっぱりダメか」
「い、いえ、いきなりで驚いただけで……大丈夫です。気持ちいいですよ、けどもう少し……」
「わ、分かった」
 その言葉を聞き、さっきよりも慎重に俺は指を動かす。
「あ、今の所はいいです……」
「そうか……ならここだな」
「ええ。…………そろそろ、いいんじゃないですか?」
 (しばら)くの間、悪戦苦闘(あくせんくとう)をしていた俺に、シリカが気持ちよさそうな顔で言ってきた。……緊張もほぐれたみたいだな。
「それじゃ、よろしくお願いします」
今更(いまさら)何言ってるんですか。シュウさんもきっと気持ちいいですよ……いえ、ダメでもあたしが気持ちよくさせます」
「……まあ、とりあえず――行くぞ!」
「あっ!」
 俺のいきなりの行動にシリカが驚いたような声を出したが、気にせず俺は――



『ザッブーン』



 ――温泉へ飛び込んだ。
 湯船は前に女湯に落ちた時のように音をたて、前のようにシリカも腕で顔を守る。
「もう! なんで飛び込んでくるんですか!? 前の事を思い出て、恥ずかしくなりそうです!」
「……いいじゃんか、水着着てるんだし」
「……まあ、そうですけど……。やっぱり、気分とかあるじゃないですか」
「それもそうか、ごめん……それより気持ち良いな、やっぱり」
「……話をそらされた気がしますけど、それに関しては同感です」


 俺とシリカは今、俺が買った家に付いていた温泉に『水着』を着て二人で入っていた。
 第十五層でシリカと待ち合わせをして家に連れて行くと、やはり心配していたのか、俺に抱き付いて来てから泣いて喜んでくれた。
 ……ここまで喜んでくれるとは思ってもみなかったから、そんなシリカを見てたら俺まで嬉しくて泣きそうだったよ、ホント。
 それで温泉が付いてるからって、家の中もあまり確認せずに温泉に直行(ちょっこう)した。理由はシリカが『せっかくシュウさんが買ってくれたんですから、先に入りましょうよ。あまりお礼にならないかもしれないですけど、背中流しますから』と、言われたからだ。

 俺にしか伝わらない意味を含めるとシリカの言ったことはつまりこうだ。
 家を買ってくれたお礼に、こないだのクエストで手に入れた『洗うと一回ごとにHPの上限が1上がる石鹸(せっけん)』を使って、俺の背中を流してくれるらしい。……ちなみにどうでもいいけど石鹸は2個貰って、1個の使用回数は50回だ。
 まあそんなことで、『水着』を着てと聞いていなかった(というかシリカが言わなかったんだけど)俺は、ドキドキしながら『一緒に入るの!?』なんて聞いてしまった。
 ……冷静になってみると、こないだ石鹸とは違うクエストで水着を貰ってたことを思い出した。
 でも防御力が低いから使わないと思って忘れてた+使わないから売ったと思っていたから、忘れてたとしても仕方ないと思う。
 ……でもこういう時のことを考えて、俺が売ろうとしてる水着をこっそり具現化して、こっそりと持っておくなんて……なんていうか本当に考えることは同じだな、って思った。……これも似てきた一つなのかな?
 まあそんなこんなで、初めの内は恥ずかしくて俺達にはまだ速いかな~……なんて考えてたけど、入ってみると意外に恥ずかしくないもんだな。


「あ、そうだシリカ。さっきはごめんな。……水着のシリカをじろじろ見て」
「い、いえ……恥ずかしかったですけど、シュウさんですから……大丈夫です」
「……ありがとう。でも、お風呂の温度を測るのは少しつらかったんじゃないか?」
 この温泉には買った人が温度を調節できるようになっていて、ウィンドウから温度を変えられるんだけど……それがあまりに難しくて、悪戦苦闘してしまったのだ。

 俺と向かい合って温泉に座りながら浸かってシリカは、手を顔の前でブンブン振りながら否定すると、
「そんなことないですよ! ちゃんと丁度いい温度になって気持ちよかったですし! ……でも、現実のお風呂と違ったせいで……その……」
 言葉にできないと言った顔で、だんだん俺に言ってくる声が小さくなってきた。
「……まあ、脳に直接送られる情報が変わっていくんだから、違和感を感じるのは無理ないか」
「そ、そうです! まさにそんな感じです! よ、よく分かりましたね、シュウさん」
「βテストの時に少し経験したからな」
 あの時はこんなに気持ちよくなかったけどな。

「…………さて、そろそろ上がるか。お腹も空いてきたし」
「なに言ってるんですか? まだ、背中流してませんよ?」
 バレたか……早く上がって誤魔化そうとしたのに!
「い、いや……SAOの中で身体洗っても意味が……」
「いいですから! 速く座ってください!」
「……はい」
 俺はシリカのあまりの迫力に、素直にお湯から出て、椅子がないので床に座る。
 ……な、なんでここまで意気込んでるんだ、シリカ。

 俺がそう思っていると、シリカが俺の背中を洗うために後ろに来て、俺の求めていた答えを言ってくれた。
「シュウさん、怒鳴っちゃってすいません。……でも、あたしに出来ることってこれくらいしかありませんから……シュウさんにはいつも助けてもらってるのに……」
「シリカ……そ、そんなこと……」
 否定しようとシリカの方を振り返ろうとすると、シリカが俺の背中に頭を付けて、真面目な……それでいて悲しそうな声で言葉を続ける。
「だから決して届かないと分かっていても、あたしと同じくらいの背中でも、大きくて広い背中を追いかけたい……そして、その背中を任して貰えるようになりたい。……それが、あたしのSAOでの一番の願いです」
 あまりの真剣な声に、シリカが多分無意識なのかはわからないけど、俺に腕を回してきて抱き付いても、あまり緊張しなかった。
 こんな時、俺はなんて答えればいいんだろう……? あまりに俺の会話スキルが足りなさすぎる。
 なので、悔しいが俺はシリカの言葉をただ聞いていることしか出来なかった。

 そんな俺に、シリカはさらに続けて言ってきた。
「……シュウさん、あたし達は現実《リアル》で会えるんでしょうか? 本当にゲームをクリア出来るんでしょうか? ……あたし、怖くて……」
「シリカ……」
「ごめんなさい。でも、この家を見て『ここでシュウさんと一緒に暮らすんだ』と思ったら、現実《リアル》でもこんな風に、一緒に住めるのかなとか色々考え始めたら……止まらなくなって……」
 だからお風呂に入りたいなんて言ったんだな。
 そんなことを考えが頭に浮かぶと同時に、シリカが泣き出していることに気が付く。
 ……こんな時に、何も声をかけられない自分がすごく腹が立つ。
 自分の好きな女の子が、自分の背中で泣いているのに……何もできないなんて……。
 こんな時、俺がもしシリカと逆の立場だったら――何をされたら嬉しいだろう、何をされたら落ち着くだろう……?
 もしそれが恥ずかしくて出来なかったら、こんな思いで泣きついて来てくれる女の子に対して逆に失礼なんじゃないのか?
 なら俺は、今思いついたことを素直に実行しよう。――そう、心に決めた。



==========================



 シュウさんの背中がとても大きく見えた。
 だからかもしれない、さっき感じた……そして考えてしまったことが頭から離れなくなってしまい、ついには泣き出してしまった。
 考えないようにしようとすればするほど考えてしまい、とても怖くなる。
 今、シュウさんの背中の暖かさを感じていなかったら、あたしはどうなっていたんだろう……多分、泣くだけじゃ終わらないと思う。
 自分が素直に感じて考えたことを伝えると、気持ちは少し楽になったけど……『シュウさんと、現実《リアル》で会えないかもしれない』ということが、さらに頭の中で強くなり、胸が苦しくなる。
 ……あ、そっか……あたしは『ゲームがクリア出来るか分からない』から怖いんじゃなくて、『ゲームをクリアしたら、シュウさんと会えるか分からない』から、こんなにも不安で怖いんだ。
 その事に気が付くと、さらに不安になってくる。
 ――この人の本当の背中の温かさを、あたしは感じられるのだろうか。
 ……どうしよう、本当に涙が止まらなくなってきちゃった。シュウさんにも迷惑がかかるのに……。



 ……何分くらいたっただろう?
 そうやって何度も泣きやもうとしていると、シュウさんが急に立ち上がった。
 そして、少し驚いて動けなかったあたしの肩を抱き、あたしを立ち上がらせる。
 そのまま抱き付いた状態で、今度こそ本当に驚いて動けないあたしにシュウさんは顔を近づけてきて――
「……んっ!」
 ――キスをしてきた。

 突然のことに何だかよく分からなかったけど、少し経ってから『あの初心なシュウさん』が『キス』を『あたし』にしてくれてるのが分かった。
 前にあたしがシュウさんにキスした時も、シュウさんはこんな感じだったんだろうか……?
 ……あと、人生で一回目と二回目のキスがお風呂場っていうのもなぁ。
 と、そこまで考えて、さっきまでの不安が頭から消えていることに気づいた。
 そしてシュウさんはあたしから唇を離し、
「どうだ? 落ち着いたか?」
 笑いながらそう言ってきた。
 いつもなら顔を赤くして慌てたりしているのに、どういうわけかそんな様子が全く感じられない。
 そんなシュウさんにキスされたと思うのと、いつもよりカッコよく見えるシュウさんの笑顔に、顔が熱くならないはずがなかった。

「なっ、ななななな、なにをしゅるんでしゅか!?」
「どうしたんだよ? そんな動揺して……もしかして、もっとキスしてほしいのか?」
「も、もももっと!!?」
 いよいよ訳が分からない。シュウさんはいったいどうしてしまったのだろう……あ、でもこういう積極的なシュウさんも……。
 そうしてる間にまたシュウさんの顔が近くに来て、
「……~っ」
 またキスをしてきた。
 そんなキスに動揺しながらも、しっかりとシュウさんの唇の感触や温かさなどを感じながら、幸せな気分になっていくのを感じていた。
 ……なんかもう、さっきまで悩んでたのが嘘のように心臓がドキドキなっている。

「……ぷっは、ど、どうしたんですかシュウさん!?」
「……いや、シリカがこうしたら嬉しいかなぁ~、って思って」
「そ、そりゃあ嬉しいですけど……。も、もしかして、あたしの為にこんなことしたんですか?」
「こんなことって……案外、男にとっては重要なんだぞ。好きな女の子に自分からキスするっていうのは。……それに、シリカと現実《リアル》でも絶対に会おうって約束を込めて、な」
「シュウさん……」
 もう、不安だったことが一気になくなったとかどうでもよかった。
 今あたしは、シュウさんにココロのほとんどすべてを取られたのかもしれない。
 ……どうしよう……人って、こんなにも他の人を好きになれるものなんだろうか……?
 もうあたし、シュウさんが好きで好きでたまらない。

「シュウさん!」
「うわっ! ……んっ!」
 今度はもうほとんど無意識で、あたしからキスをしていた。
 そして一回顔を離して、
「シュウさん……まだ十四歳にもなってなくて、マセてると思うかもしれないですけど……今日だけはゆるしてください!」
 そう言ってから、再びキスをする。

「……分かった」
 そして再び顔を離した時に言われたシュウさんの言葉からは、あまりよく覚えでいない。
 というより、もうキスを何回したとかどうでもよかった。
 ただただ、シュウさんが愛しくなってしまって、止められなかった。
 一年以上も好きな人といて結婚までしたのに、恥ずかしがって何もしていなかったから、自覚はなかったけど溜まっているものが自分の中にあったらしい。不満とかが。
 ……けど後で履歴を確かめてみると、あれだけキスしてたのにあたし達は《倫理コード》は解除してなかった。
 ……流石にシュウさんも無理してる事と、自分でもまだそれは早いと分かっていたからだ。


 それからあたし達は温泉に浸かりすぎて気を失いそうになるまでキスをしていた。





 
 

 
後書き
なんか変なテンションですいません。
あと数話でこのテンションも終わっていつもの感じに戻るので、こういうR15? みたいな話が嫌いな人には、申し訳ないです。
今回の話みたいのはどうだったかなど、感想や間違いの指摘よろしくお願いします! 
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