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真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾

作者:遊佐
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立志の章
  第5話 「ナ、ナニヲイッテイルノカナ、アイシャサン」

 
前書き
えー、寝てません。寝てませんとも、ハハハハハ。
今朝の6時です。
ちょうど10話書き終わりました。予告どおり5話と6話を掲載します。

GW中に書けるだけ書いてしまおうと思ってます。
でも予定では10話で黄巾あたりの中盤のはずだったのに……まだ始まってもいない現実。
おかしいな……(涙) 

 




  ―― 盾二 side 北平近郊 荒野 ――




 俺達は、白蓮の好意で客将ということで登用してもらうことになった。
 宿から一刀を連れてくると、城内で一室を宛がわれる。
 おまけに普段の世話は侍女が行ってくれると言う。なんともありがたい。
 桃香たちも各部屋を与えられ、俺自身は一刀の隣の部屋に住まわせてもらっている。
 当面の必需品は持っていた金を使い、装備や衣類も整った。

 あれから数日後――侍女に呼ばれた俺達は、城門の外で武装した兵士達が整列して待つ場所に立っていた。

「すっごーい! この人たち、みんな白蓮ちゃんの兵隊さん!?」

 桃香が目を輝かせている。
 とはいえ、俺の目から見ると……街のチンピラと多少訓練した新兵にしか見えないが。

「まあ、今回は盾二たち三人の指揮能力を見るために集めたんだ。私の兵もいるけど義勇兵も混じってるよ。これらをどう使うか、見せてもらおうと思ってね」

 白蓮の言葉になるほど、と俺は頷く。
 新兵をどう生かすか。そして義勇兵をどう生かすか。
 兵の質に対応した指揮が取れることも将としての資質、ということか。

「とりあえず三隊に分けて、それぞれ三つ巴の模擬戦をやってもらおうと思ってるんだが……大丈夫か?」

 その言葉に、俺は愛紗と鈴々を見て頷く。
 二人ともやる気のようだ。

「問題ない。適当に割り振ってくれ。その後作戦……話しあいをしてから開始、でどうだろうか?」
「異論はない」
「鈴々もないのだー!」
「わかった。じゃあ……」

 白蓮が近くの兵を呼び、千五百ほどいた兵を五百ずつに分けていく。
 俺は割り当てられた兵を集めて、前に立った。

「みんな、俺は北郷盾二……俺達は北郷隊ということになる。よろしく頼む」
「「「ハッ!!」」」
「隊の指揮経験は多少あるが、俺はまだみんなの力を知らない。みんなもまだ俺の力を知らない。だから今日、ここで勝とうと思うな。負けなければいい」

 俺の言葉に互いに顔を見合わせる兵たち。
 そりゃそうだろう。
 勝とうと思うな、と言われれば弱いと思われても仕方がない。

「俺が率いる限り、たとえ相手を倒さなくとも自身の命を大事にする、そんな部隊にしたいと思っている。だからといって目的を忘れ逃げろ、というわけではない。目的を果たしつつ、自身の被害は最小限――限りなく零を目指す」
「「「………………」」」
「勇敢であっても蛮勇では意味がない。目的があっても死んではなにもできない。みんなそれぞれ大事なモノの為に兵になったのだろう? だったら命を粗末にするな。自分が死ねば、誰かがその分傷つき、そして死んでいくんだ」
「「「ハッ!」」」
「死ぬな、生きろ、そして目的を果たせ! 自分の後ろには護るべき民と仲間がいる! 俺達は倒れることは許されないんだ!」
「「「ハッ!!」」」
「自分のため、愛する人のため、護るべき人や国のため……俺達が地獄を見ようとも! 争う痛みを胸に秘めて敵を討て! そして生き残って誇りを胸に喜びを分かち合おう! いいなっ!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」

 おお……オヤジたち、感謝だ。
 傭兵時代のオヤジたちが俺達に言った言葉を真似たんだが……こんなに効果があるとは。
 よし、士気はなんとかなったな。

「これより作戦を伝える!」




  ―― 白蓮 side ――




 すごい、桃香が言うだけの事はある。
 三隊の模擬戦が始まってすぐ、張飛の率いる隊が盾二の隊に突っ込んだ。
 張飛の隊は、張飛を先頭に突撃を繰り返す。
 あの突破力はすさまじいと思う。
 だけど、それよりすごいのは盾二だ。
 張飛隊を牽きつけ、中央を割ったかと思うと即座に半包囲陣形で後背を討つ。
 にもかかわらず、通り過ぎた張飛が反転して再突撃しようとすると再度中央を割り、また相手の後背で半包囲して削る。
 徐々にだが張飛隊は削られていき、四度目の突撃時には張飛隊は半分以下になっていた。
 それもすごいのだが……なにより盾二隊がすごいのは。

「……一兵も失っていない」

 隣の星――趙雲が呻き声をあげる。
 その通りだ。考えられない。まったくの無傷、ということだ。

(ほとんど新兵と義勇兵……練度なんてないに等しいのに、それをこうも使いまわすとは)

 まるで神業……天の御業を見ているみたいだ。
 さすがに五度目の突撃はできないと踏んだのだろう。
 張飛は突撃した後、反転せずにいったん距離をとる。
 だが、ここぞとばかりに盾二は追撃しようとして……おや?

「何で追撃しないんだ?」

 私の呟きに、隣の趙雲は黙って盾二の後方を指差した。
 そこには機を伺い、奇襲を仕掛けようとした関羽たちが盾二の隊に突撃をかけようとしていた。
 だがそれを見越していただろう盾二は、矢にて牽制したまま鶴翼の陣形で半包囲しようとしている。

「なんという……まるで指揮のお手本のようだ」
「お前が盾二の相手だとして……勝てそうか?」
「伯珪殿……正直言おう。無理だ」
「そ、そこまでか……」
「ああ、兵の運用が見事すぎる。まるで神の御業のようだ。それにあれだけ守勢なのに士気が尋常じゃない……本当にあれは新兵なのですか?」
「ああ……私も驚いているよ」

 私たちが話している間にも模擬戦は続いている。
 関羽が、突撃は被害が出すぎると躊躇して矢にて応戦。
 その間に盾二は横列陣にして対応している。
 と、隊を二つに分けだした。
 前方の関羽に対して左右を厚めに、中央は少なめに……なんだ?

「本当によく見ておられる……伯珪殿、反対側を見てください」
「あれは……張飛隊? また突撃を仕掛ける気か?」
「はい……突撃を開始しました。そして関羽も好機と見たのでしょう。みてください、縦列陣で突破を図る気のようです」
「まさか……それを誘って!?」
「はい……すごいことになるかもしれませんよ」

 星のいうとおりだった。




  ―― 関羽 side ――




「よし、中央が手薄だ! これより縦列陣にて敵を分断! しかるのちに、各個撃破する。我に続けぇっ!」

 じりじりと消耗しそうだった戦局を打開するために、一気に決める。
 私は決心した。
 正直、鈴々があそこまで手玉に取られるのは予想外だった。
 私は鈴々の力を知っていたから、最初は様子見をしていたのだが……まさかあそこまで隊を手足の如く使うとは。
 鈴々の五度目の突撃で一旦引く様子を見せたため、安心した後背を狙おうと思ったのだが……それすら盾二殿は読みきっていたようだ。

(ここで一撃加えねば負ける!)

 私の武将としての勘がそう告げていた。
 だが、それと同時に一抹の不安があった。

(何故中央があんなに薄く……左右からの矢の攻撃力を増やすためか?)

 なんにせよ、好機には違いない。
 私は先頭に立ち、突撃する。
 しかし……その中央にいた盾二殿がニヤリ、と笑った気がした。

「!!!!」

 ゾクッとした悪寒が急激に身体を走る。
 だが、隊は止まらない。

「いまだ! 予定通り、散れ!」

 盾二殿の掛け声に北郷隊が左右へ退く。
 そこには――

「にゃっ!? 愛紗!?」
「鈴々っ!?」

 北郷隊が壁となっていたため気づかなかった。
 鈴々がこちらと同じように突撃を仕掛けていたとは。

「うにゃ、止まれないのだ! このまま愛紗を倒すのだー!」
「く、謀られた……やむをえん! このまま突撃し、粉砕する!」

 鈴々の部隊とて敵なのだ。
 突撃同士、ぶつかりあう。
 だが、その隙を盾二殿が許すはずもない。
 そのまま二分割した隊をこちらの後方で再集結し、半包囲陣形で遠巻きに矢の雨を浴びせる。

「くっ……このままでは」
「にゃーー!!」

 私も鈴々も、お互いを攻撃しあいながら互いに出血を強いられる。
 その状況に――

「それまで! 訓練終了!」

 公孫賛殿の一声により……模擬戦は終了した。




 ―― 劉備 side ――




 すごい、すごいすごいすごいすごい、すごい!
 あの愛紗ちゃんと鈴々ちゃんが、完全に手も足も出なかった。
 盾二さんの指揮はそれほどに――まさに神がかっていた。

「完敗です……ここまでとは。ぐうの音もでませんでした」
「負けたのだぁぁぁぁぁ……」

 愛紗ちゃんと鈴々ちゃんが、ぐだっとした顔で戻ってくる。
 うん、わかるよ。私も絶対勝てなかったと思う。
 むしろ、よく善戦できたね、といいたい。

「丁度二人がこちらを挟んで分かれてくれたからさ。お互い連携取れないなら逆に好機だと思ってね。うまくいったのはいいけど……ちょっと冷や汗ものだったよ。うちの隊の皆が頑張ってくれたおかげさ」

 盾二さんは謙遜しているけど、あの指揮でそんなこといわれてもなあ。
 なにより……

「いや、手も足も出なかった……なにより『一兵も減ってない』状況では、何を言われてもな」

 愛紗ちゃんが首を振り、項垂れる。
 そう、盾二さんの隊は多少怪我を負った人はいても、戦闘不能になった人は皆無だった。
 模擬戦で剣も矢も刃をつぶしたものが使われるけど、それでも怪我人や死人が出ることは多い。
 にも関わらず……盾二さんの隊だけ怪我はしていても、みんな笑ってられる程度で済んでいる。

「まあ、俺は小さい頃から傭兵経験もあったし……一応、アーカムのA級チームでも隊を率いていたしなあ。それなりに下地があったからだよ」

 盾二さんが苦笑しつつ、頬を掻いている。
 でも、すごかったよ。
 愛紗ちゃん達には悪いけど、もう、もう……そう、無敵って感じだった。

「三人ともお疲れ様……盾二、すごいな。正直ここまでとは思わなかったよ。最初は半信半疑だったが……桃香の言うとおりだった」
「でしょ♪ 盾二さんは天の御遣いだもん! でも、私もちょっと、ううん! すんごくびっくりしたよ!」
「お前がびっくりしてどうするんだ、桃香……」

 白蓮ちゃんが呆れたように言ってくる。
 そりゃ信じていたけど……予想以上だったんだもん!

「関羽も張飛もなかなかだった。関羽は攻防にすぐれていたし、張飛の突破力はすさまじいと思う。二人とも今後も頼むよ」
「いえ、盾二殿には及びませんが……お気遣い、感謝いたします」
「うう~悔しいのだぁ……」

 二人ともあんまり喜べないみたい。
 それだけ盾二さんの指揮がすごかったんだけどね……

「そうしょげるな、関羽、張飛。私も見ていたが、私が二人の立場でも北郷殿には勝てはしなかったろう。それほど卓越した指揮だった……」
「趙雲殿……」
「正直、武人として悔しいが……その指揮には見習わせてもらおう。お主や張飛の指揮も見事だった。お主らの力をこの趙雲、しかと見届けた」
「ありがとう、趙雲殿……」
「星でよい」
「?」
「二人、いや盾二殿を含め、三人ともその力は比類なきものとお見受けした。我が真名『星』を預けるにふさわしい武人とお見受けする。そしてそのお三方を率いる劉備殿の徳もな。受け取ってもらえるだろうか?」
「ああ。お主の真名を受け取ろう。なれば、我が真名『愛紗』を受け取ってくれるか?」
「鈴々も『鈴々』と呼んでいいのだ!」
「ありがとうございます、趙――ううん、星さん! 私は『桃香』っていいます。どうか私の真名も受け取ってください!」
「俺は真名がないんだが……盾二でいいよ。ありがたく受け取ろう、星」

 私達五人が、がっちり手を合わせあう。

「おーい、私をのけ者にするなよう……」

 あ、ごめん。忘れてたよ、白蓮ちゃん。

「公孫賛様!」
「どうした!?」

 あれ? 城のほうから誰かが馬で走ってくる。
 白蓮ちゃんはその人と話していると、なにか指示を出してその人を城へ帰した。

「どうしたの、白蓮ちゃん?」
「ああ、みんな聞いてくれ。さっそく出番ができた」

 白蓮ちゃんが真剣な顔でみんなを見る。

「近くの邑が賊に襲われているらしい。すぐに討伐に出る!」

 私達の初陣が決まった瞬間だった。




  ―― 張飛 side 北平近郊 ――




 こーそんさんのお姉ちゃんが兵隊さんたちを集めた後、鈴々たちは村を襲ったという賊の討伐に来たのだ!
 数は少なくとも五千はくだらないとお姉ちゃんは言うけど、鈴々たちには関係ないのだ!
 敵は『突撃! 粉砕! 勝利!』なのだ!

「いやいや……ちゃんと考えて動かないとだめだろ」

 にゃ、お兄ちゃんは鈴々の心が読めるのか?

「さっきから声に出ているよ」

 そうだったのか。気づかなかったのだ。

「それはともかく……それだとさっきの模擬戦みたいにまた兵を減らすことになるよ。鈴々は攻撃力が高いのだから、それを維持できるように損害を減らすこともできれば、とても良い将になれると思うよ」
「にゃー……守るのは苦手なのだ」
「守るってわけじゃないさ。突撃した時だってただ突撃するのではなく、味方が減らないように相手の後ろからとか側面から攻撃するんだ。そうすればこちらの兵は減らずに済む」
「なるほどー! そのとおりなのだ!」
「それに模擬戦のときの突撃。四度目で一度退いたあたり退却の勘はいいし、鈴々は被害を少なくすることを覚えれば強い将になれるはずだよ」
「わかったのだ! お兄ちゃんの言うとおり、これからは被害を出さないことも考えて突撃するのだ!」

 さすがお兄ちゃんなのだ!
 鈴々、今まで突撃することしか考えなかったのだ。
 でも、それだと怪我をする人が多いのがわかったのだ。
 お兄ちゃんの言うとおり、突撃しながらみんなの安全も考えるのだ。

「あの鈴々が……さすがです。盾二殿」
「いや、実際被害を抑えれば良将となるよ、鈴々は。愛紗は攻防共に両立しているけど、相手側の裏を読むのが苦手?」
「う……」
「苦言で申し訳ないけど……どことなく相手を侮りやすい部分があるのかもしれない。武に誇るのと相手を侮るのは別次元だからね? 機を見るに敏ってのは将として正しいけど、敵の策略に用心するのも必要だよ?」
「それは……確かに。あの模擬戦もあまり深く考えずに突撃してしまいましたし……」
「相手は見縊らない、過大評価もしない。敵を知り、己を知れば百戦危うからず……たしか孫子だったかな?」
「……お詳しいのですね」
「一応、軍略書は読んだよ。アーカムの教育は知識の宝庫だったしね。とはいえ純文学とかは一刀が専門で、俺は主に戦闘関係が多かったけど」
「……一刀殿も盾二殿と同じくらいお強いのですか?」
「スピード……速度なら一刀が上かな。それに一瞬の判断力と瞬発力……あいつはね、『矛』なんだよ」
「矛?」
「そ。アイツが攻撃、俺が防御……そう役割分担して隊を指揮してきたんだ。俺は守勢が得意だけど、こと攻撃の機を見る嗅覚は一刀の足元にも及ばないと思ってる」
「盾二殿がそこまで……」
「ああ、一刀はすごいよ? ほんとうにね……」

 にゃ、なんか難しい話をしているのだ。
 鈴々は空気を読んで黙っているのだ。

「盾二ーっ!」

 あ、こーそんさんのお姉ちゃんがお兄ちゃんを呼んでいるのだ。
 桃香お姉ちゃんと星もいっしょにいるのだ。

「なんだ?」
「ああ、お前達は左翼についてくれ。星が右翼、私は本隊だ」
「新参の我々に左翼全体を……公孫賛殿は剛毅ですな」
「白蓮でいいって。あの時、お前達にも真名を預けたつもりなんだがな」
「これは失礼しました。では私も愛紗で」
「鈴々でいいのだ!」
「ああ、頼む。敵は烏合の衆かもしれないが用心してくれよ」
「わかっている。みんな俺が守るさ」
「頼りにしてるよ、ご主人様」

 にゃ?

「……桃香、その『ご主人様』って、なに?」
「え、だめ? なんか盾二さんって天の御遣いだし、武も知もすごいし、私たちのご主人様っていってもいいかなーって」
「いや……さすがに、それは。大体、俺は君に力を貸すといったじゃないか」
「うん。だからね、ご主人様」
「………………どうしてそうなる」

 お兄ちゃんが頭を抱えたのだ。
 にゃあ、お姉ちゃんがこうなると頑固で退かなくなるのはいつものことなのだ。

「愛紗、何とか言ってくれ」

 お兄ちゃんがため息をしつつ、愛紗に助けを求めているのだ。
 いつもの愛紗ならここでお姉ちゃんを嗜めるのだ。

「………………」
「愛紗?」

 にゃ? 愛紗がなにか考えているのだ?

「いえ、桃香様の言うとおりです。ご主人様」
「な、なにぃっ!?」

 驚いたのだ! 愛紗がお兄ちゃんにご主人様って言ったのだ!

「ナ、ナニヲイッテイルノカナ、アイシャサン」
「あの軍略に知識、そして武。そしてその志。私も桃香様と同意見です。私たちがお仕えするにふさわしい方かと」
「だよね、だよね! さっすが愛紗ちゃん!」
「………………ぇ?」

 お兄ちゃんが固まっているのだ。

「ええ~……り、鈴々はどうかな? やっぱ、俺が主人なんて悪い冗談だよね……?」

 お兄ちゃんが、汗をダラダラと流しながら鈴々に尋ねてくるのだ。
 でも、鈴々もそう思うのだ。

「そんなことないのだ。お兄ちゃんは鈴々を『強い将になれる』って言ってくれたのだ! お兄ちゃんが主になってくれるなら、鈴々はもっと強い将になれるのだ!」
「えぇぇ~……」

 お兄ちゃんが「お前もか」というような目で見てくるのだ。

「はっはっは……男冥利につきますな、盾二殿。これだけの美少女に慕われて、まさか嫌とは言いますまい」
「せ~い~、人事だと思って気楽に……」
「実際、『ヒトゴト』ですからな」

 お兄ちゃんは口をパクパクと開いたり閉じたりした後、かくん、と項垂れたのだ。

「そういうことでよろしくね、ご主人様!」
「アーソノコトハ……トリアエズカエッテカラデ、イイデスカネ」
「諦めろ、盾二……桃香はこう、と決めたら梃子でも動かん」
「トホホ……」

 白蓮お姉ちゃんが、お兄ちゃんの肩に手を置いて慰めているのだ。

「さ、じゃあ賊の討伐、ガンバろー!」
「「「おー!」」」

 桃香お姉ちゃんの言葉に、お兄ちゃん以外が声を合わせたのだ。
 そのお兄ちゃんは――

「ちくしょーーーっ! 賊に八つ当たりしてやるーーーーっ!」

 なんか一人で吼えていたのだ。


 
 

 
後書き
ちなみに設定のアレ、見た方は忘れてください。
仕事場でUPして、家帰ってみたらとんでもないミスでした。

まあ、友人に話したら「どこぞのシバムラみたいなことするなよ」といわれました。
知っている人しか知らないネタをどうもありがとう。
おかげで開き直りましたよw 
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