剣の丘に花は咲く
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第七章 銀の降臨祭
幕間 傷跡 弍
前書き
え~……幕間です。
はっきり言って読まなくても全く問題ないんだけど……。
どうしよ……ちょっと……やっちゃった………か……も……。
正義の味方を目指す魔術使いである衛宮士郎には、複数の師匠がいる。
魔術の師匠である遠坂凛。
剣の師匠であるアルトリア・ペンドラゴン。
他にも様々な師匠がいるが、その中の一人に、近代兵器の師匠がいた。
師匠の名はヒサウ。
出会った場所は硝煙が香り、悲鳴と慟哭が響く内戦続く国。
灼熱の太陽が降り注ぎ、見渡す限りの砂丘が広がる国で、衛宮士郎とヒサウは出会った。
今思えば、『オレ』が士郎と出会ったのは、所謂奇跡と呼ばれるものなのかもしれない。
いくつもの偶然が重なり、『オレ』と士郎は出会い……士郎は『私』を救ってくれた。
士郎と出会うまで、『オレ』は、毎日をただ何となく生きていた。
殺し、奪い、食べ、眠る……。
そんなクズのような生活が、死ぬまで続くのだと思っていた。
物心ついた時からずっと……随分と長い間そんな風に生きていた。
だけど、そんな『オレ』にも、目的みたいなものはあった。
それは…………母親に会ってみたい………というものだった……。
生まれてすぐ母親から離された私は、『母親』の顔どころか声すら覚えていない。
それについて、別段寂しいとか悲しいとか思ったことはない。正確に言えば、そんなことを考えている暇がなかった。
私の最初期の記憶は、小さな刃物でナニカを解体しているというもの。
小さく解体したものを口に運ぶ。
暗い闇の中、手の平に感じるナニカから溢れ出る生暖かい感触。
生臭さと、鉄錆の味が口の中を満たす。
アソコは……地獄だった。
そこには、私の他にも、同じぐらいの歳の子供がいた。
常に暗い印象を感じるあの場所で、大人の男たちが私たちに教えていたものは……人の殺し方。
あそこでは、物覚えの悪い子供から次々に死んでいった……いや、殺されていった。
だから、私たちは必死に覚えた。
寂しさを感じる時間で、銃火器の構造を覚えた。
悲しみを感じる時間で、銃の腕前を磨いた。
大人の男たちは敵であり、仲間は同じ子供だけだった。
だけどそれは勘違いだった。
私の身体が女になった時、それが分かった。
その頃には、仲間で生き残っていた少女は私だけになっていた。
そんなある日、私は強姦された。
何時かはこうなることを予感していたが、予想外のことが起きた。
私を最初に犯したのは、大人の男たちではなく……仲間だと思っていた少年たちだった。
泣き叫ぶ私を押さえつけ、生き残っていた全員で私を代わる代わる犯したのだ。
大人の男たちは、その様子を笑って見ていた。
それからは毎晩の如く私は犯された。
……仲間だと思っていた少年たちから。
どうやら私は褒美みたいなものだったらしい。
時折外に出されて戦っては、生き残った者に渡される褒美。
それが私だった。
『オレ』が生まれてから一年後。
アソコが何者かに潰され、『オレ』だけが生き残った。
しかし、成熟する前の身体に与えられた過剰なまでの陵辱は、私の身体と心に取り返しのつかない傷跡を残していた。
一人生き残ってから暫くは、野盗のようなことをして生きていた。
殺し、奪い、食べ、眠る。
それはまさに獣のような生活だった。
真実何の目的も展望もない生活。
そんな生活が変わったのは……知りたかったから……。
それは、ある日のこと。
女に抱かれて眠る、同じ歳ぐらいの子供を見た。
それを見て、私は自分が泣いていることに気づいた。
途切れることなく溢れる涙と、叫びだしたくなる程のナニカに襲われ……私は只々混乱していた。
それから、時折そんな衝動に襲われることがあった。
だから、どうしてそんな風になるのか調べ始めたのだが……結局その理由は分からなかった。
しかし、それが切っ掛けだった。
母親という存在に興味を持ったのは……だから、自分の母親について色々調べ始めたのだ。
別に今すぐ会う必要に迫られている訳でもなく。ゆっくりと時間をかけて調べた。
手掛かりの全くない状況からの調査。
何も分からないかもしれないと思っていたが、予想外に情報は次々に手に入った。
とは言ってもその情報はどれも断片的なものばかりで、大したものではなかったのだが。
それでも、自分の母親のことについて少しずつだが分かったきた。
しかしそれも、直ぐに途切れることになる。
一切の情報が手に入らなくなったが。
それでも『オレ』は、諦めることなく調査を続けた。
欠片も情報が手に入らなくなってから、十年以上の時が過ぎ……諦めかけていたそんな時……私は出会った、衛宮士郎という……正義の味方に。
士郎と出会う少し前、『オレ』はある売人の護衛をしていたのだが、ひょんなことからその手下が何処かのテロ屋と手を組み、護衛の売人を殺そうとする情報を手にした。前金は貰っていたし、勝つ見込みはないと判断したため、『オレ』は逡巡することなくさっさとそこから逃げ出した。
とは言え、警告することなくさっさと逃げ出したことに、『オレ』の中に何かしこりのようなものが生まれた。
だからだろう、何時もならば絶対にしないことをしたのだ。
行き倒れに手を差し伸べるという……馬鹿なことを。
地平線に沈みそうになっているにもかかわらず、遮るものがない日光は、しぶとく砂漠の上に立つ影をじりじりと焼き殺そうとする。
砂色のフードを頭から被った影の背は、百五十センチにも満たないだろう。フードの上からでも分かるほど細っそりとした線から、影が女であることがわかる。
「おい……死んでるか?」
「……っ……ぁ……」
ギリギリと照りつけてくる太陽を背に、影は足元に倒れる男に声を掛けた。
声は高く、明らかに男ではない。
フードを被った女の足元の砂上に転がる男の赤錆色の髪と黒いコートは、吹き付ける砂埃等で薄汚れている。
蹴りつけ男を仰向けに転がすと、そこには思ったより整った顔があった。爪先でごんごんと蹴りつけながら、女は男に声をかけ続ける。
「ふん……死んではないのか。おい、何か欲しいものあるか? 今なら格安で売ってやってもいいぞ」
「……ぅ」
「あん?」
「み……ず……」
カサカサに乾いた唇を動かし、男が水を要求してくると、女は背中に背負った使い古したバックの中から水筒を取り出す。女は水筒の蓋を開けると逆さまにする。
「っ……ん……ぁ……」
どぼどぼと落ちてくる水を、男は口を開け受け止める。あっと言う間に水がなくなった水筒を、女は放り捨てると、男に背中を向け歩き始めた。
「……ね……は?」
「あれ? もう動けんの?」
背後から聞こえてきた声に足を止めた女は、振り返りながら意外そうな表情を浮かべた顔を男に向けた。驚いたことに、男はよろめきながらも立ち上がっている。
「何だ? まだ何か欲しいのか?」
「か、ね」
「あん? おいおいそんな状態で追い剥ぎかい? 気骨があるねぇって言いたいが……馬鹿かお前?」
懐から銃を取り出した女は、銃身を男に向ける。
「勿体無かったな」
男の命ではなく、男に恵んでやった水のことを惜しみながら女が引こうとした引き金は、
「いく、らだ?」
「は?」
男の言葉によって止められた。
「何言ってんだお前?」
「っ……はぁ~……売ってもらった水はいくらだ。実は少々懐具合が寂しくて……それを考慮して欲しいだが……」
「……っは」
飲み込んだ水が身体に回ってきたのか、大分滑らかになった口調で、男が何処か情けない表情でぼそぼそと呟く。女は男のその様子を見て、
「っあははっはははっははははっ!!」
爆笑した。
腹を抱え、遂に立っていられなくなったのか、女は砂の上を転がりながら笑い続ける。
男は目をまん丸にしながら、女のそんな姿を見下ろしていた。
「っはぁ~……。は、ははは、はぁ……初めてかもしれないな、こんなに笑ったのは……くくっ気に入った。なあおい、少し話でもしないか? もうそろそろ日が沈むし……そうだな、今晩、今みたいな面白いことを言ってくれればそれでいい」
「? そんなのでいいのか? まぁ……正直それは助かるんだが」
「こっちの懐は寂しくないんでね」
目尻に浮かんだ涙を細い指先で拭いながら、女が男に笑いかける。男はそんな女の様子に戸惑っていたが、ふっと息が漏れる様な笑みを浮かべると、女に手を差し出した。
「あん?」
差し出された手と男の顔を交互に見比べていると、男が自分の名を口にする。
「衛宮士郎だ」
「……ヒサウだ」
差し出された男の手を握り、女も自身の名を口にする。
「ヒサウ……久宇? 日本人か?」
「さあ?」
肩を竦めながら、ヒサウはフードを頭から外す。
フードの下から現れたのは、これから空を覆うだろう星空の様な輝きが混じる黒。乾いた砂混じりの風に煽られ、肩で短く切り揃えられた黒髪が揺れている。
細っそりとした顎先。
鋭い目尻。
日に照らされ浅黒く焼けた肌。
形のいい唇の端は、皮肉気に曲がっている。
一見可愛らしい十代半ばの少女に見えるが、黒い瞳の奥に輝く鈍い輝きから、見た目通りの年齢ではないことを確信させた。
ポカンと口を開いたまま呆然とする士郎に対し、ヒサウは可愛らしい顔立ちに似合うようで似合わないニヒルな笑みを口元に浮かべた。
「もしかしたらそうかもしれないな」
「へぇ。それであんたは、その『マモル』っていう子供を探してんのか」
「約束……だからな」
「ふ~~ん……で? そんなあんたが、何であんなとこで倒れてたんだ?」
内戦で人の姿が消えた村の中、比較的まともな家の中で、士郎とヒサウは火を挟み向かい合っていた。
士郎はヒサウに対し、あそこで倒れていた理由について説明していた。士郎の話を全て聞いたヒサウは、薄目を開けて上を見上げる。
「ん? あ、ああ。それなんだが、野盗に襲われている人がいてな、助けたはいいんだが、食料も水も全部取られたと言っていたから」
「……自分のをくれてやったと」
「……全部じゃないぞ」
「っぶ。くっくっ……それで自分が死にそうになるなんて、オレがいなけりゃ死んでたぜお前」
何処かバツが悪そうに、顔を背けながら呟く士郎に、吹き出す口元を抑えながらヒサウは笑う。
「分かっている」
そんなヒサウの様子に、士郎はむくれながらも睨み付ける。
「しかしまあ、何というか、馬鹿というか……自分を顧みらず人を助けるなんて……まるで正義の味方だな」
先程士郎が話した内容を頭の中で反芻していると、意識せず言葉が漏れる。士郎はそれを聞くと、苦笑を浮かべた。
「まあ、それを目指しているからな」
「は? 今なんて?」
士郎が漏らした呟きを、聞き漏らすことがなかったヒサウは、小さくなりかけた焚き火にくべようとした姿のまま顔を上げた。
「正義の味方を目指しているって言ったんだ」
「ぶっ! あはははははははは……は、はは……。冗談じゃないようだな?」
真剣な顔で言う士郎に、ヒサウの笑いが段々と小さくなり、遂には尻すぼみに消えていった。下がっていた目尻が上がり。笑とは違う理由で細まる目が、鋭く士郎を貫く。
「……悪いか」
「いや……悪くはない……ふ……ん……『正義の味方』ねぇ……」
殺気が交じるほどの強い視線に曝されながらも、士郎の顔色は変わらない。ただ、少し先ほどと同じよにむくれ始めた士郎に、ヒサウの視線が弱まる。
「何だ?」
「いや……何も……」
表情は変わらないが、何か眩しいものを見るかのように、更に目を細めたヒサウに、士郎が訝しげな視線を向ける。それに気付いたヒサウが小さく首を振る。
パチパチと、薪が弾ける音だけが、二人のいる空間に響く。
何処か落ち着かな空気に、士郎が何かを言おうとするが、
「なあ、それ、オレが手伝ってやろうか?」
それよりも先に、ヒサウが口を開いた。
「え? 手伝うって、まさかマモルを探すのをか?」
「ああそうだ。言っておくが別に情にほだされたって理由(わけ)じゃないぞ。こっちにもこっちの理由があってね」
「しかし……」
「この国は長い間続く内戦で情勢がものすごく不安定だ。何も知らないあんたが、そんなとこで一人で何か出来るか?」
いきなりの提案に逡巡する士郎に、ヒサウが畳み掛けるように士郎の不利を説明を始めた。
「くっ……」
「で、どうする?」
自分の今の現状を知り、圧されるように黙り込む士郎を、ヒサウがにやにや笑いながら見下ろす。
にやにやと笑うヒサウを俯きながら見上げた士郎は、渋々と頷いて見せた。
「……お願いします」
「ふん……了解」
大きく足を組み、頭を下げる士郎の後頭部を見下ろしながら、ヒサウは大きく頷いて見せた。
「シ~ロ~ウ~ッッ!! あんた何考えてんだッ!!?」
「すまんすまんっ!! まさかあんなもの持っているとは思わなかったんだっ!!」
「思わなかったじゃねえんだよっ!! どうすんだよアレッ!?」
ヒサウと士郎は爆撃で荒れ果てた街の中を全力で駆け抜けていた。
必死な顔で士郎を罵るヒサウは、背後から響く重低音を指差す。
「戦車が出てくるなんて思わないだろ普通ッ!!」
「ここじゃあそれが普通だッ!!? どうすんだよ本当ッ!! 手持ちの武器じゃどうも出来んぞっ!」
瓦礫を飛び越え、家屋の陰に入り込み逃げ続ける士郎たち。
「手持ちの武器は……手榴弾二つに、AKが一丁か……無理だな」
「無理だな……じゃないだろっ!!」
走りながら手持ちの武器を見下ろす士郎に、前を走るヒサウが悲鳴のような怒声を上げる。
「責任を取れ責任をっ! オレがあれほどダメだと言ったのに撃ちやがって!! しかも一発で当てやがって! どうすんだよコレっ!!」
「……勘違いしそうになるな」
「ッッ!!? 死ね馬鹿ッ!!」
「ぐはっ!!」
ぼそりと士郎が呟いた言葉に、ヒサウは顔を真っ赤にさせると、後ろを走る士郎に回し蹴りを叩き込んだ。鳩尾に正確につま先を叩き込まれた士郎は、濁った悲鳴を上げながら地面を転がる。ヒサウは倒れ込む士郎をそのままに、走り続ける。
「お前なら出来る!! 頑張れ士郎!!」
「ぐ、ぐは……ひ、ひさう~~!! お前~~!?」
地面に倒れふしながら、消えゆくヒサウの背に向け恨み言を叫ぶ士郎だったが、後ろから聞こえる破壊音に背後を振り返る。そこには、迷彩が施された戦車の姿が。
「っ……やってやる……やってやるよおおおおお!!」
戦車VS魔術使い(武器AK一丁、手榴弾二個)
「くっそおおおおおおおおおお!!」
士郎の悲鳴が沈みゆく夕日に……響いた。
「いや~ハッハッハッ……まさかあの距離で戦車の砲塔に主榴弾をぶち込むなんて……何で生きてんの?」
「俺も自分が生きているの信じられないよッ!? 少しは手伝えっ!!」
無事に生き残った士郎が、焚き火の前でもぐもぐとちゃっかり山賊から奪った食料を食べるヒサウに抗議の声を上げる。
手持ちの武器では、戦車の分厚い装甲を破けない。
外が駄目ならば……内側(・・)からやるしかないと判断した士郎は、戦車に突っ込みその砲塔に手榴弾を突っ込んだのだ。
何とか戦車を破壊した士郎だが、追いついてきた山賊の仲間に追われるようにその場から逃走し、どうにかヒサウの下までたどり着くことが出来た。
「元々お前が助けるとか言わなければ、こんなことにはならなかったんだぞ」
「そうは言ってもだな。助けを求める子供を放っておけるわけがないだろ」
「……ふ……ん……それで自分が死んだら馬鹿だろ」
「馬鹿で子供が助けれるなら、馬鹿で結構だ」
顔を俯かせ、ぶつぶつと文句を言うヒサウに、士郎は憮然と言い返す。
「しかし、士郎。そろそろ考え直したほうがいいんじゃないか?」
暫くの間、黙り込んだいたヒサウだが、不意に顔を上げると士郎を見つめながらポツリと呟く。
「……何をだ」
聞き返す士郎だが、本当のところは分かっていた。
「分かっているだろ……このままじゃ何時か死ぬぞお前」
「…………」
士郎は反論しない。そう言われるのは初めてではなかった。
「今回も何か見返りがあったわけじゃない。怪我を治療するための金も、腹を満たすための食料も、欲を満たすための女も……何時も何時も無償で助けてるが……士郎、そろそろ考えを改めなけりゃ死ぬぞ……それも近いうちにな」
「…………」
ヒサウは視線を合わせようとしない士郎を睨みつけながら語り。士郎はそれを黙って聞く。
「助けるものを選べと言っている」
「……ぁ」
「別に助けるなとは言っていない。そうだな……まずは人助けした後は何でもいいから報酬をもらえ」
「……だ」
「お前は何時も無償で人助けしているが、それが何時かお前の首を絞めるぞ。いいように使われて利用され……そして最後はポイッ……だ。だからな――」
「嫌だ」
「……なんて言った?」
ヒサウの説教は続き、士郎は黙ってその説教を聞いているように見えた。しかし、時折小さく耳に入る声に気付いたヒサウが、話すのを止めると、士郎の否定の言葉を耳にした。
士郎の否定の言葉にビキリと額に血管を浮かせると、ヒクつく笑みを浮かべながら聞き返す。
「嫌だと言ったんだ。ヒサウの言うことは分からないでもないが、助けを求められたら俺は絶対に――」
士郎は先程黙り込んでいた分を取り戻すように話し始めたが、
「てい」
ヒサウが懐から取り出したトカレフの銃把に殴られ強制終了された。
「ぎっ?!」
濁った悲鳴を上げ頭を抑えた士郎を、ヒサウは腕を組んで見下ろす。
「何をっ!?」
「何を? じゃねえっ!! オレが言っていることぜってえ分かってねえだろ! このままじゃ死ぬって言ってんだよ!!」
「それで人が一人でも救えるのなら、俺はそれで構わな――」
馬鹿なことを言う士郎をヒサウは怒鳴りつけた。しかし、士郎はそれでもとヒサウの言葉を否定する。
だから、ヒサウは……。
「てい」
再度黙らせるため今度はAKの銃把で頭を殴り付けた。
「ぐばっ?!」
「何がそれで構わないだっ! 目の前の一人を救うため、未来に救える百人を見捨てると言うのかお前はっ!! いいか士郎。お前との付き合いはまだ一月にも満たないが、それでもお前が馬鹿なほどお人好しで、死ぬまで人助けを続けるだろうってことが分かった。そんなお前が死んだら、お前が助けるはずだった人間まで殺すってことだぞ!!」
「っ……それでも……それでも俺はっ!!」
AKの威力はトカレフ以上だったのか、士郎は地面の上を頭を抑えながらごろごろと転がり呻き声を上げていた。ヒサウはそんな士郎を見下しながらも何とか説き伏せようとする。
転がりながらもヒサウの言葉を聞いていた士郎は、痛む頭をさすりながらも、必死な形相で自分の決意を口にしようとしたが。
「てい」
「ぐぎっ?!」
AKをバッドのように振り回すヒサウに側頭部を殴りつけられ止められてしまった。
今まで以上の威力があったのか、士郎は呻き声を上げることも出来ず地面を転がっている。
「いいからお前――」
「いい加減にしろっ!!!」
ピクピクと地面の上でヒクつく士郎を踏みつけながら、指を立てながら説教を始めようとしたヒサウだったが、急に立ち上がり怒声を上げる士郎に説教を止められた。
「……何だよ?」
「何だよ? じゃないっ!! ばかばかばかばか銃で殴りやがって!! 人助けで死ぬ前にお前に殺されるわっ!!」
怒声を上げながら立ち上がった士郎は、AKの銃身を掴んだまま憮然とした顔をするヒサウに指を突きつけながら文句を言い放つ。
だが、ヒサウも負けていない。
「人の言うことを聞かない士郎が悪いんだろッ!!」
AKの銃身を掴み、士郎に突き付けながら文句を言う。
「だからって銃で殴るなッ!!?」
「撃たないだけマシだろっ!!」
「撃つつもりなのか?!」
「ちゃんと急所は外すから死にはしない!」
「自慢気に言うことかッ!!」
「銃の腕は自慢出来るっ!!」
「何を言っているんだお前はっ!!」
「うっせぇ! お前はオレの言うことを聞いておけばいいんだよっ!!」
「む、無茶苦茶だ」
士郎とヒサウの言い争いは、ガキ大将のような言い分を恥ずかしげなく言い放ったヒサウの勝利に終わった。肩を落とし項垂れる士郎に鼻を鳴らし背を向けたヒサウは、立てた親指で焚き火の近くに置いてあるずだ袋を指差す。
「ほらっ! 山賊どもから奪った食料からさっさとデザートを作れッ!! ……疲れたから激甘を所望するぞ」
「……果物だけではな……他に何かないのか?」
ゴロンと地面に転がりながら命令するヒサウに、士郎は肩と顔を落としながらただ頷くだけ。
「その中から探してくれ。オレは疲れたから寝る。出来たら教えてくれ」
「……一人で戦車を潰した俺は疲れてないと……」
士郎の呆然とした呟きが、弾ける薪の音に混じって消えた。
士郎と共に行動を始めてから、色々と……本当に色々なことが起きた。いや、起こしたが正確だろうか。
病が蔓延し、終わりかけていた村を救うため、様々な理由から徒歩で二百キロ先の街まで走り抜けたり。
土砂崩れで壊滅一つ前の村の復興に手を貸したり。
野盗に襲われていた子供を救ったり。
本当に色々なことがあった。
しかし、そのどれもがヒサウにとって初めてのことばかりだった。
そして……。
無茶な行動を取る士郎に怒ったり。
無様な姿を見せる士郎を笑ったり。
傷つき倒れる士郎を見て悲鳴を上げたり。
士郎に大切な女がいると聞いて悲しくなったり。
助けた少女にキスされて戸惑う士郎に……嫉妬したり。
どれもこれも、初めてだった。
初めて感じる感情だった。
自分にこんな感情があるなんて初めて知った。
自分がこんなに感情的に人と話すなんて知らなかった。
こんな気持ちになるなんて…………。
オレの何でもない話に笑う士郎を見て楽しくなった。
オレの無茶な注文に文句を言いながらも答えてくれる士郎を見て嬉しくなった。
私の身体に触れて赤くなる士郎を見てドキドキした。
私の知らない女の話をする士郎にイライラした。
士郎に触れられるだけで幸せになった。
……男を……人を好きになるなんて思わなかった。
短い士郎との旅でも分かることがある……自分の命よりも人を救うことを優先させる士郎は、誰かが見ておかなければならないと。
こんな自分の命を軽んじる男は、誰かが常に監視して、ストッパー役がいなければ直ぐに死んでしまう……と。
そうだ……こんな馬鹿な男には監視役が必要だ。
監視役……か。
まあ……監視役と言うよりも……味方か……な。
こんなイカレた馬鹿の味方をする奴なんかそうそういないだろうし、一人にしてたらあっと言う間に死にそうだし……。
なら、私は正義の味方の……味方……って言うことになるのか……?
始まりが唐突ならば、終わりもまた突然だった。
士郎との旅が一月が過ぎた頃。
私が正義の味方の味方になることを密かに決意した次の日のこと。
燃える村で、私と士郎の旅は終わった。
「何だ……これは……」
「賊の襲撃……ってわけじゃなさそうだね」
「ああ。これは……まさか……ッ」
呆然と燃える村を見ていた士郎だったが、不意に顔を上げると、燃え崩れる家屋の陰に顔を向けた。
ヒサウも同じように士郎が顔を向けた方向に顔を向けると、そこには異形の存在が。
「な、何だアレ?」
「食人鬼……か? ……いや……何だこれは」
士郎たちの前に立つそれは人の形をしていた。
頭と胴体、そして二本ずつ手足がある。
しかし、大きく開いた口の隙間から覗く鋭い歯は、燃え盛る炎に照らせれ粘ついた鈍い光を放ち。
焼け落ちたボロボロの服から覗く身体には、人の肌ではなく鱗のようなものが見える。
裸足の手足には、人のものとは明らかに違う肉食獣の如く鋭い爪が鈍く光っている。
「ぐーる? ぐーる……グールッ! まさかそれ――」
――ッアアアアアアアアアア――
ヒサウは何かを言おうとしたが、それが形になる前に、士郎たちに向かって異形の化物が襲いかかってきた。
十メートル以上の距離を一蹴りで潰した化物が、士郎に向けてその鈍く光る爪先を振るってくる。
「つっああッ!!」
――ギャオッ!!――
反射的で投影した干将莫耶を振るい、士郎は襲いかかってきた化物を四つに分割する。
断末魔の叫びを上げて転がる化物に顔を向けることなく、士郎は隣で呆然と立ち尽くすヒサウの手を取ると走り出す。
「し、士郎ッ?! グールってもしかしてっ!? っていうかその剣何処から出したっ?!」
「説明している時間がないっ! あれを相手に普通の武器では分が悪すぎる……ヒサウは逃げろっ!」
「逃げろって……お前はどうするんだ」
「アレを片付ける」
両手に持った剣を握りなおすと、士郎は燃え盛る家屋の影に向かって駆け出していった。
士郎の向かう先には、先程斬り殺した異形の化物の姿があった。それは一体だけではなく、次々に姿を現し。士郎が二体目に斬りかかった時には、ヒサウの視界の中に五体の異形の化物の姿があった。
「し……士郎」
ヒサウの視線の先には、肩を激しく上下させ呼吸をする士郎の姿があった。両手には黒と白の剣を握り、全身は赤く染まっている。士郎の全身を染める赤の元は、足元に転がる異形の人型。
口の中が粘着くのを感じながら無理矢理吐き出した言葉は、想像以上に小さく、燃え盛る炎の音に押し消されてしまう。
「……ヒサウ」
「なっ、何だっ!」
顔を俯かせ激しく呼吸をしていた士郎から唐突に声を掛けられたヒサウは、ビクリと身体を震わせ声を上げる。
「……足跡が東に向かっている。ここを襲った奴らは隣の村に向かっているようだ。俺は今からコイツらの後を追う。ヒサウは今来た道を引き返し――」
「オレも行くぞっ!」
士郎の言葉を遮るように、ヒサウが声を上げる。
「駄目だ」
しかし、士郎は淡々とした調子でそれを否定する。
「見ていて分かっただろ。コイツらに普通の銃は効果が薄い。ヒサウの今の手持ちの武器では時間稼ぎも出来ない」
「っ……」
士郎の言っていることは分かる。
あの化物との戦闘で、士郎は何時の間にか手にしていた双剣以外にも、拳銃や手榴弾での攻撃も行っていたが、それは目くらまし程度の効果しかなかったのを、ヒサウは見ていた。
そして今、ヒサウの手持ちの武器は、士郎が先程化物に使った武器と性能はほとんど変わらない。
だけど。
「そ、それでも」
「……まだ村人の生き残りがいるかもしれない。ヒサウはその詮索を頼む」
なおも言い募ろうとするヒサウに対し士郎は村人の生き残りの捜索を頼む。
それが自分に士郎の後を追いかけさせないためのものだと、ヒサウには分かってはいたが、拒否することは出来なかった。
「っ……く……わ、わか……た」
士郎の目を見てしまったから。
縋るような。
……願うような。
…………助けを乞うような……。
酷く……弱々しい目を……。
「……あんな目をされちゃ……断れねぇだろ」
炎の向こう側に消えていった背中に向け小さく文句を言い捨てたヒサウは、火の手が収まり始め、炎の代わりに黒煙を上がりだす村の中を歩き出した。
士郎と化物の戦いに目を奪われていたため気付かなかったが、あの化物の犠牲者と思われる者の死体があちらこちらに見える。どれもこれも目を背けたくなるような惨たらしい姿を晒していた。
「ひでぇな……あれが……食人鬼か」
母親のことを調べている中で、所謂オカルトと呼ばれるものを知る機会があった。
食人鬼だけではない……魔術師、死徒、吸血鬼……良くあるただのデマだと思っていた。
だが、見てしまった。
明らかに人ではないモノ。
悪い夢の産物のような存在を……。
そして……。
「士郎のアレも……もしかして」
士郎の所持している武器については把握していた。その中にあんな剣の姿はなかったはずだ。
そして、士郎のあの言い様。
明らかにあの化物について知っていた。
なら……。
「……そういうことか」
士郎との旅の中で不思議に思ったことがあった。
異常なほどの身体能力。
銃や爆発物についての知識がないにも関わらず、時折見せる驚く程正確な爆弾や銃の構造把握や解体についての技術。
他にも色々とあった。
その理由が、自分の知らないナニかだとすれば……。
「……ま、関係ないか」
例えそうだとしても。
士郎が自分の知らないナニかだとしても関係ない。
だって自分は嫌というほど知っている……。
お人好しで。
料理が上手くて。
機械いじりが好きで。
女慣れしてるようでそうでなくて。
そして……何より……誰よりも優しい……。
「……士郎は士郎だ」
「……っ!!」
悲鳴を押し殺したくぐもった声が、ヒサウの口から漏れる。
村の中を一巡りしたが、生きているもの姿はなかった。煙に追われるように村から離れると、ヒサウの視界に大きな倉庫の姿が映った。
だが、視線は倉庫ではなく、その周りに集まり、倉庫を破壊せんとする……化物に。
食人鬼がそこにいた。
数は一体。
倉庫の入口の前で、その猛獣の如き爪を倉庫に振り下ろしている。
岩で出来ている倉庫の入口も、巨大な一枚の岩で出来ているため、それなりに耐久度は高いのだろう。 食人鬼の攻撃に、倉庫は何とか耐えているが、それも時間の問題だろう。
何故食人鬼が倉庫を破壊しようとしているのかは分からないが、ヒサウはアレの意識が倉庫の破壊に向いている間に逃げようと背中を向け――。
――……ァ――
「――ッ!!?」
動きが止まる。
逃げようとしたヒサウの動きを止めたのは……泣き声。
凍りついたように動きを止めたヒサウの耳に、小さな泣き声が聞こえる。
一人ではない。
二人か三人か……複数の泣き声が聞こえる。
大人じゃない。
子供だ。
それも小さな……幼い……子供の。
……何故……動かない……。
どうして……逃げない……。
逃げないと殺される。
確実に死ぬ。
負ける可能性が高いとかの話じゃない……絶対に死ぬ。
アレとの戦闘能力の差はそれほどだ。
勝つとか負けるとかの話ではない。
捕食者と被捕食者。
さあ逃げろ。
今までそうしてきただろ。
やばくなれば逃げる。
命あっての物種。
さあ…………逃げろ、逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲロニゲ――
――タスケテ――
「何て……出来ないよな」
フッと小さく口元で笑うと、ヒサウはゆっくりと振り返る。
真っ直ぐに伸びる視線の先には、倉庫を破壊せんとする四体の化物。
手にする武器は、AKMが一丁に手榴弾が五個。後は拳銃が二丁にナイフが三本……。
死ぬな……。
あ~あ……死にたく……ないなぁ……。
……死にたくないよ。
一ヶ月前なら……ここまで強く思うことはなかった。
一ヶ月前なら……こんなことで悩むことはなかった。
だけど今は違う。
震えるほど怖い。
泣き叫びたい。
逃げ出したい。
だって、知ってしまったから。
笑い合う楽しさを。
触れる暖かさを。
共にいる喜びを。
士郎とずっと一緒にいたい……離れたくない。
死んでしまったら……もう、一緒にいられなくなる。
なのに……出来ない……。
だって……。
聞こえてしまった。
助けを求める声を……。
なら、助けに行かなければ。
何故なら……。
オレは…………。
私は………………。
「『正義の味方』の……味方……だから」
日が沈み始め。
世界が朱に染まる中。
赤く染まる空に黒煙が昇り……銃声が響き渡った。
衛宮士郎にとってヒサウは、近代兵器についての先生であり、辛い過去に負けず日々逞しく生きる強い女性であり、そして、とても弱い女の子だった。
近代兵器を忌避する魔術師だからというよりも、日本人であることから近代兵器の知識がなかった自分に、知識や技術を叩き込み。過酷と言う言葉では言い表せない程の過去を持ちながら、それを全く感じさせないサバサバした性格で『マモル』を探すのを手伝ってくれた。
強くて怖い女性だと思っていたら、食後のデザートで出した簡単なお菓子に子供の様な笑顔を見せたり、とある事情で一日離れただけで、酷く弱々しい少女のような姿を見せた時もあった。
たった一ヶ月の短い付き合いだが、士郎にとってヒサウは既に大切な女性になっていた。
だからもし、ヒサウが嫌でなければ、このまま一緒に旅を続けようかと考えていた。
しかし、それも……。
「ひ……さう?」
結局は、夢のようなものだった。
今……。
士郎の目の前に……。
赤く……。
紅く……。
緋く……。
朱く……染まったヒサウがいた。
ぐっしょりと重さを感じさせるほど、赤い液体で濡れそぼった服を身体に張り付け。
虚ろな目で虚空を見つめている。
捨てられた人形。
そんな姿だった。
右手は肘から先が千切れ。
左足は根元からその姿を消していた。
烏の濡れ羽色と言うに相応しい黒の髪は赤黒い血液と泥で汚れている。
ヨロヨロとフラつきながら、士郎がヒサウの下まで歩いていく。
パシャリと、士郎の足が赤黒い液体に浸る。
服が濡れることを欠片も厭うことなく膝をついた士郎は、怯えるようにヒサウの身体に触れると、ゆっくりとした動作で抱き上げた。
声が……聞こえる。
だれ……だろ?
……だれ……かな?
ああ……しろう……か……。
……また……ないてる……の?
もう……ほんと……なきむし……なんだ、から……。
……だから……しんぱいになるんだ……しろうはとてもつよいけど……こんなによわいから……
だれかがいっしょにいないと……いけないんだ……
それが……わたしだったらよかったんだけど……もう……むり……みたい……
ちからが……ぬけてく……からだから……ねつがきえてく……とても……さむい……
ああ……かなしい……なぁ……
つらい……なぁ……
さびしい……なぁ……
いや……だ……なぁ……
……なにも……かえせなかった……な……
ごめん……ね……
「……俺は……俺は……何も……何も出来なかったッ!! また……また助けられなかったッ!!」
……なに……いってる……の……?
「何が『正義の味方』だッ!! 何が全てを救うだッ!! 結局俺は……救えなかったッ!!」
……すくって……くれたよ……しろう……は……
「自分勝手な考えで!! 俺が……俺が殺したッ!!」
ちがうよ……ちがうよ……
「こんなに近くにいた人さえッ救えないッ!!!」
しろうは……
「俺はッ!! ッ?!」
しろうは……ッ
「……すくって……くれ……たよ」
「ひ、さ……う」
「しろ、う……は……わた、し……を……す、くって……くれ……た」
「喋るなッ!! 今すぐ治療をっ!!」
「だ、か……ら…………しろ、うは…………きっ、と…………」
死んでいると思っていた『私』を、士郎は救ってくれた。
あの地獄で死んでしまった筈の『私』を、士郎はたった一月で救ってくれた。
そんなこと士郎以外に出来る筈がない。
だから……。
ねえ、士郎。
誰よりも優しくて。
誰よりも厳しくて。
誰よりも弱くて。
誰よりも強くて。
誰よりも愚かで……馬鹿な……
たった一人の『正義の味方』
そんなあなただから……何時か……きっと……絶対に……なれるよ……
「なれる、よ…………ぜん、ぶ……す、く、える……せいぎ……の……みか……た……に…………」
……ぜんぶ救える正義の味方に。
小高い丘の上。
眼下には朝日に照らされた眼下に広がる美しき草原。
そして……。
草原を侵すように進行してくる七万を超える軍勢。
それを見通す者は、
「七万の軍勢……か」
赤き騎士。
名は衛宮士郎。
「…………」
目を閉じ、瞼の裏に浮かぶのは、一人の女性の姿。
全てを救える正義の味方になれると言ってくれた女性。
強くなれと伝えてくれた女性。
「俺は……全てを救えるほど……強くなれたか」
全てを救えるほど強くなれと……。
「少しは……お前が思う……正義の味方に近づけたかな……」
目を開く。
視線の先には、草原を埋め尽くす七万の軍勢。
相対する者の心胆を恐怖に晒す。巨大な力の権化。
しかし、それに相対するたった一人の騎士の顔に浮かぶのは不敵な笑み。
「……絶対に……救ってみせる……今度こそ……全てを」
覚悟を決めた。
漢の貌。
後書き
感想ご指摘お待ちしております。
……幕間……
このやっちゃった感……どうしよ……。
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