DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章
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三章 トルネコおばさん
3-16さらに夢見る主婦
「まあ。どんな方ですの?」
「わからぬのです。まだ子供であるとしか」
「まあ……。それは……。」
「いずれ世界を救うことになるゆえ、魔物どもに狙われていると。私は彼を探し、守るため、旅をしています」
「いずれ、世界を救う、御子、ですの。」
「当ての無い中、わずかな手掛かりを求め、探し回る旅です。先の武術大会にもしや、と思い、この国に来たのですが」
「おいでになりませんでしたの?」
「気になる御仁は、おられましたが。おそらくは」
「そうですの……。」
「次にどこに向かうべきか、考えておりましたが。行ける場所も多くは無い、行けるところへ行ってみるしか無いのです。だから、考えを止めて頂いて、良かった」
バトランドのライアンと名乗った女戦士と別れ、カジノを出る。
忙しくも幸せな日々の中、記憶の片隅に置き去り、しかし忘れ去ることのできなかった、洞窟で夢を追う老人を思い出す。
あの洞窟が繋がれば、助かる人は多いのじゃないかしら。
幸い、店は順調で、今では六万ゴールドも都合できる。
夫の同意も得て、老人に資金を渡す。
世界中の宝を集める。
天空の剣を探す。
惹かれていく心は押し隠す。
だって、そんなこと。
今度は、日帰りの冒険というわけには、いかないもの。
素敵な夫と、可愛い子供がいて、お店がある。
それで、いいじゃない。
世界を救う、だなんて。
心ここにあらずといった様子で、ぼんやりすることの増えたトルネコを、夫が心配そうにみつめる。
そして、洞窟開通の知らせが届き。
夫が切り出した。
「トルネコ。旅に出たいんじゃないのかい。」
「……え?そんな。まさか。だって。」
「僕も、天空の剣の噂を聞いたよ。それを、探しに行きたいんだね。」
「そんなこと、ないわ。」
「いいんだ。そんな嘘をついて、自分を騙さなくても。」
「どうして。」
「君は、いつも夢を持っていないと、生きられないひとだ。そんな君だから、僕は好きになった。縛り付けたくて、一緒にいたわけじゃない。」
「……あなた。」
「行っておいで、トルネコ。いつまでも、待ってるよ。」
「だって。ポポロだって」
離れて見ていた息子が、待っていたように駆け寄り、口を開く。
「大丈夫だよ、ママ!ぼくはもう大きいんだから。ママがおでかけしてるときは、ぼくがパパを守ってあげる!」
「……ポポロ。」
「ぼくも、元気で明るいママが好きだよ!いってらっしゃい、ママ!」
夫に、言い聞かされていたのか。
「ポポロ。ママも、ポポロが大好きよ。ありがとう、ふたりとも。必ず、帰ってくるわ。愛してるわ、あなた。」
破邪の剣を携えて、トルネコは東へ旅立つ。
家族の愛を胸に抱き、新たな夢に期待を膨らませながら。
どこまで行っても、離れても。
帰る場所は、ひとつ。
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