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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章

作者:あさつき
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二章 やんちゃ王子の観光
  2-23そして優勝へ

 毛玉は激昂(げっこう)し、再び魔力が(ほとばし)る。
 四体の毛玉が突進し、入り乱れて視界を掻き乱す。
 視覚に惑わされずに、気配を追う。

 幻影を突き抜けて繰り出した鉄の爪が、毛玉の腹に深々と突き刺さる。
 毛玉は血を吐き、闘技台を震わせて倒れ込む。

 辛うじて、息はある。

 兵士に問う。

「まだ、息がある。とどめは、必要か」

 兵士は戸惑い、国王に判断を仰ぐ。

 国王が首を振り、宣言する。

「勝者!アリーナ王子!」

 魔物の出現に戸惑っていた会場に、歓声が戻る。

「きゃー!さすが、あたしの!アリーナ様ー!」
「ちょっと!誰があんたのよ!」
「ひょー!やるなー!」

 毛玉は拘束され、運ばれて行く。

 兵士が、興奮したように告げる。

「アリーナ王子様、五人勝ち抜き!」

 国王が続ける。

「アリーナ王子よ!よくぞ勝ち抜いた!これより、いよいよ決勝戦じゃ!デスピサロを、これへ!」

 すぐやるのか。

 もしや毛玉は、数合わせのために捕獲されたのか。
 運の悪い毛玉だ。

 薬草のことは、もう聞かないのだな。

「アリーナ様に、デスピサロ様。やーん、あたし迷っちゃうー!」
「ビビアンちゃん亡き今、オレたちにはモニカ姫しか!」
「王子!頼む!頑張れ!頼む!」

 殺してはないが、存在は抹消したい。
 嫌なことを思い出させないでほしい。


「どうしたのだ?早く、デスピサロを呼んで参れ!」

 雲行きが怪しい。

「ちょっとー。デスピサロ様、まだー?」
「いないのか?まさかいないのか?」
「王子!王子!」

 いないとか。


「なに!?どこを探しても、デスピサロがいないとっ!?うーむ…………。」

 雲行きがとても怪しい。

「えー。そんなー。」
「いないのか!やはりいないのか!」
「王子!王子!王子!」

 本当にいないとか。


「わかった!いないものは、仕方あるまい!」

 それは、そうだが。


「武術大会は、アリーナ王子の優勝じゃ!」


 会場が、歓声で満ちる。


 しかし、数合わせの毛玉に勝って、不戦勝の優勝か。
 せめて筋肉、弓、毛玉、サイモンの順なら良かったのに。
 ん?あとひとり……ああ、不戦勝だった。


 側で控えていたブライとクリフトが、駆け寄って来る。

「王子、やりましたな!」
「アリーナ様、優勝おめでとうございます!」
「ありがとう」

 すっきりしないが、ごねても仕方が無い。

「きゃー!やっぱりアリーナ様よねー!」
「ありがとう!正義は果たされた!」
「王子ー!ついていきますー!」

 歓声に手を振って応え、興奮冷めやらぬ会場を後にした。 
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