ワンピース -炎とゴムの姉は虫(バグ)-
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クリーク決着
目の前では、クリークとうちの弟が激しくぶつかり合っている。
あんなごついおっさんに正面から挑むとは……、ルフィ、なかなかやるわね。
ルフィはゴムの特性を生かして戦い、クリークは全身から色々と武器を出して戦っている。
武器仕込みすぎじゃないかしら? ま、ルフィにとってみれば厄介なやつよね。
ルフィは海から落ちたら終わりだから、いろいろ気をつけて戦わないといけないし。
ドゴォ!!!
お!? ルフィがクリークをぶっ飛ばしたわねぇ。 決まったかしら?
ルフィに吹っ飛ばされたクリークがむくりと起き上がった。 その顔は怒りに満ち満ちている。
「M・H・5」
「ドン!! 待ってくれぇ、それは」
「うるせぇ!!!」
何かつぶやくと同時に肩についていた円盤をこちらに向ける。 カパッとドクロを模した意匠の口当たりが開き、にゅうっと砲身が現れる。 それを見た下っ端海賊たちがエラく慌てだした。
「大砲ならきかねえぞ?」
「まぁゴムだしねぇ。 中々反則よねその体。 殴られても痛くないんだっけ?」
「すげぇだろ。 まぁ姉ちゃんに殴られると痛かったけどな。 なんでだ?」
「あぁ、あれは"愛"ね! 私の溢れ出る愛がゴムにもダメージを与えられるのよ!!!」
「うわぁ、その愛いらねぇ」
大砲をこちらに向けて構えるクリークを完全無視。 大砲程度なら何とでもなるのだ。 それよりもルフィ、お姉ちゃんからの愛がいらないってどういうこと!!!?
「クソ生意気なガキが!!! 喰らいやがれ!!!!」
ドォォォン!!! という砲撃音と共に、クリークの大砲から砲弾が放たれる。 ルフィは迎撃するかのように身構えるが、砲弾はえらくゆっくり飛んできている。
拍子抜けするぐらい低速のそれは、余裕を持って迎撃できるであろう。 しかし、何か気になった。 海賊たちが慌ただしく懐を探り出す。 懐を探れない者たちは海に潜るものまで現れた。
いったいなんだ? とクリークを見てみれば、ガスマスクを着用しているところだった。
ガスマスク!!?
……金色じゃないの!!!!!?
全身金ピカのウーツ鋼装備だったのに、ガスマスクは一般的なものを使用するクリークにどこかずれたツッコミを入れていたが、次の瞬間には私の周囲は毒の霧に覆われていた。
たっぷりと時間をかけて、毒の霧が晴れていく。
どう考えてもこの毒の霧は街一つ分なら破壊できるほどの威力はありそうだ……。 こんなものこんなしょぼい海賊団の団長が持てるものなのかしら? 何やらきな臭いわね。
晴れる霧の中から観察を続ける。
お? ルフィはなんとかガスマスクを手に入れて一命を取り留めたみたい。 結構ギリギリで焦ってたけど大丈夫だったみたいね。 流石は私の弟。 伊達に小さい頃からジャングルとかに放り込まれてないわね。
私? 私に毒が効くとでも?
そりゃあ効きますよ? 私をなんだと思ってるんですか。 マゼランさんと話をするときはいつもヒヤヒヤものです。 まぁ、油断してない限りは一切毒なんて受け付けませんけどね。
それよりも……、え~と、みんなは無事でしょうか? 大丈夫そうですねぇ。 うんうん。 ん? ギンというクリークの部下さんが痙攣してますね? 毒でも吸ってしまったのでしょうか? つまり自爆……。 ぷッ、恥ずかしいですね。
「おいギン!!! しっかりしやがれ」
おやおや? マユジ君がギンに声をかけていますね。 何があったんでしょうか?
「あぁ、あいつサンジをかばったみてぇなんだ」
バラティエの料理人の方が教えてくれました。
え? サンジ君をかばった? サンジ君て誰? ……あぁあ、マユジ君のことか!!
へぇ~、敵であるマユジ君をかばったんですか。 なかなかいい人のようですね。 仕方ありません。 少し手助けしてあげましょう。 私はいい海賊には寛容なのです。
「毒鱗粉……【毒を以て毒を制す】
毒鱗粉には少々特別な使い方もあるんですよぉ。 便利でしょ?
ただし!!! 結局毒を流し込むので、先に打ち込まれた毒と毒鱗粉の相性が悪ければ、解毒不能の猛毒が完成することもあるんです。 そのあたりは運任せとしかいいようがありません。
味方にするときはちゃんと相殺できる毒を分析してから行います。 ま、差別と言われても仕方ありませんね。 ですが私は一応海軍。 東の海を荒らし回った海賊団の一員を助けたとあれば、色々面倒ですので……。
なので、運任せ。 これなら私はお咎めなしです。
「ギンは助かるのか!? お姉さん」
「こればっかりはわからないわね。 私の毒鱗粉は結局のところ毒なのよ」
「そうか、でも助かる可能性もあるんだろ!?」
「五分五分と言ったところかしら。 海賊を助ける行為は私にはできないのよ。 立場上ね」
ゆっくりとだが、ギンの呼吸が落ち着きだした。
う~ん。 毒が効いてきましたね。 顔色が少し良くなったみたいです。 まぁ、もともとあまりいい顔色をしていなかったので、このぐらいの顔色で大丈夫でしょう。
ルフィはどうなりましたかね?
「おいおい、ギン何やてんだ。 敵なんかに情けをかけやがったのか?」
「……お前、仲間をなんだと思ってる?」
「あん? なんだクソガキ。 使えねやつはいらねえんだよ」
ブチィ!!!
「お前は、仲間を、なんだと思ってんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!」
あぁ、怒ってますね。 おぉ、ちょっと覇王色の覇気の片鱗が現れましたよ。 やりますねルフィ。 もうちょっと使いこなせればルフィも人外の仲間入りですね。
バッ! っと飛び出すルフィ。 クリークは慌てて剣山マントを纏っています。 さっきはあれでルフィの攻撃を防いでましたからねぇ。 でも、怒ってるルフィにはどうでしょうか?
うわぁ、剣山の上から殴りましたよ……。 痛そうですねぇ。
それからはルフィの圧倒と言う一方的な展開に。 クリークが何かしようとするたびにボコボコにしていきます。 クリークも負けじと爆発するヤリみたいな武器を振り回していましたが、それも粉砕。 クリークの持つ武器を全て攻略してしまったようです。 しかし、我が弟ながら無茶な戦い方をするものです。 姉として、心配になりますね。
さてさて、もうそろそろ決着のようですので、捕縛の手配をしておきますか。
クリークを退け、新たにマユジ君を加えて新しい旅に出るルフィ。 バラティエの料理の質が下がるんじゃないの? と言う疑問もあるが、そこは復活したゼフさんがいればどうにでもなるらしい。
それにしてもマユジ君。 出航間際に放った『クソお世話になりましたぁ!!!』の一言は思わずウルッと来てしまうほど感動的である。
バラティエに来て、ルフィと感動の再開、マリモ君の宣誓、マユジ君の感謝の意を立て続けに経験した私の涙腺は最早、決壊してしまっている。 うん、正直に言おう。 涙が止まりません。
まさか、これほどまでに涙もろくなってしまうとは思わなかった。
ほんと、クリーク撃退のお祝いの席で出た料理を食べただけで、美味さに感動して泣くとは……。 一生の不覚。
とりえず軍船に戻り、二日ほど泣きまくった。
ようやっと涙が止まり、普通に行動できるようになったので、元帥閣下に連絡。 そろそろ戻ってこいとのことなので、海軍本部に帰るとしますか!!!! ルフィにも会えたしね。
あ、その前に、
「おかわり~!!!! 追加で5人前ね!!!」
「おいおい、嬢ちゃん食いすぎだぞ……」
「あ、ゼフさん、大丈夫です!!! まだ腹八分目も行ってないんで」
「まじかよ……」
既に厨房ではコックが3人倒れていたとか、いないとか。
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