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ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~

作者:脳貧
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第四十話

 散発的に現れ神出鬼没ゆえにやっかいなのが海賊というものだが、その利点を失ってしまったのが今回の彼らの敗因だったのは疑いない。
海賊を壊滅させた件の論功行賞のようなものが行われ、町の商工会やアグストリアから派遣されている代官からレイミア隊には勲功第一ということで莫大な報奨金が出た。
彼女が協力を要請した全ての傭兵隊のうち、手を貸してくれた二つの傭兵隊にももちろん報奨金は支払われ、彼女への協力を断った傭兵隊は歯噛みして悔しがったと聞き及んでいる。
拿捕した海賊船も売り払ってから三つの傭兵隊で山分けする運びとなっており、この臨時収入もそれぞれの隊員の懐を温めるだろう。



 俺は賞金首にもなっていたピサールを討ちとったことで別個に報奨金が出るということになっていたが、受け取る代わりにブリギッドとその所属していた団の構成員は罪に問わないと言うことを了承してもらい、おおっぴらにヴェルリーに協力してもらえるようにした。
彼が言うには仲間がはぐれた場合の合流ポイントや連絡を残すポイントが何か所かあるということだったのでそこに今回の件を知らせる書置きを残すことを頼み、町の何か所かには高札を掲げてもらい彼女からの連絡を待つことにした。



「別に報奨金断らなくたってブリギッドさんのことは問題なかったと思うんだけどねぇ、まっ、そこがお前のいいとこか」
様々なことが片付いてようやくゆとりのできたレイミアとゆっくり出来る時間が出来たので甘えにきてみた。
傭兵隊のアジトにある彼女の私室はそんな豪勢な部屋でも無いが、個室を持っているだけでも他の構成員に比べれば特別なのだろう。

「そういや明後日にでも今回の働きに応じたカネを最終清算するから、お前も忘れるなよ」
文机の前で片手を腰に当てて決めポーズみたいにしている彼女に

「何言ってるんだい、俺がお前からカネなんて受け取る訳ないだろ?」
この前彼女に言われた台詞で言い返すと、苦笑いを浮かべて軽く小突かれた。
なんだか少し嬉しくなって軽く笑うと、彼女も俺の掛けていた彼女のベッドの隣に座ってきた。
俺は彼女の肩に体を預けて

「こうしてると、なつかしいね」

「そうだねぇ、いろいろ思いだすよ」
俺たちは何も言わずにお互いもたれながら時を過ごした。



 
 暗くなるまで贅沢な時間を過ごした俺とレイミアは空腹を満たすべく夜の町に繰り出した。
ターラで過ごした一晩を思い出して少しせつなくなったが、あの時と今は違う。
もうしばらく、うまくいけばずっと、彼女と居られるだろうから。

「なぁ、お前は魚とかイケるほうかい?」

「んー、種類によるかなぁ。贅沢言って悪いけど、生臭いのはイヤだなぁ。出来れば野菜や肉とかの料理が充実してるほう希望」

「アタシもさ。 やっぱお互いそういう育ちだもんねぇ」
マディノは魚の水揚げはもちろん多い、それゆえ多くの食いもの屋は魚料理が多く、俺たちが長期滞在している宿でもメイン料理は必ず魚が出て来る。

「レイミアの村での豆といろいろ季節の野菜とかハーブの入ったスープとかうまかったよ、また食べたいな。案外って言っちゃ悪いけどレイミアの料理おいしかったよ」

「まっ、あそこは水もここよりずっと綺麗だしね。腕より材料さ」

「謙遜しなくていいのにー」

「ありがとよ、でもコッチ来てからは全然作ってないさ」

「忙しいもんなー、でも、これからはそうでもないだろ?」

「だねぇ、まぁ、ちっとやりすぎたから問題もあるんだよねぇ……」

「獲物を狩り尽くした猟犬は処分されて、弓は蔵に仕舞われるってやつか……」

「いい例えだね! まっ、海上輸送や警備の仕事は今より安全になるだろから報酬は下がりそうだってとこさね……この店にしよか」



 彼女が勧めただけあって野菜料理や粥、丸焼きにした鳥など魚以外の材料を使った料理も多く、俺はトマトで煮込んだ鳥肉と豆に麦粥、串焼きにした玉葱、甘酢に漬けこんだ海藻や野菜のサラダに大満足した。
二人でワインを1本だけ空けて、ほろ酔い気分で宿に帰った。

「ミュアハー!、それにレイミアまで酔っぱらっちゃって~、今日はもうお風呂の時間終わっちゃったよ?」

「祝いのですからね、それに正体無くすほどじゃありませんからあまり咎めないように」
クロード神父の援護射撃があったが、ここはシルヴィアに謝っておいた。
お湯をもらい自室で体を清めるとして、レイミアも今日はここで泊って行くそうだ。
俺やエーディンさんが浜で張り込んでいた間にレイミアとシルヴィアは一緒に寝てたそうで仲が良くなったんだろうなぁ。
レイミアにとってはアニーの代わりなんだろうな、そうなると俺はミゼだろう。
丁度ミで始まりとアで終わってるから、運命の偶然なのかもしれない。
明日は慰霊の式典が挙行されるそうだ、ヴェルリーにもそろそろブリギッドの行方を掴んでほしいものだが……
寝台の上でそんなことを考えながらうつらうつらしていると部屋の中に誰かが入って来た。
すぐさま気合いを入れてすぐに動けるよう身構えると……

「ミュアハー、レイミアのお部屋いこー」
シルヴィアに言われた通りにレイミアの借りた部屋で三人仲良く眠った。
さっき思いついたミゼとアニーの話をしたら、レイミアがうるうるしてぎゅぅっとされちゃいましたーよ。
シルヴィアが言うにはレイミアは俺のお母さんだなんて言うし、そう言うならシルヴィアは俺の妹だよ。
なんて言ったら微妙な顔をしたけれど、この三人で家族っていうのもいいよね。
今日は昼寝をしてしまったけれど、安らかな気持ちになれたせいかちゃんと眠ることが出来た。




 翌日、この前の入り江の手前、海賊との激戦を行った場所で慰霊祭が行われた。
後から石で慰霊碑を建立するそうだが、まずは詳細を記した木製の立て札が立てられその代わりとしている。
クロード神父と町の礼拝所の司祭が儀式を執り行い、エーディンさんとシルヴィアはその補助をしていた。
最後は海に花や供え物を流し皆で祈りを捧げた。
宿に戻ると、昨日渡しそこねたと言われて受け取った書状はヴェルリーからのものであり、ついにブリギッドと合流できたそうだ。
すぐにエーディンさんに見せたところ大層喜んでくれた。
ただ、大手を振って本当に町に入れるか心配なのでいざという時に人質に出来るよう非武装の町の有力者を用意してほしいということだった。
これは町の礼拝所の司祭が引き受けてくれて、あとは指定された日時を待つのみとなった。



これを果たせば、マディノでの長いようで短い滞在の終わりを告げることになるだろう。

 
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