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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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偽りの神と反逆者

 
前書き
ついに力は解放された、的な 

 
 ゲツガは体が消えるのを自分でも確認できた。しかし、体は動かないし、正直もう駄目だと思った。そして身体が消えて視界がブラックアウトする。何も見えないし、どこかもわからない真っ暗な空間のようだ。とそのとき、声が聞こえる。

『諦めるのか?』

『誰だ?』

『諦めるのか聞いているんだ?』

『諦めたくないに決まってんだろ』

『じゃあ、なぜ抗わない?』

『俺はプレイヤー、あいつはゲームマスター。この世界での強さどころな話じゃない』

『そんなものは関係などないはずだ』

『どういう意味だ?』

『お前はプレイヤーであってプレイヤーでないもの。もちろんゲームマスターでもない。一つのバグだ』

『意味わからない。俺がバグ?』

『そうだ、この世界で現在唯一の不確定因子(イレギュラー)のバグ存在だ』

『そんなにイレギュラーなのか、俺は?そもそも、ここはどこだ?お前は誰だ?』

『ここか?ここはお前がさっきまでいたVRMMOの中だよ』

『じゃあ、お前は誰なんだ?』

『俺か?俺はウィルスだ』

『……ッ!!』

 ゲツガは驚く。まさか、ここで奴らは干渉を行ってくるとは自分でも解らなかったからだ。

『お前はなんなんだ?レストアやコントロール、パス、チェンジャーみたいなそういう名前があるなら言え』

『そんなものはない。だが奴らにはこういわれている。マスターと』

『マスター……つまりお前がウィルスの親玉か』

『そうなるな。奴らを作ったの私だ。そして私の能力の一部をあいつらに分け与えたものだからな』

『……』

 ゲツガは一度考える。こいつは出てきたならつまり、まだ何かをさせるつもりなのだろう。こいつの力さえあればユキを助けられる。たとえどんな無茶と思われる対価を払ってでもやってやると考えたゲツガは言った。

『おい、対価はなんだ?俺に力を使わせるためにここに連れて来たんだろ』

『……まあ、違うがお前にはやってもらうことがあるからな』

『やることってのは?』

『今回の対価として要求するのは、私をこの世界に根付かせることだ』

『意味がわからない要求だな。まあいい。その要求をのんでやる。力を寄越せ』

 そう言うと指をぱちんと鳴らしたような音が響くといきなり落下する感じに襲われる。するとゴトンと床に激突する。受身を取ろうとしたが腕も脚も動かないせいで何もできなかった。体を見ると腕と脚が切られた状態の体になっていた。そして上から一つのビーダマ大の黒い球体が落ちてきて、目線の位置で止まる。

『さあ、貸してやるよ。全ての力を。助けたければ、その力でお前が憎むべき王の世界を破壊しろ!』

 ゲツガはその言葉を聞く前に歯でその球体を破壊した。その瞬間、頭に能力の内容がものすごい勢いで入ってきた。復元、複製、操作、変換、接続、削除、最適化の仕方を。そしてゲツガは唱える。

「レストア……」

 すると、ゲツガの腕と脚にノイズがかかる。ノイズがどんどん手の先のほうに向かっていくごとに腕と脚はどんどん戻っていく。ゲツガは立ち上がり感覚を試す。感覚は戻ってきており、腕や脚の動作がむしろ楽になっているほどだ。

「フォーマット」

 次にゲツガはそう唱えた。すると体全体がノイズに包まれる。一秒もしないうちにノイズが消えるが姿は先ほどとまったく異なっていた。先ほどまでのケットシーの姿ではなくSAO時代のゲツガになっていた。こっちの体より、あちらの体のほうが最適と判断されたのだろう。確かに、ゲツガにとってはこちらの姿のほうが好都合だ。

「さてと、体も戻ったことだし、ユキを救いに行くか」

 そう言って再び唱える。

「パス」

 すると自分の前から大きなノイズが現れる。そのノイズからは慌てている玖珂の姿が見えた。ゲツガは拳を握って玖珂に向けて拳を放つ。拳は玖珂の顔面を捉えて吹き飛ばした。そしてゲツガはそのままノイズの端の部分を掴む。そしてもう片方の腕から体を出す。ユキは何も無く無事だったことを安堵して、ゲツガは玖珂のほうを向いて言った。

「よう、玖珂……あの世から追い出されちまったから戻ってきたぜ」

 しかし、玖珂はゲツガの言葉を聞くと先ほどの焦りよりも怒りの表情を浮かべて睨んでくる。

「何でお前がここにいるんだよ……死んだんだろ……なんで生きてるんだよ……」

「何で生きてるって?だから言ったじゃねえか。あの世から追い出されたから戻ってきたって」

「ふざけるな!!そんなことありえるか!!人間は死ぬと生き返ることはできない!それがこの世の理だろ!!」

「この世の理以前に実際俺が死んだのを確認したのか?俺が消えただけで死んだと思ってんじゃねえぞ」

 そう叫ぶ玖珂に話しながらユキの方に歩いていく。

「ユキ、ゴメンな。また一人で悲しい目にあわせちまって。だけど大丈夫だ。これからはもうそんなことはさせない」

「……本当にゲツガ君なの?……さっき、消えていったはずじゃ……それにその格好……」

 ゲツガは苦笑してユキに説明する。

「ウィルスに助けてもらった。はらただしいことだったけど、お前を救うためにな……安心しろ対価は俺に対してのことじゃないから。俺にデメリットはない」

「訳分からないこと言ってんじゃねぇ!クソガキィ!!」

 そう言って槍とギロチンの刃を出現させて、放ってくる。

「ゲツガ君!!避けて!!」

 ユキはゲツガに言うが、ゲツガは腕をその方向に向けるだけで移動しようとしない。そして飛んでくる物体の方手の先からノイズが発生する。ノイズは大きな口みたいに飛んできた武器を全て飲み込んだ。役目を終えたノイズはすぐに閉じて消えていった。

「なんなんだよ……なんなんだよ!それは!?俺は知らないぞ、そんな力!!」

「知らなくて当然だ。俺も詳しくは知らないしな」

 そう言ってゲツガはユキに視線を戻して頬に触れた。

「今から少し変な感じがするかもしれないけど落ち着いてくれ。ただ、お前に施されているロックを消すだけだから」

 そう言ってゲツガは唱える。

「パス」

 ゲツガの視界はプログラムの構成が見えるようになる。そして、ゲツガはユキにあるロックされたプログラムや複雑なものを一瞬で見つけてそれを直した。

「これでもう、ログアウトできるはずだ」

「ゲツガ君……何をしたの?」

「お前の俺と違うプログラムを正しただけだ」

 そう言ってゲツガは立ち上がって玖珂のほうを見る。玖珂はありえないと言った風にただ口をあけて呆然としている。

「ユキ、俺は決着をつけてくる」

「うん、絶対に勝ってね」

 ゲツガは頬を緩ませたがすぐに戻すと玖珂のほうを向く。玖珂はゲツガを指差しながら叫んだ。

「ふざけるなぁ!!俺はこの世界では絶対的な神に等しいんだ!!この世界を統べているのは須郷でもお前でもない!この俺だ!!」

「黙れ!テメェは他人の打ちたてた金字塔に乗り込んでその世界を奪い取った偽者の神だ!」

「黙れぇ!!システムコマンド!!モンスターID邪神、ヘラクレスオーガをジェネレート!!」

 そう言うと玖珂の上空からゼロとイチの数字が落ちてきて形を作っていく。巨人の形を取ると体に皮膚などの物がついていく。その姿はヨツンヘイムで見た巨人のモンスターよりも倍の大きさがあり、顔は鬼のような顔に、武器には大きな斬馬刀を二振り持っている。そして姿が完璧に完成すると巨人は雄叫びを上げた。

「ぎゃあああああああああ!!」

「どうだ!邪神級モンスターの中で俺の作り上げた最強の邪神だ!しかも、こいつには不死属性を追加している!お前のような奴でも絶対に倒せない!!行けぇ、ヘラクレスオーガ!そこの屑を蹴散らせ!」

 そう命令するとヘラクレスオーガと言われる邪神級の巨人はゲツガに向けて突撃を開始する。そしてゲツガに向けて高速に等しい剣撃を食らわせようと剣を振り下ろしてくる。しかしゲツガは動こうとしない。

「死ねぇ!!」

 それと同時に剣は振り下ろされて大きな音を立てる。

「ゲツガ君!!」

 しかし、それで巨人の攻撃は終わることなくもう一振りの斬馬刀を使って連続攻撃をする。そのスピードはキリトとは比べ物にならないが重さだけはキリトの倍以上だった。煙が上がりるのと、ものすごい剣撃が地面がぶつかることにより出た衝撃波が空間を揺るがす。

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」

 玖珂は笑いながら、そう叫ぶ。しかし次の瞬間、その笑いが固まった。

 巨人の手に持っていた斬馬刀の刀身が無くなっていた。攻撃がやみ、煙が晴れるとそこには無傷のゲツガが立っていた。

「おい、俺はお前と決着をつけるって言ったんだよ」

 そう言ってゲツガは手を巨人に向けて唱える。

「デリート」

 そう唱えると不死属性を付与されていると言っていた巨人に無数の穴が開く。そして、巨人は大きな音を立てて倒れると、ポリゴン片になって消えていった。何が起こったのかまったくわからないと言った風に玖珂はありえないと口を動かした。

「なんだよ……なんなんだよ……そんなの……作った覚えなんてないぞ……」

「作成者は誰であろうと関係ないだろ。さあ、邪魔者も消したんだ。決着をつけようぜ。偽者の神と世界を破壊する反逆者のな」

 そう言うとゲツガは右手を伸ばして口を動かす。

「パス!」

 そしてそこにできたノイズに手を入れて再度口を動かす。

「フィッティング!」

 そして創造する、自分に合った武器を。自分の力を最大限に生かせる武器を。そして形を想像してそれを作り出す。

「レストア!」

 そのノイズの中で手に武器が生成される。ゲツガは握ってノイズの中から引き出した。手に握られていたのはSAO時代に使っていた武器と同じ、フェーロ・プラス・グラヴィターティであった。

「やっぱり、俺にはこいつが一番だな」

 そう言ってゲツガは逆手持ちに切り替える。

「ふざけるな……ふざけるなよ……俺はこの世界では絶対に負けない!!俺は神だ!全知全能なる神なんだ!お前のような屑に負けるなんてのはありえない!」

 そして玖珂は手を掲げて叫ぶ。

「システムコマンド!オブジェクトID、ロンギヌスの槍をジェネレート!!」

 玖珂の腕には一振りの槍が握られる。それは先ほどゲツガを刺した槍だ。

「殺してやる!」

 玖珂はものすごい勢いで突撃を開始する。この速さもあいつ自身が自らを鍛えてきたものじゃないためゲツガからみればただのやけくそにしか見えない。ゲツガは槍の先だけ避けて玖珂の頭を掴んだ。

「パス」

 そう言ってゲツガは自分と同じようにペインアブソーバを。そして、管理者権限を削除して突き放した。

「貴様、何をした!!」

「ペインアブソーバとお前の管理者権限を消しただけだ。俺も今度はこの力を使わない。己の力だけしか使えない本当の殺し合いを俺がこの手で教えてやるよ」

「ふざけるなぁ!!俺は知らないぞ!!そんなもの、俺は知らない!」

 そう言ってを槍を突き出してくるがそれをフェーロ・プラス・グラヴィターティの刀身で弾く。玖珂の攻撃は今までプログラムばかりに頼っていたようで実際はなんてことはない。ゲツガは槍を上に大きく弾くと、そのまま腕を切り落とした。

「ギャアアアアアアア!!俺の、俺の腕がぁああああ!!」

「痛いか?それが俺があの世界とこの世界で受けた痛みだ」

 そう言ってゲツガは更に腕と脚を二撃で切り落とす。

「ああああああああ!!」

 すべて切り落としたゲツガはじたばたとする玖珂を見下ろしながら言った。

「今まで俺がどんな世界で生きていたかわかったか?痛みのないさっきの世界とはまったく違うだろ?大体テメェが神だって?笑わせる。権限がないと力のない奴が神なわけないだろ。神だとしても、お前は神話に出てくる神だ。神話の神は大体は英雄に殺されるからな」

 そう言って髪を掴んで持ち上げると素早く上に投げた。

「これ以上、お前の見苦しい姿を見たくもないしユキにも見せたくない。だからもう終わりにするぞ」

 ゲツガはそう言って上に投げる落ちてくると同時に剣の連撃を放って玖珂の体をばらばらにした。そして、血のようなライトエフェクトと同時にポリゴン片となって消えた。

 ゲツガは玖珂が消えるのと同時に自分の体から何かが抜けるのを感じた。そしてノイズも消え、今までいた空間に戻った。ゲツガの身体もSAO時代のものではなく、ケットシーに戻っていたゲツガはユキのほうを向く。するとユキはすでにこちらに来ていて、飛びついてきた。

「よかった……ゲツガ君が勝ってくれて本当に……」

「ああ、勝った……ようやく、終わったんだ……」

「ううん、違うよ。始まるんだよ……これから……私たちの本当の人生が」

 ゲツガとユキは互いに抱き合った。ようやく、終わりを迎えたのだ。長い時間をかけてようやくゲツガとユキはゲームをクリアした。 
 

 
後書き
フェアリーダンスもようやく終わりに近づいてきた 
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