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ちょっと違うZEROの使い魔の世界で貴族?生活します

作者:うにうに
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本編
  第17話 ボマー?ボムボム

 おはようございます。ギルバートです。公爵夫人(カリーヌ様)に連れられて、ラ・ヴァリエールに来る羽目になってしまいました。

 ドリュアス領内は未だ大変なのに、何故私はこんな所に居るのでしょう?

 去年滞在していたヴァリエール公爵の館が、目の前に在ります。更に今回は私1人だけです。

「さあ、入りなさい」

 カリーヌ様に促され、館に入ります。

「ジェローム」

「はい」

 カリーヌ様は私の事を、執事に簡単に説明します。一応、客人として扱ってくれるようです。

「ギルバート様。応接室に、ご案内いたします」

 私は執事に案内されて、応接室に来ました。

「昼食の前に奥様よりお話がありますので、こちらでお待ちください」

 そう言って執事は退室しました。とりあえず、下座に座って待つ事にしました。

「はぁ~~~~」

 私の口から溜息が出ます。

 これから帰るまで、どれ位の日数が必要なのでしょう? その分だけ、刀を打てる時間が遠のいて行きますね。……帰りもマンティコアで送ってくれたとしても、相当なロスになります。娘が可愛いのは分かりますが、人の迷惑を考えてほしいです。自業自得なのは分かっていますが、やっぱり腹が立ちます。

 一番最初にやって来たのは、ルイズでした。部屋のドアを開け、私しか居ないのを確認すると思いっきり落胆してくれました。どうやら、マギの事は聞いているようです。

 ……喧嘩を売っているのでしょうか? それならば、ここは仕返しするのも良いかもしれません。……主にカリーヌ様に。ついでだから、周りが権力の大きい者をどの様に見てるか知ってもらいましょう。

「なんでギルバートがここに居るの?」

「カリーヌ様に、人質として連れて来られました」

「えっ!!……母様が!?」

「返してほしくば、マギを差し出せって事です。マギは旅に出ていて、連絡不能・行先不明な上に少なくとも2~3年は戻って来ません」

「……そんな。嘘よ。……母様がそんな事するはずが無い!!」

「良かったですね。ルイズはカリーヌ様に愛されていますよ」

 ルイズは私の言葉を聞いて、呆然としていました。その時ドアが開き、カリーヌ様が部屋に入って来ました。

「カトレアは体調を崩して、部屋で伏せっているので出席しません」

 ヴァリエール公爵は現在、王都から離れられないと聞いています。またエレオノール様は、夏季休暇が終わり魔法学院に戻っているそうです。カトレア様が出席出来ないのは、私にとって幸運でしょう。カトレア様は、人間嘘発見器みたいなところが有りますし。(注 マギ主観)

「さて。ギルバート。これからの事ですが……」

「カリーヌ様。その前に一つよろしいでしょうか?」

「? ……何かしら?」

「私の命は、……後どれ位ですか?」

 カリーヌ様は、心底「訳が分からない」と言う顔をしていました。

「……私の命、その……私が処刑されるのは何時ですか?」

 私が真剣な表情を作り、重ねて聞きました。

 ルイズは私の質問内容に、ショックを受けたようです。この質問は先程の話が真実でなければ、有り得ないからです。終には泣き出してしまいました。(物凄い良心が痛みます)



---- SIDE カリーヌ ----

 私はギルバートの言葉に、訳が分からず今の状況を冷静に考えた。

 初めに自分は、どんな手を使っても絵を処分し口を封じると口走ったらしい。(切羽詰まって何を口走ったか、よく覚えていない)

 ドリュアス家にマギを差し出すよう、再三手紙を送った。思い返してみれば、そして手紙の内容は、焦った為か遠回しながら脅迫と取れなくもない文脈もあった様に思う。

 しびれを切らし直接交渉に行き、ドリュアス家の跡取り息子を一人だけ連れ帰って来た。公爵家の人間が、子爵家の跡取りを……だ。普通に考えれば、人質以外の何物でもない。

 そう考えると、この子が逃げないのは“逃げれば自分の家が潰されるから”と言う事になる。誤解も甚だしい。

 ヴァリエール家とドリュアス家は、この程度の事は笑って許せてしまうほど、親密な関係だと思っていた。(実際は大正解。ただし、立場上逆は洒落にならない)

 ギルバートを連れて行く時の、アズロックの態度を思い出し背筋が寒くなる。(実際は、杖剣(レイピア)の完成が遅れる事を渋っただけ)

 一方でシルフィアの態度が、いつもと変わらなかった事に安堵を感じた。激情家のシルフィアが、いつもと同じ態度だったと言う事は、自分や公爵家を心底信じてくれていたと言う事だ。(今の両家にとってこれが普通)

 そして自身の振る舞いが、かつての怨敵であるエスターシュ大公と重なった。自己嫌悪で死にたい気分になったが、そんな事は言っていられない。誤解は早々に解かなければ……。

----SIDE カリーヌ END ----



「どうやら誤解があるようですね」

 カリーヌ様の言葉に、ルイズがすがる様な眼を自分の母親に向けました。

「如何いう事ですか?」

 私は先を促します。

「私がギルバートを連れて来たのは、額面どおりの意味しかありません。ルイズの失敗魔法を確認してもらい、マギ殿に私の言葉に嘘が無い事を報せて欲しいのです。他意は有りません。始祖ブリミルに誓っても良い」

 騙し切りました。……バレなくて良かったです。今回は即興だったので、見破られるか不安で仕方がありませんでした。

 実際は言葉を2~3交わしただけで、時間にして数分と言った処でしょう。しかし緊張感から、私はそれが数時間に感じていました。

 緊張感から解放され、私は全身の力が抜けるのを感じました。

 それは命の危機が誤解だと知り、緊張の糸が切れたように見えたのでしょう。カリーヌ様が言葉を続けます。

「誤解させてしまった事は謝ります。娘の事で焦っていたとはいえ、配慮が足りませんでした。その様子では、少し休んだ方が良さそうですね。ルイズの魔法を確認してもらうのは、明日にしましょう」

 カリーヌ様の声には、切羽詰まった所が無くなっていました。どうやら、冷静さを取り戻してくれた様です。



 昼食後客室に通され、ゆっくり……とは行きませんでした。ルイズが押し掛けてきて、話相手をさせられたからです。

 暫く話した後、思い立ったようにルイズが言いました。

「そうだ。ギルバート。ちいねえさまのお見舞いに行きましょう」

「駄目ですよ。体調が悪い人の部屋に、押し掛けるのは良くありません」 

 私はやんわりとルイズを窘めます。しかし、ルイズには通用しませんでした。爆弾が返って来たのです。

「ちいねえさまの事、嫌いなの?」

「っ!! ……何故そうなるのですか?」

「だって、ギルバート。……ちいねえさまの事避けてる」

 私は図星を指されて、硬直してしまいました。

 別に私は、カトレア様が嫌いな訳ではありません。ただ、苦手意識があるだけです。

 自分の歪みは認識していますが、人から改めて指摘されると傷つくのです。自覚している……それも気にしている自分の欠点を、改めて人に指摘される感覚と言えば分かるでしょうか?

 もちろんカトレア様の優しさは、マギ知識だけでなく実感として理解しています。カトレア様が認識できる範囲では、私を傷つける様な言葉は控えてくれるでしょう。

 しかし私は、自分がハルケギニアでどれだけ異質な存在かも自覚しています。カトレア様にとって何でもない言葉が、私の心を(えぐ)る様な気がしてならないのです。

「大丈夫よ。……ちいねえさま優しいから」

 ルイズなりに気を使っているのでしょう。カトレア様と私の間を、取り持つ心算の様です。まだ子供のルイズに、ここまで気を使われて頷かない訳には行きません。

「分かりました。お見舞いに行きましょう。しかし、手ぶらと言うのも……」

 カトレア様の体調が良く遊びに行くなら関係ありませんが、お見舞いとなると途端に手ぶらなのが気になってしまいます。

「帽子なんてどうかしら? エレオノールねえさまも羨ましがっていたし」

 考え込んでしまった私に、ルイズが提案して来ました。

「いえ、あれは……」

「あの帽子。ギルバートが《錬金》で作ったのよね」

「っ!! ……如何して!?」

 何故ルイズが、あの帽子を《錬金》で作ったと知っているのでしょう。子供のルイズが気付いたとは思えません。誰かが気付き、ルイズに教えたと考えるのが自然です。誰から聞いたかを、如何やって聞き出すか考えていると、ルイズが先に答えを言ってくれました。

「母様が言ってた。ギルバートの荷物に無かったし、誰かから買った形跡も無かったって。ギルバートは、優秀な土メイジだって褒めてた」

(か カリーヌ様にばれてるぅーー!!)

 私が土と風の両方の系統属性を隠したのは、中途半端はダメと思ったのが理由ですが、もう一つ理由があります。それは“土か風のどちらかがばれた場合の保険”です。そして、相手に一つの秘密を知った事により満足させ、もう一つの系統属性を隠す為です。(最初の一回のみ有効)

(しかしこの保険を、こんなに早く使うはめになるとは……)

「分かりました。帽子で行きましょう。カトレア様には、どんな色が似合うと思いますか?」

 落胆を隠しながらそう言うと、ルイズは途端に悩み始めました。

「……ちいねえさまに似合う色。水色? 白? は、私と同じ色だし。緑……は違うかな。うーん」

「では、良い色を考えておいてください。その間に、帽子本体を作って来ますので」

 私はルイズにそう言い残し、馬小屋に移動し手早く藁を調達します。そのまま前回と同じ要領で、無着色の帽子を作りました。カトレア様は日の光に弱そうなので、鍔をルイズ達の帽子より更に大きくします。リボンも無地の物を、20本用意しました。

 時間にして30分位でしょうか? 部屋に戻ると、ルイズがまだ唸ってました。気のせいでしょうか? 泣きそうな顔をしています。

「何色が良いか分かんない」

「なら、ルイズとお揃いの白で良いですね?」

 私は投げ遣りに聞きました。

「ちいねえさまとお揃い!!」

 ルイズは“その発想は無かった”と言わんばかりに目を輝かせ「白が良い。白じゃなきゃダメ」と言って来ました。

(まったく。これだから、おこちゃまは……)

「分かりました。後はやっておきますので、部屋に戻って下さい」

「えぇーーーー!!」

 ルイズが抗議の声を上げます。しかし、それも長くは続きませんでした。

 私達の会話が、ノックの音で中断されたからです。

 返事をすると、入って来たのはカリーヌ様でした。

「母様!! ……その これは……」

 カリーヌ様に少し見られただけで、ルイズが挙動不審になります。

 何も悪い事してないのに……。もしかして、男の部屋に遊びに来ているからでしょうか?

「もうすぐ、お稽古の時間ですよ」

 カリーヌ様は、ルイズに時間を示します。怒っている様な仕草は一切ありません。それに気付いたのか、ルイズは落ち着きを取り戻しました。ひょっとしてカリーヌ様は、家の母上より怖いのでしょうか?

「はい」

 ルイズはガッカリしながら、部屋を出て行きました。しかし、カリーヌ様は出て行きません。着色前の帽子を見て目を細めました。

「その帽子は何ですか?」

「ルイズの発案なのですが、カトレア様にプレゼントしようと思いまして。体調が回復して外を歩く時、いきなり日の光にあたり過ぎるのは良く無いですから」

 私がそう言うと、カリーヌ様は僅かに微笑み頷いてくれました。

 別に怖く無いじゃないですか。まあ、上に“怒らせなければ”が付くのでしょうが。

「少し話をしましょうか」

 カリーヌ様に促され、テーブルにつきます。

「ギルバート。あなたは隠し事が多過ぎますね」

 私は平然としながら「そうですか?」と、返しました。

「水系統メイジと言っておきながら、本当は土系統メイジね」

 私は困った様な表情をします。

「はい。母上に土系統だとは言い辛く、つい水系統だと言ってしまいました。発覚した時の母上は、この世の者とは思えないくらい怖かったです。しかもその時、既に公式に水系統だと触れ回った後だったので」

 あらかじめ考えておいた、土系統が発覚した時の言い訳を披露しました。

「嘘はいけませんね。嘘は」

「はい。発覚した時に、死ぬほど後悔しました」

 カリーヌ様から、少しだけ笑いが漏れた。

「あなたは、本当に不思議な人ですね。土メイジのはずなのに、風メイジ独特のにおいもする。まるで、両方の系統が使えるみたい」

 私はこの言葉に、冷や汗が吹き出しました。表情や動作に動揺を出さなかった事を、褒めてほしい位です。

「まさか、そんなメイジが居ればお目にかかりたいです」

「ふふ。そうね」

 カリーヌ様が固定概念から、自身の勘を一笑に付してくれました。その事が何よりありがたいです。

「……所でメイジとしてのクラスは、どれ位なの?」

「ラインクラスです」

「確かギルバートは、もうすぐ8歳だったかしら」

「はい。今月(ケンの月)のヘイムダルの週ユルの日で8歳です」

「来週じゃないの」

 今日がエオーの日なので、後7日で8歳の誕生日です。

「出来れば、前日までに帰してくれるとありがたいです」

「分かったわ、それまでに送り届けましょう」

 ……これで話題を逸らせたでしょうか?

「その年でラインクラスと言うのも凄いけど、ギルバートの剣術もなかなか見事だと思うわ。以前練兵場で、ディーネと手合わせしているのが見えましたから」

「見られていましたか。亜人から領民を守る為には、魔法だけでなく剣術も必要ですから。必要に迫られて訓練はしていますが、未だにディーネに勝てません。ちなみに、剣も魔法も師匠はマギなんですよ」

「凄い人なんでしょうね、マギと言う人は」

「いえ、カリーヌ様が怖くて逃げだした人ですよ。それは褒めすぎです」

 カリーヌ様が、呆気に取られた様な顔をします。

「マギは何時も言ってました。怖い物を怖いと認めない者が、真の臆病者だと」

「如何いう事?」

「怖い物を怖いと認め、それに打ち克つ。それが真の勇気だと言っていました。そこに“誤魔化しがあってはならない”と……。蛮勇と勇気は別物だと言っていました」

「何となく分かるわ」

「カリーヌ様に対峙するのは、蛮勇になると判断したんでしょう」

「それは蛮勇では無く、勇気だと分かってもらわないと困るわ」

 カリーヌ様と2人で、苦笑してしまいました。

「本当にギルバート。あなたは不思議ね。まるで、同年代の男と話しているみたい」

 私はその言葉に苦笑で返します。

「カトレアへのプレゼントは、未完成なのでしょう。そろそろ出るわ」

「はい」

 カリーヌ様を見送り、私は着色作業に入りました。



 暫くして、帽子とリボンの着色作業が終わりました。帽子の色は、ルイズに言われたとおり通り白にしました。リボンの色は、ピンク・水色・黄緑・紫・黒の5色と各色のチェック模様を2本ずつ計20本を用意しました。

 私が休んでいるところに、習い事を終えたルイズが帰って来ました。完成品のリボンを見て、口をへの字にします。

 本当に分かりやすいですね。欲しいなら欲しいって言えばあげるのに……。

 その時ルイズが、小声で呟いているのに気付きました。

「これは、ちいねえさまの分。これは、ちいねえさまの分。これは…………」

 私はそんなルイズの様子に、思わず吹き出してしまいそうになりました。

「同じの2本ずつ有るでしょう。カトレア様と、1本ずつ分けるんですよ」 

「え!? 良いの?」

「だから同じの2本ずつ作ったのです」

「ありがとう」

 そう言ってルイズは、ご機嫌になってくれました。



 さて、いよいよカトレア様と対峙します。私にはカトレア様の部屋が、ラ・ヴァリエール家のボス部屋にしか見えません。ハッキリ言って、入るのが物凄く怖いです。具体的には、どっかの巨大浮遊城75層ボス部屋くらい怖いです。この時、天井に鎌付きの巨大髑髏ムカデを幻視したのは、私だけの秘密です。

「ちいねえさま~」

 私が心の準備をする前に、おこちゃまが突入してくれました。

「失礼します」

 私は観念して、部屋に足を踏み入れます。そこには、ベットから上体だけ起こしたカトレア様が居ました。思ったより顔色は悪くない様です。

「お見舞いに来ました」

 私はそう言って、白い帽子を渡します。カトレア様は、嬉しそうに受け取ってくれました。そして、そのまま被ってみると……。

「少し大きいわ」

「帽子をちょうど良い位置に被って、後ろを向いていただけますか?」

 カトレア様は、私の言う通りにしてくれました。適当にピンクのリボンを帽子に巻きつけ、サイズ調節をして綺麗に結びました。

「リボンでサイズの調節をしてるのね」

「はい。そしてこれが、サイズ調節用のリボンです。その時の気分で、使い分けてください」

「あら。無理して外出したくなってしまいますわ」

「それだけは勘弁してください」

 私が困った様に言うと、カトレア様はコロコロと笑いました。

「ルイズ。悪いんだけど、お水を持ってきてくれないかしら?」

「はい。ちいねえさま。すぐに持って来ます」

(おお。元気に駆けてった。なんか、転びそうだな……)

「ええ。本当に心配ね」

「あれ? 口に出ていましたか?」

「安心して。出てないから」

 私は、完全にフラットな表情を作りました。僅かな所作からも、感情を読む事が出来ない様に動きも止めました。

(……心を読まれてる?)

「流石に私も心は読めないわ」

(カトレア様が居る所で、嘘吐く事は不可能だな)

「大丈夫よ。人を傷つける嘘じゃ無ければ、私は邪魔しないから」

(いやいや。絶対に心読まれてますって……(さとり)じゃないんだから)

「覚って何?」

(……怖っ!!)

「怖いって失礼よ」

 カトレア様はそこで、私怒ってますと言う表情をしました。

(うっ……。ちょっと、ときめいてしまいました)

「あら。嬉しい」

 私はこの間、誓って表情一つ動かしていません。傍から見ると、カトレア様が一方的に喋っているだけです。

(内心を読ませない事には自信が有ったのに……)

「あら。だってあなた。分かりやすいじゃない」

 私はカトレア様に、思い切り凹まされました。

「所でマギさんの事だけど……」

(ホント勘弁してください)

「事情が有るのは分かっているから秘密にしてあげる」

「よろしくお願いします」

 そこでルイズが水差しを持って戻って来ました。

「ありがとうルイズ」

 カトレア様にお礼を言われて、ルイズはご満悦の表情になりました。

「それから、ギルバートを連れて来てくれてありがとう。お陰でお友達になれたわ。ルイズに頼んで正解だったわね」

 ルイズはさらに嬉しそうな顔になりました。

(……そうか。私はルイズに売られたのか)

「あら、私が頼んだのよ」

 ルイズが、訳が分からないと言った表情をしています。居た堪れなくなって、私はここから逃げ出す事にしました。

「では、あまり長居をしてもいけないので、今日はこの辺で……」

 私は水差しを置いたルイズをつれて、部屋を出ようとしました。

(今後なるべくカトレア様には、会わないようにしよう)

「偶には遊びに来てね。じゃないと、お口が軽くなっちゃうかも」

 私はそのセリフに、思わず両手両膝をついてしまいました。そんな私を、ルイズは不思議そうな眼で見てました。

(本当に勘弁してください)

 私の最大の武器は、“情報”と“情報を利用した嘘”です。実際にこれで、あの《烈風》のカリンでさえ抑え込んでいます。それなのに、情報と嘘で絶対に勝てない相手が居るなんて……。しかも、既に首根っこ抑えられています。ああ、絶望のあまり涙が……。



 次の日、午前中の内にルイズの魔法を見る事になりました。

 結果は言うまでも無く、全て爆発です。

 そこでルイズはムキになり、爆発を連発します。

 現場となった練兵場は、瓦礫の山になってしまいました。カリーヌ様が止めなければ、館も瓦礫になっていたでしょう。上空に舞い上がったルイズは、いつも母上に飛ばされる私より高く飛んでいました。ただしカリーヌ様は、墜落寸前でレビテーション使ってくれるのです。母上は自力での着地が不可能な場合、墜落寸前に横に吹き飛ばすのです。(戦いの場で、杖を手放さない教育)正直、ルイズが羨ましいです。

 私は《錬金》で、練兵場の修理を手伝いました。

 修理が一通り終わり戻って来ると、ルイズはまだカリーヌ様に怒られてました。

「カリーヌ様。その辺でよろしいのではないですか?」

 私の取りなしに、カリーヌ様は沈黙してくれました。

「しかし、ルイズの爆発魔法は凄く怖いですね」

「怖い?」

 カリーヌ様が、不思議そうな顔をします。

「例えば、……敵の頭にちょっと《念力》かけるとか」

 カリーヌ様が、目を丸くしました。

「後は傷を負った時に、ルイズが来てヒーリング《癒し》をかけてくれたら如何なるか」

 カリーヌ様の顔が引き攣りました。

「ルイズ。今後《癒し》の使用を禁じます」

 そう言ってカリーヌ様は、館に引っ込んでしまいました。

「ちょっと!! ギルバートの所為で、魔法が一個禁止になちゃったじゃない!!」

「それなら練習しますか? 練習用にカエルを取って来ますよ」

「……止めとく」

 カエルと聞いて、ルイズの顔が青くなりました。ヴァリエール家の使用人に聞きましたが、庭で怪我したカエルを治療しようとして、魔法を使ったのが原因の様です。その時の現場の事は、スプラッタ過ぎて想像したくありません。カエルが苦手にもなります。まあ、使用人達はルイズが“人相手に《癒し》の練習をしたがらなくなった”と、喜んでいたのは言うまでもありませんが……。

「賢明です」

「ギルバートって、性格悪かったのね」

 ルイズが涙目で睨んで来ましたが、私には関係ありません。自業自得です。

「昨日ルイズに、とてつもなく大きな恨みが出来ましたから」

 私はそう言い捨てると、館へと歩き出しました。後ろでは「なによそれ~」と、ルイズが叫んでいましたが無視です無視。



 私はこの日の内に、ドリュアス領へ出発する事になりました。カリーヌ様が自ら、ドリュアス領まで送ってくれるそうです。

 そして今は昼食の最中です。

「ルイズ。好き嫌いせずに食べなさい」

「……だって」

 泣きそうなルイズの前に有るのは、ハシバミ草のサラダです。私とカリーヌ様は、既に食べ終わっています。

「ルイズは、ハシバミ草嫌いなのですか?」

「人間の食べ物じゃないわ!!」

 私の質問に、この子は確りと答えてくれました。その答えにカリーヌ様は、大きな溜息を吐きました。

 どうやらカリーヌ様も、ルイズのハシバミ草嫌いは手を焼いている様です。しかし私はそこで、“あれ?”と思いました。初めて会った時、平気で食べていた様な気がするのは、気のせいでしょうか?

「ルイズ。初めて会った時食べたサンドイッチモドキは、美味しかったかい?」

「うん。あれは美味しかった」

 その言葉にカリーヌ様が反応しましたが、ここは取りあえず流してくれるようです。

「あれには、ハシバミ草が入っていたのですよ」

 私の言葉にカリーヌ様が、思わず私を見ます。一方でルイズは震えていました。

「なな なんて物を、たたた 食べさせてくれたのかしら」

 そして腰から何か引き抜いて、……杖? なんで食事中に杖なんか持っているんだ、このおこちゃまは。

 あまりの状況に、私もカリーヌ様も反応する事が出来ませんでした。

 ボム!! という爆音が、私中心に巻き起こりました。

「ケホッ」

 私は、上半身裸の状態になっていました。おそらく身体は黒くすすけ、頭はチリチリになっているでしょう。この時私は何故か、このセリフを言う使命感に囚われました。

「……だめだこりゃ」

 私はその場に倒れ、意識を失いました。






 爆発で気絶した私が、目を覚ますと……。 
 

 
後書き
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