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戦国異伝

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第百十九話 一枚岩その四

「わしにしてもな」
「野心を捨てられたということでしょうか」
「そうじゃな。やはりわしは上洛までしか考えてはおらんかった」
 そこから先、天下はだというのだ。
「実際四国が精々じゃな」
「だからでありますか」
「うむ、ならば今でよい」
「土佐一国で満足されますか」
「実際土佐一国を手に入れた時が一番満ち足りたわ」
 満足したというのだ。
「やっと果たせたと思った、我が家は父上の頃から苦心して何とか立ち直りそして戦いこじつけたのだからな」
「長曾我部家も苦労されたと聞いてますが」
 これはその通りだ、長曾我部家は元親の父国親が幼い頃から何とか戦いそして元親が統一したのだ、
そして土佐一国を手に入れた時にだというのだ。
「相当なものでしたな」
「うむ、それでじゃ」
 その土佐一国を手に入れた時にだというのだ。
「わしはその時で満足した。人が満足した時にそれで終わるのであろうな」
「では鬼若子殿はもう」
「わしは土佐一国の器じゃ」
 四国で一杯、土佐一国で充分だというのだ。
「だからこれでよい」
「織田家に入られても」
「天下を目指さぬのならそれでよい」
 また言う元親だった。
「織田家におってな」
「では長曾我部家はですか」
「織田家の家臣じゃ」
「ですな、そうなられていますな」
「その通りじゃ。これでよい」
 元親は語りながら微笑んで言う。
「土佐を豊かにしていこうぞ」
「その土佐ですが」 
 今度は古田が元親に述べる、
「確かに山と海に阻まれていますが」
「それでもじゃな」
「治めればさらに豊かな国になるかも」
「今以上にか」
「川も海もあり申す」
 つまり水と幸があるというのだ。
「そして開けている平野も多いので」
「田畑も町もじゃな」
「耕し整えられます」
「そうか、それでは」
「そして土佐一国だけではなく」
 それに加えてだった、織田家の政はその国だけを考えて行うものではなく今の二十もの国全てを考えて行うものなのだ。
 それで古田もこう言うのだ。
「讃岐や阿波、それにです」
「本州もじゃな」
「全てを考えてです」
 それは今治めている国々だけではなかった。
「天下全てを考えておられてのことです」
「だから港に道も整えておるか」
「はい」
 それも然りだった。
「土佐にも讃岐、阿波から道ができましたな」
「山と山の間を通ってな」
 そうしてまで土佐と他の国をつなげたのである。
「あれで土佐の者達も喜んでおるわ」
「天下の道を整えておられます」
「それもじゃな」
「ですから土佐もまた」
「やはり器が違うわ」
 元親は笑顔で述べる。 
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