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ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士

作者:涙カノ
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第69話 =邪神の名は=

 
前書き
最近学校が忙しい…受験生ってこんなものなんですかね? 

 


「…なぁ、どうなってるんだ…これって」

「あ、あたしにきかれても…」

休んでいたところを離れて数歩でその光景は俺たちの目に入った。ユイの言ったとおり邪神モンスターが戦闘中のところだった。片方はギリギリ人間…と表現できないことも無く、顔が縦に3つ連なっているその横から四本の腕を生やした巨人というフォルムでどこかの神像のような角ばった顔からそれぞれ「ぼる」、「ぼる」と叫び声を放っていて、それが連続して先ほど聞こえたエンジン音のようなものがまた耳に届く。その手で軽々と振るっているのは鉄骨のような巨大な剣、しかも1つの手に一本、四刀流だ。
それに対しもう片方は何がなんだかわからない姿だ。大きな耳に長い口で象っぽさは薄っすらとあるが、後ろの胴体は饅頭のような円形でそれを支えるのは20本はありそうな鉤爪のついた肢。それはまるで…

「……象と水母が合体したような……」

キリトの言ったとおり、象の頭がくっついた水母…としか表現できない。ただサイズは決定的な差がありギリ人間の方が象水母よりも一回り大きく、そのせいか巨人の優勢で水母の方が劣勢だ。

「でも、おかしくない?邪神をテイムなんか出来ないし、プーカの音楽でも無さそうだし……きゃっ!」

冷静にこの状況を見ていたサウスの前に根元から断ち切られた肢が落下し、体を揺らすとともに足元を水母の体液なのか白い雪原を黒く染めていく。

「お、おい…ここにいるとやばそうじゃないか……?」

「そうは言うけどどこに行くって言うんだよ!?」

進む道は2匹の邪神で塞がっているし隠れたりしても被害が出るのは確実、サウスの伝説級武具で守ろうたって4人無事で…は無理なはずだ。そんなことをしている場合にも戦いは続いている。水母は離脱を試みようとひゅるると甲高く啼き、動くがそれを見逃すはずもなく巨人が乗りかかるや、さらに激しく剣撃を与えていく。そのせいで象水母の声はみるみる小さく弱弱しいものへと変わっていく。だが、それを聞いても…いや、そのせいだろうか、巨人の剣撃はさらに激しさを増していく。

「……あの子、助けよ」

「あぁ!!……はぁっ!?」

不意にその声が聞こえ、いつもの4倍くらい開いた目で声のした方向を見るとその主であるリーファを自分で言って驚いているようだ。

「……ごめんリーファちゃん。…なんだって?」

どうやらサウスも同じ反応らしくこんな状況でもキョトンとしていた。

「だからあのいじめられてる方の子、助けようよって」

「…ど、どうやって?」

「えーと……」

リーファの答えにキリトが口を開き最も当たり前な質問をすると急に黙り込むリーファ。

「……うーん………とー………リクヤ君、なんとかして!!」

「お、俺ぇ!?…うーん、なんとかといわれてもな……」

こういう逆転の発想はキリトのほうが思いつくんだけどな…。全員で三面巨人に突撃……は俺たちを数秒で色とりどりの炎に姿が変変わってしまうから絶対無し。…なら、あの巨人を誘導!…いやいや、どこにだって話になるし、その前に水母から完全に気をそらさせてこちらに気を引けるかが不明だ。

「どうやったらあの水母助けれるんだ………?」

「水母……」

頭を叩きながらの俺の呟きに何か気がついたのかキリトはブツブツと何かを言っている。そして周囲を素早く見渡し次いで肩にいる
妖精にささやきかけた。

「ユイ、近くに水面はあるか!?ある程度の広さがあれば、川でも湖でも何でもいい!」

「…ありました、パパ!北に約200メートル移動した場所に氷結した湖が存在します!」

俺とリーファは何を言っているのかがわからなかったがどうやらサウスは気付いたらしく指をパチンと鳴らしていた。

「あー…なるほどねー……キリト君、よくこんな方法思いつくね」

「それほどでも…っと。2人とも、その湖まで全力で走るぞ」

「え……え?」

「何するのか説明もらいたいんだけど…」

「走りながら説明するよ!……キリト君お願いね」

サウスの声とともにキリトが腰から太い釘のようなものを取り出し構えた。この世界では一度も使用されたところは見たことが無いが前の異世界ではユカの主な武器であった投擲武器だ。

「…せぃっ!!」

それをキリトは右手を振って青い光の帯を発生させながら飛翔させる。ピックはそのまま速度を増していき三面巨人の一番上の顔の
目と目の間にズビシッと命中した。それとどうじに今までに聞いたことの無いような大音量でぼるるるるるるぅぅぅという怒りの声を上げてターゲットを俺たちに変更する三面巨人。

「……あれだけでこっちにターゲットくるんだ…」

「んなことは今はいいからとにかく逃げるぞ!!!」

まだまだVRMMOに関しちゃ勉強が必要だな…と感心しているにもかかわらずそれを無理やり遮断するかのように絶叫したあとキリトはルグルー時のスピードに負けず劣らずで走り出す。サウスはすでに走り出していて結構先にいる。

「あぁ…もう!!」

俺も追いつくため…というより逃げるために地面を思いっきり蹴る。後ろでリーファが「え…待っ…イヤァァァァァ!!!」と絶叫を上げているが……。ゴメン、リーファ、今それどころじゃないから自分で頑張って!
ドスンドスンと怪獣が全力疾走でもしてるんじゃないか――いや、実際してるんだけど――という音を背にしばらく走ると雪を蹴散らして停止するキリトとサウスの姿が見えたので俺も同じくザァァァっと地面を滑って停止する。

「リーファはっ……わぶっ!?」

「きゃっ!?」

遅れていたリーファを確認しようと後ろを見るともう目の前も目の前、数センチにまで接近してきておりリーファは速度を殺しきれてない。…なので、俺がリーファに押し倒されるように倒れこんだ。

「…ちょっ、リーファ……」

「リ、リ、リクヤ君!?」

顔を赤く染めているリーファが俺の上にいるが、無理やり押しのけることは出来ないし…とちょっとした葛藤をしていると改めて今の譲許を確認したリーファはものすごい速さで俺の上からどいて雪の上に正座した。

「ご、ごめんなさい……」

「い、いや俺もあんなところで止まったから……」

「ほらほら2人とも、今から面白いものが見れると思うよ」

だからなんでこいつは…と思っていると突然ばきばきばき…と異質な音が響き渡る。どうやら俺たちが今いるのは凍った湖の上、そしてあの巨人も追いかけてこようと乗ったけど氷が重さに耐え切れずに割れ始めたってことか。そしてそのまま雪原が陥没し露出した湖に沈んでいく三面巨人。

「やった…のか…?」

「「それフラグだから!!!」」

俺が呟くと先に走り出していたスプリガンとサラマンダーが思い切り叫ぶ。どうやらフラグを建築してしまったらしい。そのままへしおれてくれればよかったけどそうやすやすと折れるものでもなかったらしくじゃぶじゃぶと水をかき分ける音が聞こえてくる。

「……なんなんだ、あいつは」

「い、岩が泳いでる…」

「……わたしもあれには驚くけど……お楽しみはこれからってね」

そういうサウスの向いているほうを同じく見ると先ほどの水母邪神が同じくあとを追ってきてひゅるるる!という雄叫びとともにザブンと湖に飛び込んだ。それと同時に20本近い肢が巨人の顔や腕にグルグルと巻きつく。その巨人も声を上げて抗うが水中での動きは鈍いのか先ほどの機敏な動きは見られない。

「…そうか、水母だ!!」

「え?……あ、そっか!」

俺とリーファは同じ結論にたどり着いたのか声を上げてしまい、それで顔を見合わせて噴き出してしまうが…。
あの象水母はその水母のような体を裏切らないもともと水棲タイプの邪神モンスター、陸上よりも水中でその真価を発揮する。陸上では体を支えるためにその肢の大半の動きが制限されていたがその必要が無い水中はフルで肢攻撃が可能となる。それに対し三面巨人は陸上型、水中でも戦えないことは無さそうだが自分の体を浮かすために2本の腕を使っているため、攻撃手段の半分を奪われている。
もうそこからはお返しといわんばかりの猛攻撃だった。三面巨人に乗りかかると頭まで水没させ一際激しく象水母が啼くと同時に体が青白く光る。光は細いスパークへと形を変え、20本の肢を地たって水中へと流れる。

「あっ…」

「よし!」

キリトとリーファが声を上げると同時に今まで無限にあると思われた三面巨人のHPバーがすさまじい勢いで削られていく。敵の上記の柱のような攻撃にも像水母は痛くも痒くもないようだ。そしてぼるぼるという声が小さくなっていき途切れたかと思うとその体をポリゴンへと形を変え、すさまじいほどの爆発を生んだ。

「よっしゃ!!」

「おぉ…」

思わず声を上げて全員で喜んでいるとひゅるるるると啼く象水母がこちらへと近づいてくる。そしてリーファの目の前でストップし
俺たちを見下ろしている。今まで細いと思っていた肢は意外に…というか半端ないほどに太く両手で囲い込むには腕が短すぎる。さらに体はもう輪郭しか見えず、顔はやはり象っぽくて耳のところがエラなのだろう、ヒラヒラと両側で波打っている。

「…で、これからどうすんの」

「そういや、そうだな……えっとカーソルは?……」

ですよね…テイム成功したわけでもないから敵対色の黄色、もしかしたらこのままやられてスイルベーンへ逆戻りという展開も無くは無い。でも、逆に今襲われていないのはイレギュラーな展開だろう。

「…このままそぉっと動けば……ひゃぁぁぁぁっ!?」

サウスの声が途中で途切れたかと思うと悲鳴を上げている。その方向を見る大きな象の鼻のような鼻でぎゅるっと巻き取っていた。
そしてそのまま地面から引っこ抜けられたように持ち上がり姿を消す。

「サ、サウスっ!!」

「駄目です、にぃ!この子、私たちを襲うつもりじゃないですよ!」

ユイの声に抜刀しようとしていた腕の動きを止める。そしてその瞬間俺とキリト、リーファをまとめて巻き取りおもむろに口の中へ
かと思いきやそのまま背中へ放り投げられる。

「…あぐっ!」

「うぉっ」

「きゃっ」

3人ともまとめてお尻から墜落し、ポヨンと弾む。

「やっほ、3人とも」

「…いやいや、何でそんなにくつろいでるんだ」

「だってここフワフワなんだもん」

とサウスはこの邪神の上に寝転がっている。適応能力高すぎだろ…と呆れそうになったが彼女の言うとおり投げられた衝撃を全て吸収してくれるほどのものだ。確かに居心地はいい…などと思っていると象水母は何事も無かったかのように移動を開始する。完全な暗闇でないヨツンヘイムは氷柱の光がほのかに光さらにそれが反射している光景はここを超危険区域というのを差し引いても実に美しい。

「そういえばさ、何で襲ってこないんだ?」

「…クエストとか…か?」

「クエストでは…ないっぽいね。いつもならここにクエストのスタートログが出るはずだもん」

キリトの問いにサウスが空に指差して答える。

「なら……イベント的なものかな…だとするとちょっと厄介かも…」

サウスの声を聞いたリーファは顎に手を当てて自分の意見を言っている。

「クエストとイベントって何が違うんだ?」

「クエストっていうのは終わった時点で報酬もらって終わり…でいいんだけどイベントはプレイヤー参加型ドラマみたいなものだから絶対ハッピーエンドとは限らないんだよね…」

「…なら、このまま食われるってこともありうるの?」

「うるうる。あたし、ホラー系のイベントで行動間違えて魔女の鍋で煮られたことあるから…」

うるうるって何だよ…と言いたくなったが彼女の体験談があまりにも悲惨すぎてその言葉は喉の奥へと引っ込む。

「そっか………あのさ、リーファ…」

「な、なによ…」

「……その、さっきはゴメン。ただのゲームじゃないってのは痛いほどわかってるのに所詮ゲームだって考えてたのはやっぱり俺のほうでリーファの気持ちを踏みにじったから…」

「う、ううん。あたしこそゴメンね。…あのときの君たちのおかげで、君たちがALOをただのゲームだって思ってないことは一番判ってるから。…それに時間のほうは心配しないでもいいよ。あたしなら自由登校だから何時になっても大丈夫」

ぐんっと右手を差し出すリーファに握手を仕返すとその上にユイが乗ってきて「これで仲直りですね!」と鈴のような声で言った。すると次の瞬間、パッと手を離しそっぽを向くリーファ。

「…どうしたの?」

「べ、別になんでもない……」

「いやーいい雰囲気だな、サウスさん」

「そうだねー少しピンク色ぽかったよね~」

「どういう意味だよ、それは」

こんなやり取りを意に介せぬ様子でずんずんと歩き続けている邪神が進んでいる方向を見ていたサウスがニヤニヤとした表情をいきなり真剣なものになる。

「どうした?」

「わたしたちの最初の目的は階段を目指そうってことになってたんだけど……あれを見て」

サウスの指が指している方向へと目を向けるとそこには氷柱を囲んだウネウネの網のようなものが。ただでさえ氷柱も想像以上の大きさなのにそれを抱え込むほどとはどれくらいなのだろうか…。

「…あれって……あたし、スクリーンショットでしか見たこと無いけど…」

「そ。リーファちゃんの思ってる通りだよ。あれは……世界樹の根」

「え…」

「ど、どういうこと?」

「アルヴヘイムの地面を貫いた根っこがヨツンヘイムの天井じゃら垂れ下がってるってこと。つまりこの邪神さんは世界樹の真下…つまり外周じゃなくて中心に行こうとしてるの」

「嘘…。…なら、世界樹の根っこを登ってアルンへ行く方法「今のところ発見されてないよ」…まじかよ……」

ということはアルンへ行くためには全てが運頼み、この邪神モンスターに揺られていくしかない。

「ま、今はこのゾウリムシだかダイオウグソクムシだかに任せるしかないな。竜宮城か晩飯になるかも運頼みだけどな」

「…なぁ、キリト。だ、ダイオウ……なんていった?それにゾウリムシは違うくない?」

「リクヤ君の言うとおりだよ。そのダイオウなんとかってやつよりも象か水母だとあたし思うけど」

俺とリーファが反論するとキリトは心外そうに眉を持ち上げる。

「えー、知らない?……あ、サウスは?」

「わたし知ってるよ。別名ジャイアント・アイソポッド……深海生物だっけ?」

「そーそー。これくらいのダンゴムシみたいな」

とキリトは両腕を広げてその大きさをアピールする。

「…き、気持ちわるっ!」

「な、名前つけよ!可愛いの!」

感想にかぶせるかのようにリーファが早口でさえぎってシンキングタイムへと移行する。…象っぽくてこの饅頭のような胴体にふさわしい可愛い名前…象の英単語でエレファントのエレと饅頭のマでエレマ…?いや、なんかおかしいな。ユウゾウ…?グッチでもつくのか?…シュウゾー?…いやいや、富士山発言言われても…。

「じゃあトンキー」

不意にキリトが口を開き全員きょとんとする。絵本でそんなタイトルあったような気がしたけど…

「でもあれって縁起のいい名前だっけ?わたしの記憶だと確か死んじゃったんじゃ…」

「そ、そうかもな…でも浮かんできたんだよ」

「へー、2人ともあの絵本知ってるんだ。じゃあ、まぁいいわ。それにしましょ」

あれ、これって置いてきぼりで話進んでないか…と疑問に思いつつ、絵本というヒントが得られたから今度本屋に行って探してみようかな。

「おーい、邪神君!今からキミはトンキーだからねー!」

リーファの答えにも何の反応も示さなかったが無言は肯定とみなして受け取ったことにしよう。それに続いてユイも小さな手をはたはたと動かして自分の何百倍もありそうな巨体に声をかける。

「トンキーさん。はじめまして!これからよろしくお願いしますね!」

その声に初めて反応を示し、両耳をパタパタと振ってユイに反応していたのはただの偶然ではないと信じたい。
 
 

 
後書き
リ「…なぁ、サウスがどんどんキャラ崩壊してないか?」

涙「……だってしょうがないじゃないか、ヒロインじゃないんだから」

リ「あれ、そうだったんだ」

涙「いわゆる悪友ってヤツだよ、全然表現できてないけどww」

リ「へぇ…」

涙「…さて、すでに次の話も書いてあるんだけどさ……バトルシーンが偉いグダグダなの」

リ「文章だけでバトルを表現するのは難しいから……ってSAO自体バトルだよね!?」

涙「そうなんだけどさ……なので先に宣言しておきます。次話超グダグダです。暖かい目で見てくださるととても嬉しいです」

リ「……駄目作者だから俺からもお願い…」

涙「あ、そういえば「守り抜く」って台詞次の話で入れてあります!」 
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