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八条学園怪異譚

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第二十三話 犬と猫その三

 二人は店の話を中断して皆とアイスだけでなくクラスの話題に入った、そして。
 アイスを食べながらクラスメイトからこんなことを聞いた。
「うちの学校って犬や猫多いじゃない」
「動物園の犬猫コーナーの?」
「そう、地域猫ならぬ学園猫っているじゃない」
 クラスの学級委員花沢美紀だ、黒のロングヘアに丸眼鏡の女の子でクラスで優しい性格として皆に慕われている。
 その美紀が二人に動物園のことを話す。
「あそこ最近ね」
「最近?何かあるの?」
「数が増えたとか?」
「そう、増えたのよ」
 そうなったというのだ。
「保健所からの引き取りはじめたから」
「薬殺処分されるよりは?」
「それで?」
「そうなの。それでなの」
「保健所に送られてもね」
「殺されるだけだからね」
「それよりもってね。理事長さんが仰って」
 美紀の顔は話しているうちに明るい笑顔になっていた。
「犬も猫も増えたの」
「ううん、保健所にも理由があるけれどね」
「仕方ないってこともあるけれど」
「それでも命だからね」
「それをおいそれと消すのは」
「そう、理事長さんもそう仰ってなのよ」
 八条グループを統括する八条家の人間であるその理事長がそのことを考えそれで決めたことだというのだ。
「私もいいことだと思うわ」
「餌代は大丈夫なのね」
 聖花は考える顔になって言った。
「それは」
「八条グループから見れば犬や猫が百匹単位で増えてもね」
「大丈夫なのね」
「少なくともうちの学園の動物園にいられるだけの数はね」
 充分養えるというのだ。
「だから心配はいらないみたい」
「そう、よかったわ」
「そうよね。全部の命は助けられなくても」
「助けられる命は助けないといけないっていうのね」
「理事長さん実際にそう仰って決められたらしいのよ」
 美紀は明るい笑顔から真剣な顔になって言っていた。
「それでなのよ」
「難しいことだけれど」
「英断って言えるわよね」
「そうよね。それで動物園の犬猫ランドで?」
「数が増えてね」 
 美紀は話を本題に進めた。
「その中に。数もちゃんとチェックしてるけれど」
「数が多いとか?」
「そんな時があるらしいのよ」
 美紀は真相を知らないまま聖花、そして愛実に話していく。
「それで犬や猫の名簿と写真に照らし合わせてチェックしたら全部いて」
「数も丁度なのね」
「そうなの、おかしな話よね」
「数が多い時があるのね」
「そういうことなの。おかしなことよね」
「ええ、確かに」
「それはね」
 ここで聖花だけでなく愛実も言う。
「ちょっとないっていうか」
「オカルトっていうか」
「一回や二回だと数え間違いじゃない」
 美紀は眉を顰めさせ怪訝な顔になっていた。
「それが何回かあるから」
「不思議なお話になってるのね」
「それで」
「そうなの。学園の何十もある不思議の一つよ」
 美紀はこのことも知らないまま二人に言った。
「冷凍庫の白い影とかもあるし」
「ああ、あれ」
「あのこと」
「あっ、このこと聞いたことあるのね」
「ええ、まあね」
「ちょっとね」
 二人は雪女のこと、その冷凍庫の真実を隠したままそのうえで美紀に返した。 
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