ソードアートオンライン VIRUS
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再会
前書き
今回はちょっと短め
ついにゲツガとキリトはゲートの前に辿り着いた。二人は足をゲートにつけると、重力が反対にかかったような感覚があり、逆さに引っ付いてもゲツガ達には特に違和感が無かった。この先にアスナがいる。もしかするとユキも居るかもしれない。守護騎士たちが再び近づいてくる前に早く中に入りたかったが、予想外の自体が起こった。
「……開かない……!?」
「何で、何で開かないんだよ!!」
ゲツガはしゃがんで石の扉を拳で殴る。キリトも扉の隙間に剣を突っ込んでこじ開けようとするが扉は傷一つつかないし、びくともしない。
「ユイ……どういうことだ!?」
キリトは絶叫してユイにを呼ぶ。何で開かない?まだ、必要なクエストでもあるのか?そんな考えが浮かぶがキリトの胸ポケットから出てきたユイの言葉に絶句する。
「パパ、お兄ちゃん。この扉は、クエストフラグによってロックされているのではありません!単なる、システム管理者権限によるものです!」
「ど、どういうことだ!?」
キリトが叫ぶ。
「つまり……この扉は、プレイヤーには絶対に開けられないということです!」
「な……」
「チクショウ!この世界はどうなってんだ!この奥で何があってるって言うんだよ!」
ゲツガは扉を殴り続ける。
世界樹の頂上に着けばアルフになれる?この上に街がある?全てうそになる。ゲツガは怒りに任せて拳を叩きつけるが扉には何も起こらない。キリトは一瞬、絶望したような表情を浮かべたが何かを思い出したのか、ポケットをまさぐる。そして取り出したのは空からアスナが落としたと思われる小さなカードだ。
「ユイ!これを使え!」
あのカードは確かユイがシステムアクセス・コードだと言っていた。つまりこれを使えばこの中に入れると言うこと。ユイはこくりと頷いてカードの端っこに触る。
「コードを転写します!」
そう言うとカードからいくつもの線が浮かび上がり、ユイに流れ込んでいく。そして、扉を叩くとその部分が白く発光し始めた。
「転送されます!パパ、お兄ちゃん、私に手を伸ばしてください!!」
そう言われたのでゲツガとキリトはユイに手を伸ばす。ユイはゲツガとキリトの手をしっかりと握った。全方向から守護騎士の咆哮が聞こえてくるが今のゲツガ達には何もできない。ゲツガたちに向けて光の矢や剣が飛んでくるがそれは何事も無かったようにゲツガ達の体をすり抜けた。
「入ります!」
不意に前方に引っ張られる感覚に襲われる。ゲツガとキリトとユイはすでに真っ白なスクリーンと化したゲートの中にデータの奔流になって突入した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目を開けると真っ白な廊下の中心にいた。肩膝をついた状態で覚醒したため素早く立ち上がりあたりを見渡す。少し離れたところでキリトも覚醒したらしくキリトの傍に行く。傍にはSAOの時の姿をしていたユイがいた。
「ユイ、キリト」
「お兄ちゃん」
「ここはどこかわかるか?」
「どうやら、ここは世界樹の中みたいだが、マップデータがユイでも引き出せないからどこなのか詳しく分からない」
「そうか」
ゲツガは周囲を見渡しながらとにかく場所を知る手がかりを探すが何も見当たらない。と、その時、ユイが何か気付いたようにゲツガに言った。
「お兄ちゃん、少し前にお姉ちゃんに似たプレイヤーIDを感じると言いました。そのIDの主がこの少し奥に隔離されています」
「ユキがいるのか!?」
ゲツガはユイの示す方向を見た。
「はい、確かに感じます。しかし、この先は沢山のロックがかかっているので、先に進むにはアクセスコードが必要です。お兄ちゃん、手を出してください」
ゲツガはユイに言われるがままに手を伸ばす。ユイはゲツガの手を握り目を閉じた。するとユイの手からゲツガの中に何かが流れ込んでくる。ユイはゲツガの手を離して言った。
「お兄ちゃん、今、さっきのシステムアクセス・コードのデータをお兄ちゃんのプレイヤーIDにコピーしました。なのでロックした扉を触ると解除されて入ることができます」
「ありがとう、ユイ」
ゲツガはユイの頭を撫でるとユイの示した方向を向いた。
「キリト、ユイ、ここからは別行動だが、必ず……必ず、アスナを助け出せよ」
「当たり前だ、お前こそユキを確実に助け出せよ」
「わかっています。お兄ちゃんも絶対お姉ちゃんを助け出してください」
キリトとユイはそう言って拳を握り、伸ばしてくる。ゲツガは微笑んで自分も拳を握ってキリトとユイの拳に打ち付けた。キリトとユイと逆方向に走り始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ゲツガは走る。この奥にいるかもしれないユキのためにゲツガは足を止めず走り続ける。しかし、目の前はもう壁になっているがゲツガは走る。ユイはロックがかかってると言っていた。つまり、これも一種の扉でもある。ゲツガは壁にタックルを決める。
壁はゲツガがタックルすると円形に破壊されたように割れて、新たな通路が出てくる。そこを走り続けると一つの案内板みたいなものがあった。
「何だこれは?」
ゲツガは立ち止まり、案内板を見る。そこには驚くことが書かれていた。
《実験体格納室》
「実験体ッ!何でこんな部屋があるんだよ!?」
ゲツガは実験体格納室を見て何を行われてるかはわからないが、今までばらばらだったワードが一つにつながる。レクトがSAO未帰還者の生命維持を行っている。しかし、未帰還者の精神はどこにあるのか。
「全部……お前らのせいだって言うのかよ!」
ゲツガは怒りがこみ上げてくる。そして、その横に視線を動かすとその部屋の奥のほうに小さな部屋があるのに気付いた。その部屋には玖珂様の妃の部屋と書かれていた。
「この部屋に……ユキが……。何がテメェの妃だ、勝手に決め付けてんじゃねえぞ!」
ゲツガは案内版に拳を叩きつけた。そして早くユキに会いたい、ゲツガは格納室に向けて走る。しばらくすると、ようやく実験体格納室と書かれた扉の前に着く。ゲツガはその扉を蹴り開けて中を確認した。そこには驚くべきものがあった。
「なんだよ……これ……」
そこにあったのはホログラムのように投影された青く半透明な人間の脳みそであった。それを見て一瞬、足を後ろに下げそうになるが堪える。そして、ゆっくりと部屋の中を歩き出す。
「これ、全部、未帰還者のものだって言うのかよ……なんてことをしてるんだ……レクトは……」
ゲツガはあたりを見回しながら先に進んでいく。この脳みそみたいなもので何かの人体実験をしてるのだろうか、考えようとするが、ゲツガの考えるのをやめた。とにかく、今は考えている場合じゃない。ユキを助け出さなくては、再び足を速める。そして、沢山の脳みそのようなものの先には四角い何かが浮かんでいた。しかし、その奥に扉があった。この浮いた四角い物体も気になるがこの先にユキがいるかもしれないと思うとこの物体よりも先に扉のほうに歩みを進める。
この先にユキが……。
ゲツガは扉に手を掛ける。そしてに手を触れる。すると扉から小さな電子音が響き解除された。ゆっくりと開く。そして、入ると人一人が通れる短い廊下に出た。そのおくには、更に扉がある。ゲツガは走って扉の取っ手を掴んで扉を勢いよく開けた。そこは、少し大きめの部屋でアンティーク系の家具が少々置かれている。そしてベットの上には体を丸めて座っている一人の少女がいた。
「ユ……キ……」
ゲツガはその少女の名前を呼ぼうとしたが声があまり出なかった。しかし、少女にはその声が届いたようで顔を上げた。そこに居たのは、ゲツガの最愛なるユキであった。
「ゲツ……ガ……君……。本当に……ゲツガ君なの?」
「格好は全然違うけど、俺だ。ゲツガだ……」
ユキはベットから足を下ろすとゆっくりと近づいてくる。ゲツガもユキのほうに近づく。そして手の届く距離まで近づいたゲツガは、ユキを抱きしめた。
「ユキ……ゴメンな……来るのが遅くなって……」
「遅すぎるよ……私、待ちくたびれちゃったよ……ゲツガ君」
そして互いの温もりを確かめ合うように強く抱きしめた。
ようやく、ようやく逢えた。
ゲツガはそう思うと不思議と涙腺が緩んだのか涙を流し始める。ユキも同様にゲツガの胸で泣いていた。互いの温もりを確かめ合った二人は体を離す。
「さあ、もうこんなとこから出よう。そして、俺たちのいるべき場所に帰ろう」
「うん、帰る。ゲツガ君たちのいる、現実世界に……」
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