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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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外伝その二~海鳴市・中編~

 
前書き

と言う訳で中編です。
あと今更ですがこの外伝は十四話と十五話の間の話です。
では本編どうぞ。

 

 



喫茶店・翠屋


 ライが着替え終わり、ライトニング分隊のメンバーも合流すると移動することになった。
 別れ際、挨拶をしている時に士郎はライに頼み事を切り出した。

士郎「ライ君、君は任務には参加しないから夜も暇かい?」

ライ「……そうですね。今のところ予定はないです。」

士郎「なら、夕食が終わった後にうちの道場で美由紀と一度試合いをして貰えないかい?」

ライ「はい?」

士郎「君が立ち居振る舞いから僕たちが武道経験者であることを察したように、僕も君が只者ではないと察したんだよ。」

 サラリと言ってのけるがそれを簡単に言ってのける彼も只者ではない。そのことを自覚しているのなら、彼はかなりの狸だ。

ライ「……買いかぶりすぎですよ。僕じゃ貴方には勝てません。」

士郎「おや、僕じゃなく美由紀になら勝てるということかい?」

ライ「………」

 その切り返しを考えていなかったのか、ライは言葉に詰まった。

士郎「ハハハ、君は正直者だな。」

 そう言われて少し、不貞腐れた様にライは士郎をジト目で睨んだ。

ライ「からかってます?」

士郎「へぇ、新しい家族のことをもう理解してくれたか。家族として嬉しいかぎりだよ。」

 どこまでもとぼけた態度をとる士郎に呆れたのか、それとも根負けしたのかライは了承の意を伝えた。



転送ポート付近・コテージ


 ここ海鳴市に訪れる時に使った転送ポートのすぐ近くには、大きめのコテージがあった。そこはなのはやフェイト、はやての元同級生であり親友のアリサ・バニングスが所有する別荘に近いものであった。今回の任務ではそこを拠点として使用することになっていた。
 スターズ、ライトニングの両分隊とライは夕食を食べるためにそこに一度戻っていた。

はやて「ああ、みんなおかえり~」

 間延びしたそんな声が聞こえた方に視線を向ける。そこにははやてとこの別荘の持ち主のアリサ、そしてアリサと同じくなのは達の元同級生の月村すずかがそこにいた。

すずか「なのはちゃん、フェイトちゃん久しぶり!」

なのは「すずかちゃん、久しぶり!」

フェイト「スズカ、元気にしてた?」

 そんな会話の後に再び自己紹介を一通り行い、そして晩御飯を食べることになった。晩御飯の用意ははやて達がしていたらしく、バーベキューなどの用意が既に出来ていた。
 そろそろ食べ始めるかという頃合に新しく3人が合流した。1人は先ほど別れたばかりの美由紀、そして残りの2人は六課の後見人の1人であるクロノ・ハラオウンの妻であるエイミィ・ハラオウンとフェイトの使い魔であるアルフという少女である。彼女たちとも挨拶を交わすと今度こそ食事が開始した。
 食事はどれも美味しいかった。しかもエリオやスバルのように普段から食べる量が多い人にも十分な量があるため、皆気兼ねなく箸を進めている。

ライ(賑やかな食事をしていると生徒会を思い出すな。)

 自分の取り皿の上に置かれた料理を口に運びながらライはそんなことを考えていた。
 そんな時に視線を感じたのでそちらを見ると、アリサとすずかの2人がライの手元を見ていた。

すずか「お箸を使うのお上手ですね。」

ライ「?……ああ。」

 なぜそんなことを言われたのか、一瞬わからなかったがすぐに腑に落ちる。
 ライは見た目少なくとも日本人に見えない。その為、器用に箸を使いこなしているのが意外だったのだろう。その証拠にアリサはライに気を遣いフォークを渡そうと手に持っていた。

ライ「僕の母親が日本人でお箸を幼い頃から使っていたので。」

すずか「へぇ~、そうなんですか。」

アリサ「それにしては上手すぎない?下手な日本人よりも綺麗な持ち方してるわよ?」

ライ「ハハハ、よく言われます。」

 ライとしては思わず自分の過去を少し話してしまったことに「しまった」と感じすぐにその話を切り上げた。話を変えるためにもライは新しい料理を取りに行く。
 ライが新しく取ったのは焼きそばであった。その焼きそばは普通の物よりも少し赤みがかっていたので気になりそれを選んだのだ。
 それを普通に食べるように口に運ぼうとした時に静止の声が響いた。

はやて「ライ、ストップ!!」

 あと少しで口に入るといったところでライは動きを止めた。

ライ「はやて?」

はやて「私はその焼きそばを作られたとこを見てへん。アリサちゃん達は?」

アリサ「私も作ってないわよ、焼きそばなんて。」

すずか「私も。」

はやて「じゃあ、それを作ったのは――」

シャマル「あの、私ですけど。」

 おずおずといった雰囲気で手を上げたのはシャマルであった。それを確認した瞬間シグナムとヴィータが訓練の時以上に真剣な表情をして口を開いた。

シグナム「ランペルージ、悪いことは言わん。今すぐその皿をおけ。」

ヴィータ「お前はまだ若いんだ。ここで無茶する必要はねーぞ。」

シャマル「2人共、酷い!!」

シグナム・ヴィータ「「黙れ、前科持ち。」」

 2人の言葉に崩れ落ちるシャマル。そんな彼女がいたたまれなくなり、ライはシグナムとヴィータの警告を無視して自分の取り皿の上の焼きそばを口に運んだ。

一同「「「「「あっ!」」」」」

 シャマルの料理が美味しくないことを知っている何人かが声をあげる。何人かに至っては特攻兵を見送る家族を見る目になっている。
だがそれでもライは箸を止めない。二口目、三口目と箸を進めていき、とうとう取り皿の上の焼きそばをすべて完食した。

シャマル「ラ、ライ君?」

 自分の料理が万人受けしないのをなんとなく察しているシャマルは料理を完食したライの方をおずおずと伺う。
 咀嚼を終えて、口の中のものを飲み込んだライはシャマルに向き直り笑顔で言った。

ライ「シャマルさん、味はイマイチでしたが気持ちは込もってましたよ。」

 笑顔でそう言い切ったライの言葉にシャマルは神託でも聞いたような表情をしていた。

シグナム「なん………だと……」

ヴィータ「ありえねー……」

はやて「あれ、これ夢?」

 周りのそんな酷い反応にも気付かない程感動しているシャマル。そんな彼女を放っておいてスバルがその焼きそばを食べようとする。

スバル「そんなに言うほどの物なのかな~」

 スバルはその焼きそばを何気なしに口に運んだ瞬間固まる。

ティアナ「スバル?」

 スバルの隣にいたティアナはいきなり動きを止めた相方を不思議に思い、声をかけると同時に肩に手を置いた。すると抵抗なくスバルは倒れこむ。

ティアナ「は?ス、スバル!?ちょっと、大丈夫!?」

 それを見ていたなのはとフェイトはライに近づいて尋ねていた。

なのは「ねぇ、ライ君ほんとに大丈夫?」

ライ「味はあれだったけど大丈夫ですよ。」

フェイト「というより、一口食べただけでああなっちゃうものを食べてなんで平気なの?」

 スバルの方を見ながらフェイトはそう問いかけた。その質問の答えが気になったのかシグナムやヴィータ達も近くに来ていた。因みに新人フォワードメンバーは今現在スバルの蘇生中である。

ライ「いや、知り合いにもっとすごいものを作る人がいて、それを食べてるうちに慣れちゃった……かな。」

 少し虚ろな瞳で悟りきった表情をしているライはそんなことを言った。その姿にはどこか哀愁を漂わせている。
 そんなライの姿を見てシグナムは熱くなった目頭を押さえ、ヴィータは同情の視線を向け、そしてなのはとフェイトはいつもより優しい表情になっていた。

美由紀「因みにその人はどんなもの作ってたの?」

 自分も料理で人の意識を奪ったことがあったため、なんとなく聞いてみた美由紀にライは乾いた笑いを浮かべながら答えた。

ライ「美由紀さん。世の中には知らなくてもいいことがあると思うんだ。」

美由紀「そ、そうなんだ。」

 ライの表情がどこか危なかったのでこの話題はすぐに打ち切られた。
 余談だが、後日ライに食べてもらうためにシャマルが料理に励むことになるが、それを知った機動六課のメンバーがライの身を守るために奮闘することになる。


 そんなどんちゃん騒ぎ(?)が終わって間もなく、はやてがあることを言い出した。

はやて「それじゃ、皆お風呂に入る準備しよか。」

 話によればここから少し行ったところに大きな銭湯があるというのだ。公衆浴場の文化はミッドチルダでも珍しいのか何人か興味深そうな顔をしていた。
 全員が準備のために動こうとした時にライが声を発した。

ライ「あ~、はやて僕は遠慮する。」

一同「「「「「え?」」」」」

ライ「実は士郎さんと約束したことがあるから、僕はそちらに行くよ。」

なのは「お父さんと?」

ライ「ああ、それにキャロが良ければだけどフリードも連れて行きたいから。」

キャロ「フリードを……ですか?」

フリード「キュク?」

ライ「フリードを銭湯に連れては行けないし、ここにフリードだけを残すわけにもいかないんじゃないか?士郎さんが言うにはお風呂も貸してくれると言っていたしね。」

 その考えに至ったのか皆納得の表情をしていた。フリードは自分のことをしっかり考えていたライの肩に乗り、感謝するようにライの顔に頬ずりしていた。
 結局ライと同行するのはフリードとキャロとエリオ、そして美由紀と手合わせすると聞いたシグナムが行くことになった。




























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前回の予告通り予告編その二です。

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第四次聖杯戦争。
その戦いは勝者を生むことなく残ったのは街と人を焼いた災害のみ。
生き残った者も記憶を焼かれ、心を壊していた。
聖杯の中身、『この世全ての悪《アンリマユ》』。その泥に飲み込まれたものはこの世に存在するあらゆる負の感情を受け、精神を壊され、その身を焼き取り込まれていった。
例外は確たる自我を持っていたため、その存在を認識された彼の英雄王。
そして―――――――――――――――





(俺を求めたロクデナシ達の戦いも終わったか。というか、なんで俺なんかを万能の釜と勘違いするかねぇ~~)

その聖杯の中身の、ある意識はそんなことを気怠げに考えていた。

(全く、それにしてもいつここから出られるのかねぇ~~………嫌、出れてもやることないんですけどね~~……………ん?)

その思考に触れるように別の意識が割り込んだ。それはまともな言葉を発することなくただ聖杯の中身に存在していた。

(なんだぁ~……こんな所に来るもの好きは?)

その意識はまだ幼く、ここがどこなのかも分かっていないようだ。

(……ああ、そういうこと………あの戦いの被害者ね。ん?おいおい、これまたヘヴィーな人生歩んでるねこいつ。)

意識が同一化しているため、その幼い意識の過去が見える。

(しかも、こんな俺をちゃんと認識してやがるし……へぇ~面白そうだし、こんな俺でも一応奇跡ぐらいは起こせるんだ………もう一度人生を歩んでみろや。)

理解しているかどうかもわからないが、その幼い意識に思念を送る。

(……………………あな…た…は……一人………ぼっち……………)

返事を期待していなかったためそう返されたことに驚いた。

(くくく、はははははははははははは!!!!お前がこうなった原因の俺を気にかけるのかよ!いいぜ、気に入った。“おまけ”もつけてやるよ。まぁ来世で幸せになりな。)

こうして誰にも気づかれることなく魔法と呼ばれる奇跡は行使されることになった。





こうして異世界から来た1人の少年とその少年の新しい2人の家族、そして精霊と呼ばれる少女達と縁のある少年の物語が始まる。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 
 

 
後書き


予告編というか導入部分っぽくなってしまいました(; ̄ェ ̄)
え~~と前回のと今回のとどちらが読みたいですか?


次回は軽い模擬戦の話です。
お風呂を期待していた人達、サーセンした!
でも全くないというわけではないです。

取り敢えず今回短くなった分、次回少し長くなると思います。

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