DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章
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一章 王宮の女戦士
1-20ありがとう
「してはいけないと言われるには、理由がある。納得できなければ、調べなさい。行きたい場所に行くのに、力が足りなければ付けなさい。こっそり抜け出して同じようなことがあれば、また誰かが助けに行くだろう。自分の命も、誰かが傷付き泣くことも、問題にならないくらい大事なことなのか。また抜け出したくなったら、よく考えてみるといい」
子供たちは黙りこくっている。
元より、何かを言わせたいわけでも無い。
とにかく早く連れ帰り、後は親御に任せよう。
ホイミンは、まだ納得できぬようだ。
「ライアンさん、ぼくまだわからないよ。みんなは悪いことをしたかも知れないけれど、ぼくが悲しかったのは、みんなのせいじゃないの。ごめんねって言ってくれるけど、怒ってないからゆるしてあげるって言えないの」
「そう言えばいい。怒って無い、もう大丈夫、心配してくれてありがとう、と」
子供らは赦しも欲しかろうが、叱って赦してくれる者は別にいる。
「そっか。みんな、ぼくは怒ってないよ。ライアンさんが元気になったから、悲しかったのも、もう大丈夫なの。心配してくれて、ありがとう!」
子供たちがほっとした顔をする。
ホイミンは、理解が早い。
子供のようなのに、子供では有り得ない。
魔物として生き抜いてきたのだ、当然だ。
幼い情緒を持ちながら、物事をすぐに理解し成長していく様は、早く大人になろうとする、聡い子供のようだ。
人間になろうとするのは、大人になろうとするのに似るのか。
子供たちがこちらを見ている。
微笑み、告げる。
「私も、怒っていない。怪我も、ホイミンが治してくれたから、もう大丈夫だ。ありがとうな」
また、子供たちの顔が赤い。
説教で、怖がらせてしまっていただろうか。
子供たちが顔を見合わせ、声を揃えて言う。
「ライアンおねえちゃん、ホイミンくん。たすけてくれて、ありがとう!」
「ど、どういたしまして!」
照れながらも応じた後、ホイミンが呟く。
「人助けって、気持ちいいね。またひとつ、人間に近付いたような気がするんだ、ぼくは……。」
ホイミンを撫でる。
「そうだな。良かったな、ホイミン」
離れずついてくるように言い聞かせ、階段に向かう。
子供たちは楽しげに話し合っている。
「おねえちゃんは、とってもつよいんだね!」
「ぼくも大人になったら、王宮の戦士さまになりたいな!」
「ぼくだって!」
芽生えたばかりの憧れを、早々に摘み取ることにならねば良いが。
子供らに無情な現実を突き付けるような真似はしたくは無いが、仕方が無い。
彼の側を通らねば、帰れない。
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