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万華鏡

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第二十一話 夏休みのはじまりその十五

「減ってはいくのよ。それに蚊も」
「蚊は誰も捕らないでしょ」
「蜻蛉がいてくれるから」
 夏の中盤から秋にかけて多い、赤蜻蛉のことだ。
「うちの神社ギンヤンマとかはいないけれど赤蜻蛉は多いのよね」
「蚊を食べてくれるのね」
「蜻蛉は蚊の天敵よ」
 餌にするのであり。幼虫のヤゴの時はボウフラを食べる。
「物凄く有り難いわよ」
「蜻蛉が増えるまでの辛抱なのね」
「蜻蛉ずっといてくれないかしら」
 景子にとっては切実だった。
「そうしたら有り難いけれど」
「蜻蛉ねえ」
「蚊の天敵ね」
 景子が望んでいるのはそれだった。
「他にいないかしら」
「ううんと、竹やぶの水溜まりは潰してね」
 竹を切った後の切り口に出来るそれはだと言う里香だった。
「それか水溜りに石油を撒くのよ」
「油?」
「それでボウフラを窒息させるの」
 蚊の元になるそれをまず退治するというのだ。
「後お池にね」
「お池に?」
「金魚を買うとか」
「ボウフラを食べるからよね」
「そういうことしてみたらどうかしら」
「竹林だから油は」
 燃えそうなそれはと、景子は困った顔で里香に話した。
「切り口から水が出る様にしてよね」
「それがいいわ」
「あとお池に金魚は」
 それはというのだ。
「猫ちゃん達が来るから」
「ああ、猫ちゃんね」
「うちの神社野良猫ちゃんが集まってね」 
 そしてだというのだ。
「殆どうちの神社の猫ちゃんになってるから」
「猫ちゃん達が金魚を食べるから」
「それもね」
「だったら亀はどう?」
 里香は今度はこれを提案した。
「それはね」
「亀?」
「亀だったら猫も食べないわよね」
「多分ね」
「だったらそれでどうかしら」
「ううん、亀ね」
「景子ちゃんのお家の神社のお池にね」
 景子の家にはそれもある、そしてそこが蚊の源になっているのではないかというのだ。これはよくある話である。
「そうね。いいかもね」
「そこがヤゴの巣になってたらヤゴも食べちゃうけれど」
「あっ、うちのお池ヤゴはいないから」
「だったらいいわね」
「蛙が多いわね。けれど亀が蛙食べるかしら」
「じゃあ蛙さん達を増やすとか」
 里香は次から次にと知恵を出す。
「そうする?」
「蛙ね」
「それでどうかしら」
「いいかも」
 景子はそれに乗った。
「それね」
「そうでしょ。それじゃあね」
「ええ、蛙だと」
 それならと言う景子だった。
「いいわね。神社に蛙っていうのも」
「絵になるわよね」
「ええ、蛙は神道だといい生き物だし」
 だから余計にいいというのだ。
「雨と水だからね」
「そういえば蛙の置物もあるわよね」
「神道って日本人の宗教で農業だから」
 農業といえば水、それでだというのだ。 
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