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万華鏡

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第二十一話 夏休みのはじまりその十三

「それに見合う、目的を達成出来る成績ならね」
「怒らないでしょ」
「ええ、特に」
 実際にそうだというのだ。
「そんなことは言わないわ」
「そうでしょ。琴乃ちゃんのお母さんもそういう人じゃないから」
「成績は自分のものなのね」
「順位は出てもね」
 それでもだというのだ。
「自分がどれだけ頑張ったか、自分の目的や目標に見合うだけのものか」
「それが大事なのね」
「私はそう思うけれどね」
「成程ね。それじゃあ」
 琴乃は景子の話を聞いて頷いた、そうしてだった。 
 納得した顔になりそのうえでこの話をした。
「実はこの夏休みね」
「部活よね」
 彩夏が言う。
「それよね」
「そう、それとね」
 その母に言われたことを今四人にも話す。
「塾にも行ったらどうかって言われてるの。八条学習塾」
「ああ、あそこね」
「私あそこ中学まで行ってたし」
 当然小学生の頃もだ。
「馴染みだしね」
「だからなのね」
「そう、そこに夏行ったらどうかって」
「時間あるの?」
「まあ時間はね」
 琴乃は彩夏の問いに答えて言う。
「部活は午前中じゃない」
「ええ」
「塾の講習は午前の部と午後の部があって」
 夏は塾にとっては講習を開いて生徒を集める所謂かき入れ時だ、それでそうした時間にも講習を開くのだ。
「で、午後にって思って」
「部活に出てそれでなのね」
「行こうかなって思うけれど」
「随分忙しい夏休みね」
「暇なの好きじゃないし」
 これが琴乃の考えだ。
「だからね」
「それでなのね」
「うん、そう考えてるの」
「忙しくでもいいんなら」
 琴乃さえそれで構わないのなら、彩夏は答える。
「別にいいと思うけれど」
「それじゃあね」
「ええ、ただ八条学習塾ね」
「そこよ」
「琴乃ちゃんそこだったのね、塾は」
「いい塾よ。八条大学の資料も揃ってるし」
 同じグループが経営しているからである。
「しかも中綺麗で設備も充実してて」
「先生は?」
「教えることが上手で優しい先生ばかりよ」
 塾で肝心のそちらもいいというのだ。
「だからいいかなって思ってね」
「それで決めたのね」
「そうなの」
 まさにそうした理由でだった。
「そうするわ。それじゃあね」
「私もね」
 ここでこう言った彩夏だった。
「塾ね、夏の間」
「あれっ、彩夏ちゃんもなの」
「行こうかしら」
 琴乃の話を聞いて考えての言葉だった。
「塾にね。ただ塾は何処か」
「その八条学習塾にしたら?」
「そうね。じゃあ後で塾に行って」
 それでだというのだ。
「講習のパンフレット貰ってね」
「それで決めるの」
「そうしようかしら」
 こう言うのだった。 
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