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Monster Hunter ―残影の竜騎士―

作者:jonah
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8 「受難のち衝撃の出会いからの確信」

 
前書き
報告!!
なんと! 2ndGを購入しました! しかも中古で送料あわせて699円! 安いね!ヽ(*^∀^)ノ 流石AMAZ●N。伏字になってない? 気にしたら負けだ。
嬉しいです。皆様の小説に多々出演しているポッケ村がついに私の手の中に! ぐふふふふ…じゅるり。おいお前受験生ry とかいう言葉は受け付けない←
噂のG級とやらもあるそうじゃないですか。今から楽しみで仕方ありません! ああ、3rdから逆引き継ぎができたらいいのに。とりあえず今はコツコツランク上げに勤しむ毎日です、が。ここで報告です。いや、買った報告でもあるんですが、
これで、物語に 2 n d G 要 素 を 盛 り 込 む こ と が 確 定 し ま し た ☆
あ、基本は3rdです。ただG級出すことになりました。思ったよりナギとデュラクが強くなっちゃったもので…。なにせやり込み度が違うのでね。というほどやりこんで……いるのか? 世の皆様と比べるとちょっと自信ないなー 

 
 1年ぶりに人と会話したあの日から早2日。黒髪蒼眼の青年――ナギは、今日も今日とて昼食の魚釣りに出かけようとしていた。
 メラルーたちの手も借りて建てられた我が家の横には、そこそこの大きさの家庭菜園がある。植えられているのは薬草やウチケシの実、他に食用としてダイコンやジャガイモ、ハクサイ、野イチゴなどがある。コツコツと畝を増やしていって、今ではそこそこの大きさの畑になった。彼の密かな自慢だ。いつか稲も植えて昔懐かしの米を食べたいと思っているのだが、水はけが良すぎる渓流の土では、それは随分難しい課題だった。米が食べたい。
 野菜や芋ではタンパク質などは取れないので、毎日昼は魚を取ることにしている。ユクモ地方の渓流のサシミウオは本当に美味しくて、この7年間ほとんど毎日食べていたというのに、全然飽きが来ない。まあ、料理を工夫しているというのもあるだろうが。

「今日は贅沢にフライにしてみるかな~」

 渓流の様々なところに生えている赤い花を咲かせる草から取った油は、家の奥の壺になみなみと入っている。
 彼は菜種油の製造方法など知らなかったのだが、知り合いの老メラルーが趣味で色々なことに手を出しており、そのうちの1つが植物からの油作りだったのだ。その製造に力を貸す対価としてつくられた油をもらっているというわけである。なかなか力を使う作業で、こんなところでも彼の愛竜デュラクの力が役に立っていた。

「ふんふんふ~ん♪」

 釣竿を肩に担いでまた竹籠を背負い意気揚々と家を出る様は、すでに隠居した身を連想させる。だが、そんな彼は今日も昼食を遅らせなければいけないようだった。
 ボコッと地面から出てきたのは、どんぐりネコ装備のハナ。
 腰に小型の樽をくくりつけているが、頭と武器の装備はもっていない。この格好は彼女がよくやることだった。曰く、「頭のヘルメットのフタがおっこちてきて、視界が悪くなる」「ボーンネコピックは長すぎてうまく使えない」。ハナが着用しているのはルイーズ用に作った武具のお古だ。まだ幼く、その中でも更に小柄であるハナには、サイズが少々大きいらしかった。唯一ベルトで調節できるどんぐりネコメイルだけ使っている、ということだろう。

「こ、こんにちはだニャ。ナギの旦那……」
「おう、よく来たな。ルイーズなら庭でデュラクと鍛錬してるぞ」
「ち、違うんだニャ」
「うん? ……ああ、マタタビパイならすまん。小麦がちょっと足りなくてな。今度ルイーズに買いに行かせるからちょっと待っててくれ」
「ニャ! 楽しみにしてるニャ! ……じゃなくて!」
「ん、じゃあ――」
「きょ、今日ニャンが用があるのは! その、旦那になのニャ…」
「俺に?」

 いつになく深刻そうな表情をしているハナを、とりあえず家に迎える。湯呑みに自作のお茶と、金庫に入れてあった(でないとルイーズにすぐ盗まれる為)お手製マタタビクラッカーを皿に出した。籠と竿は部屋の隅に置いた。話は長くなりそうだ。

「ニャッ、ありがたくいただくニャ…」

 小さな手にそれをとって、ちょこんと座った椅子に足をぶらぶらさせる様は、何度見てもとても愛らしい。
 ルイーズはメスだがはっきり言って並みのオヤジよりもオヤジ臭いので、共に暮らしていてもまったく「かわいい」と思わない。風呂に入りながらニャーニャーニャーニャー歌うのは本当に勘弁してほしい。なんとなく音程というか曲調というかが演歌っぽいのだ。気がつくとひとり暖かいところで横になって、クラッカーをバリバリ食べながら近隣(主にヨルデ村)から盗ってきた雑誌にひとりでツッコミをいれるのも、オヤジらしさ(それ)に拍車をかける。その姿、まさに横になってテレビを見ながらせん餅を食べるオヤジそのものだ。
 この間など夜寒い時期になったら腹巻を作ってくれと頼まれた。思わず表情筋が引きつったのは仕方ないと思う。嫌がらせに薄汚れた白いインナーシャツと一緒に茶色に縦縞模様の作品名「THE・OYAJI(ザ・オヤジ)」にしてやった。本猫にはまったく通じていなかったが。
 だからナギにとって訪れてくるハナの存在は、正しく癒しだった。ポリポリと小さな一口でクラッカーを食べる様子など、その名のとおり猫可愛がりしたくなる。お土産にマタタビクラッカーを今日もたっぷり持たせてやろう。
 1人ルンルン気分だったナギは、ハナが差し出した手紙が入っているという箱らしきものを受け取ったときも、軽い気持ちでそれを開けてしまったのだ。
 それを受け取ったことを、数分後凄まじく後悔するなんて思いもせずに。

「箱?」
「『兎に角開けろ』、って言うように言われたニャ」
「誰に?」
「それは――」

 そんなことを言いながら、少し固い蓋を力任せにぐいっと開いた瞬間。

べちゃっ

「ぶふぇっ!! げほっ…ぐえええ……」

 ぷーんと漂う独特の匂い。明らかに天然の色ではない、だが非常に見覚えのあるピンク色の煙が家の中に広がる。

「く、臭いっ。臭い臭い臭いッ!!」
「ウニャアアアッ!」

 ペイントボールだった。箱を開いたら勢いで飛び出してくる仕組みだったのだ。幸い顔面ではなかったものの胸元に直撃したそれは、強烈な匂いを発して遠くにもその存在を知らせる。
 鼻のよいメラルーであるハナは、ものすごい勢いで後ずさるとナギから一番遠い壁にへばりついた。

「ニャに事ニャ!? 旦那、ペイントボールの調合でも失敗したのかニャ!!? うニャ! くっさ!!」

 駆け込んできたルイーズが、ヒーヒーいいながら片っ端から窓を開け始めた。外でデュラクが心配する声をあげている。が、ナギは今それどころではない。

「なんだよ、何なんだよこれは! おい、ハナ!!」
「ニャアアアごめんニャ! でもでもニャンそんな仕組みになってるなんて知らなかったニャ!! ほんとニャ!!」

 兎に角転がるように外へ出ると、庭に寝転んだ。体中が臭い。ペイントボールを投げられた大型モンスターの気持ちがわかった。ペイントボールってこんなに臭いのか。いや、エリアの端っこにいてもわかるくらいだから臭いのはわかっていたんだが、自分の胸元から漂うこのキツい匂いは、いったいいつになったら取れるんだろう。あれって確か効果は5、6時間くらいだった気が……。

「………6時間もこの匂い漂わせてたら、俺、吐きすぎて脱水症状になるぞ」
「旦那、大丈夫かニャ……?」
「と、とりあえず肉焼き用のうちわを持ってきたニャ。ニャアとハナで前から風を起こすから、ちょっとは良くなる筈ニャ」

 ぐったりしているナギを慎重にデュラクが尻尾で支え、前の方からナギの黒いマスク着用の2匹のメラルーがうちわで仰ぎまくる。匂いは後ろに流れて、数十分後にはなんとか気分が悪いのも収まってきた。

「……とりあえず、手紙を読もう…」
 まだ申し訳なさそうにしているハナから手紙を受け取る。今度は非常に慎重にあけたが、何も仕掛けはなかった。

「なになに、『拝啓。日差しも暖かくなり、草木の緑も日に日に鮮やかになってきた今日この頃、ナギ様におかれましては如何お過ごしでしょうか。先日はリオレイアから我が村のハンター、リーゼロッテとエリザ、並びにオトモアイルーハーヴェストとチェルシーを助けていただいて、誠にありがとうございました。』……。なんで俺の名前知ってるの」
「そ、それは、ニャンが喋ってしまったのニャ。そのエリザっていう子が怖かったのニャ…ごめんなさいニャ……」
「『つきましては、感謝の言葉とナギ様の腕を買って、お頼み申し上げたいことがございます。使者をお送りいたしますので、我がユクモ村にいらしてはいただけないでしょうか。色よい返事、お待ちしております。かしこ。ユクモ村村長』……え、もしかして“使者”って…」
「……この匂いを頼りにこっちに来てるかもしれニャいニャ」
「ヒニャアアアごめんなさいニャごめんなさいニャ!! ニャン、こんなことになるなんて思いもしなかったニャ!!」
「…まあ、やっちまったもんはしょうがないよなぁ……」

 はぁ、とため息をついて空を見上げる。雲ひとつない晴天だ。しかもよりによって風はほどよく頬を撫でる。ああ、これは猫どものうちわか。

「……おい、ここら辺に最近大型モンスターっていなかったよな?」
「最後に来たのは2日前の夫婦だけニャ。まだたったの2日だし、ニャんもいニャいと思うニャ? そもそも、こんニャ仕打ちしてまで旦那をのがそうとしニャい連中に、そんニャ気遣いはいらニャいニャ」
「いや、そういうわけにも……つーか、わざわざこんなカラクリ使ってこなくても、普通に呼び出せばいいじゃねえか……」
「逃げられると思ったんじゃニャいかニャ。旦那が本人に“自分は人嫌いだ”って言ったのニャ。そのリーゼロッテだかエリザだかに」
「……名前でのイメージからは“エリザ”だな。気の強そうな娘だったし…、…だってまさかもう1回会うなんて、思いもしなかったんだよぉ……。やばい、どうしよう。まともに会話できる気がしない。平常心、平常心…」

 情けない声を上げてずるずると下にずり落ちる。デュラクの尻尾を枕にすると手で顔を覆って、呪文のようにひとりごとを言い始めた。ルイーズは「やれやれだニャ」とぼやきながら、少しでもナギの匂いが薄まるようにと着替えを調達しに家へ戻った。ハナは一心不乱にうちわを仰ぎ、ナギの気分の回復に務める。

「ああああ、村になんて行ったら絶対人だらけじゃん。どうするよ。ただでさえこんななのに、ペイントボールの匂いがプンプンする男って……どう考えても歓迎されないでしょ」
「だから、旦那の顔はメラルーのニャアから見てもかっこいいと、何年言ってるニャ?」
「それはお前の目がおかしいんだ。180度反転して見てるだろ。って、こっちも何年言ってんだか」
「はぁ……ほんと、やれやれニャ。とりあえず着替えを持ってきたニャ。どうせここに来るまでまだ時間も結構あるだろうし、沐浴でもしてにおいをちょっとでも落としてくるニャ」
「おう…サンキュ……」

 へろへろと立ち上がり、ルイーズから受け取った服を抱えて川へ向かう様子は、とても先日颯爽と少女達を助けたあの青年と同一人物とは思えない。まるで背中に100kgの重石でもおいてるんじゃないかと思うほどうなだれている。

「ここ最近、いいことないよなぁ。なんで7年間平和に過ごしてきたのに、ここ数日でこんなにもピンチになってんだろ……ああ、もっと川に近いとこに住めばよかった……でもそうすると雨の日の川の氾濫がなぁ……ああ……臭ぇ……」

 ぶつぶつ言いながら下着姿になって冷たい川に身を浸す。ハンターお手製のペイントボールの匂いは水浴び如きでは落ないのは分かっていたが、それでもベタベタした触感は消えた。しっかりとルイーズが桶に入れてくれた手作り石鹸も使って、わしゃわしゃと体を洗っていく。液が飛び散った髪も念入りに洗った。
 オヤジ臭いだのなんだの言っているが、ルイーズのこういう気の利くところがナギは好きだ。だからずっと一緒にいるのかもしれない。かれこれ7年の付き合いになる彼女とも、いろいろと気の置けない仲になった。何よりルイーズとは話していて楽しい。意思は通じても会話ができないデュラクと2人っきりだったら、きっとナギはもっと根暗な人物になっていただろう。
 そう言う意味でも、密かに感謝していた。本猫に言うと調子に乗るから絶対に言わないが。
 最後に冷たい水を頭からかぶって泡を落とすと、すぐ近くで「きゃあっ」という声が聞こえた。女の子の、明らかに悲鳴だ。
 咄嗟に川から片足を出して前を見ると、真っ赤になって口元を抑えている赤毛の少女。よく見ると赤っぽい金髪だ。リーゼロッテ(推定)だろう。ふるふると震えている。なんだ、怪我はないのか。安心してその場でつっ立ったナギは、少女の様子がおかしいことに気づく。
 その視線は、ナギの顔へ行ったり胸元をさまよって慌てて下にいき、また更にあわてて顔に戻り…を繰り返している。最終的にはぐるぐると目を回して、手で顔を覆ってしゃがみこんでしまった。

「ふっ……!」
「ふ?」
「服をっ。服を着て下さい!!」
「へ? ……ああ」

 そこでようやく自分が下着1枚なのに気づく。長いこと、たとえ家の中を裸で歩き回っても気にも止めないルイーズや、はっきり言ってナギの性別などどうでもいいと思っているデュラクと一緒に暮らしてきたため、そういう認識が甘くなったのだ。要するに、鈍い。それに、どうせ肝心な一番大切な部分(どことは言わない)は隠れているから、まあいいだろう。減るもんでもあるまいし。それよりナギにとって最も隠すべき場所は顔である。片手でしっかりマスクが付いていることを確認すると、ほっと息をついた。
 一応気にしているようだから、と少女に背を向け、濡れないように岩の上に積んであった着替えを取り出した。紺色の着流し。これも布を買って四苦八苦しながら自分で作ったものだ。といっても、数年も経てば大分慣れたものだった。襦袢の上からそれを着、白い帯を慣れた手つきで結んで、最後に青い羽織を着れば完成。パパッと着られるのが便利で、彼は普段これを私服としていた。靴も草履である。足袋も実は作っていたが、今はない。ぬかるんだ道に足袋で歩けば、白い布が一発で泥まみれになってしまうからだ。

「おまたせ」

 おまたせと言いつつ、ぶっちゃけ一番どきどきしていたのはナギの方である。
 心の準備が終わらないまま少女と(しかも自分は裸で)バッタリ。

(こりゃ一体なんのフラグだよ……)

 あれから一言もはなさずうつむく少女がしっかり自分の後ろを付いてきているのを確認すると、自分の家に先導しながらナギはため息をついた。首に手ぬぐいを巻いて、道中がしがしと頭をふく。いかにもお風呂上がりといった感じだが、彼はここ7年間、熱々の風呂に入ったことはなかった。当然だ、渓流に住んでいるのだから。ああ、米が食べたい。降りればすぐユクモ村があるが、対人恐怖症ぎみの青年が観光客で賑わう村に行けるはずもない。
 ちなみに先に述べたルイーズが入って歌を歌っているのは、メラルーが入れる程度の大きさの鍋の中である。それくらいの火力なら余裕で出せるからだ。といっても、毎日ではないが。

「あの、ペイントボールの件。すみませんでした。あの、あれ作ったのエリザなんです。あの子の独断だから、村長がやったんじゃないんです! どうか気を悪くなさらないで下さいっ」
「あー、うん。わかってる。ダイジョウブダイジョウブ」

 遠い目をしながら答え、開けた視界と目に入る我が家を少女に紹介した。
 これから来る災難を、ほぼ確信しながら。

「先日はありがとうございました。わたしはユクモ村の専属ハンター、リーゼロッテ・マインといいます」

(ああもう、勘弁して)

「…どうも、ナギ・カームゲイルです」

 頭の中で「やっぱりこの子はリーゼロッテだったか」とどうでもいいことを思う。心が無意識に現実逃避しているということは、よくわかっている。少女の明るい茶眼が、まっすぐこちらを見つめてきた。

「ナギさんを迎えにきました」

 窓から見上げた空は、澄み渡っていた。気のせいか目から栄養剤グレートが。

(……雨、降んねぇかな)

 頭の中で“雨天決行”の字がちらついた。
 ですよねー。
 
 

 
後書き
受難(ペイントボール事件)のち衝撃の出会い(裸でバッタリ)からの確信(来る災難について)www
栄養剤Gについては単にアイコンが水色だから選びました。深い意味は全くナイヨ。 
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