八条学園怪異譚
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第二十二話 雪男の一家その十三
「今からな」
「わかりました、それじゃあ」
「開けて中に入ってみますね」
二人で日下部の言葉に頷く、そしてだった。
実際にその扉を開けて中に入る、そのうえで出た場所には。
かちこちに凍ったアイスクリームにアイスキャンデーが何段にもなった棚の中にそれぞれあった、他には氷もある。
誰がどう見ても外ではない、それで二人はまたしてもといった顔になってそのうえで顔を見合わせて話をした。
「またね」
「そうだったね」
「ここも違ったわね」
「泉じゃなかったわね」
こう話して残念な顔になるのだった。
「何ていうか」色々回ってるけれど」
「違ったし」
「じゃあもうね」
「日下部さん達のところに戻ろう」
いささか落胆した顔でのやり取りだった、そして。
二人は扉の向こう側で待っていた雪女達のところに戻った、そのうえで彼等に対してこう言ったのだった。
「ここも違いました」
「残念ですけれど」
「そうなの。じゃあ仕方ないわね」
雪女も二人の言葉を受けて言う。
「じゃあ扉はちゃんと閉めてね」
「はい、閉めました」
「これでいいですね」
「さもないとアイスクリームとかが溶けるから」
だから閉めることは忘れるなというのだ。
「忘れたら駄目よ」
「冷蔵庫や冷凍庫はすぐに閉める」
「お料理の鉄則の一つですから」
それぞ食堂とパン屋の娘である二人にとっては常識のことだった。
「これは忘れたら駄目ですね」
「何があっても」
「私は言う前に二人共もう動いていたけれどね」
二人が丁度扉を閉めようとしたところで言ったのだ。
「まあとにかくね」
「これで閉めましたから」
「終わりですね」
「いいわよ、けれどここも泉じゃないから」
雪女は二人に言っていく。
「帰るのね」
「段々冷えてきましたし」
「もうこれで」
「冷え性は普通の人間や妖怪には敵だからね」
勿論冬の妖怪である雪女達は違う。
「特に女の子はね」
「実は私冷え性でして」
「私もです」
二人共だが特に愛実がそうだ、それで愛実はこうしたことも言うのだった。
「夏でも湯舟に入ってますし」
「湯舟になのね」
「雪女さんは湯舟には入られないですよね」
「水風呂よ、それもね」
只の水風呂ではない、それはどういったものかというと。
「氷を入れたね」
「そうしたお風呂でないと駄目なんですね」
「私達には暖かさは敵よ」
温かさでも同じだ。
「それでね」
「氷の入った水風呂ですか」
「それがお好きなんですね」
「私達の場合はね」
そうなるというのだ。
「まあ特別よね」
「ううん、そういうのは夏でも」
「私もね」
二人共そうした風呂はとてもだった、そしてやはり愛実の方がだ。
「絶対に身体が冷えてよくないわ」
「そうなるわよね」
「何か二人共今時の女の子じゃないところがあるわね」
雪女は二人を見ながらこんなことも言った。
「おばさん臭いっていうか」
「うっ、まあそれはですね」
「何ていうか」
二人もその話を振られると微妙な顔になる。
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