ソードアートオンライン VIRUS
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世界樹
階段を登りきると大きな門の前に出る。その瞬間、右の石造が動いてこちらを見下ろしてくる。
『未だ天の高みを知らぬ者よ、王の城へ到らんと欲するか』
それを言い終えると同時にキリトとゲツガの前にYESとNOのウィンドウが出てくる。そしてゲツガとキリトは迷わずにYESのボタンを押した。すると今度はもう片方の石造が大音声で発した。
『さればそなたが背の双翼の、天翔を足ることを示すがよい』
それを言い終えると同時に扉がゆっくりと開いていく。その光景をみてフロアボスの扉とかぶって見えたので苦笑をした。しかし、それと同時に戦慄する。この奥にはどんな強い奴がいるのかという。その戦慄を頭の中から拭う。
「行くぞ、ユイ。しっかり頭を引っ込めてろよ」
「パパ、お兄ちゃん……がんばって」
「ああ、絶対にママに会いに行こうな」
ゲツガはユイの頭を撫でる。それを終えたゲツガは背中からたたまれた弓を持ち展開した。キリトも背中の剣を抜き放つ。そして背中の扉が完全に閉まりきると辺りが暗闇になる。しかし、ゲツガは見えないと言うわけではない。しかし、一秒も経たないうちに空間全体が一気に明るくなった。右手を掲げ天井を見上げる。
そこはとてつもなく高く、広い。樹の内部らしいためあの樹の太さからしてこの中身は妥当なのだろうがとてつもなく大きい。周辺にはいくつものステンドグラス上の紋様が刻まれている。そして、その天辺にはリング状のゲートが十字に分割された四枚の石扉で閉ざされていた。あの中を通ればこの世界の真実に辿り着けると言うわけか。
キリトとゲツガは足に力を込めて翅を広げる。
「行くぞ、ゲツガ!!」
「ああ、絶対にこの上に行くぞ!!」
そしてゲツガとキリトは地を蹴って飛び上がる。すぐに天蓋の発光部から異変が現れるのが見えた。ある紋様の一つから泡が沸き立ち、何かの形を成していく。瞬く間に光は人間の形を取って雫が滴り落ちるかのようにドームに放出されると、手足と、四枚の輝く羽根を広げて咆哮する。それは、全身を白銀の鎧を纏った騎士だった。例えるなら、どこかの城を守っている操り人形の聖騎士と言ったところか。右手にはキリトの剣を上回るほどの大きな剣を携えていた。あれがガーディアンだろう。
騎士は叫び声を上げながら、ゲツガの前を飛ぶキリトに向けて急速にダイブしてくるが、
「そこをどけぇぇぇぇぇぇっ!!」
それにも負けないようにキリトも剣を構えながら叫ぶ。両者がゼロ距離まで近づくと同時に騎士は剣を振り下ろしてくる。しかし、キリトはそれを真っ向に受け止める。そして互いの剣がぶつかることによって火花が散る。キリトは騎士とのつばぜり合いを押し返して剣を弾く。しかし騎士は再び攻撃をしようとするがゲツガは素早く矢を放って動きを止める。その隙にキリトは騎士の体を真っ二つに斬った。
キリトとゲツガは斬られた騎士に目もくれずさらに上空を目指してさらに速度を速めようとする。しかし、斬られたあとに上を見上げるとほぼ全ての紋様から騎士たちになるものが泡みたいに吹き出してくる。
「クソッ!叩き潰すぞッ!ゲツガ!!」
「わかってる!」
キリトとゲツガは百以上の大軍に向けて飛翔する。今は怯んでいる場合じゃない。この上にいるかもしれないアスナ、そして、この中のどこかにいるかもしれないユキを見つけ出すためにもこんな場所で止まっている場合じゃない。
「キリトッ!デカイのぶっ放すぞ!!」
そう言って矢筒からではなくウィンドウから大きな矢を取り出した。これは、ルグルーで見つけたマナをこめると攻撃判定範囲が広がる矢だ。それをつがえる。そしてある程度マナをチャージしたら放った。矢は直線に飛んでいくが矢の先から魔法の膜のようなものが発生して騎士たちを吹き飛ばしていく。しかし、吹き飛んだ騎士以外の奴らが開いた穴をすぐにふさいだ。
「ゲツガッ!!ここからは俺が落としていく!お前は後ろから援護を頼む!」
キリトはそう言って先に飛んでいってしまう。そして、ゲツガは仕方なくキリトを先に行かせて援護に呈した。ゲツガはキリトの後ろから攻撃しようとしたり少し離れたあたりにいる騎士を狙う。しかし、自分の所にも沸いて来るので完全にキリトの援護ができるわけではなかった。
「うおおおああああああ!!」
上にいるキリトは自身を囲む騎士たちを鬼神の如く薙ぎ払い、叩き落して進んでいた。しかし騎士は減るごとにその倍以上ポップしてきてまるで数が減らない。と、その時に一本の光るものがステンドグラスのような紋様から跳ね返ってきたためそちらのほうを向くと、こちらとキリトの向けて弓に光る矢をつがえてこちらを狙っていた。
「キリトッ!後ろから矢が飛んでくるぞ!!」
ゲツガは危険に気付きキリトに向かって叫ぶがキリトにはまったく届かない。そして、弓を構えた騎士たちはキリトとゲツガに向かって矢を一斉に放つ。ゲツガはそれを避けながらキリトの近くまで登ろうとするが矢と騎士に阻まれる。
「どけぇぇええええええ!!」
ゲツガは弓を使って吹き飛ばそうとするがまったくもって歯が立たない。そして三人の騎士がゲツガに向けて剣を振り下ろしてくる。それを弓でガードしてから足を横薙ぎに払う。騎士たちは体が真っ二つになって爆散する。
ゲツガは弓を捨てて、騎士たちに飛び込む。近づく騎士を殴り倒し、遠くにいる騎士は腕ごともぎ取った剣を投げて倒す。そして矢は別の騎士を盾として使い防ぐ。キリトに追いつこうと頑張るが一向に追いつけない。キリトを見るとキリトはイエロー域までHPが減っていて体には何本かの光の矢が貫いていた。そして、これ以上危険だと知らせるためもう一度キリトの名を叫ぶ。
「キリトッ!危ない!!」
それでようやくキリトはこちらを向くがそれと同時に上から来ていた騎士に背中から剣を刺された。そしてキリトは一瞬の硬直に入る。その硬直が命取りとなり騎士がハイエナのように群がってキリトを滅多ざしにした。そして、騎士たちが飛び去ると、キリトの姿はなく紫に近い黒のリメインライトが浮かんでいた。
「キリトッー!!」
ゲツガはキリトのリメインライトを回収するために急ぐが、キリトを狙っていた騎士もゲツガに狙いを定めたため、ゲツガはさっきの倍の数を相手することになった。
「テメェらぁ、退きやがれぇえええ!!」
ゲツガは騎士の腕から剣をもぎ取り逆手持ちに変える。そして飛んでくる矢を剣を振って一気に吹き飛ばす。しかし、敵はプレイヤーではなくNPC。恐怖を感じることがないため何のためらいもなく襲ってくる。しかし、ゲツガはキリトを早く回収しなければならない。ゲツガは剣を騎士の首を確実に狙って吹き飛ばす。騎士を倒した時の爆煙を影にしながら進もうとするが騎士たちの数が多く思うように進めない。とその時に下にある扉が開く音が聞こえた。
「ゲツガ君!キリト君!!」
下から誰かが叫んだ。ゲツガはこの声に聞き覚えがある。つい数分前に別れたリーファの声だ。なぜここに来たのかは知らないが、来たなら手伝ってもらうことにしてゲツガはリーファに叫んだ。
「リーファ!!こいつらを俺が何とかひきつける!だから、キリトのリメインライトの回収を頼みたい!!」
リーファはそれを聞いて頷いたかは背を向けたゲツガにはわからないが、騎士たちを違った翅の羽ばたく音を聞いて来ているとわかった。
「おい、腐れ外道の騎士ども!俺が一人で相手してやるからっかかってきやがれぇ!!」
ゲツガはNPCの騎士にそう言って挑発する。すると、怒ったのかゲツガ一人に向けて一斉に攻撃を仕掛けてくる。ゲツガはなるべく多く時間を稼ぐために一体一体を確実にひきつけて倒す。
殴り、蹴る、斬る、貫く、吹き飛ばす。ゲツガはとにかく騎士たちをリーファに向けないようにする。しかし、騎士たちはある程度登ってきたリーファに攻撃ターゲットを変える奴らが出てきた。ゲツガは素早く倒そうとするが他の騎士たちによって近づくことができなかった。
「クソッ!邪魔なんだよ!!」
ゲツガは剣で確実に騎士たちを叩き落すが、一向に近づけない。しかし、リーファは騎士たちをうまく交わしてキリトのリメンライトに近づいていく。そして、リーファはキリトのリメンライトを掴んだ。ゲツガはリーファに向けて叫ぶ。
「リーファ、脱出するぞ!!」
ゲツガは素早く、周りの騎士を吹き飛ばし、リーファの援護をしながら急降下していく。しかし、それを阻むかのように騎士たちはゲツガ達の前に立ちふさがる。
「邪魔なんだよぉおおお!!!」
ゲツガは騎士の持っていた剣で力ずくで斬り伏せる。大きな巨体は爆散するがその騎士の爆煙の中からリーファのほうに向けて、いきなり光の矢が現れた。リーファを庇い、ゲツガはそれに食らう。
「ゲツガ君!」
「気にするな!ここから逃げるぞ!!」
ゲツガは矢を放ってくる騎士たちを吹き飛ばす。ようやく扉に近づくことが出来たとき体に数本の矢が刺さる。上を見上げると騎士のほとんどが弓を装備していて全て矢を構えていた。
「リーファ!」
叫んだ瞬間と同時に矢が放たれて、ゲツガ達を襲う。ゲツガは剣で矢を弾くが手数が足りず押される。しかし、もうすぐで出口だ。ゲツガはリーファを持ち上げて扉から外へと飛び出した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
飛び出したゲツガとリーファは地面を転がる。
「ハッ、ハッ、ハッ!!」
「な、何とか脱出できたね……その、何度も助けてくれてありがと……」
「ああ、だけどあんな無茶はしないでくれ……」
「それを言うならゲツガ君の方が無茶だよ」
「それはよく言われたな……それよりもキリトの蘇生を頼む……」
「うん」
リーファは手の中から紫色に近い黒の炎を地面においてウィンドウを操作する。そして、手の上に瓶のようなものを出す。炎に向けて、中身をこぼす。それに当たったリメインライトはユージーンとバルダが復活した時と同じ魔方陣のようなものが展開されてキリトの姿が実体化する。
「すまん、ゲツガ。急ぎすぎて死んじまった。それとありがとう、リーファ。でも、無茶はしないでくれ。もう、これ以上、迷惑はかけたくない……」
「迷惑なんて……あたし……」
しかし、リーファが言葉を言う前にゲツガとキリトは再び扉の前に歩き出す。しかし、ゲツガの腕をリーファが掴んだ。
「げ、ゲツガ君!!キリト君!!ま、待って……たった二人じゃ無茶だよ」
ゲツガは振り向いて苦笑しながら言った。
「そうかもしれないな……。だけど、行かなきゃならないんだ……」
「もう……やめて……いつもの二人に戻ってよ……。ゲツガ君……ゲツガ君なんでそんなに執着するの!?」
「行かなきゃならないんだよ、前にも言っただろ?この上にある真実を見たいって……」
「ゲツガ君……あたし、ゲツガ君がそんなんでいるのもう耐えられないよ!あたしゲツガ君のこと……」
ゲツガは掴んでいるリーファの手に自分の手を添える。
「リーファ……ごめん……。あそこには行かないと行けないんだ。俺らは、あの上にいる、あの上にいる人に会いに行かなきゃならないんだ……」
ゲツガは一度息を吸い込んでリーファに告げた。
「あの上にいる、アスナといるかも知れないユキに……」
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