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八条学園怪異譚

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第二十二話 雪男の一家その七

 その様々な野菜やシーフード、それに鶏肉が入った料理を食べつつ愛実に対してこう言う聖花だった。
「それにカイロもね」
「使い捨てカイロね」
「そこまではいかなくてもね」
「コートは必須ね」
「それに下にはくタイツもね」
 それも必要だというのだ。
「持って行こう」
「今回結構重装備ね」
「私達二人共冷え性だし」 
 特に愛実がそうである。
「それは気をつけてね」
「それ言うと冬みたいね」
「それはそうだけれどね」
「冷凍庫の中に行くからには」
「そう、フル装備でいきましょう」
 聖花はこう愛実に言った。
「もう梅雨も終わりで夏になるのに風邪ひくのもね」
「夏風邪って一度ひいたら大変だし」
「だから余計にね」 
 気をつけようというのだ。
「そうしようね」
「わかったわ。防寒対策をしっかりして」
「雪女さん達のところに行こうね」
「それじゃあね」
 こうした話になった、そしてだった。
 二人はパエリアを食べたその日の夜jに早速学園の中に入った。するとすぐjにだった。
 二人の前に日下部が来た、そしてその手にコートやタイツを持っている二人を見てこう言ったのだった。
「冷凍庫にでも行くのか」
「ってすぐですね」
「わかるんですね」
「わかる。もうすぐ夏だ」 
 日下部の言葉は今は探偵めいていた。
「普通コートなりタイツは持って来ない」
「はい、冷凍庫にいる雪女さん達に会いたくて」
「それで持って来ました」
「そうだな。それならだ」
 日下部は二人の話を聞いてすぐに二着jの海軍の軍服を出してきた。見ればそれは黒い海軍士官の冬服だった。
「これも着るといい」
「帽子までありますね」
「それを着てですか」
「冷凍庫の中に入るといい。私も行こう」
「ズボンの方が暖かいからですね」
「だからですね」
「そうだ。女の子は身体を冷やすべきでない」 
 ここからは古風な言葉になる。
「子供を産むからな」
「いや、それ言うと生々しいですけれど」
「産むという話にjなると」
「しかし本当のことだ。男に子供は産めない」
 こればかりは普通では逆立ちをしても無理だ。
「しかし女は違うからな」
「大切な身体だからですか」
「冷やすなっていうんですね」
「そうだ、だから着るのだ」
「わかりました。けれどセーラー服じゃないんですね」
「そういえばそうよね」
 聖花は愛実の今の言葉で気付いた。
「海軍、海自さんっていえばセーラー服なのに」
「日下部さん普通に海軍士官の服出してきたけれど」
「どうしてなのかしら」
「私がセーラー服を着たことがないからだ」
「あっ、そういえばそうですね」
「日下部さんは」
 二人もそのことに言われて気付いた。
「経理学校から入ったから」
「だからですね」
「そうだ、士官からはじまったからな」
 それでだったのだ。
「この軍服しか知らない」
「夏はそれで、ですね」
「冬はあの黒で」 
 日下部は今は夏の礼服だ。いつも通りその見事な詰襟の服を端正に着てそのうえで二人の前にいるのだ。 
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