ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険
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第59話 そして、討伐へ・・・
俺の目の前に大魔王ゾーマがあらわれた。
父親であるロイズがアリアハンの近衛兵に就任した日から、ゾーマの討伐を決意していた。
途中、一年間ロマリア王として仕事に励んだり、一緒に冒険する予定の勇者が連れ去られたり、いくつか予定と違う点が存在するが、目の前のゾーマを倒す準備は整えている。
俺は、周囲の仲間に視線で確認を行う。
セレン、テルル、タンタルは同時に頷いた。
予定どおりの戦闘を行えば、負ける事はない。
大魔王ゾーマは俺に対して、哀れむかのように話しかけた。
「アーベルよなぜもがき苦しむ」
しかし、ゾーマの目は残忍さを隠そうともしない。
「ほろびこそわが喜び」
ゾーマの顔は哄笑に変化した。
「死に行く物こそ美しい」
そして、残忍な表情を見せると、両手を広げると俺達に襲いかかってきた。
「さあわが腕の中で息絶えるがよい!」
「今だ!」
俺の声に答えるように、テルルは手にしていた玉を使用する。
大魔王ゾーマと対峙したときに、最初にすると決めていたことだ。
テルル以外のメンバーは、テルルを守るように防御している。
テルルは光の玉を天にかざした。
あたりにまばゆいばかりの光がひろがる。
やがて、光が静まると、大魔王ゾーマが身に纏っていた黒いマントが消え去っていた。
「ほほう・・・」
ゾーマは驚嘆の声をあげる。
「わがバリアをはずすすべをしっていたとはな」
しかし残忍な表情は変わらない。
「しかし、無駄なこと・・・」
ゾーマは再び俺達に近づいた。
「さあ、我が腕の中でもがき苦しむがよい」
「さあ、作戦どおりにいこう」
俺は、打ち合わせた作戦を指示した。
「フバーハ」
セレンは呪文を唱えると、俺達全員が絹のような光の衣を身にまとう。
これで、ゾーマの強力な吹雪攻撃を和らげることができる。
「とりゃー!!」
タンタルは素早くゾーマの横に飛ぶと、拳に付けた鋼鉄製のパワーナックルを勢いよく振り抜いた。
会心の一撃だったようで、ゾーマの動きは少し鈍った。
「メラゾーマ」
俺は、タンタルがゾーマから離れる瞬間をねらって、大きな火球をゾーマに打ち込む。
俺が身につけている、単体用で最大火力の攻撃呪文だ。
命中すれば、一撃でほとんどのモンスターは消滅する。
ゾーマは俺達の攻撃を受け止めると、反撃に移った。
口からはき出す冷気、それは吹雪となって、俺達に襲いかかる。
「くっ」
「いたっ」
「テルル!」
「わかっているわよ!」
俺の指示よりも早くテルルは行動していた。
光の玉の代わりに取り出した青い正八面体の石。
俺と、母ソフィアが作成した「賢者の石のようなもの」。
テルルが念じると、淡い不思議な光が俺達を優しく包み込む。
全体回復魔法「ベホマラー」と同等の効果をもたらすが、オリジナルの「賢者の石」と異なり、使用回数が約30回しかない。
だが、それだけの回数があれば、ゾーマを倒すことができる。
もし、誰かが集中的に攻撃を受けたり、吹雪の連続攻撃で回復が追いつかなかったりした場合は、セレンが全快回復魔法「ベホマ」で回復を行う予定だ。
癒えた体を実感した俺達は、攻撃を再開した。
どれくらい、戦闘が続いたのだろうか。
俺のMP消費量から判断すると、メラゾーマ17回目だな。
大魔王ゾーマの動きが突然止まる。
やがて、ゾーマの体が崩れ落ちる。
「やったのか」
「・・・。そうだな」
俺はしばらくゾーマを睨んでいたが、ゾーマの体からモンスターの気配が消え失せたのを確認した。
俺達は、一度セレンが瀕死の重傷を負ったが、自分でベホマを唱えて危機を脱出している。
結局、死者を出すことなく勝利した。
セレンとテルルは、お互いの体を抱き合って、健闘をねぎらっていた。
経験値を稼ぐため、連続して戦闘を続けたことはあったが、一体を相手にこれだけ戦ったことはない。
大魔王を相手にしたというプレッシャーをはねのけた事で、一気に疲労が襲いかかったようだ。
ようやく俺の長い旅が終わる。
これまでの旅の経過を思い出していた。
ようやくこれからのことを考える必要がある。
まずは、勇者を助けることだな。
「アーベル」
俺を現実に引き戻したのは、テルルの声だった。
大魔王ゾーマが、倒れた姿のまま俺に話しかけた。
「アーベルよ、よくぞ我を倒した」
後書き
次回で第7章が終了です。
長らくご支援ありがとうございました。
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