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ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第57話 そして、最終確認へ・・・

「種の分配は済んだ。
光の玉はテルルに、魔法の玉はタンタルに、まどうしの杖はセレンに、
テルルの盾をドラゴンシールドに変更と」
明日の襲撃に備えて、ラダドームの宿屋で最終確認をしていた。


ステータスを成長させる種については、次のとおり分配している。

力の種は全て武闘家のタンタルに渡して、タンタルの力はほぼ上限に近い状態である。
物理攻撃を与えるのはタンタルが中心となる。

素早さの種は、俺とセレンが使用した。
テルルの素早さは上限に達しており、最大HPの低い俺とセレンの防御力を高める事を目的にしている。
種の力のおかげで、俺の素早さも上限に達している。

スタミナの種は、俺が既に食べている。
スタミナの種で上昇する体力は、最大HPの上昇に関係するのだが、レベルアップして初めてHP上昇の恩恵を受けることができるため、訓練の途中で全て食べた。

そして、最大HPを上昇させる命の木の実は先ほど俺が食べ終わった。
「それでも、セレンよりも低いのだけど」
ステータスシートを眺めながら俺はぼやいてしまった。
「文句言わないの」
テルルは不満そうにいった。

まあ、テルルの不満ももっともである。
今回の種の分配で、テルルは一つも食べて無いのだ。
「ラックの種ならあるけど」
「いりません」
テルルはすねてしまった。


次に装備品の確認だ。
ゾーマが身に纏う闇の衣を引きはがすのに必要な光の玉は、最大HPと素早さの高い、テルルは持つ事になった。

そして、量産した魔法の玉はタンタルが持つことになった。
ゾーマ戦には、直接使用しないが、事前の準備に必要と考えている。
そして、まどうしの杖をセレンに渡した。
今回、魔法の玉を爆発させる役目をセレンにしてもらった。
セレンはまどうしの杖は装備できないが、アイテムとして使用することで、メラを使うことが出来るようになった。

そして、装備の変更である。
テルルが使用可能な盾でもっとも防御力が高いのは、みかがみの盾である。

しかし、大魔王ゾーマの攻撃で最も恐ろしいのは吹雪攻撃であり、その威力を軽減するためみかがみの盾より少し防御力は落ちるが、吹雪攻撃に耐性のあるドラゴンシールドを用意した。

「タンタルも装備できたらいいのだが」
武闘家のタンタルは、対吹雪性能を持つ防具を身につけることが出来ない。
俺とセレンは、ドラゴンローブを身に纏っており、高い防御力だけでなく、吹雪攻撃の耐性も兼ね備えている。
「根性で耐えますよ」
タンタルは笑って答えた。

タンタルのHPは400に近いので、集中しなければ問題ないはずだ。
とはいえ、ゾーマとの戦闘時には、僧侶セレンに冷熱防御呪文「フバーハ」を唱えてもらうつもりだ。


「そして今回のとっておきは、これ」
俺は、青い正8面体の石を取り出した。
青い石は神秘的な光をはなっている。
「これは、なんですか?」
「俺とソフィアが共同開発した、賢者の石の・・・」
「賢者の石!」
話の途中で、テルルが思わず声を上げる。
賢者の石とは、戦闘中に使用すると、全体回復魔法「ベホマラー」の効果を持つ石のことである。
製法については現在残されておらず、とてつもない貴重な品であった。

「話は終わっていない。これは「賢者の石のようなもの」だ」
「賢者の石のようなもの?」
セレンが首をかしげる。
「残念ながら、この「賢者の石のようなもの」は、完成品ではない」
俺は、残念そうに話す。

賢者の石の効果を再現するために、道具として使うと回復呪文「ベホイミ」の効果がある賢者の杖を解析し、改良を重ねた。
「その結果、この石を作ることができ、ベホマラーも使用出来るようになったのだが、」
「なったのだが?」
タンタルが言葉を重ねる。

「使用回数に制限がある」
「どのくらいですか?」
セレンがたずねる。
「おそらく、約30回分。ゾーマ戦でなんとか使い切る計算だ」
俺は、自信を持って答えた。


そして俺は、ゾーマ戦での戦闘戦術について説明し、翌朝の作戦決行となった。


いよいよ、明日大魔王ゾーマを打ち倒す。
俺はベッドの上で考えていた。
「何か、忘れていないか?」
心の中になにか引っかかるものがある。
だが、それが何かわからない。
「勇者オルテガは問題ない」
自分の不安を打ち消すためつぶやいた。

勇者オルテガは現在、ケガの回復のためリハビリを続けている。
だから、ゾーマの居城で何をやっても問題ない。

やがて俺は眠りについた。



翌朝、ラダドームの南ある浜辺に、俺達はいた。
目の前にある海の先に、目指すべき城があった。
ゾーマの居城である。

ゾーマの城は小島の上に存在している。
ゲームでの勇者は、イベントをこなして橋を造った。
俺達は、別の方法で島へ渡るつもりだ。
当然勇者オルテガのように、泳いで渡るという選択肢はとらない。
水着もないし。

ラダドームの住民は、毎日あの城を眺めては、不安と恐怖の日々を過ごす。
そして、その心がもたらす闇の力でゾーマは自らの力の糧としているのだ。

だが、それも今日で終わらせる。
俺達の力で。
俺は、後ろを振り返り、仲間をひとりひとり眺める。

全身を鍛え抜いた筋肉で固めた男。
しかし、その筋肉は飾りではなく、軽やかな動きで敵の急所をねらい打ちすることができるために存在する。
そして、力だけでなく精神の強さは、優しい顔の奥に秘める二つの黒い瞳が物語っている。

その隣には、闇夜に溶けるための黒衣を身に纏った少女。
俺の願いに答える形で、商人から盗賊へ職業を変え、素早い動きを阻害するからと、美しい長髪をためらうことなく犠牲にした。
力、素早さ、体力ともに、高いレベルで維持しているのは、日頃の努力のたまものだ。
獲物をねらう眼光は大魔王相手でも、臆することなく輝いている。

最後に、竜の魂が込められた衣をまといし、青い髪の乙女。
苦難の旅を、愚痴一つこぼさず、ついてきてくれた。
やさしい言葉で、どれだけ仲間達の傷を癒してくれただろうか。
回復のスペシャリストとして、これまで、死者を出さなかったのは、彼女の冷静な判断力だった。

決して、俺ひとりではここまで来ることはできなかった。
そして、全てが終わったら3人に、本当のことを話そう。
たとえ、何を言われても構わない。
それが、みんなをここまでつれてきた俺の責任であるから。


だが、まだ終わってはいない。
そう、魔王ゾーマを倒してからが、終わりの始まりなのだ。


「何か、忘れてないか」


頭の中から声が聞こえる。
大丈夫だ。
俺達なら大魔王ゾーマを倒すことが出来る。
「問題ない、始めよう」
俺は頷いて、大魔王ゾーマ討伐作戦を開始した。

「ドラゴラム」 
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