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ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第51話 そして、種集めへ・・・

「皆さんは、すばやさの種がどうやって作られるのか、ご存じだろうか?」
「いいえ」
「改まって、どうしたのアーベル?」
思わず、考えが声に出たようだ。
酒場で晩飯を食べていた、タンタルとテルルから、質問を受けた。
ちなみに、セレンは、次の料理の注文に夢中で、俺の声は聞こえなかったようだ。

俺は、すばやさの種を手にしながら話を続ける。
この種は、昔倒したメタルスライムから入手したものだ。
これからの種集めをする計画を話し終わって、アリアハンの酒場で雑談をしていた。
「ここにあるすばやさの種が、なぜ商人に安く買いたたかれるか、昔考えたことがあってね」

「また、謎解きゲームをするの?」
「この前の鳥さん。かわいかったですよね」
「そ、そうですか」
テルルは、めんどうな顔をして、セレンはこの前の鳥を思い出して感想をつぶやくし、タンタルはセレンの感想に違和感をおぼえていた。
俺も、セレンの感想には違和感をおぼえる。

「さすがに、同じ事を繰り返すつもりはないよ」
俺は、解説をはじめる。
どうやら、テルルは知っているようだ。
店員を呼んで、なにやら注文をはじめた。

ステータスを上昇させる各種の種。
これらの種を栽培しようと考える人々は大勢いた。
しかし、誰も成功していない。

正確には、これらの種をまけば確かに成長して、木になって、実が熟せば種もできる。
ただし、こうやって育てた種を食べても、ステータスは上がらないのだ。

俺の母親であるソフィアも、アリアハンの宮廷魔術師として、種の研究に参加したことがあった。
ソフィアは、種がモンスターから力を吸収させることで、初めてステータスアップの恩恵を受けるのではないかと推論していた。
ということは、巨大な養殖施設を作らない限り、種を集めることができないということになる。

もっとも、ステータス上昇以外の役割がこれらの種にはある。
たとえば、

「お待たせしました」
店員が、おつまみを運んできた。
「これは?」
「そう、すばやさの種よ」
目の前の皿には、俺がもっているものと変わらない種が置いてあった。
「このほどよい辛さが、お酒にあうのよね」
テルルは、種をつまみながらビールを飲んだ。

「だから、売値が安いのですか」
「そうゆうこと」
「でも、ステータスアップ効果があるのに?」
「食べないとわからないから、確認が出来なのさ」
俺はタンタルの疑問に答える。
「そういうわけで、いただきます」
「待ちなさい、アーベル!」
「それは、酒のつまみじゃないです」
「ああ、しまった」
俺は、モンスターから入手したすばやさの種を、袋のなかに戻していた。


「さっそく、この杖の力を試すときがきた」
「アーベル。さっさとしなさい」
「はいはい」
俺達は、すばやさの種を集めるため、ムオルの村の周辺に出現する、鳥形のモンスターデッドペッカーを倒していた。

いつものように、直接攻撃でモンスターを倒すのだが、今回は回復方法がいつもとは違っていた。
「これまでは、やくそうで、ちまちまと回復をしていたのだけどね」
「説明は良いから、早く回復させなさい」
「はいはい」

俺は、下の世界にあるマイラの村で購入した杖を振り回していた。
けんじゃの杖、とよばれるこの杖は、回復呪文ベホイミの力が備わっていて戦闘中ならば何回でも使えるという優れものだ。
「新感覚癒し系魔法使い、アーベル?いや、ちがうな」
「だから、早く回復しなさい!」

けんじゃの杖自体は、結構高い攻撃力を誇るが、元の力が低い俺が使うので、たいしたダメージを与えることができない。
そのため、俺は回復に専念していた。
「私の役割が、・・・」
セレンはゾンビキラーで敵を倒しながら、つぶやいていた。
「大丈夫です、セレンさん」
タンタルは、叫びながらモンスターに襲いかかる。
「あなたがいるかぎり、私は何度でもよみがえる!」
タンタルは会心の一撃で、モンスターを粉砕する。
「タンタルさん。すてきです」
「何かが違うような」
俺はため息をついて、回復に専念していた。
「みつけたよ~」
テルルはモンスターからすばやさの種を奪い取っていた。


俺達は、宿屋内の一室に集まっていた。
俺達の目の前に、いろいろな種が置いてある。
「この種をどうするの?」
テルルが俺に質問する。
「最初に、謝らないといけないな」
俺は、タンタルに頭を下げる。

「これらの種は、勇者との冒険が始まってから使用するつもりだ」
「かまいませんよ、アーベルさん」
タンタルは慌てて、頭をさげる。
「こちらこそ、いろいろと、お世話になりました」

「代わりというわけではないのだが、貸していた装備は差し上げます」
「すいません。気を遣ってもらって」
「あとは、これまでの給料だ」
俺は、パーティの持ち金の25パーセントを手渡す。
「いいのですか、こんなにもらって」
タンタルは驚いていた。

手渡した袋には数万ゴールド入っているからだ。
「構わない。今日まで一緒に働いてくれたのだから」
セレンもテルルも頷いている。
「ありがとう、タンタル」
「ありがとうございます。タンタルさん」
「う、うう・・・」
タンタルはすすり泣いていた。
「このご恩、一生忘れません」

「まあ、冒険していれば、いつか再会する機会もありますよ」
「そ、そうですね」
タンタルは涙を拭きながら、話し出す。
「そのときは、俺がごちそうしますから」
「はい」
「楽しみにしているわ」
セレンとテルルは頷いた。
「じゃあ、夕食を食べにいくか」
「はい」
俺達は、部屋を後にした。 
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