ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第45話 そして、試着へ・・・
「今回は、完璧よ!」
「結局、普段着か」
「アーベル、何か言いましたか?」
「なんでもない」
「それなら、行きましょう」
「はい」
「・・・」
「・・・」
今日のテルルはテンションが高い。
俺だけがテルルの相手をして、セレンとタンタルは最初から黙っている。
マイラの村での一件の後、俺は買い物に付き合わされていた。
「アーベル、ちゃんと責任は取りなさいよ!」
とのことで、落下しても下着が見えない服を買うために世界各国を回っていた。
「テルルが最初に行けばいい」
という提案は
「下に誰がいるかわからないから駄目」
と一蹴されている。
・・・。結局、気にいった服が見つからないため、普段着にすることとなった。
まあ、怒りが収まってくれたのなら何でもいいが。
「アーベル、何か言いましたか?」
「いや」
準備が出来た俺達は、ホビットのノルドがいる洞窟に向かった。
「井戸に入らせてもらうよ」
「下の世界にいくのか」
知っていたのか、ノルド。
「当たり前だ。井戸に潜った人数と、出てきた人数が違えば、すぐにわかる」
「確かに、そうですね」
この世界では、怪談は通用しないのだろうか。
どうでもいいことを考えながら、井戸に入った。
「これだな」
アッサラームにいるリックから教えてもらったところを調べると、土の下から鉄の板が出てきた。
リックが他の人に見つからないよう、フタをしていたのだ。
俺達も後からふさぐように、リックにお願いをしていた。
下の世界から、上の世界へルーラなどで戻るときは、別のところを通るので、穴をふさいでも問題ない。
今回の降りる順番は前回と一緒だった。
じゃんけんに参加できないのは残念だが、他に優先することはある。
今回は、ドムドーラと呼ばれる町の北にある山に到着した。
途中で、モンスターに遭遇することなく、町にたどり着く。
町に着き、宿を確保したあとで、俺は全員に自由行動を提案した。
みんなを見送ると、俺は1人宿屋でくつろいでいた。
今後の方針を考えるためだ。
とりあえず、この世界で武装を整えるのが優先か・・・
「アーベルさん。武器屋にいかないのですか?」
しばらくしてから、タンタルが宿屋に戻ってきて提案してきた。
俺は、この町での買い物は考えていなかった。
ドムドーラの武器屋にこのパーティの戦力強化が可能な装備品はなかったからだ。
「そうですね。まあ、せっかくだから見に行きますか」
とはいえ、事前に情報を知っていると思われるのは困るので、ついていくことにした。
2人だけで行くと思っていたが、途中で買い物をしていたセレンとテルルに遭遇し、結局4人で行くことになった。
「セレンさん。きっと似合うと思いますよ。いかがですか」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
俺達は、ドムドーラの武器と防具の店にいた。
店の店員以上に、購入を勧めるタンタル。
困惑した表情のセレン。
あからさまに嫌そうな顔をする、テルル。
そして、どこから突っ込めばいいのか悩む俺がいた。
「セレンさん。とりあえず試着してはどうですか」
タンタルは、店員を呼び寄せて「あぶないみずぎ」の試着が出来ないか交渉する。
「でも、こんなの着て戦えなんて言わないわよね?」
テルルが最初に冷静さを取り戻し、タンタルに攻撃した。
「ええセレンさん。温泉につかる時だけで、かまいませんよ」
タンタルは、素早くみをかわした。
さすがタンタル。パーティで最速の男だ。
しかも、タンタルが呼び寄せた店員は男だ。
店員は、セレンの姿を眺めると、タンタルの提案を喜んで受け入れた。
「ただの、布地です。防御力は皆無です」
俺は、別の角度から攻撃する。
「アーベルさん、心配いりません。男性にとっては十分過ぎる攻撃力を持ちます。一撃ですから防御は不要です」
「・・・」
「それに、男なら、「きわどいですね」が定番の台詞でしょう?」
「それは、男の商人の話だ」
だめだ、俺の攻撃も通用しない。
「さあ、セレンさん。ぜひ」
「・・・」
セレンは黙っていた。
いや、違う。何か呪文を唱えようとしていた。
「セレンさん。店の中で、攻撃呪文はいけませんよ」
タンタルは、セレンに近づこうとしている。
「大丈夫です」
セレンは落ち着いて、呪文を唱えた。
「ま、まさか」
「ピオリム」
セレンは自分に対して、素早さをあげる呪文を唱えると、俺の後ろに逃げ出した。
「アーベルさん。あなたも攻撃呪文は使いませんよね?」
タンタルは、俺に近づいた。
「ああ、わかっている」
俺は、袋から道具を取り出す。
「それは、聖水」
「人には、効果がないものだ。逃げるなよ」
聖水を人にかけても効果はない。
ただし、モンスターであれば、わずかながらダメージを受ける。
「・・・」
タンタルは、聖水をかけられる前に、ひとことつぶやくと消失した。
「・・・」
「・・・」
「タンタルさんとは、別人です」
セレンは、床に落ちた「あぶないみずぎ」を眺めていた。
俺は、タンタルの態度が急変したことから、モンスターがタンタルに化けたのかと推測した。
聖水をかけられる前ににげだしたことから、推測は間違ってはいないだろう。
正体を見破る事が出来るアイテム「ラーの鏡」があれば確実だが、残念ながら持っていない。
「みなさん。どうしたのですか?」
俺達が宿屋に戻ると、タンタルは1人で待っていた。
「何処にいた、タンタル」
「・・・、それが覚えていないのですよ。いつのまにか、ここにいまして」
「そうか」
「武器屋には行きませんでしたか?」
セレンが質問する。
「無駄遣いはしたくないので、商店街のほうには行かないつもりでしたが・・・」
タンタルは、しばらく考えてから付け加えた。
「どうも、はっきりしませんね」
「そうか」
不審に思いながらも、今日はゆっくり休むことにした。
念のため、タンタルの了解のもと、聖水をかけてもらったが問題はなかった。
ページ上へ戻る