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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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第二十九話~ロストカラーズ・ブラックリベリオン~

 
前書き

やっと第一期終了です。
描写が不足している部分もあると思いますが本編をどうぞ。

 

 



 ライが自らの記憶をギアスを使い皆から消去した後、ライの記憶を失った皆の反応は様々であった。生徒会や黒の騎士団のメンバーはその場にいないはずの誰かを気にかけるような仕草をするものがいた。
 特に顕著にそれが現れていたのはルルーシュ、ナナリー、スザク、カレンの4人である。
 ルルーシュは無意識に医療関係のデータを集める。気付けばナナリーとは関係のないデータを見て「何の意味があるんだ?」と考えるが、ルルーシュがそれを破棄することはなかった。
 ナナリーはライと一緒に折った折り紙を見て涙を流す。何故、覚えのない折り紙を見て涙を流すのか彼女には分からなかった。だが何故か涙を流すことが正しいことに思えて、ナナリーはその折り紙を涙で暫く濡らし続けた。
 スザクは戦うことの意味や世界にとって何が正しいのか考えるときに無意識に口にする。「君ならどう思う?」と。後になって自分でも誰に向けて言ったのか分からないでいるスザク。だがその分からないことが悲しく感じ、自然と涙が頬を伝う。
 カレンは何かを失くしたような気分になり、何かを探すように街やゲットーに訪れることが増えた。だが何を失くしたのか分からず、更に何も見つからないことをカレンは悲しんだ。
 C.C.はライの記憶を失うことはなかった。だが、記憶を取り戻したライが自分を犠牲にする選択をしたことは少しだけ気にしていた。
 六課メンバーは思う。ライが残したものの大きさを。記憶をなくした程度では消えないつながりを。ライがとった選択は、理解はできても納得はできない。そう考える者が多かった。

 ライが姿を消した後、世界はその歩みを止めようとしない。
 中華連邦に亡命していた、日本の元官房長官が九州に攻め入り傀儡政権を樹立する。その傀儡政権を打ち砕いたのは、スザクのランスロットと自分の目的の邪魔になると判断したゼロであった。
 ゼロはブリタニア軍から奪取したナイトメア、ガウェインを使いスザクを助ける。その後、目的が同じであることを示しスザクとルルーシュは協力し九州での戦闘を終結させた。
 その顛末を見ていたなのはとフェイトは再び、過去の自分たちを思い出していた。そしてこの先、スザクとルルーシュの2人が仲良く協力できると考えていた。

 九州での一件が終わり今度はユーフェミアが世界を動かす。
 ユーフェミアはエリア11全域に宣言する。

ユーフェミア「私、ユーフェミア・リ・ブリタニアは富士周辺に行政特区日本の設立を宣言します!」

ルルーシュ「何!?ブリタニアがっ!」

スザク「日本を……認める?……」

 それは裏表の無い、純粋な心を持つユーフェミアだからこその考えであった。
 この宣言で日本人の多くは行政特区日本に参加しようとする。
しかしルルーシュはその考えに否定的であった。ナナリーのために造り、そしてブリタニア帝国さらに言えばブリタニア皇帝を倒すために設立した黒の騎士団の存在意義が消えるのだ。その為、ルルーシュは1つの案を考え特区日本の設立式典に出向いた。
 そして会談と銘打ちルルーシュはユーフェミアと二人きりで話し合う。そこでルルーシュは知る。ユーフェミアの本当の考えを、そして彼女が本当の意味で優しい存在でありそれが尊いものであると。
 そしてルルーシュは決意する。ユーフェミアと手を取り合うことを、共に歩むことを。
 だが運命というものがあるのならそれはどれだけ残酷なのか。世界はユーフェミアの優しさを拒否した。

ルルーシュ「例えば、俺が日本人を殺せと命じれば……」

 それは何気ない例え話の一つであった。ルルーシュも望まないことであった。

ギアスの暴走。

 ライが恐れ、そして味わって欲しくなかった運命をルルーシュは味わうこととなった。

ユーフェミア「……そうね、日本人は殺さなきゃ。」

 最初はギアスに若干の抵抗を見せるものの、絶対遵守の命令には逆らえず彼女はそれがさも当たり前のように口にした。
 自分のギアスに気付いたルルーシュは彼女を止めようとしたが全ては遅すぎた。

ユーフェミア「では、ブリタニアの兵の皆さん、虐殺です。」

 その一言とユーフェミアが日本人に発砲したことが引き金となり惨劇が始まった。

フェイト「…そんな……」

ティアナ「こんな……ことって…」

はやて「……嘘やろ…」

キャロ「………い…やぁ…」

エリオ「………なんで……」

スバル「………う……ぁ……」

なのは「………もぅ……やめて……」

 六課メンバーは嗚咽を漏らすように言葉を発する。戦場を知らない者はその光景を見るのも辛い表情を浮かべる。そして戦場を知るヴォルケンリッターは歯を食いしばりながらその光景を見ていた。
ライの記憶の時とは違い、そこにあるのは一方的な虐殺のみ。そのことも精神的に彼女達にはきつかった。
 この光景の原因を作ったルルーシュは自分をなじるようにC.C.と話す。

C.C.「驚いたぞ、まさかここまでするとはな。」

ルルーシュ「俺じゃない……」

C.C.「何?……ッ!」

 ルルーシュの左目に浮かび続けるギアスの紋章を見たC.C.は全てを察した。

ルルーシュ「俺は知っていた。これがヤバイ力だってことぐらいなのにっ!!!」

 血を吐くように言葉を発するルルーシュ。そこにあるのは後悔か、それとも懺悔か。
 しかし状況が停滞を許してくれないことを知っているからこそ彼は指示を出す。ゼロと言う仮面をかぶり続けて。

ゼロ「黒の騎士団総員に注ぐ。ユーフェミアは裏切った!
卑劣にも行政特区日本は我々を誘き寄せる罠だったのだ!
   今すぐに出撃し、ユーフェミアを探し出せ!
   そして、見つけ出し殺せ!!」

 その時、ゼロではなくルルーシュは涙を流していた。

 その頃、スザクは現状を受け止めきれずユーフェミアを見つけ真意を問いただそうとランスロットで出撃していた。
 ユーフェミアの捜索は僅差で黒の騎士団が遂げた。ゼロは搭乗していたガウェインから降りユーフェミアと対峙した。
 ギアスに縛られていても本質は変わらないのか、ユーフェミアはゼロに笑顔で語りかける。

ユーフェミア「ねぇ、考えたのだけど私と2人で特区日本を……あれ?日本?」

ゼロ「ああ、出来ればそうしたかった。君と……」

 スザクはその時、上空からユーフェミアの姿を見つける。その姿に一瞬安堵するが次の瞬間スザクの中に激情が湧き上がる。

ルルーシュ「さようなら、ユフィ。多分、初恋だった。」

 構え。照準。発砲。

パンッ

 それはこの惨劇の終幕にはあまりにも短く、あまりにも呆気ない乾いた音であった。
 撃たれたユーフェミアはその場に崩れ落ちる。

ユーフェミア(えっ?どうして……ルルーシュ……)

スザク「うあああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 スザクは即座にランスロットを操縦し、ユーフェミアを回収。そして母艦であるアヴァロンに帰還し懇願する。その手には日本人の血と自らの血で真っ赤に染まったドレスを纏うユーフェミアの姿があった。

スザク「お願いします。ユフィを……ユフィを助けてください!」

 スザクは縋るように、求めるように言葉を搾り出す。
 すぐにユーフェミアの治療は行われた。しかしユーフェミアの傷は致命傷だった。なんとか意識だけは取り戻したユーフェミアはスザクと話す。

スザク「ユフィ、教えてほしい。どうしてあんな命令を?」

ユーフェミア「……命令……なんのこと?」

スザク「えっ?」

ユーフェミア「…それより……スザクは……日本人…でしたよね?」

スザク「う、うん。」

 再び、ユーフェミアにギアスの命令が発動しそうになるがユーフェミアは抵抗する。

ユーフェミア「駄目、そんなこと考えちゃ……いけないッ!」

 目を瞑り強く自分に言い聞かせた彼女が目を開いたとき、ギアスを自らの精神のみで彼女は解除した。それは遅すぎた奇跡。

ユーフェミア「スザク…」

スザク「なんだい?」

ユーフェミア「式典は……日本はどうなったかしら?」

スザク「ユフィ、………覚えていないのか?」

ユーフェミア「日本人の皆さんは喜んでくれた?」

 死に向かう自らのことではなく、自分が目指した平和な世界を彼女は案じた。

ユーフェミア「私はうまくできた?」

スザク「ユフィ、行政特区は………ッ、大成功だ。皆喜んでいたよ。」

ユーフェミア「………良かった…」

 スザクの言葉で本当に安堵するユーフェミア。
 しかし、虐殺の際の戦闘が終わり集まった日本人は憎しみをユーフェミアにぶつけ続ける。怨嗟の声は大きくなり広がり続ける。
 それは恐らく、ユーフェミアが最も望まない光景。

ユーフェミア「おかしいな、あなたの顔…見えない……」

スザク「ッ!」

ユーフェミア「学校……ちゃんと行ってね…………私は……途中でやめちゃったから…」

スザク「今からでも行けるよ!そうだ、一緒にアッシュフォード学園に行こう!楽しい生徒会があるんだ!」

ユーフェミア「私の分までね……」

スザク「ダメだ!ユフィ!ダメだ!!」

 スザクは止まらない涙を流しながら必死に叫ぶ。彼女の命が失われないように繋ぎ止めようとするように。

ユーフェミア「スザク……あなたに…会えて………」

 そこでユーフェミアはその人生に幕を閉じた。後に虐殺皇女という汚名をかぶることとなって。
 一部始終を見ていた六課メンバーの大半は涙していた。世界を思い、そして平和のために人生をかけた彼女を尊んだ。
 フェイトは思い出す。自分の兄が言っていた言葉を。

「世界はこんなはずじゃなかったことばかりだ。」

真実、その通りのことが目の前で流れている。
この場合誰が悪い?その場にいる全員が考える。

ギアスを使ったルルーシュか?

ルルーシュをこの道に進ませた皇帝か?

ギアスを授けたC.C.か?

どれもが正解であり、どれもが決定打ではない。あえて言うのならこれがユーフェミアの運命であった。
 そのことを頭では理解しているからこそ彼女たちは悲しんだ。

 それでも世界は動き続ける。ユーフェミアの虐殺が引き金になりエリア11、日本では反乱が起きる。後の歴史でブラックリベリオンと呼ばれる、恐らく現時点で最大規模の反乱であった。
 ゼロが率いる部隊の本体がトウキョウ租界の手前まで進軍した時、ルルーシュの元に一本の電話が届く。その相手はスザクであった。
 そこで語られるのはスザクのある決意と友達としての会話。
 スザクは言う。憎むべき、殺したい者がいることを。
 ルルーシュは言う。憎めばいいと。
 これを見ていた六課メンバーは察する。スザクはもう気づいていると。
 電話を切り、戦いを始めるルルーシュは考える。

ルルーシュ(俺はあの日から世界を壊すことを望んでいた。創造の前には破壊が必要だ。
      そのために心が邪魔になるのなら消し去ってしまえばいい。
      俺はもう進むしかない。)

 そこまで考えルルーシュは嗤う。
ルルーシュの持つ闇の深さを垣間見た六課メンバーは背筋を凍らせた。

 そこからは刻々と状況が変わる。
 鬼神のようなスザクの戦闘。
 状況を把握し、的確に指示を出すルルーシュ。
 そしてコーネリアから聞き出す、過去の真相の一部。
 ゼロへの恨みから、動き出すジェレミア。
 そして、誘拐されるナナリー。
 ナナリーが誘拐されたことを知ったルルーシュは、ナナリーが連れて行かれたと思われるライの眠る神殿に向かう。そこでC.C.はガウェインを駆り、ジェレミアの操るナイトギガフォートレスと共に海に沈む。
 ルルーシュは神殿の最奥まであと一歩というところでスザクと対峙した。
 ルルーシュは一度、言葉でスザクを丸め込もうとしたがギアスの存在を指摘されその言葉も止まった。スザクはその場にいたカレンに語りかける。ゼロの正体について。
 そしてスザクの放った弾丸により、ゼロの仮面は割れルルーシュの素顔が晒された。
 カレンはゼロの正体がルルーシュであることに動揺し、スザクは一瞬悲しみにくれる表情をしたが瞬時に怒りの表情を表した。

スザク「信じたくは…なかったよ。」

ルルーシュ「気づいていたのか?」

スザク「確信はなかった。だから否定し続けてきた。君を信じたかったから。
    だけど君は嘘をついたね。僕とユフィに、ナナリーに。」

ルルーシュ「ああ、そのナナリーがさらわれた。」

スザク「えっ」

ルルーシュ「スザク、一時休戦といかないか?ナナリーを救うためにも力を貸して欲しい。俺とお前、2人いればできないことなんて――」

スザク「甘えるな。その前に君が手を組むべきはユフィだった。君とユフィが手を組めば世界を――」

ルルーシュ「全ては過去。終わったことだ。」

スザク「過去!?」

 ルルーシュの言葉にスザクは愕然とした。スザクはルルーシュの言葉から彼の中ではユーフェミアはもうどうでもいい存在と切って捨てられたと同様なことを言われたのだ。

ルルーシュ「お前も父親を殺しているだろう?懺悔など後でいくらでもできる。」

スザク「いや、君には無理だ!」

ルルーシュ「なに?」

スザク「君は最後の最後に世界を裏切り、世界に裏切られた!君の願いは叶えてはいけない!」

ルルーシュ「馬鹿めっ!理想だけで世界が動くものか!さぁ撃てるものなら撃ってみろ!流体サクラダイトをな!」

 ルルーシュは自分の胸に下手な爆弾よりも大きな災害を生むサクラダイトを貼り付けた。それはルルーシュの心臓が止まると爆発する仕掛けであった。

スザク「貴様!」

ルルーシュ「それより取引だ。お前にギアスを教えたのは誰だ?そいつとナナリーは――」

スザク「ここから先はお前には関係ない!」

 今度はスザクの言葉にルルーシュは愕然とした。

スザク「お前の存在が間違っていたんだ!お前は世界からはじき出された!ナナリーは俺が!」

ルルーシュ「スザクッ!!!!!!!」

スザク「ルルーシューー!!!!!!!」

 お互いを憎しみ、そして友達には絶対に向けない表情をして銃口を向け合う。そして辺りに銃声が響く。そのやり取りがこれからの2人の未来を決定づけた。
 ここまでを見ていた六課メンバーは立て続けに起こる出来事に呆然としていた。しかし一番感じていたのは恐らく悲しみである。
 ライは悲劇を回避するために眠りに着いた。しかしそれは回避することができない現実として起こってしまった惨劇。これではライの犠牲は無駄になってしまったも同然なのだ。そのことが悲しいのだ。
そして想う世界が同じであるのに手段が異なることで敵対し合う現実が歯痒かった。



 再び世界が動き出すのはこれから一年後であった。


 
 

 
後書き

削るとこねぇぇぇぇ!っていうのが本音です。
R2はもっと長引くかもしれませんが頑張ります。

次回は外伝+α書きます。
え~~と、リクエストにあったFateを舞台にした外伝は書いててネタバレが多く含まれてしまったので、もう少し本編進んでから載せます。なのでそれ以外のネタ上げると思います。
それとリクエストは随時受け付けます( ´ ▽ ` )ノ


ご意見・ご感想をお待ちしておりますm(_ _)m

 
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