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八条学園怪異譚

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第二十二話 雪男の一家その三

「じゃあいいわね」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
 皆も先生の言葉に頷く、そしてだった。
 それぞれ用意されていた粉チーズをマカロニの上にかける、それからだった。
 いただきますをしてから食べる、聖花は一口食べてすぐに笑顔で言った。
「美味しい、やっぱり愛実ちゃんのおソースっていいわよね」
「何言ってるのよ、聖花ちゃんが茹でてオリーブ油を絡めたマカロニもね」
 その聖花の横にいる愛実も笑顔で返す。
「凄い絶妙な湯で加減よ」
「そんなにいいの?」
「ええ、いいわよ」
 そう言うのだった。
「絶妙よ」
「そんなにいいのね」
「聖花ちゃん元々パスタ茹でるの上手じゃない」
 聖花はパンだけでなくそちらにも長けているのだ。
「それに最近特にね」
「腕をあげたっていうのね」
「イタリアンレストランでもやっていけるんじゃないの?」
「駄目よ、あっちはもう特別の技術だから」
 聖花は愛実の言葉に笑って返す。
「そう簡単にはできないわよ」
「そうね、パスタにしてもだし」
「でしょ?他のお料理もあるし」
「そうそう、フランス料理と違って家庭的だけれど」
「違うわよね。カプリチョーザにしても」
 そのイタリア料理のチェーン店だ、ボリュームの多さと大蒜とオリーブをふんだんに使った味つけで知られている。
「個人的に作るのは好きだけれど」
「それでもよね」
「うん、難しいのよ」
「お店でやるにしてはね」
「特別な技術が必要よ」
「遊びじゃ出来ないわよね」
「パン屋さんや食堂と同じでね」
 聖花は愛実にここでこう言った。
「そうなるわよね、やっぱり」
「食堂もね。何だかんだで」
「特別でしょ」
「食堂は一日にしてならずだからね」
 何処かの孫を自分の道具にする為にはあらゆる謀略を駆使する悪辣な老人の様なことを言う愛実だった。
「色々作られないと駄目だし」
「パン屋さんもなのよね」
「つまり私達はあれなのね」
「そう、それぞれ食堂かね」
「パン屋さんで生きるしかないのね」
「そう思うわ。そういえば愛実ちゃんの茹で方だけれど」
 聖花はマカロニを食べつつ愛実に言う。
「おうどんとかね」
「食堂の?」
「うん、最近ちょっと早く茹でてない?」
「ちょっとね。これまでは大阪とか福岡の感じがいいかなって思ってたのよ」 
 うどんの茹で方にも地域差がある、それはというのだ。
「ほら、大阪とか福岡っておうどん柔らかいじゃない」
「そういえばそうね」
「でしょ?それでなのよ」
「大阪風にしてたの」
「そんな感じにしてたけれど」
「変えたのね」
「最近大阪風よりも香川風が人気だから」
 そうなったからだというのだ。
「ほら、香川っていったら讃岐じゃない」
「讃岐うどんよね」
「讃岐うどんはコシを重視するから」
 それでだというのだ。
「変えたのよ」
「そうだったのね」
「前からコシも考えて茹でてたけれどね」 
 それは忘れていなかった、愛実は食堂の娘として話す。
「最近は讃岐でいってるの」
「成程ね、そういうことだったのね」
「そうなの。あとはね」
「愛実ちゃんのお店きし麺もやってるわよね」
「今凄い人気なのよ」
 人気メニューの登場をほくほくとして言う愛実だった。店から見れば人気メニューは多いに越したことはないからだ。 
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