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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第二章 A's編
  第五十六話    『第三魔法による救い』

 
前書き
リインフォースの救済の話です。 

 





Side リインフォース


主はやてが倒れられた後、私達はアースラへと収容された。
主が眠っている部屋で守護騎士達に私の今の現状を説明している。

「やはり、破損が致命的なところにまで至っている。
防御プログラムは停止したが、歪められた基礎構造はそのままだ。
私は、夜天の魔導書本体は遠からず新たな防御プログラムを精製しまた暴走を始めるだろう…」
「やはり、か…」

将…シグナムがそう呟く。
やはり予想されていたのだろう。
済まないと思っている。

「修復は、できないの?」

風の癒し手…シャマルがそう聞いてくるがそれはもう分かりきっている事だ。
だから素直に無理だと告げた。

「管制プログラムである私の中から夜天の書本来の姿は消されてしまっている」
「元の姿が分からなければ戻しようもないということか」
「そういう事だ」

蒼き狼…ザフィーラは無念そうに顔を俯かせる。
紅の鉄騎…ヴィータも悲しい顔をする。

「…主はやては大丈夫なのか?」
「何も問題はない。私からの侵食も完全に止まっているしリンカーコアも正常作動している。不自由な足も時を置けば自然に治癒するだろう」

騎士達は安心の表情をして心残りのない顔をしだす。

「士郎…残されるのはお前だけだが主を守ってやってくれないか?」
「…了解した」

アーチャー…いや、士郎は苦い顔をしながらももう助ける術が思いつかないのだろう、そう言葉を返す。
だがお前たちは残ることができるのだぞ?
だから言わせてもらう。

「…いいや、違う。お前たちは残る。逝くのは、私だけだ」

それで全員は驚きの顔をする。
その後、クロノ執務官にこの事を報告する。


◆◇―――――――――◇◆


Side シホ・E・シュバインオーグ


昨日の戦いから翌日、アースラで待機していた私達のところにクロノがやってきてある事を告げる。

「夜天の書を破壊する」

そう言った。
それによってなのはは「どうして…?」と聞く。
聞くところによるとこれは管制プログラム…リインフォースの進言だという。
どうしてそんな事になったのかクロノとユーノとフィアが詳しく説明しだす。

「防御プログラムは無事破壊できたんだけど夜天の魔導書本体はすぐにプログラムを再生しちゃうんだって…」

ユーノがそう言う。
するとまた暴走の危険性が出てくるわけね。

「今度もはやてちゃんが侵食される可能性が高いんです。夜天の書が存在する限り、どうしても危険は消えないそうです」

フィアがそう付け足す。

「…だから闇の書は防御プログラムが消えている今のうちに自らを破壊するよう申し出た」
「そんな…」
「でも、それじゃシグナム達も…」
「はやての下には士郎が残るけどその分皆が消えた悲しみは癒せないわね…」

もう裏技を使う時が来たわね。
でも最低でも今の私じゃ二人が限界だ。
だから全員救うことができない。
どうすれば…。
だけどそんな私の思惑とは裏腹にそこにやってきたシグナム達がやってきてある報告を言い出す。

「いや、私達は残る」
「シグナム…!」
「防御プログラムとともに我々守護騎士プログラムも本体から開放したそうだ」

ザフィーラがそう言う。

「それでリインフォースからなのはちゃん達にお願いがあるって…」

その内容を聞いた時の私の心情は計り知れないものだった。
これはもう私の計画を執行する時ね。
それで士郎を呼び皆に聞かれないようにしてから。

「士郎、ちょっといい…?」
「なんだ、シホ…」
「私のある準備を手伝って欲しいのよ。リインフォースを救うために…」
「なんだと…? できるのか?」
「ええ。私は、聖なる錬金術師の継承者だから…」
「聖なる錬金術師…?」
「今はまだ…後で皆に話す時に一緒に教える。それと、イリヤ…?」
《ふあぁ~…なに、シホ…?》

普段は休眠状態のイリヤを起こして、

「あの“服装”の記憶を私に教えて。投影で作り出すから」
《分かったわ、シホ。なんならセイバーにも手伝ってもらったら?》
「そうね。出てきて、セイバー」
『はい、シホ』

そしてセイバーが姿を現す。

「セイバー…」
「わかっていますシホ。リインフォースを救うのですよね」
「ええ。だから協力して…」
「了解しました。私に出来ることならなんなりと…」

魔術と魔法のハイブリットでシルビアさんの記憶と力を受け継いだ私。
千年を超えるアインツベルンの知識を持つイリヤ。
そしてセイバーに士郎。
魔術に精通している私達が揃えばなんだってできるだろう。
私のリインフォース救済の計画は立ち上がった。


◆◇―――――――――◇◆


Side 高町なのは


雪の降りしきる中、私とフェイトちゃんはリインフォースさんに指定された場所までやってきた。
シホちゃんは少し込み入った用事があるというので一緒に来れませんでした。

「シホはなにか考えがあるのかな? リインフォースを救う方法とか…」
「わからないよフェイトちゃん…。もしかしたら何か考えがあるのかもしれないけど…」

私達にまだ話していない事があるみたいだから今度も全部話して欲しいの。
でも、今はリインフォースさんを送るしか私達に出来ることはない…。
とても悔しいけど、リインフォースさんの願いを叶えてあげなきゃ。

「ああ、来てくれたか。………やはり赤き騎士はいないのだな」

リインフォースさんはシホちゃんがいない事に少し残念そうな顔をする。

「シホちゃんはなにか考えがあると思うんです!」
「そうです!」
「そうか。しかしもう私は消えるのみの存在だ。
だからもし間に合わなかったらシホ・E・シュバインオーグに私の代わりに主を救ってくれたことの感謝の言葉を言っておいてくれ」

リインフォースさんはそう言って儚い笑みを浮かべる。
その表情で私はまた悲しくなる。
どうして世界はこんなに悲しい出来事で溢れているんだろうという思いで。
フェイトちゃんが先に声をあげて、

「あなたを空に返すのは私達でいいの…?」
「お前たちだから、頼みたい…。
お前たちのおかげで私は主はやての言葉を聞くことができた。
主はやてを喰い殺さずにすみ騎士達も生かすことができた。
感謝している…だから最後はお前たちに私を閉じて欲しい…」

そうリインフォースさんは言うけどまだ私は納得できていないことがある。

「はやてちゃんとお別れをしなくていいんですか…?」
「主はやてを悲しませたくないんだ」
「っ、リインフォース…」
「でもそんなの、なんか悲しいよ…」
「お前達にもいずれ分かる…海より深く愛しその幸福を守りたいと思えるものと出会えればな…」

そう言って微笑を浮かべるリインフォースさん。
そこに遅れてヴィータちゃん達守護騎士さん達がきた。
あれ? でも士郎さんの姿がない。
どうしてだろう…?

「士郎もいないか…。まぁきっと主はやての下にいるのだろう」

それで空を見上げて、

「さて、それじゃそろそろ始めようか。夜天の魔導書の終焉だ…」

私達はその言葉を聞き準備をし始めた。


◆◇―――――――――◇◆


Side 八神はやて


…目を覚ます。
場所は私の家のベッドの上だ。
あれからどうしたんだろうか。
その時だった。
突然胸が痛くなり、嫌な予感がした。
リインフォースが消えていなくなってしまうような不吉な予感が…!

「みんなのところに、リインフォースのところにいかな!」
「…リインフォースを救いたいか、はやて?」

そこにいたのに気づかなかったけどアーチャーが鷹の姿で私のそばにいた。

「士郎…?」
「今、リインフォースは自ら消えてしまおうとしている。お前を守るために…」
「そんな…!」
「だから、聞きたい。はやて、お前はリインフォースとどんな形になっても一緒に生きていたいか? どうだ…?」

士郎がそう言ってくる。

「もちろんや! リインフォースももう私の家族の一人や! だから一緒にいて欲しい!」
「その言葉に二言はないな?」
「そんなんあるかい! どんな事があっても私はリインフォースを助ける!」

覚悟の言葉をもってして士郎に言う。
すると士郎は人間の姿になり笑みを浮かべ、

「それを聞けて安心した。ならばリインフォースのところにいこう。
そして、私が起こすわけではないが…一つの特大の奇跡を見せてやろう」

そして士郎は私を車椅子に乗せてくれてみんながいる場所へと押していってくれた。
絶対諦めへんからな。リインフォース、待ってて!

「少し急ぐぞ、はやて! 手遅れになる前に!」
「ええよ!」

士郎が足に力を入れて全速力で、でも私に気をつかったスピードで車椅子を動かしていく。
そして着いた先にはみんなが、そしてリインフォースの姿があった。
なにかの魔法を執行しようとしているけどそんなんさせん!

「リインフォース!!」

私は思いっきり叫んだ。
それでみんなは私の方へと向く。

「主…それに士郎」
「あかん! リインフォース、ダメや! 消えたらアカン!!
破壊なんかせんでええ! 私が、ちゃんと抑える! だから…!」
「主はやて…これでよいのですよ」
「いいことない! いいことなんかなんもあらへん!」
「随分と長い時を生きてきましたが…最後の最後で私はあなたに綺麗な名前と心をいただきました。
騎士達と士郎もあなたのそばにいます。何も心配はありません…」
「心配とかそんな…!」
「ですから、私は笑って逝けます」
「………それは本当か?」
「士郎…?」

そこで今まで黙っていた士郎が声を出す。

「リインフォース、それがお前の本当の望みなのか?」
「そうだ。私はこれ以上主はやてを苦しめたくない。だから、いいのだ…」
「それは勝手な押しつけだ。はやての姿を見て心を傷めないのか? なんとも思わないのか?
違うだろう。お前は本当は何時までもはやてや騎士達と一緒にいたいはずだ」
「それはお前の勝手な思い込みだ。私は逝ける事に満足している…」
「嘘だな。ならお前の目に浮かぶその涙はなんなんだ…?」

気づかなかったけど薄らとだがリインフォースの目から涙が流れている。

「その涙がお前の本心なのではないか?」
「ち、違う…これは!」
「もっと素直になれ! お前ははやて達と一緒にいたいのだろう!
何も恥ずかしがることはない。心に溜まっている本心から来るものをぶちまけてみろ!
それに、お前ははやてのもとに残る騎士達を羨ましく思わないのか? 本当は一緒の輪に入っていたいのだろう!?」

それでリインフォースは一回言葉を切らす。
でもすぐに、

「……………ああ、その通りだ。私は主はやてと共に生きていきたい…。
しかし! もうどうしようもないのだ! このままではまたプログラムが暴走して今度こそ主の命を奪うかもしれない!
なら…私は夜天の魔導書とともに消えるしかないではないか!!」
「助かる見込みならある! 侵食もせずお前も生き残れる方法が…!」
「なに…!?」
「その前に聞いておきたい。お前の本心を言え。それを聞かなければ私達もお前を無理やり救っても心まで救う事ができない…。
だから、少しでもいい。お前の心からの叫びを聞かせてくれ…」

士郎の言葉にリインフォースは涙を流しながら、

「生き、たい…愛する主はやてと、私の生涯の友であった騎士達と、そして士郎…お前とも生きていたい!! 主はやてに深い悲しみを残して死にたくなどない!!」
「そうだ。それでいい…。お前の生きたいと願う心、確かに聞き届けた。だから、私達はお前を救おう…」

士郎がリインフォースを救うと言った。
でもまだ私はどんな方法で救うかは知らない。
本当に救う事が出来るのだろうか。この子の事を。

「…ありがとう士郎。リインフォースを引き止めてくれていて」

そこに新たな人物の声が聞こえた。
みんなは一斉に振り向く。
そこにはドレス姿のセイバーさんと、そして煌びやかな純白のドレスに身を纏い白い王冠を被っているシホちゃんの姿があった。

「シホちゃん…綺麗…」
「うん…」

なのはちゃんとフェイトちゃんがそう言う。
私もそう思うし。

「天のドレス…間に合ったのだな、シホ」
「ええ。投影による模造品のドレスだから効果は一回きりだけどそれでも奇跡を起こす事くらいは造作もないわ」

天のドレス言うんか。
シホちゃんはリインフォースの元へとゆっくりと歩いていき、

「…リインフォース、たとえ姿形が変わろうとも、はやてと生きていきたいという気持ちは変わらない?」
「ああ。出来ることなら主とともに…生きたい!」
「そう…。それじゃあなたに一つの奇跡を見せてあげる」

シホちゃんはそれはもう見惚れるような笑みを浮かべて奇跡を起こすといった。

「…古代ベルカ諸王時代に生まれた異端の子、聖なる錬金術師…シルビア・アインツベルンの力と記憶を受け継いだ私ならあなたを救うことができる。
でも、代償としてあなたは管制人格と闇の書の力、そして器…人格以外をすべて失うわ。それでもいい?」
「構わない…生きていればいい事は必ずあるのだから…」
「そう。ならあなたに第三魔法『天の杯(ヘブンズ・フィール)』とシルビアから受け継いだ一回きりの裏技【創造物質化】による魂の改竄と体の創造の魔法をかけるわ。
あ、士郎、あなたもリインフォースの隣に並びなさい。一回きりの奇跡なんだから派手にいかなきゃね!」
「わかった」
「シュバインオーグ…本当にリインフォースを救えるのか…?」
「ええ、大丈夫よシグナム。任せて…!」

それからシホちゃんは皆にそれぞれ何かを言われて最後には全部任せられて見守ることになった。
だから私も、

「シホちゃん…私の家族を、頼みます」
「ええ。はやて…。それじゃやりましょうか。セイバー、魔法制御のためにユニゾンを!」
「はい、シホ!」
『ユニゾン・イン!』

セイバーさんがシホちゃんに融合して金髪碧眼となった後、

「それじゃいくわよ! まずはリインフォースと士郎の魂を物質化するわ」

シホちゃんは目をつぶり細かい呪文を唱えながら魔法陣が展開した。
そしたらリインフォースの体から光の玉が飛び出してきた。
途端、リインフォースはその場に倒れてしまった。
…って、え!?

「し、シホちゃん!? リインフォースが!」
「大丈夫だはやて。それはもう意思のない抜け殻だ。っと、私ももう―――」

士郎がそう答えて、そしてすぐに士郎も体が消え失せ光の玉へと変化した。
二つの玉が浮かび上がる中、

「…魂の改竄、執行!」

二つの光が色々な光を放ち少し変化した。

「体の創造を魂の情報から再現…」

すると二つの光を中心にどんどん輪郭ができてきて二人の体がどんどん現れ出す!
そして完全に二人の姿が出来上がると、

全行程、完了(トレース・オフ)………二人共、目を開けてみて?」

そしてゆっくりとリインフォースと士郎は目を開ける。
二人は体を調べ初めてそしてまずリインフォースが驚きの表情をする。

「これは…人間の体だと、いうのか?
それにリンカーコアも正常に働いている。身体能力も変わりはない…いや、全体的に能力が強化されているのか…?」
「ええ。リインフォース。あなたの魂の情報を改竄させてもらったわ。
だから今から鍛え直せばすぐに闇の書時代にまで実力を取り戻すことができるわ。
それにせっかく人間に生まれ変わったんだからもう苦しむ必要はないわ」
「シュバインオーグ…すまない。そして、ありがとう…」

リインフォースが助かったことに変わりはないので私は嬉しくなり思わずリインフォースに抱きついてしまった。

「リインフォース! もうあなたは自由なんよ! 一緒に生きられるんよ!」
「はい…はい…!」

また涙を流しているけどこれはきっと嬉し涙や。

「…うん。さて、士郎の方はどうなっているかしら?」
「ああ。解析で調べさせてもらったが私の身体能力も生身だけでもかなり向上している。
そして魔術回路が四倍の108本に増えている。しかも精神年齢と身体年齢が二十歳にまで下がっている。これは…?」
「私だけ恩恵を受けてるのはなんか嫌なのよ。だから魂の改竄で魔術回路の数を増やして魔力容量も倍以上にさせてもらったわ。
それに、リンカーコアも精製されているでしょ? 余計なお世話だと思ったけど私と同じくらいの魔力容量にしておいたわ。
そして私と同じように魔術回路とリンカーコアをリンクさせたんで宝具やその他の魔術もデバイスを通して使えば非殺傷の設定ができるからこれで士郎もめでたく魔導師になる事ができるわ。
あ、精神年齢と身体年齢に関してはただのオマケだから気にしないでいいわよ」

それを聞いて私はなんてチートなんや…と思ったのは許してほしい。

「でも、これで第三魔法『天の杯(ヘブンズ・フィール)』以外の創造物質化の能力は失われてしまったわ。
本当に一回きりだけだったから…でも後悔はしないわ。
それじゃ、なのはにフェイト…?」
「え、なにシホちゃん…?」
「なに、シホ…?」
「リインフォースの精神が抜けて抜け殻となった体を空に返しましょう…」
「あ…」

そうやった。
もともとまた防衛プログラムが復活しないようにリインフォースを闇の書と一緒に消す予定だったけど奇跡でリインフォース自体は生き残った。
だけど今はもう意思のない抜け殻なんや。
それでなのはちゃんとフェイトちゃんはまた魔法陣を形成して準備を始める。
その間、リインフォースは抜け殻となった元自分の体を抱きしめて、

「…すみません。本来なら私の役目だというのにその役目を放棄してあなただけ逝かせる事になってしまい…。
だから、あなたの分も私は生きます。だから安らかに眠ってください、我が写し身よ…」

そして儀式が終了しリインフォースの体は消え失せてそこに小さい剣十字の紋章の欠片だけが残されていた。

「主はやて…私はもう人の身になってしまいあなたの力になるには難しい体になりました。
ですからリインフォースという名前はこの欠片から生まれてくる魔導の器に付けてあげてください」
「それはダメや。リインフォースはリインフォースなんやから」
「でしたら私をⅠ…つまりアインス。次に生まれてくる魔導の器をⅡ…ツヴァイと名づけたらどうでしょうか?」
「それはええ考えやね」

そう考えるとこれからが楽しみや。
そんな事を考えてる時やった。
なのはちゃんが嬉しそうにシホちゃんに抱きついた途端、シホちゃんのドレスがボロボロと崩れていく光景を目にして思わず、

「士郎! ザフィーラ! 目を瞑っとき!!」

大声出して男性二人の目を塞いだのはまぁいい判断だったやろ。


◆◇―――――――――◇◆


Side シホ・E・シュバインオーグ


…危なかった。
セットアップしてバリアジャケットを纏って裸になるのだけは防ぐことができた。

「ど、どうしてドレスが崩れちゃったの…?」
「これは人間が触れると黄金に分解しちゃう代物なのよ。もともと投影品だったし儀式が終わるまで持ったほうよ」
「そうなんだ…」

それで融合を解除していたセイバーが私の服を用意してくれて私は木の陰に入り速攻で着替えた。

「ありがとセイバー…」
「いえ、どうせこうなることだろうと思っていましたから…」
「そうなんだ…」

セイバーも結構いい性格になってきたわね。

「…シュバインオーグ、あの時から今回まで様々な事に力を貸してくれた件に関して騎士代表として言わせてもらう。
主はやてだけでも救ってくれるだけでかなりのものだというのに、リインフォースの命まで救ってくれてどれだけ感謝の言葉を述べたらいいかすら思いつかない」
「いいじゃねぇかシグナム。素直な言葉を言えばいいんだよ」
「そうだな、ヴィータ。感謝する、シュバインオーグ」
「あたしからも。シホ、ありがとな!」
「シホちゃん、ありがとう」
「シュバインオーグ、ありがとう…」

守護騎士達が全員感謝の言葉を言ってきて背中がムズ痒くなる気持ちである。

「私からも改めて言わせてくれ。主はやてと私すらも救ってくれてありがとう」
「シホちゃん。ありがとな!」
「…私だけではきっとリインフォースすら救う事もできなかっただろう。だから、シホ、深く感謝しよう」
「もう…士郎まで。やめてよ。とても恥ずかしくなるじゃない…」

たぶん今私はかなり顔が赤くなっているだろう。
それでそっぽを向きながらも、

「その、ありがたく気持ちは受け取っておくわ…」
「うん。それじゃシホちゃん、私達はアースラで事情聴取を受けなあかんからここでお別れや」
「そう…またね」

それではやて、守護騎士、リインフォース、士郎はその場を離れていった。

「それじゃ私達も帰るとしましょう。もう私は色々と魔力消費が激しいんで休みたいし」
「シホちゃん、セイバーさんの紹介はどうするの? これからセイバーさんもウチで暮らすことになるんでしょ?」
「そうね…セイバーはどうする?」
「…そうですね。私はまだアンリミテッド・エアの中で待機しておきます。
今のシホのご家族の方々にはしかる時に紹介してくだされば結構です」
「分かったわ」

それでセイバーはアンリミテッド・エアの中に入っていった。
そして私達は帰りながら話をしていた。

「事件、終了だね」
「うん…」
「そうね」
「でも、ほんとによかったね。全部丸くおさまって…」
「クロノが言ってた。ロストロギア関連の事件はいつも悲しい感じだって。
今回は全員救えたけどほとんどの事件では悲しみが付き物なんだって…。
大きな力に惹かれて悲しみが連鎖していく…」
「うん…」
「人間欲があればなんでも起こすからね。私の世界もそんな感じだったわ」

それで一旦話が終了して、

「…私、局の仕事は続けようと思っているんだ。執務官になりたいから。母さんみたいな人とか、今回みたいな事を早く止められるように…」
「それがフェイトの目指す道なのね…」
「うん…」
「なのははどうなの…?」
「私は、執務官は無理だと思うけど、方向は多分フェイトちゃんと一緒。ちゃんと使いたいんだ、自分の魔法を…」

それでなのはとフェイトは笑みを浮かべる。

「そういうシホはどうなの…?」
「そうだよシホちゃん。私達だけ聞いておいて自分だけ内緒はないよー」
「う…やっぱり聞いてくるのね。まぁとりあえずまだ私は応検討かな?
でも、もうかなり管理局の流儀に染まっちゃったし、事件に巻き込まれていく内に自身に隠されていた力に目覚めた事もあるし局入りはマジメに考えようと思っているわ。
自分ごとでも考えれば管理局という後ろ盾が欲しい事だし…」
「後ろ盾…?」
「どういう事…?」
「私の持つ様々な技術…投影魔術に固有結界、第二魔法『平行世界の運営』、第三魔法『魂の物質化』。セイバーというユニゾンデバイス。
これらはもし全容を知られれば狙われる可能性は山となってくるわ。
だから集団の中で後ろ盾を作って匿ってもらい、そしてレアスキルとして認定してもらいたいところが私の今の考えよ」
「あー…そうだね」
「うん。それは納得だね。まだ知られていないけどどこかでバレちゃう事があるから。
特にリインフォースを人間にしたのは隠す事はできないだろうし…」
「その通り。ま、気長に考えていくわ」
「そっか…」

と、そこにユーノ、フィア、犬形態のアルフが目の前から歩いてくる。
フェイトとはマンションの前で別れてユーノ達と家に帰っているところだ。
話によるとユーノとフィアは無限書庫の司書をしないかと誘われているらしい。

「でも私はできるならお姉様のもとについていきたいですから。
もしお姉様が管理局に入るのでしたら私も戦う力がありますし武装局員と無限書庫の司書を兼任というのもありかもしれません」
「そっか。でもあなたの未来なんだからじっくり考えなさいよ?」
「はいです」
「でも本局に寮も用意してもらえるみたいだし発掘も続けていいって話だから僕は決めちゃおうかなって…思っているんだ」
「そして未来はユーノは司書長になるかもしれないという訳ね」
「うん。その可能性もあるかもしれないね」
「本局だとミットチルダより近いから私は嬉しいかな」

なのはがそう言う。
それでユーノが嬉しそうに「本当?」と聞きなのはは「うん!」と答えていた。
なにやらこの二人の雰囲気はいいものかもしれないと思ったわ。
そして別れ際、二人は仕事が決まるまでアースラにいるというらしくまた会えるね。と言って私達は別れた。
そしてなのはと私の携帯にメールが来ていてすずかから明日フェイトやはやてを交えたクリスマス会をしようという話になった。

「ちゃんと話さないといけないね」
「そうね。特にアリサは私の事を一から聞いてくるだろうし…また思い出話を頭で纏めておかなきゃね。
なのは達にもどういった経緯で第三魔法を会得したとか、聖なる錬金術師の件も話さなきゃいけないし…」
「うん、教えてね…?」
「ええ」

それで今日はお開きになった。


◆◇―――――――――◇◆


Side リンディ・ハラオウン


今私はレティと話をしている。
そこにフェイトさんから連絡が入った。
それでいくつか驚く報告があったが概ね解決したという。

「フェイトちゃんから…?」
「うん。魔導書本体の消滅を確認…後、シホさんの目覚めた力でリインフォースを救う事ができたって…」
「目覚めた力…?」
「ええ。なんでも古代ベルカ時代のレアスキルらしくて『創造物質化』という魔法でリインフォースの精神だけを取り出して魂を宿して体すら新たに創造したっていう話よ」
「魂の物質化に体の創造…とてつもないレアスキルね」
「ええ。でもそれは劣化を繰り返していて一回きりだからもう失われたという話。でも『魂の物質化』という魔法だけは残ったそうよ」
「それだけでも十分レアスキルね…彼女は、管理局に入ってくれるかしら?」
「まだわからないわ。でも前向きに検討してくれているそうよ」
「そう…」

それからレティがシホさんがグレアム提督と協力していた件について話した。

「それと今回シホちゃんとフィアットちゃんがグレアム提督と協力関係にあった件についてもグレアム提督の口添えで不問になるみたい。
グレアム提督はともかくシホちゃん達ははやてちゃんを救う事を念頭に入れた計画だったらしいからなんとかグレアム提督が最後の仕事としてもみ消したとか…」

それからグレアム提督の件に関して話し合われた。

「グレアム提督の件に関しては提督はリーゼ達と短くない期間の間、刑務所に入って罪を償った後、故郷に帰るそうよ」
「やっぱり罪はあるのよね。
具体的には管理局員でありながら捜査を混乱させたクラッキングに捜査妨害…他にも過去の闇の書のデータの改竄。
それに加えてリーゼ達のシホさんの非殺傷設定を解除した殺す目的での魔法の使用で民間人殺人未遂が含まれてくるから。
それに何の罪もないはやてさんを封印しようと企んだ。
それは闇の書を封印しようとした事はいいことだけどやり方がダメね。間違っているといってもいいわ。民間人の犠牲で終わらそうとするなんて…」
「かなり重い罪になるわね。情状酌量の余地もあるとはいえ魔力も大幅封印されてしまうでしょうね。だからリーゼ達ももう戦うことはできないでしょう」
「シホさんが言うにはもう気にしていないらしいけどやっぱり罪は罪よね」
「だから三人ともこれから少なくない罪を償っていくらしいわ」
「そう。でもこればかりはしょうがないからね」
「ええ」

それで一旦話は止まり、

「…はやてさんの事はどうなるのかしら?」
「グレアム提督は罪を償って出所した後、今までどおりに援助を続けるそうよ。あの子が一人で羽ばたける歳になったら真実を告げることになるだろうって」
「そう…」
「でもこれであなたもご主人への報告にいけるわね。いつ行くの?」
「来週…クロノとフェイトさんと三人でね」
「なんて報告する予定…?」
「そうね。多分いつもと同じよ。相変わらず慌ただしい日々だけど元気にやっていますって!」
「そっか」

それでレティとの会話は終了した。


 
 

 
後書き
創造物質化の魔法とは?
「魂の物質化の上位存在魔法。
魂の物質化以外に新しい命の創造、魂の改竄。体の創造、無機物の創造など…。
創造できることはなんでもできた。
それで過去にセイバーの魂を改竄してユニゾンデバイスに造り変えた。
その力はあまりに強力だったのでシルビアは異端児扱いされた。
…能力が劣化してしまったのはよかったことかもしれない」

と、いうオリジナル魔法の設定です。 
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