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八条学園怪異譚

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第二十一話 ランナーその六

「それで八条大学に残ってコーチになったのよ」
「お仕事はあったのね」
「それはね」
 あって食べることは出来た、だがそれでもだったというのだ。
「けれど。本当に無念の引退だったから」
「それでなのね」
「ええ、まだ走りたかったでしょうし」
「だからなの?あの人の生霊が」
「そうじゃないかしら」
 聖花はただひたすら走り続けるその人を見ながら愛実に話す。
「未練があるから」
「じゃあ相当強い未練なのね」
 愛実はもう生霊がどういったものか知っている、それはある意味死者よりも念が強い、そのことを知って言うのだった。
「ああして今も現役の姿で走り続けてて」
「そうでしょうね。ただね」
「ただ?」
「どうして工業科なのかしら」
 聖花は彼女が走っているその場所について疑問を述べた。
「それがわからないけれど」
「工業科出身だったとか?」
「あの人体育科出身よ」
 聖花はすぐに愛実に返した。
「八条高校のね」
「それで八条大学に進学したのね」
「そう、体育学部ね」
 所謂スポーツ推薦での入学だ。
「それで入った人だから」
「工業科とは縁がないのね」
「その筈だけれど」
「ちょっと検索してみる?」
 ここでは愛実がスマートフォンを取り出してそのうえでネットに接続して検索を開始した。
「あの人について」
「多分ウィキペディアにも名前があるわよ」
「じゃあ簡単に色々わかるわね」
「大学のホームページにも名前があると思うし」
「八条大学ね」
「あの大学のホームページ大きいし内容も充実してるからね」
 彼女のことも載っているのではないかというのだ、そうした話をしながらだった。
 今度は愛実が検索して調べる、そこに書いてあったことは。
「ああ、結婚してるのね」
「それはしてるだろうね」
「実際の年齢を考えたらね」
 口裂け女と花子さんが言ってきた。
「普通に結婚して子供もいてね」
「そうした生活してるでしょ」
「うん、家庭は旦那さんと子供が二人」
 愛実は彼女が開いていたブログを見つけた、そのブログは毎日行進されていて家族のことがしょっちゅう話に出ていた。
 それを見てそして言うのだ。
「女の子二人ね。旦那さんは」
「どうした人なのかね」
「体育学部の関係者とかじゃないの?」
「学校の先生よ」
 それだというのだ。
「八条高校工業科のね」
「ああ、ここなんだね」
「ここの先生なのね」
「社会科を教えていて」
 そしてだった。
「ラグビー部の顧問だって」
「うちのラグビー部は全国区よ」
 聖花がこのことを言う。
「野球部と並んでね」
「花園の常連よね」
「そうよ」 
 この八条学園は野球にラグビー、柔道に吹奏楽が有名だ。そうした分野で全国区の学園として知られているのだ。
「そこの顧問っていうから」
「そっちじゃ有名よね」
「それでどんなことが書かれているの?」
「どんなことって?」
「だからあの人のご主人の馴れ初めとか」
「あっ、ウィキに書いてあったわ」
 このことはウィキペディアに書かれていた。 
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