| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン ~無刀の冒険者~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

SAO編
  episode4 とある祭りの全員集合2

 「と、いうわけだあ痛ってぇ!!!」
 「なにが「というわけだ」だこの野郎!!! 俺はエギルに、いいクエストの情報が入ったから四十三層に夕方四時半に来いって言われてきたんだぞ! なんだこの有様は!!!」
 「いや、俺は嘘は言っていないぞ?いいクエストの情報があるのは本当だ」
 「言ってない情報があんだろ!!?」
 「まあ、「キリトと勝負がしたいから」とシドが言っていたとか、折角だから賭け札を配ったとか、かな。大した問題じゃないだろ?」
 「大問題だコラ!!!」
 「まあまあもうやっちまったことだし、痛っ! 叩くな、叩くなって!」
 「うるせえ元凶!!!」

 第四十三層の、転移門。暴れるキリトを、俺とエギルが抑えている。そしてその周囲には、何重にもなった人垣が出来ており、笑ったりはしゃいだり、中には映像結晶を向けてくる奴までいる。昨日、雑貨屋のエギルに頼んでおいたキリトの呼び出しは、上手くいったようだ。

 エギルは俺の行きつけの雑貨屋の店主であり強面の斧使いだが、それとは裏腹に中身はいい奴だ。もっともいい年こいてるだけあってそれも上手く隠しており、店での売り上げが中層フロアの剣士クラスのサポートに使われていることを知る者は少ない。

 俺はそれを知って以来、使わないドロップやクエストでの報酬アイテムはエギルの店に下ろすことにしている。まあ平たく言えばお得意様ってわけだ。

 そんな俺の頼みとあって、エギルもノリノリでキリトを捕まえてくれた。
 まあ、本人の悪戯心も多分にあるだろうが。

 そんなこんなで、呼び出されたキリト。最初にして最大の関門だった、「目立つのが嫌いなキリトを大人数の前に連れ出す」ことは成功した。ここまでくれば後は何とかなる。エギルと『冒険合奏団(クエストシンフォニア)』の面々に抑え込まれたキリトがとうとう屈したところで、俺はクエストの説明に入った。

 キリトの恨めしげな目が痛い。いやまあ悪乗りしたのは認めるが、これは決して悪くない話だ。そのはずだ。そして、これをこなすことは、きっとキリトのその力を、もっと上まで引き上げてくれる。この男の力は、きっとこの先どこかで必要になるに違いないのだから。

 そんなことを考えていたら、キリトの目が一瞬、ふっ、と怯えたように曇った。

 「おい、シド。ここまでされてなんだが、俺、パーティー組むのは…」
 「ああ、それなら心配すんな。今回のクエは一人用。パーティーは組まなくていい」
 「……そうか」

 やっぱり。
 予想はしていたが、流石にまだパーティー組むのは怖いか。

 クリスマスの前の鬼気迫るレベル上げの話、そしてたった一人での年イチの大物フラグMob攻略。誰にも言わなかったが、俺はそのままキリトが早まったことをしないかとひそかに心配していた。だが、そのあと何があったのかは知らないが、キリトの顔に若干の光が戻ったのだ。

 少なくとも、今までのように振舞おうと、必死に努力するような。

 「今日は、お祭りだ。五十層のボスといい、最近は暗いことばっかだったからな」
 「……そうだな」
 「だから、今日はお前も楽しめ! なんてったって、今日の主役は、俺とお前だ」

 まだまだ、初めてあった頃とは程遠い、影のあるキリトの顔。

 (今日のこのバカ騒ぎが、ちっとはあいつの気分を晴らしてやれればいいがな)

 がらにもなくそんなことを考えながら、俺はにやりと笑った。


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧