ソードアート・オンライン stylish・story
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第三十三話 旅立ち
シグルド達との一悶着あった後、三人はエレベーターに乗り込み塔の頂上に出るとそこには周りの景色が一望出来る程の高い場所に出た。そしてその高さは空が手に届くほどでもあった。
「空が近いな。手が届きそうだ」
「なるほど。確かにこの高さから飛べば、一気に長距離を移動出来そうだな。それよりもこの景色に魅入ってしまいそうだ」
「でしょ。この空を見てると、ちっちゃく思えるよね、いろんなことが」
キリトとシュウはそれぞれの意見を口に述べながらは堪能しているようだったがリーファは少し寂しそうな表情を浮べていた。ここでシュウが不穏な空気を変えようとリーファに質問する。
「なあ、リーファ。シグルドが言っていた【レネゲイド】って何だ?」
「領地を捨てたプレイヤーはレネゲイド・・・つまり【脱領者】って蔑まされるの」
「脱領者か・・・その名前を考えた奴の顔を見てみたいモンだな」
シュウはレネゲイドの言葉の意味を知って溜め息を漏らす。自分がやりたい事を自由にやる・・・それが『ゲームの概念』なのだとシュウは考えていたがそれを壊しているこの世界に疑問を抱えたようだった。
「いいきっかけだったよ。いつかはここを出ていこうと思ってたの。一人じゃ怖くて、なかなか決心がつかなかったんだけど。なんで、ああやって、縛ったり縛られたりしたがるのかな?せっかく羽があるのにね・・・」
リーファの考えにシュウが述べる。
「人間ってのは所詮、自分の事しか考える事の出来ない生物だ。自分が良ければ他人の事なんか御構い無しに私情を押し付けてくる。【自由】なんて言葉は【欲】の二の次だと思うぜ?リーファ」
「複雑ですね、人間は。人を求める心をあんなふうにややこしく表現する心理は理解できません」
シュウの考えに便乗して、ユイがキリトの胸ポケットから出てきて考えを述べる。
「求める?」
リーファの疑問に答えるようにユイはキリトの頬にキスをした。「私ならこうします。とてもシンプルで明確です」「全ての人間が物分かり良い連中ばかりじゃねぇよ、ユイ。さっきの奴等が良い例だ」
そして両親と須郷の事を思い出し、顔を顰める。
「人を求める心・・・か。それってやっぱり悪い事・・・なのかな?」
先程の出来事も踏まえながらリーファは求める心が悪いものではないかと思い始め、そう口にするがシュウは自分の考えを口にする。
「それが必ずしも悪い事じゃねぇよ、リーファ」
「えっ?」
「確かに度が過ぎるとさっきみたいな悪い事になっちまう。でもな、そうするって事は心を許せる存在・・・人を見つけたって事だ。そこから様々な関係を作る事が出来、様々な困難に立ち向かう勇気が生まれる・・・俺はそう思うぜ?・・・っと、少し臭い話をしてしまったな。悪ぃな、リーファ」
シュウの言葉と笑顔に促されたのかリーファは少し顔を赤らめながら首を横に振る。
「うんうん。シュウ君の言う通りかも。慰めてくれてありがとう、シュウ君」
「そう言ってくれると嬉しいってモンだ」
二人のやり取りを見ていたキリトはシュウの説得力の大きさに感心を抱いていた。
(シュウはチャラチャラした奴だけど、第一に仲間の事を考えている。だからああ言った考えが出てくるのかもしれない。そう言った事は俺も学ばないとな)
そして準備が整い、三人はそれぞれの羽を展開して飛ぼうとすると・・・
「リーファちゃん!」
レコンが後ろのエレベーター出入り口から出て来た。
「ひ、ひどいよ、一言声かけてから出発してもいいじゃない」
「ゴメン、忘れてた。アンタはどうするの?」
リーファとレコンはリアルでも友達らしく何時も喧嘩しているデコボココンビだが、リーファも心を許している仲間だった。レコンはその質問に着いて行くと答える筈だったが・・・
「当然僕も着いて行くよ・・・と言いたいとこだけど、ちょっと少し調べたいから、僕はもうしばらくシグルドのパーティーに残るよ」
そう言うとレコンはキリトとシュウを見ると真剣な表情で頼み込む。
「キリトさん、シュウさん。彼女、トラブルに飛び込んでく癖があるんで、気をつけてくださいね」
「あ、ああ。わかった」
「トラブルに巻き込まれるのは慣れてんだ。今更どうこう言わねぇよ」
「そうですか。それと・・・シュウさん」
レコンはシュウの隣に来ると二人に聞えないように呟く。
「貴方には負けません!リーファちゃんに振り向いて貰うのは・・・僕です!!」
挑戦的な言葉を聞いたシュウはニヤリと笑みを浮べると・・・
「That's sound fun(それは楽しみだ)。俺もリーファは気に入ってんだ。これからは仲間でもあるが恋敵だな。よろしくな?」
レコンは「はい!」と答えると再び、エレベーターに乗るとその場から居なくなった。シュウとレコンのやり取りを見ていたキリトはシュウに尋ねる。
「なあ。さっき、レコンと何話してたんだ?」
「別に・・・強いて言うならライバル宣言って奴だな」
キリトはシュウの言葉の意味が全く分かっていないみたいだった。そして三人は再び羽を広げるとその場から飛び立つとリーファの先導で飛行を始めた。
「さ、急ごう!一回の飛行であの湖まで行くよ!」
「ああ!」「了解だ!」
後書き
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