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戦国異伝

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第百十五話 大谷吉継その三

 だからこそ信長も彼にこう言う。
「御主はまことに関羽よ」
「またそう仰いますか」
「うむ。織田家にとって、わしにとってな」
 それだというのだ。
「これからの頼むぞ。よいな」
「有り難きお言葉」
 柴田は信長の言葉に深々と頭を下げてそのうえでまずは岐阜を後にした。そのうえでその城に向かった。
 その日にだった。信長は今度は丹羽から話を受けた。
 丹羽は信長のところに来ると簡潔にこう述べた。
「来ました」
「そうか、来たか」
「では早速ですな」
「無論会う」
 それはもう決めていた。それでだった。
 信長はすぐに立ち上がりそのうえで家臣達と会う部屋に向かった。無論丹羽もそれに従う、そのうえで二人で部屋に入ると。
 今度は金森が来てこう信長に言ってきた。
「では今より」
「部屋に入れるがよい」
「わかりました。では大谷殿」
「はい」
 若い男の声が返ってきた。その声に応えて。
 若い、賢さと落ち着きを併せ持っており精悍さもある顔の若い男が出て来た。彼は信長の前に来ると平伏してこう名乗った。
「大谷吉継と申します」
「左様か」
「はい」
「御主をここに呼んだ理由は他でもない」 
 信長は率直にその男大谷に告げた。
「御主の噂は聞いておる。織田家に入らぬか」
「織田家に仕えよというのですね」
「そうじゃ」
 こう大谷に告げていく。
「それで御主はどうじゃ」
「有り難き幸せ。ですが」
「条件があるか」
「禄等はそれがしの働きを見て頂きたいです」
 そしてそのうえで決めてもらいたいというのだ。大谷は自信を持って信長にこう告げたのである。
「そのうえでお決め下さい」
「でははじめは何石でもよいのか」
「左様です」
 大谷は確かな声で信長に答える。
「殿の望まれる石高で」
「禄なしでもそれではそれでそれがしの才がないということ」
 信長がそう見てのことだからだというのだ。
「ですから」
「そして多ければじゃな」
「それがしの才があること」
「そうみなすか。ではじゃ」
 信長は大谷のその言葉を聞いたうえでこう彼に告げた。
「御主には千石じゃ」
「千石でございますか」
「はじめはそれだけ与えよう」
 あくまで最初はだというのだ。
「わしはまずわしの目で見て用いる」
「そうされると聞いています」
「そうでなければ用いぬ」
 その目で見て確かめてそれで用いるというのだ。
「そして用いた者は決して見捨てぬ」
「それだけの才があるからですか」
「御主は用いる、まずは千石やろう」
「そして千石から」
「それ以上のものを見せてもらおう」
 千石といえば相当なものだが信長は大谷にあえてそれだけ出しそのうえで功を挙げればさらに石高を上げるというのだ。
 大谷もそれを聞いて言う。
「畏まりました。それでは」
「期待しておるぞ。して御主の幼名じゃが」
「桂松といいました」 
 それが彼の幼名だった。大谷は信長にはっきりと答えた。
「それがそれがしの幼名です」
「では桂松よ」
 信長は早速彼を幼名で呼んだ。 
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