カンピオーネ!5人”の”神殺し
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第一部
阿修羅との戦い Ⅳ
「そこの神殺し共よ。貴様ら、コヤツを守らんのか?」
沙穂がラーフの権能によって動けなくなってしまった後、今まで空中にいたアシュラとヴァルナが地上に降りてきた。どうやら、近接で確実に殺そうというようだ。・・・それとも、宿敵たる帝釈天を弑逆したカンピオーネに対する止めは、せめて自分の手で、ということだろうか?
ラーフだけは未だに空中で権能を行使している。どうやらラーフの権能には、『権能を行使している間動けない』という制約があるようだ。
「何?自分たちが有利になった瞬間、私たちにも参加しろって?随分自分勝手なんだね。」
鈴蘭の少し苛立ったような言葉。彼女たちは今、リップルラップルの結界の中にいるのだ。この結界の中ならばラーフの権能の効果も及ばないが、その代わり、結界の広さはこれが限界だ。再構成するために一瞬でも結界を解いてしまうと、カンピオーネとアウター以外の人間がショック死してしまうだろう。
更に、この結界は、精神防御の性能に特化している。つまり、物理防御が低いのだ。いくら、アウターの中でも屈指の防御能力を持つリップルラップルと言えども、まつろわぬ神の特殊な効果の権能を防ぎ、尚且つ物理耐性も高くするということが出来なかった。
睡蓮も翔希も、持っているのは攻撃系の技ばかりであり、唯一攻防一体の権能を持つ鈴蘭がこの場を離れる事は不可能であった。
・・・逆に言えば、ラーフの権能さえどうにか出来れば、睡蓮と翔希は戦闘に参加出来るということなのだが。
「それにね、まだ勝負は付いていない。貴方たち・・・自分の宿敵を倒した沙穂ちゃんのこと、少し甘く見すぎていないかな?」
「何・・・?」
鈴蘭の挑発に、顔を強ばらせる阿修羅たち。
「沙穂ちゃんは、こんなところで死ぬような人間じゃないっていってるんだよ!」
その叫びと共に、彼女は手に隠し持っていた機械のスイッチを押し込んだ。その瞬間、目も眩むような輝きが、闇の世界を明るく照らす。
「む、コレは・・・!?」
ラーフが焦ったような声を漏らす。鈴蘭が自身の権能【無限なるもの】で作り上げた、幾つもの照明。神の権能で創られた闇の世界をも明るく照らすその光が、沙穂の自由を取り戻した。
未だ幻痛が残っていたが、それを無視して権能を行使する沙穂。
「頭を垂れよ、我は力の化身也。幾千幾万の敵を薙ぎ払い、悪を滅ぼす者也。」
「ぬ!?」
「しまった!?帝釈天の権能か!?」
阿修羅たちが慌てて止めようとするが・・・既に遅かった。
「焼き尽くせ、金剛杵!」
その聖句を唱えた瞬間・・・世界が、揺れた。
カッ・・・!!!
それは正に神の一撃。彼女の右目から放たれた極大の光の柱は、真っ直ぐに上空で待機していたラーフへと走った。睡蓮が遮光用の結界を掛けなければ、目が潰れていたかもしれない。
その輝く柱の正体は、雷。雷でありながらも、雷速ではなく光速で迫るその攻撃を避ける術は、ラーフには存在しなかった。
「オ・・・アアアアアアアアアア!?」
瞬殺。その光が収まった空に、既にラーフは存在していなかった。欠片すら残さず、彼は焼き尽くされたのだ。中途半端な不死性しか持っていない彼では、この状態から復活する術はない。たった一度の権能の行使で、まつろわぬ神を一柱倒したということだ。
「オオオオオオオオオオオオ!!!」
だが、それに驚いている暇は阿修羅たちには無かった。その攻撃の余りの迫力と苛烈さに言葉を失っていたヴァルナは、土煙に紛れて何時の間にか近づいていた沙穂に大上段から切り裂かれたのである。
「な・・・貴様!?」
切り裂かれたヴァルナが浮かべたのは、驚愕の表情。沙穂の右目は、消滅していた。更に、体のあらゆる場所に酷い火傷が存在し、火脹れが出来ていた。自身の権能の代償である。
致命傷と言えるほどの傷を負ってなお、溢れるこの気迫。それにヴァルナは、圧倒されてしまった。
「ぐ、ああああああ!?」
呻きながらも、必死に水の権能で自身の周りに氷の壁を生み出す。同時にバックステップで後ろに下がろうとした・・・が、
「っ・・・!!!」
気合一閃。彼女は、先程と同じように、氷の壁を容易く切り裂いた。しかし、あの時と違うのは、ここが地上だということ。
「終わりであります!!!」
切り裂いた氷の切れ目に体を押し込むようにして、彼女は更に踏み込んだ。そして、カンピオーネの中でも最高と鈴蘭に称されたその身体能力を全開にして、更に跳ぶ。
「な・・・!?」
「はぁ!」
彼女が踏み込んだ地面が、爆発した。今までの動きでも彼女は本気では無かったのだ。残像が見えるほどの速度まで加速した沙穂を止めることは、ヴァルナには不可能である。
「・・・グフッ!」
交差したその一瞬のうちに、ヴァルナの体は致命的な部分まで切り裂かれていた。
まつろわぬ神は、どんな権能を持っているかや、知名度で強さが決まるわけではない。どれだけの執念を、信念を持っているかで強さが変わるのだ。決して折れない心を持っている神は、強い。しかし、権能がどれだけ優れていようと、心に油断や恐怖が有れば、途端に弱くなってしまうものなのだ。
ヴァルナ神は沙穂に恐怖を抱いてしまった。三対一という絶対的に不利な状況で、自身の権能で致命傷を負いながらも、それでも貪欲に勝利だけを追い求めるその姿に、恐怖を覚えてしまったのだ。だからこそ彼は負けた。そうでなければ、こんな結果にはならなかったかもしれない。
「・・・まさか、これほどとは・・・・・・。」
唯一残ったアシュラ。阿修羅という神格を分裂させて残った、ただ一柱のまつろわぬ神。帝釈天に深い恨みを持つその神だけである。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
しかし、沙穂の消耗は激しすぎた。ラーフの権能による幻痛。それで消耗した体力が多すぎる。更に、そのあとの【金剛杵】の行使。
あの権能は、威力だけ見るならば間違いなく歴代最強クラスである。しかし、その代償は余りにも酷い。まず、大半の呪力をこの一撃に持っていかれる事。そして、右目の消失。あと、威力の大きさによって、体にも深刻なダメージを受ける。
当たれば一撃必殺だが、最悪の場合、反動で死ぬ可能性すらある諸刃の剣。威力でも扱い難さでも最高レベルのジャジャ馬であった。
「さぁ・・・続きをするであります・・・!」
しかし、それくらいで止まるような少女ではないのだ。
「な・・・!」
絶句するアシュラ。今の沙穂は、体中からショートしたような火花が散り、右目が吹き飛び、更に体中から血が大量に流れている状態だ。しかし、彼女からの殺気は最初の比ではない。一瞬でも気を抜けば、その瞬間に殺されるとはっきり分かる程の苛烈さ。カンピオーネは重症を負ってからが更に厄介になるとは知っていたが、実際に見るのは初めてであった。
「これくらいで終わるはずがないでありますよね・・・?まだまだ、楽しませてもらうであります・・・!」
今の彼女には、鬼気迫るという言葉が相応しい。狂気じみていた。今にも死にそうになりながら、それでも死合を求めるその姿は、正に羅刹の君であった。
「いいだろう・・・!」
だが、アシュラも神である。たかがカンピオーネ一人に気圧される訳にはいかなかった。そもそも、この勝負は彼が吹っかけたのだ。三対一という、圧倒的に有利な状態で始めたというのに、何時の間にか逆転されていたなどという屈辱を、そのままにしておける訳がない。
「オオオオオオオオオ!!!」
「アアアアアアアアア!!!」
アシュラは、虚空からひと振りの曲剣を取り出すと共に、かのじょに向かって駆けた。彼女はそれに合わせて、居合の構えで迎え撃つ。
ザン!!!
先程までとは違い、静かな決着であった。アシュラの持っていた曲剣は砕け、腹部から血が大量に流れ落ちる。
「・・・やっぱり、強いであります・・・。」
沙穂は、右腕が切り落とされていた。そこから間欠泉のように噴出する血液。沙穂はその言葉を呟くと同時に、地面に倒れてしまった。
「沙穂ちゃん!」
鈴蘭が叫び、空間転移で彼女の元へ駆けつける。
「沙穂ちゃん、沙穂ちゃん!?」
「鈴蘭大丈夫だ。死んでない。」
先程までの様子とは一変して取り乱す鈴蘭を優しく抱きとめる翔希。見ると、既に腕からの血は止まりかけていた。
「ヒッヒヒヒ!僕が、たかが腕が取れたくらいで死ぬような作品を作るわけがないのさ!?安静にしてれば大丈夫だよ!」
そして、倒れている沙穂を医務室へと運ぶように指示するドクター。
「・・・見事だった神殺しよ。流石、我が宿敵を弑逆しただけの事はある。・・・・・・褒美だ、我が力を受け取るがいい。」
とうとう現界する力もなくなったのか、体が消滅していくアシュラの顔は、どことなく満足げであった。
こうして、阿修羅との戦いは終を告げたのである。
後書き
やっと阿修羅編終わりです。・・・何で阿修羅を三人にしたのかは、自分でもよく分かってないんですよね。深夜テンションだったのだろうか?三人にしたせいで、戦闘が凄く難しくなりました。かなり稚拙な戦闘シーンでしたが、少しは楽しんでもらえたでしょうか?
沙穂の権能初登場です。【金剛杵】です。帝釈天と言えばこれでしょう。
水無月の時雨を倒した、右目のレーザーを媒介にします。光の速度を持った雷の極太ビームを撃ちだす権能です。
一度撃ったら、まず右目が蒸発します。更に、雷に対する耐性などは一切持っていないので、その余波を受けます。更に、護堂さんの《白馬》の二倍ほどの呪力を消費します。
正に諸刃の剣。
おっそろしい権能を貰ったな沙穂。
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