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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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ルグルー回廊

 
前書き
そういえば、最後の方に玖珂と戦うとこがあるけど、どっちで無双しよう? 

 
「うええーと……アール・デナ・レ……レイ……」

 キリトはウィンドウを見ながら覚束ない口調でスペルワードをぶつぶつと呟いていた。

「だめだめ、そんなにつっかえたらちゃんと発動できないわよ。スペル全体を機械的に覚えるんじゃなくて、まずはそれぞれの力の言葉の意味を覚えて、魔法の効果と関連付けるように記憶するのよ」

「めんどくさいんだな、魔法って」

 ゲツガがそう言うとリーファは先生然とした口調で注意する。

「ゲツガ君、君も覚えなきゃ駄目ですよ。いくら中距離型といってもいつ魔法を使うかわからないんですからね」

「いいよ、今習得している魔法はもう覚えたから」

「「は?」」

 ゲツガの一言にキリトとリーファはともに唖然として口をぽかんと開けた。

「なんだよ、その顔は?」

 少し拗ね気味で聞くとキリトは頭に手をやって言った。

「そういえばこいつ、暗記とか得意だったからな……。こんなのもう出来て当然か……」

「す、すごいのね……ゲツガ君って……なんか、すごすぎる。じゃ、じゃあ何か試しに何かやってみてよ」

 リーファは少し遠慮気味に聞くがそれに了承して、英文をすらすら読み上げるように唱えた。すると、矢のはずの場所に白い糸のようなものが出てくる。

「マナ消費の低いやつだけどこれでいいか?」

「う、うん、ありがとう。というか、正直完璧すぎる。キリト君もゲツガ君みたいになりなよ」

 リーファがそう言うとキリトはうへーという顔をして言った。

「ゲツガみたいにかー、絶対無理だな。というより、まさかゲームの中で英語塾の勉強みたいな真似をするなんて思わなかったなぁ……」

「言っときますけど上級スペルなんて二十ワードくらいあるんですからね」

「えぇー……めんどくさいな……。もう俺ピュアファイターでいいよ……」

「泣き言いわない!!ホラ、最初からもう一回」

 リーファがキリトのそう言ってもう一度やらせていた。その時ユイがキリトの胸ポケットから出てきてゲツガの肩に乗る。

「リーファさんって案外スパルタですね」

「そうだな」

 そう言って出していた矢を弓に番え振り向きながら引き絞り放つ。矢は後ろに出現したオークの眉間を貫いてポリゴン片に変えた。

「ったく、おーい二人とも早く行くぞ!」

 そう言って先に進んで行った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 それから一時間ほど経過してオークとの戦闘も相当な数になっていたがポップしてすぐにキリトが叩き斬るか、ゲツガが一撃で射殺すかでほとんど疲れることがないまま進んで行く。しばらくしたら、リーファが立ち止まる。

「どうしたんだ、リーファ?」

「メッセージが入ったからちょっと待ってて」

「ああ」

 そう言ってリーファがメッセージを確認する間にゲツガもウィンドウを開いて、アイテムの確認やらしているとリーファが呟き声が聞こえた。

「なんだこりゃ」

「?」

 そしてリーファはすぐに何か考え込むように手を顎に当てる。

「エス……さ……し……す……うーん」

「どうしたんだ?」

 リーファがこちらを向いて口を開こうとした時再び誰かの視線を感じたので後ろを振り向く。それと同時にキリトの胸ポケットからユイが顔を出す。

「パパ、お兄ちゃん、接近する反応があります」

「モンスターか?」

 キリトも背中にある剣の柄を握る。ゲツガも弓を取り出して構える。しかし、ユイは首を横に振った。

「いえ……プレイヤーです。多いです……十五人」

「じゅうご……!?」

 リーファはその数の多さに絶句した。確かに、通常のパーティーは5~6人がセオリーなはずだ。これは何か、いやな予感しかしない。リーファはそう思ったのかゲツガとキリトに言った。

「ちょっとヤな予感がするの。隠れてやり過ごそう」

「だけど……どこに……」

「俺の魔法も隠蔽系のは入ってないぞ」

 そう言ってゲツガとキリトはこの広い一本道の中に身を隠せるような場所を探すが見当たらない。

「ま、そこはオマカセよん」

 そう言ってゲツガとキリトを窪みに押し込んだ。そしてリーファも入ってくることによって二人でも結構狭かった窪みがぎゅうぎゅう詰めになる。ゲツガはいやそうな顔をしながら聞いた。

「おい、リーファ……こんなところに詰め込んで何をするんだ?」

 リーファはゴメンねーと苦笑いすると左手を上げてスペルを詠唱する。それを唱えた後、今まで何もなかった窪みの先に何かで覆いかぶされた。

「なんだこれ?」

 キリトがそう聞くとリーファは口に人指し指をあて静かにしてというジェスチャーを送る。キリトは、それを見ると手を合わせて悪いとジェスチャーで返す。

 しかしよ、お二人さん、こんな狭いところでジェスチャーなんかするから肘やらなんやら色々と俺に当たって苦労してるんですけど、気付いてください。いや、気づけ。

「喋る時は最低のボリュームでね。あんまり大きな声をだすと魔法が解けちゃうから」

「了解。便利な魔法だな」

「確かに便利だけどこんな狭いとこで使って欲しくなかったな。二人が動くごとに俺が痛い目にあってるんだが……」

「「ごめんなさい」」

 二人が謝ると、ユイがゲツガのコートの胸ポケットから顔を出し、難しい顔をして言った。

「あと二分ほどで視界に入ります」

 その瞬間ゲツガ達は息を潜めて可能な限り壁に引っ付く。狭いのを我慢しながら敵が視界に移るのを待つ。数秒経つと金属音が耳に金属音がかすかに聞こえてくる。その方を見ると小さな赤い目のようなものがチラッと見えた。キリトも見えたようで呟く。

「あれは……なんだ?」

「何?まだ見えてないでしょ?」

「いいや、プレイヤーじゃないけど、何か飛んでる……」

「なんだあれ?コウモリ……」

 キリトが呟くとリーファもその方を目を凝らして見ている。そしてコウモリに気付くと素早く窪みから出た。その瞬間、ゲツガはコウモリに向けて飛び出す。コウモリとの差を一気に縮めたゲツガはコウモリを掴み、握り潰した。振り返ってリーファのほうを見ると何かスペルを唱えていたのか周りに何か色々な単語が回っていたが消えて、ポカンとしていた。

「おい、リーファお前がそんなに慌てて飛び出すんだからこいつは相当レアなモンスターかトレーサーのどっちかなんだろ?」

 そう言うとリーファはようやく戻ってきて言う。

「う、うん。そいつはトレーシングサーチャーよ!それよりここから急いで離れないと!!」

 そう言って走り出した。キリトもその後についていく。少し離れていたゲツガは小さく跳ねながらキリトたちを追う。追いつくとキリトがなぜはするのかリーファに聞いていた。

「さっき、ゲツガ君が潰したのはトレーサーっていう使い魔で敵に情報渡してるって前に言ったよね!」

「ああ!それで!」

「さっきの使い魔は火属性だから接近してるのは……」

「「サラマンダーか!」」

 ゲツガとキリトは同時に叫ぶ。リーファも頷く。後ろの方ではガシャガシャという金属がぶつかり合う音がどんどん近づいている。後ろを見ると、ぼんやりと赤い光が見えた。

「急ごう。追いつかれる前に」

 ゲツガ達は少しでも追いつかれないようにスピードを上げた。ゲツガもSAO内では当たり前のように移動していた壁を飛び跳ねながら移動する。

「ゲツガ君、何であんな変な移動方法で速いの!?」

「変とはひどいだろ!それよりももうすぐでこの道を抜けるぞ!!」

 そう言った瞬間、ゲツガはさっきまでの移動方法をやめて、走る。すると、大きな湖のある開けた場所に出た。キリトが言った。

「お、湖だ」

「ああ、しかも中心に町がある。あれがルグルーか……早く行こうぜ!そうしないとサラマンダーに追いつかれる!」

 そう言って舗装されてきた道をどんどんと進んでいく。そして湖のところまで来ると中央にある石造りの橋に向かう。そしてその奥には大きなルグルーの門が見える。あの門をくぐれば勝ちだ。

 後ろを向いてもサラマンダーかと思われる集団の灯りはまだ相当な距離がある。ゲツガ達は橋の上を更に力を込めてかける。

「どうやら逃げ切れそうだな」

「ああ、でも気緩めて橋から落っこちんなよ?」

「落ちるか、ボケェ!つうか、この橋からどうやって落ちるんだよ!!ちゃんと柵があるだろ!」

「いや、わからないぞ。キリトが間違えて足を滑せてこけたり、俺に転ばされたり投げ飛ばされたりしたら落ちるかもしれないぜ」

「最後のほうはもう完全に意図的だよな!!」

「二人とも、コントなんてしてないで急ぐよ!追いつかれちゃうよ!」

 リーファはふざけた話をしている二人に注意した。それでゲツガ達は苦笑した瞬間、上を二つの光点が通り過ぎて自分たちの数十メートル先に落ちた。落ちた場所は爆発を起こしてから地面盛り上がり大きな壁が形成され、行く手を阻まれた。

「やばっ……」

「な……」

「デカッ……」

 ゲツガは一瞬止まろうと考えたが止まらずに高く跳躍する。そしてそのまま拳を壁に叩きつけた。キリトもゲツガと同じように剣を壁に叩きつけていた。しかし、キリトの剣は弾かれる。ゲツガの拳は壁を大きく揺らしただけで傷一つつかなかった。

「……壊れない……」

「無駄だよ、二人とも」

「それを攻撃する前に言ってくれたらうれしかったな……」

 キリトは恨めしそうな顔をして倒れていたからだを起こす。

「君達がせっかちすぎるんだよ。これは土魔法の障壁だから物理攻撃で破壊することはほぼ不可能。攻撃魔法を大量に打ち込めば破壊できるけど……」

「その余裕はなさそうだよな……」

 そう言ってキリトは後ろを向く。ゲツガも向くとちょうど血のような深紅の鎧をを纏った集団の戦闘が橋のたもとに差し掛かるところだった。

「飛んで回り込むのは……無理なのか。湖に飛び込むのはあり?」

「ナシ。ここの湖には超高レベルの水竜型モンスターが棲みんでるらしいから無理。ウィンディーネの援護なしに水中戦は自殺行為よ」

「じゃあ、ここは戦うしかないわけか」

 そう言ってゲツガは折りたたまれた弓を開く。

「ま、それしかないな」

 キリトも剣を握りなおしていた。

「それしかないんだけど、ちょっとやばいかもよ……。サラマンダーがこんな高位の土魔法を使えるってことは、よっぽど手練のメイジが混ざってるんだわ」

「メイジね……」

 そう言ってサラマンダーのパーティーを見る。パーティーはメイジが九人、盾だけを持ったやつが三人、後は分厚い鎧を着込んだ巨漢が巨大な盾とメイスを所持した奴。そいつらのどう戦うか考えているとキリトが言った。

「リーファ、君の腕を信用してないわけじゃないけど……ここはサポートに回ってくれないか?」

「え?」

「俺たちの後ろで回復役に徹してほしいんだ」

「ま、それが妥当な策だな。そしたら俺はメイジを相手するか……。リーファ、俺は回復させなくていいぞ。メイジどもぐらいなら一人で行けるから」

 リーファはそういわれてゲツガを心配そうに見てくる。

「大丈夫なの?一人で……しかも中距離武器で……」

「大丈夫だ。俺の腕を信用してくれ」

 そう言ってリーファをまっすぐ見る。リーファは少し顔を赤くしたがその視線を受け止めてこくりと頷く。

「よし。キリト、そんじゃあ一暴れしようじゃねえか」

「ああ、お前、あのときみたいに死ぬんじゃねえぞ」

「別に、こんなとこで死ぬ気はねえよ。お前こそ、あの時見たいに少しでも冷静さを失うんじゃないぞ」

「ああ、同じような失敗はしないさ」

「それじゃ……」

「「乱闘の開始だ!!」」

 二人はサラマンダーのパーティーに突っ込んだ。

 
 

 
後書き
なんで、ゲツガにシノンが使っていた魔法を使わせなかったんだろう…… 
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