シャンヴリルの黒猫
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Chapter.1 邂逅
5話「煉瓦街ポルス」
煉瓦造りの家ばかりの町、故に煉瓦街ポルス。
なんともまんまな名前ではあるが、まあそう言うのだからそう呼ぼう。全て臙脂とベージュで統一された町並みは、綺麗だなぁと素直に感想が出た。これは確かにちょっとした観光名所になるのかもしれない。
「さて、と。まずギルドに行く前に武具店に行こうと思うんだけど……」
「なんで?」
「ギルドカードに必要な情報なのよ。……ほら」
そういって見せてくれたユーゼリアのギルドカードには、確かに武器の欄があった。他にランク、年齢(…は指で隠されている)、職、運勢、称号、祝福、装備、預金なんてものもある。
……え、預金?
「ギルドは銀行代わりにもなってるから。ほら、一度に大量に儲けちゃう仕事じゃない」
「はあ」
そんなものか。
ところで祝福とやらは、自身が信仰してたりする神様の名前が出るらしい。ユーゼリアの場合は“女神ナルマテリエル”とあった。魔法の神様らしい。
因みに彼女のランクは、B+。ユーゼリアが言うには、Cで一人前と言われるらしいから、かなり上級者だ。そして視界に入った気になる預金額は……400,000リール。
「すごいな」
「え? ああ、いや、まあ……ね」
曖昧に誤魔化して早速武具店に行こうとしたユーゼリアを、あわてて止める。先程から気になっていたことだ。
「あ、ユリィ。実は俺、金持ってないんだけど。本当に。所持金0リール。それに、俺にはこれがあるから、武具店へは行かなくても良いんじゃないかな」
そういって背に腰に差してある剣の柄を手でたたく。一文無しという言葉に呆れた顔をした(いくらなんでも幾らかは持っていると思っていたらしい)ユーゼリアも、俺の剣を見ると、おや、と言った顔をした。気付かなかったのか。そこそこ装飾にも凝っていてお気に入りだったのだが。
黒字に金と幾らかの硝子玉の装飾が施された鞘に収まっている長剣と、似通った装飾の短剣は、遣い魔の頃から使っている相棒だった。
「あら、そう。じゃ、装備を買いに行くわ。お金は後で払ってもらうから、気にしなくて結構よ」
「そりゃどーも」
結局連れて行かれた武具店。如何にもな重装備の鎧から、唯の服にしか見えない軽装備まで、多種多様だ。お金は見たところ……ま、ぼちぼちだな。平均して10,000リール。高い物は高く、安い物は安い。そんな感じ。
「剣を使うならこんな鎧なんてどうかしら?」
「いや、俺鎧はちょっと……」
流石に恥ずいぜ、姉さん!
結局欲しいと思えるような良い装備はなく、とにかく形だけでもということで軽装備に分類分けされる黒い長コートを買ってもらった。昆虫に似た魔物が紡ぐ糸で作られているらしく、並みの革よりは丈夫とのことらしい。ただ、魔法耐性、特に火と雷は非常に低いため、魔道士相手、あるいは魔法を使えるような高位の魔物相手に戦う時は注意しろと店主に言われた。ちなみにお値段は3000リールと少し。安物の中ではそこそこだと言えた。
ユーゼリアは防具も手に入れたことだしと、足をこの町のギルドへと向けた。素直について歩いて行く。
やがてに町の外れに、臙脂の煉瓦と少し色が違う、ベージュの煉瓦でできた大きな建物が見えた。あれが冒険者ギルド、ポルス支店らしい。
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