スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇
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第八十三話 失われる闘志
第八十三話 失われる闘志
三連惑星にだ。遂に来たその時だった。
「あれっ、ここは」
「まさか」
「そんなことが」
「そんなことがあるなんて」
誰もがだ。驚愕を隠せなかった。
「地球って」
「そんな筈がないのに」
「どうしてなんだ!?」
「地球が目の前に」
誰もがそれを見ていた。地球をだ。
「そんなことは有り得ない!」
「けれど実際に目の前には」
「大きさや質量は!?」
雷牙が調べだした。
「それに大気成分は」
「どうなんですか、それは」
「全部まさかと思いますけれど」
「地球と」
「・・・・・・信じられない」
雷牙の声が呆然となっていた。
「全て同じだ」
「同じ!?そんな」
「おい、それじゃあだ!」
火麻がその狼狽した声で話した。
「俺達は地球に戻って来たのか!?」
「それは有り得ない」
大河がそれを否定した。
「絶対にな」
「しかしよ。あれはどう見てもよ」
「だが実際にだ。あれは」
「方位は違う」
ここでまた雷牙が言う。
「完全にだ」
「それじゃああの星は」
「三連惑星!?」
「間違いなく」
「そこなんですか」
誰もがさらに狼狽する。そしてだった。
その謎の星からだ。何かが来た。
「長官!」
「どうした、牛山君」
「あの星から通信です」
牛山がこう言ってきた。
「どうされますか」
「モニターに映してくれ」
大河はすぐに答えた。
「いいな、すぐにだ」
「わかりました。それじゃあ」
こうしてモニターが開かれる。するとそこには。
「ようこそ」
「えっ、また!?」
「何で貴女が!?」
「貴女は確かあの時代に」
「どうして・・・・・・」
「そんな筈がない」
「そうだ、有り得るものか!」
猿頭寺とルネも叫ぶ。
「パピヨンはオービットベースで」
「死んだ筈だ!」
「そのことですが」
しかしだった。ここでそのパピヨンが話してきた。紛れもなく彼女だった。
「全てはこちらでお話します」
「全て!?」
「こちらって」
「どういうことなんだ!?」
誰もがいぶかしまざるを得なかった。そしてだ。
凱もだ。怪訝な顔で話すのだった。
「それって」
「一体」
「そっちっていったら」
「まずは大気圏に降下を」
パピヨンはまた一同に言ってきた。
「御願いします」
「ううむ」
「間違いありまセン」
雷牙とスワンが話す。
「この宙域はやっぱりだね」
「宇宙収縮現象の中心点です」
「ではやはり」
大河もここまで聞いて確信せざるを得なかった。
「この場所は」
「長官、どうしましょう」
「ここは」
「降下しますか?」
「やっぱり」
「行くしかあるまい」
大河の決断も一つしかなかった。
「我々の長い旅の目的地はここなのだからな」
「それじゃあ今は」
「降下ですね」
「今から」
「そうだ、そうする」
こうしてだった。彼等は降下するのだった。そうしてだった。
降下するとやはりそこは地球と同じ地図だった。しかもだ。
調べてみてだ。そしてわかったことは。
「地表各地の映像を分析しましたが」
「どうなんだ、それで」
「同じです」
ボルフォッグはこう凱に答える。
「色素の低下以外は地球と全く同じものです」
「どういうことなんだ」
凱もまたこう言うしかなかった。
「地球と同じなんてことがある筈がない」
「そうだよな、それはな」
ゴルディマーグもそれを言う。
「有り得ないぜ、それって」
「しかもだ」
凱はここでさらに言う。
「どうしてパピヨンが」
「お待ちしておりました」
そのパピヨンが一同のところに来て言ってきた。
「ロンド=ベルの皆さん」
「パピヨン・・・・・・」
ルネがその彼女を複雑な顔で見ている。
「あんた本当に」
「なあ、確かな」
ジュドーもいぶかしむ顔だった。
「死んだよな、あの人」
「忘れていないな」
「そんなこと有り得ませんよ」
ジュドーはすぐにカミーユに言い返す。
「人が死んで。忘れられる筈がない」
「確かにあの時に死んでいる」
「間違いない」
アポリーとロベルトもそれを言う。
「あの男の子。護君だったな」
「彼の偽者が現れた時にだ」
「ではあの人は」
カミーユは警戒する顔になっている。
「一体。何だというんだ」
「パピヨン」
凱もまた警戒する顔だった。
「君は護と同じ」
「ええ」
何とだ。パピヨンは頷いてきたのだった。
そしてだ。彼女はあらためて言うのだった。
「その通りです」
「そんな」
「まさか」
「それって」
「この星全体が」
「そうだっていうんですか」
「私も」
パピヨンはまた言ってきた。
「この星も」
「この星も?」
「つまりそれって」
「やっぱり」
「はい、偽物です」
この星もだというのだ。
「複製された」
「レプリジンか」
大河はここまで聞いて険しい顔になった。
「それだな」
「おい、もう何だってんだよ」
火麻はたまりかねた声で言った。
「ちんぷんかんぷんだぜ」
「この地球全部が」
ルネは今は険しい顔になっている。
「そうだっていうんだね」
「護君のお父さんのレプリジンは」
命がその時のことを思い出して話す。
「ソール十一遊星主の手先だったわよね」
「それじゃあ」
「この星も」
「まさか」
「全てはです」
また話すパピヨンだった。
「パスキューマシンが発動してしまったことが原因なのです」
「それは」
万丈もその時のことを思い出して言う。
「君があの子のレプリジンによって」
「はい」
「命を落とした時だね」
「その時にです」
パピヨンは万丈の言葉に応えてさらに話してきた。
「地球から遠く離れた」
「この三重連太陽系にです」
「このコピーされた地球が」
「誕生した」
「そういうことなんですね」
「そうですですが」
このレプリカの地球のことをだ。パピヨンは話す。
「生体物質はかなり不安定でした」
「それはなんですか」
「不安定だったんですか」
「それで」
「私以外の複製された人達は全て消滅してしまいました」
そしてだった。
「オービットベースはです」
「えっ、それもあったんですか」
「オービットベースも」
「存在していたんですか」
「はい、ですが」
そのオービットベースがどうなったかも話される。
「それもまた」
「消えた!?」
「まさかと思うけれど」
「オービットベースも」
「軌道をそれ」
レプリカの地球のそれをというのだ。
「宇宙空間の闇の中で」
「そうなんですか」
「それでパピヨンさんは」
「ここまで」
「何とか逃れました」
そうだったというのである。
「けれどここにも人は存在していませんでした」
「その通りだな」
マリンが答えた。
「調べたが人は。それに」
「動植物も殆どいない」
「脊椎動物は何も」
「原始的な生物ばかりで」
「その数だっていないと言っても同じだし」
そうした星なのだった。
「昆虫も少ないよな」
「細菌はいても」
「生き物の匂いがしない?」
「そんな星だよな」
「それがここです」
そうだとだ。パピヨンの話は続く。
「けれど私は」
「どうしていたんだい?」
猿頭寺が恋人に優しい声で問う。
「君はここで一体どうして」
「自家発電の設備のあるここに」
彼等が今いる場所だというのだ。
「GGGのセンターにおいて」
「ここでか」
「生きていたんだ」
「そうして」
「そうです。何時か」
さらに話すパピヨンだった。
「助けが来ることを信じて」
「パピヨン・・・・・・」
「バスキューマシンはです」
パピヨンは今度はそれについて話してきた。
「物質復元装置の中枢回路です」
「そうだったな」
大河がその言葉に頷く。
「確かにな」
「それだけでは完全な復元はできません」
「じゃああんたもだな」
火麻がそのパピヨンに問う。
「完全じゃないんだな」
「その通りです。護君も」
「そうだったんだ。あの彼は」
スタリオンがそれを聞いて考える顔になった。
「完全ではなかった」
「その通りです」
「あれで完全でなかったとはね」
「いや、それはわかる」
実際にそのレプリカと戦った凱の言葉だ。
「実際の護はずっと強い」
「ずっとなんですか」
「強いって」
「あれ以上に」
「護には勇気がある」
それが強さの源だというのだ。凱が話すにはだ。
「その勇気があいつを強くしているんだ」
「けれどその勇気がないレプリカは」
「ただ力を持っているだけ」
「本当の強さじゃない」
「そういうことなんですね」
「そうだ」
まさにその通りだと答える凱だった。
「だからあいつは強くなかった」
「成程、それでか」
「それで強くはない」
「そういうことなのね」
「だから今のパピヨンの言葉はわかった」
凱ならば特にであった。
「そういうことなんだな」
「はい、そして」
パピヨンはここで話をこう変えてきた。
「私の特殊能力」
「センシング=マインド」
「それですよね」
「あの力ですよね」
「はい、そうです」
まさにそれだと答えるパピヨンだった。
「それでわかったことは」
「一体」
「それは」
「何なのですか?」
「貴方達のことです」
それであった。
「貴方達が本物の地球からやって来たこと」
「それはか」
「わかってくれたんですね」
「そうなんですね」
「はい。そして」
まだあった。それは。
「本物の私はもう存在していない」
「そのこともですか」
「わかったんですか」
「パピヨンさんご自身のことも」
「そのことも」
「わかりました」
こうだ。パピヨンは答えるのだった。
「その二つがわかりました」
「納得のいく説明だ」
大河がここまで聞いたうえで頷いてみせた。
「我々がここに来たのはだ」
「宇宙収縮現象の真実を確かめる為でした」
スタリオンも話す。
「それでここまでだ」
「来たのですから」
「けれど」
「そうだな」
しかしだった。ここで命と凱が顔を見合わせだ。そのうえでパピヨンに問うのだった。
「本物の護君は?」
「ソール十一遊星主達は」
「わかりません」
パピヨンは残念な顔で答えたのだった。
「私には」
「疑ったらあれだけれどね」
「そうよね、ルネ姉ちゃん」
「そうしたことはやはり」
ルネと光竜、闇竜が話をしてだった。
「まさかとは思うけれどね」
「パピヨン姉ちゃんが敵の手先の訳が」
「私も信じたいですが」
「いや」
しかしだった。ルネはここで首を横に振った。そしてだった。
パピヨンの目を見る。その奥までだ。
そしてだった。暫く見詰めてからだ。こう彼女に告げた。
「わかったよ」
「ルネ・・・・・・」
「あんたは嘘をついちゃいない」
それを見切ったのである。
「あんたはパピヨンだ」
「認めてくれるのね」
「ああ」
「信じてくれるのね」
「そうだよ。だから今言うんだよ」
これが今のルネの考えだった。
「だからなんだよ」
「ルネ、それじゃあ」
「お帰り
ルネは微笑んで告げた。
「お帰り、パピヨン」
「只今・・・・・・」
ルネは涙を浮かべながら返す。
「只今、ルネ」
「ああ、お帰り」
「光竜」
「そうね」
闇竜と光竜もだ。ここでわかったのだった。
「あの方は間違いなく」
「ルネ姉ちゃんだよね」
「間違いありませんね」
「そうですね」
彼女達もそれがわかったのだった。そしてだ。
氷竜と炎竜もだ。そのことを喜ぶのだった。
「よかったな」
「そうだね。何か」
「何か?」
「僕も泣けてきたな」
こう言う炎竜だった。これは風龍と雷龍、マイクもであった。
「幸せが戻った」
「帰るべき人が帰った」
「これっていいことだもんね!」
こう三人で言い合うのだった。
猿頭寺もであった。ここで。
「パピヨン・・・・・・」
「ええ・・・・・・」
「よかった、本当によかったよ」
「御免なさい、本当に」
「いいよ。帰ってきてくれたから」
彼はそれだけで満足だった。
そしてだ。その二人を見ながらだ。万丈が言った。
「さて、これでよしだけれど」
「よしだけれど?」
「ああ、そうか」
「あの連中がいましたね」
「ソール十一遊星主が」
「あの連中がまだ」
「うん、その通りだ」
万丈は彼等のことを皆に話すのだった。
「けれどこれはね」
「これは?」
「っていいますと」
「まだ何か」
「悪くないはじまり方だよ」
これが万丈の今の言葉だった。
「いや、かなりいよ」
「そうですね。そう言われたら」
「今は」
「何か気持ちよくはじめられますね」
「これまでになく」
「どうせはじめるのなら」
万丈はまた言う。
コスモはだ。ふとだった。
その場から去ろうとする。そこをカーシャに呼び止められる。
「何処に行くのよ」
「ちょっとな」
苦笑いでの返答だった。
「外にさ」
「外にって。どうしてなのよ」
「どうもこういうシーンは苦手なんだよ」
だからだと。その苦笑いで話すのだった。
「だからちょっとさ」
「それで外になのね」
「それに丁度いい機会だよ」
同時にこんなことも言う。
「ここが地球のコピーっていうんならな」
「外を歩いて調べるのね」
「そうさ。あの人の話なら」
パピヨンのことである。
「邪魔者もいなさそうだしな」
「そうね。確かにね」
「だから外に出るよ」
また話すコスモだった。
「今から少しだけな」
「じゃあ私も」
「おい、カーシャもか」
「そうよ。悪いかしら」
「別にそうは言ってないだろ」
コスモもそうではないと返す。
「じゃあ一緒に行くか」
「ええ、それじゃあね」
「ああ、俺も」
デクもここで出て来て言う。
「一緒に行こうよ」
「仕方ないな。それじゃあな」
こうしてだった。三人で外に出るのだった。そうして三人は外を見るのであった。
そんな三人を見てだ。竜馬が言う。
「何だかんだで」
「そうだな」
隼人が彼の言葉に頷く。
「あいつ等もだな」
「この星に興味があるんだな」
「レプリカはレプリカだが」
それでもだとだ。隼人は言う。
「ここは地球だからな」
「そうだよな。静かだしな」
弁慶もいる。
「何か外も面白そうだな」
「じゃあ一旦出てみるか?」
武蔵がこう三人に提案した。
「おいら達もね」
「そうね。ソール十一遊星主もいないし」
ミチルが武蔵のその提案に賛成する。
「休憩できそうだし」
「じゃあマリ」
洸は早速だった。
「俺達も何処かに出かけようか」
「そうね。ピクニックにでもね」
笑顔で応えるマリだった。
「行きましょう」
「よし、それじゃあな」
一行はリラックスしだしていた。しかしだった。
万丈はだ。ギジェと話すのだった。そのこととは。
「ではやはり」
「そうだ」
ギジェはこう万丈に返す。二人は今ソロシップのギジェの部屋にいる。
「バッフ=クラン軍もだ」
「この宙域に」
「来ている」
ギジェは言い切った。
「彼等の行動範囲は広いからな」
「そうしてここに」
「しかも」
ここでだ。ギジェはこうも言った。
「イデの力はどうやら」
「彼等を引き寄せている」
「そんな気がする」
彼のイデへの関心はさらに強くなっていたのだ。
「それを考えればだ」
「そうだね。確かにね」
万丈も彼のその言葉に頷いた。
「あの力は騒動を好むようだしね」
「だからだ。それは」
「だとしたら。ここでもやはり彼等と」
「戦うことになる」
ギジェはこのことを既に受け止めていた。そのうえで、だった。
「それでだが。万丈君」
「はい、今度は」
「君はイデの力をどう捉えている」
彼が今尋ねるのはこのことだった。
「それについては」
「貴方と一緒かな」
「私とか」
「善い力とも悪い力とも考えてはいないよ」
「ではやはり」
「イデが第六文明人の意志の集合体だからかな」
それが理由だというのだ。そう考える。
「人の意志には」
「善も悪もない」
「だから僕は」
「君は」
「イデの発動に何らかの方向性があるとしたら」
「それは人の意志だな」
「うん、そしてこの場合は」
こう前置きしてからの言葉だった。
「人のエゴに近いものじゃないかな」
「人のか」
「あまりいい言葉じゃないけれどね」
「だがわかりやすい」
だからいいというのだった。
「そういうことか」
「そんな気がするけれどね。つまり」
「つまり?」
「イデには何らかの目的意識があって」
完全に人の心と同じだと見ていた。
「それを達成すべく僕達を動かしているのかも知れない」
「私達をか」
「うん、どうかな」
「面白い理論だな」
ギジェは万丈の考えをこう言って肯定した。
「神話や伝承の現代解釈に近いものがあるな」
「そこまで哲学的かな」
「そう思う。私は純粋に興味があるが」
「けれど貴方のその考えも」
「いいか」
「そう思うよ。それで」
万丈はだ。丁度部屋に入ってきたシェリルに顔を向けた。そのうえで彼女にも問うた。
「シェリルさん、貴女は」
「私なのね」
「はい、どう考えていますか?」
「イデについてよね」
「はい、それは」
「まだよくわからないわ」
これが彼女の意見だった。
「深くはね。ただ」
「ただ?」
「女性に近いかしら」
彼女はこう言うのであった。
「イデは」
「女性ですか」
「母性に似たものを感じるわ」
これが彼女の見方だった。
「何処となくね」
「イデが女性」
「イデは意志の集合体だけれど」
シェリルもこのことは把握しているのだった。
「それでも。その中の女性的なものが」
「大きいと」
「そう思えるの」
これがシェリルの見方だった。
「それが違うかしら」
「いや、間違いではないな」
ギジェが彼女のその考えを認めて言った。
「おそらくな」
「貴方もイデはそうだと思うのかしら」
「男性か女性まで考えてはいなかった」
こう言ってからだった。
「だが。気味の言葉を聞いて考えてみるとだ」
「そう思えるのね」
「そうだな。女性だな」
ギジェは考える顔で述べた。
「イデは。だからこそ」
「だからこそ?」
「子供により反応するのか」
「そうかも知れないわ」
「どちらにしろだね」
万丈が二人に話す。
「このことはもっと深く考えてみる必要があることだね」
「ええ、そうね」
「その通りだな」
二人も彼のその言葉に頷く。そうした状況だった。
レプリカの地球への調査は続いていた。その時だった。
猿頭寺がだ。パピヨンに対して話していた。
「今のところ何もわからないけれど
「そうね。今はね」
「けれどね。パピヨン」
「どうしたの?」
「僕は満足しているよ」
こう彼女に言うのだった。
「今はとてもね」
「満足?どうしてなの?」
「どんな形であれ」
彼女を見てだ。そのうえでの言葉だった。
「君がいてくれるからね」
「私が・・・・・・」
「うん、それだけで十分だよ」
優しい顔での言葉だった。
「それでね」
「有り難う。けれど」
「けれど?」
「注意していて」
パピヨンはここでこう言うのだった。
「これから。何かが起こるわ」
「まさか君のセンシング=マインドが」
「知らせているの。これからとてもよくないことが起こると」
「よくないこと?」
「それが何かはまだわからないけれど」
「確かに」
猿頭寺もだ。一応はこう言った。
「不安材料は多いね」
「ええ、だから」
「ただ。今は」
「今は?」
「ちょっと眠いね」
見ればだ。猿頭寺の目がかなり眠そうであった。
「どうしてかな。急にね」
「ちょっと頑張り過ぎたんじゃないかしら」
「そうかもね。それに」
パピヨンを見ての言葉だった、
「君にまた会えて。気が緩んだかな」
「そうなのね」
「そうだと思うよ」
「だといいけれど・・・・・・あっ!?」
「どうしたの?」
「い、いえ何も」
口ではこう言ってもだった。
(センシング=マインドが感じた)
そうなのだった。
(勇者王の)
そしてその時だった。警報が鳴った。
「レーダーに反応です!」
「レーダーに?」
「はい、大気圏外からの敵です!」
「そうなんだ」
反応がだ。明らかにいつもの彼ではなかった。
「慌てることはないよ」
「えっ!?」
「じゃあとりあえず」
「とりあえずって」
パピヨンは唖然となった。それはだ。明らかに彼女が知っている猿頭寺ではなかったからだ。
それに呆然とする。しかし彼はまた言うのだった。
「大河長官に連絡しよう。焦ることはないよ」
「敵が来たのに・・・・・・」
そしてなのだった。それは彼だけではなかった。
敵は大気圏内に降りてきた。やはりバッフ=クランの軍勢だった。
「財団だな」
ギジェが彼等を見て言う。
「オーメ財団の軍だ」
「あの連中?」
「バッフ=クランの系列の」
「その通りだ。彼等か」
ギジェは考える顔になっていた。
「彼等も動くな。かなり」
「では皆いいな」
ここでアムロが指示を出す。その指示は。
「深追いはするな。さっさと片付けて帰ろう」
「何っ!?」
その言葉に驚いたのはルネだった。慌ててアムロに問う。
「待ってくれ、中佐」
「どうしたんだい、一体」
「どうしたって?」
「だから今だ」
ルネはアムロに対してさらに言う。
「さっさと片付けてって」
「いや、ルネさんここは」
カミーユがだ。彼女に言う。
「もう戦いはこりごりだよ」
「何っ!?カミーユ」
戦場においては攻撃的なカミーユの言葉には思えず。ルネは唖然となった。
そのうえでだ。口を大きく開きながら彼に問うた。
「あんたまで一体」
「そうだな」
今度はコスモだった。
「戦ってばかりじゃ何の解決にもならないしな」
「おかしいぞ、これは」
ギジェは普通だった。
「どういうことだ、一体」
「ねえカトル君」
シンジは温厚な顔でカトルに声をかける。
「久し振りにアンサンブルでもどうかな」
「いいですね。それじゃあ」
カトルもシンジににこやかに返す。
「トロワもフルートを」
「わかった」
トロワもその提案に頷く。
「それではだ」
「僕もピアノを」
ニコルもだった。
「演奏しますか、後で」
「じゃあ俺もな」
ディアッカまでだった。
「得意の日舞を見せてやるぜ」
「おい、どうなってんだよ」
「おかしい、これは」
シンとカガリも驚きを隠せない。
「皆戦闘中だぞ」
「何を言っているんだ」
「そうよ、ちょっと待ちなさいよ」
「戦わないと駄目よ」
アスカもレイも言う。
「そんなの財団の連中をやっつけてから」
「しないと」
しかしだった。他の面々はだった。
「じゃあ眠くなったし」
「そうだよな。もう」
「休むか」
「そうしようか」
「何を言っているんだ皆!」
凱が必死に皆に叫ぶ。
「今は戦闘中なんだぞ!」
「あっ、そうだよな」
「あれっ、俺達一体」
「どうしちゃったの?」
「間違いない」
万丈が呟く。
「この症状はやはり」
「とにかく今はだ!」
ドモンが叫ぶ。ガンダムファイターの面々は健在であった。
「一気に退ける。いいな!」
「おう、やってやるぜ!」
獣戦機隊も無事だった。
「まとめて一気にだ」
「皆行くぞ!」
宙が皆を引っ張る。
「そうして勝つぞ!」
「あ、ああ」
「わかった」
「それじゃあ」
こうしてだった。戦い何とかだ。財団の軍は退けたのだった。
彼等は戦力の八割を失い撤退した。それを見てだった。
「ふう、やっと片付いたよ」
「そうね」
カーシャがデクの言葉に頷く。
「やあね、戦いって」
「全くだ」
コスモが彼女の言葉に応える。
「だがこれで終わりだな」
「待て、どうしたのだ」
ギジェは怪訝な顔で仲間達に問うた。
「これは一体」
「じゃあ帰ったらね」
しかし周りは違った。ミサトもにこやかに言う。
「パーティーよ」
「よし!アイスクリームだ!」
光がミサトの今の言葉に飛び跳ねる。
「食べるぞ!」
「お、おい!」
「おかしいもんね」
ゴルディマーグとマイクがそんな皆を止めようとする。
「どうしちまったんだよ、皆」
「さっきからやる気全然ないみたいもんね」
「凱、これは」
「わからん」
凱もだ。ルネにこう返すしかなかった。
「何が起きているんだ、これは」
「凱、聞こえるかい?」
万丈がここで通信を入れてきた。
「無事かい?」
「万丈、そっちは」
「悪いけれどそうでもなさそうだ」
彼もであった。
「どういった手段かわからないけれど」
「どうなっているんだ、これは」
「この星に来てからだな」
万丈は怪訝な顔で凱に話す。
「僕達の闘志や気力が失われつつある」
「何だって!?」
ルネがそれを聞いて言った。
「それで皆」
「そうみたいだね。どうやらまともに動けるのは」
万丈は周りを見回す。そのうえでまた言う。
「僅かなメンバーだけみたいだ」
「万丈!」
「大丈夫かい!?」
「済まない」
こう言ってだった。彼も崩れ落ちようとする。
「僕もこの眠気に」
「お、おい!」
「あんたまで寝たら!」
「後は・・・・・・頼む・・・・・・」
万丈も崩れ落ちた。そうしてだった。
残った二人はだ。とりあえずどうするかを話すのだった。
「どうする、凱」
「幸いGGG宇宙センターは見つかった」
今だ。パピヨンから報告があがったのだ。
「そこに皆を運ぼう。話はそれからだ」
「ああ、わかったよ」
とりあえず彼等は仲間達を宇宙センターに運んだ。その時だった。
宇宙ではだ。戒道がいた。そうしてそのレプリカの地球を見て言うのだった。
「そうか。あれは地球なんかじゃない、あれは」
その彼のところにだ。謎の光が来たのだった。
「!?御前は!」
そこにはだ。もう一人の彼がいた。それは。
「アベル、御前が」
「アルマ、ここに来たのですね」
「御前達を倒す為に来たんだ」
こうアベルに返すのだった。
「けれど」
「けれどとは?」
「有り得ないと思っていた」
ここではこう言う彼だった。
「遊星主が全員揃うなんてことは」
「そう思っていたのですね」
「だけど御前が存在している」
そのアベルを見ての言葉だった。
「それならだ!」
「話はそれだけですか」
「何っ!?」
いきなりだった。接近されて。
戒道はそのみぞおちを打たれた。それによてだった。
「ぐっ・・・・・・」
「さあアルマ」
アベルは気を失おうとする彼に囁いた。
「一緒に来てもらいますよ」
「J・・・・・・ラティオ・・・・・・」
ここでも何かが起ころうとしていた。そしてセンターではだ。
大河達が話をしていた。火麻がその大河に対して問う。
「なあ」
「どうしたんだい?」
明らかにいつもの大河の口調ではなかった。
「この地球のことかい?」
「そうだ。どう思う」
「うむ」
大河は問いに応えて話しはじめた。その言葉は。
「科学に支配されない自然の姿といったところかな」
「御前もそう思うんだな」
「ああ、穏やかだ」
「そうだな」
火麻もだ。いつもの熱さはなかった。
穏やかな調子でだ。こう言うのだった。
「すっげえ敵と戦うことになると思ってたんだがな」
「ところがだね」
「ああ、拍子抜けしたな」
こう言うのであった。
「どうもな」
「それでだけれど」
雷牙も来て話す。
「さっき猿頭寺君から報告があったけれど」
「うむ」
「どんな報告だ?」
「宇宙収縮現象が僕ちゃん達の太陽系に影響を及ぼすには」
どうだというのだった。
「まだ時間があるようだね」
「そうか。それではだ」
「急ぐ必要はないな」
こう言う二人だった。
「では今は」
「休息だな」
「そうするか」
「ああ、それがいいな」
どう見ても普通の彼等ではなかった。そしてだ。
スタリオンもだ。電話が鳴ったのを受けて話を聞いてだ。こう言うのだった。
「ロンド=ベルが帰還しました」
「それなら」
スワンも何故か顔がほっとして赤い。
「皆でお出迎えしまショウ」
「さて、休暇だ」
大河はまた言った。そしてだった。
戻ってきた勇者ロボの面々はだ。驚くしかなかった。
「ワッツ!?」
「だからだよ」
牛山がマイクの問いに答えていた。
「フルメンテをするんだよ」
「今から!?」
「そんな馬鹿な」
風龍と雷龍が言う。
「財団はまだいるかも知れない」
「それなのに今それとは」
「わかりません!」
「どういうことなんだ!?」
氷竜と炎竜もだった。
「今ここでそれをすれば」
「僕達は戦えない」
「君達のAIは一時シャットダウンするよ」
だが牛山はまだ言うのだった。
「だからね」
「ですからそれは」
「待ってよ!」
闇竜と光竜は牛山を必死に止めようとする。
「ですから今それは」
「無茶苦茶よ!」
「だから今のところここは平和じゃないか」
牛山の言葉もだ。妙に呑気なものだった。
「だからいざという時までパワーを温存しておくんだよ」
「あの、それは」
ボルフォッグは何とか冷静さを保っていた。彼でようやくだ。
「GGGの決定ですか!?」
「その通りだ」
大河は彼等の前にも来た。
「我々は今こそだ」
「今こそ!?」
「何だと」
「反省すべき時なのだ」
これが彼の今の言葉だった。
「この先ソール十一遊星主が出たとしても」
「どうするってんだ!?」
ゴルディマーグが問うた。
「一体」
「平和的解決に臨むのが理想的である」
「えっ!?」
「嘘だ!」
「そんなことができる筈がない」
「そうです、それは」
炎竜達四人がすぐに言った。驚きの声でだ。
「あのソール十一遊星主達がです」
「話し合いなぞに応じるとは思えません」
「平和的解決なぞ」
「とても」
「出来る訳ないもんね!」
それをマイクも言う。
「あの連中、平和なんて考えてないもんね!」
「その通りよ!」
「平和を考えない者もいます!」
光竜と闇竜もだった。
「その様なことを望まれても」
「相手は決して」
「おい、長官どうしたんだよ!」
ゴルディマーグは大河自身に対して叫ぶ。
「そんな訳わからないこと言ってよ!」
「皆さん、どう思われますか!?」
ボルフォッグは大河以外の者に問うた。
「長官の今のお言葉だ」
「長官、同感です」
しかしだった。ブライトが最初に言った。
「やはりここはです」
「そうですね」
マリューもだった。
「私は今までやってきたことを思い出すと」
「全くです」
ユウナも続く。
「どうしてもですね」
「後悔で胸が一杯になります」
「けれどそれもね」
「ええ、終わりよ」
ミサトとリツコは場違いなまでに温厚な笑顔であった。
「これからはね」
「ラブアンドピースよ」
「!?これは」
しかしだった。ここでアズラエルが呟いた。
「皆さんどうも様子が」
「おかしいな」
アランが彼の言葉に頷く。
「これは最悪の事態を考えてだ」
「はい、動くとしましょう」
二人は今は一歩退いた。そのうえで身を隠すのだった。
しかし騒動は続く。大河はこうも言うのであった。
「戦いはよくない」
「ですから今は!」
「そんなことを言っている場合では!」
「よって武力は封印する」
大河は最早聞く耳を持っていなかった。そしてだった。
彼は遂に言ってしまった。
「作戦名は」
それは。
「平和が一番だ」
「お、おい!」
「待って下さい!」
「どうしたんですか皆さん!」
「この状況は!」
「どう考えてもおかしいもんね!」
勇者ロボ達は必死に言おうとする。しかしだった。
雷牙もだ。にこやかに言うばかりであった。
「もう決まっちゃったことなんだよ」
「それでは牛山君」
「はい」
牛山は大河の言葉に頷いた。
「シャットダウンだ」
「わかりました」
こうしてだった。勇者ロボ達は動きを止めたのだった。止められてしまったのだ。
そして凱もだ。命にだ。唖然となっていた。
「だからどういうことだ!」
「どういうことって?」
「命、一体何を言っているんだ」
こう命に言っていた。
「今は本当に」
「だから、もう戦う必要なんてないのよ」
彼女も呑気な調子でこう言うのであった。
「もうね」
「馬鹿な、それは」
「ねえ凱」
凱の話を聞かずにだ。勝手に言ってきたのだった。
「この服似合う?」
「何時またバッフ=クランやソール十一遊星主が来るかわからないんだぞ!」
彼はあくまで戦いのことを主張する。
「それで何故」
「大丈夫よ」
しかし命は変わらないのだった。
「凱は心配性なんだから。うふふ」
「命・・・・・・」
しかしここでだった。光った。
その光を受けてだ。凱は言った。
「間違いない、これは」
何か。彼はすぐにわかったのだった。
「Gストーンの輝き」
まさにそれであった。
「俺を呼んでいる?」
「ねえ凱」
命は相変わらずだった。その中でもだ。
「今日は思いっきりね」
「どうだっていうんだ」
「美味しい手料理作ってあげるからね」
「あの輝きすらわからないのか、今は」
凱はそのことに絶望しそうになる。しかしだった。
心を振り絞ってだ。命に告げた。
「命」
「何なの?」
「俺は御前にだけはわかって欲しいんだ」
切実な顔での言葉だった。
「それだけは言っておく」
「わかってるわよ」
こう言ってもだった。次の言葉は。
「蒟蒻は嫌いなのよね」
「そうだ。しかし今は」
「凱が好きなものをいーーっぱい食べさせてあげるからね」
「行って来るよ、命」
別れを告げてだ。彼は戦場に向かうのだった。一人だけの戦場にだ。
そしてルネもだった。感じ取っていたのだった。
「何だこの」
その感じ取ったものは。
「Gストーンが疼く様な感じは」
彼女もだ。凱と同じものを感じ取っていたのだ。
そしてその彼女の傍で爆発が起こった。そのうえで。
「久し振りね」
「何っ、貴様は」
「そうよ。青の星の子猫ちゃん」
あの女がだ。出て来たのだった。
「ソール十一遊星主か!」
「私の名前はピルナス」
自分から名乗ってきたのだった。
「美しさと快楽の女神」
「随分と立派な司るものだね」
「そうね。それじゃあ」
ピルナスはだ。余裕の笑み共にこう言ってきた。
「調教開始よ!」
「そうはいくか!」
その言葉を受けてだ。ルネは
「イークイップ!」
戦う姿になろうとする。そしてだった。
その姿になりだ。ピルナスと対峙するのだった。
「勝負だ、ソール十一遊星主!」
こう叫んで攻撃を仕掛けようとする。しかしだった。
ピルナスの手に持っている鞭が動いた。まるで蛇の様に。
そのうえでルネを打ってだ。悠然として言うのであった。
「いい格好ね」
「くっ、身体が」
「そうよ。もう貴女は自分では」
どうかというのであった。
「指一本動かすことはできないわ」
「何っ、まさかその鞭に」
「そうよ。そして」
その言葉をだ。続けてであった。
「調教をはじめましょう」
「くっ!」
「苦痛と快楽は紙一重」
その鞭を手にして。妖艶な笑みを浮かべていた。そのうえでルネを見てであった。
「それじゃあね」
「一体何が目的だ」
ルネは動けないが心は折れていなこあった。それでこう問い返すのだった。
「御前達は一体」
「うふふふふ、それはね」
「それは!?」
「貴女をね」
「あたしをかい」
「悪い子にしてあげちゃうことよ」
ルネもまた危機に陥っていた。状況は所々で悪化していた。
凱は宇宙センターのオペレーションルームに来ていた。様々な装置やコンピューターがあるその部屋の中でだ。パピヨンの話を聞いていた。
「それならだ」
「そうです」
「何かが起きていることは間違いないんだな」
「はい、ですか」
「ですが!?」
「私のセンシング=マインドをもってしても」
それでもだと。パピヨンは凱に話すのだった。
「それが何なのか」
「わからないのか」
「まだ」
そうだというのだった。
しかしだった。ここでパピヨンはこうも言った。
「ですが」
「ですが!?」
「感じます」
こう言うのであった。
「貴方が信じてきたものを信じられなくなった時に」
「その時に」
「はじまるのです」
こう凱にだ。話すのである。
「貴方自身の戦いが」
「俺自身の戦いが!?」
「ええ、忘れてはいけません」
凱にこうも告げる。
「貴方が信じる」
「俺が信じる」
「勇気ある誓いを」
「・・・・・・わかった」
凱はパピヨンの今の言葉に静かに頷いた。そのうえでだった。
彼女にだ。あらためて告げた。
「それじゃあ俺は」
「はい、急いで下さい」
パピヨンの顔も切実なものだった。
「嫌な予感がします」
「行って来る」
凱はそのまま宇宙ステーションを出てだ。そのうえで宇宙に出た。そうしてだ。彼の運命の決戦に向かうのだった。その宇宙に出たのであった。
第八十三話 完
2010・12・19
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