スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇
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第八十二話 相応しい末路
第八十二話 相応しい末路
ル=カインはだ。ゲートの傍にいた。そしてそこでだ、
己の傍にいるカルラに対して問うのだった。
「戦力はどの程度だ」
「はい、ここに来られた戦力はです」
「うむ、どの程度だ」
「一万程度です」
それ位だというのだ。
「あの戦いで八割を失いましたが」
「それでさらにか」
「脱落者が出ました」
カルラはこう話す。
「それでこれだけです」
「そうか。では仕方がないな」
「仕方ありませんか」
「この状況ではな」
現状を踏まえての言葉だった。
「致し方ない」
「左様ですか」
「それではだ」
ル=カインはあらためて言った。
「その残った一万の将兵達に告げるのだ」
「何とでしょうか」
「我等はどちらにしても処刑が待っている」
これまでのグラドス軍での一連の罪によってである。
「最早生きる道はない」
「戦う以外にはですか」
「あの者達を退け。そして」
「そして」
「ゲートを使い逃げ延びる」
これがル=カインの今の考えだった。
「わかったな」
「そして太陽系の何処かの惑星を占拠して」
「そこを拠点にしたまた一度だ」
「そうですね。今はそれしかありませんね」
「では。いいな」
「はい、わかりました」
カルラは機体の中で敬礼をして応えた。彼等も最後の戦いの決意をしていた。
その彼等がいるゲートにだ。ロンド=ベルは確実に向かっていた。
その時だった。サンドマンが言うのだった。
「ゲートだが」
「はい」
「あのゲートですね」
「あそこが何か」
「おそらくだ」
彼はメイド達の言葉に応えて話すのだった。
「彼等はいざとなればあのゲートから脱出する」
「それで太陽系に逃れる」
「そうする可能性がありますか」
「やはり」
「間違いなくそうする」
サンドマンは断言さえした。
「生き残る為にな」
「ではゲートは」
「どうしましょうか」
「それを防ぐ為には」
「止むを得ないがだ」
ここでサンドマンはまた言った。
「彼等を逃す訳にはいかない」
「それじゃあですね」
「今は」
「それは」
「そうだ、ゲートを破壊するしかない」
こう言うのであった。
「仕方ないことだ」
「そうですね。それは」
「やっぱり」
「グラドス軍が太陽系に出て拠点を築かれると」
「話が複雑になる」
サンドマンは話した。
「だからだ。ここはだ」
「わかりました」
「それなら」
「まずはゲートを」
「諸君、それでいいだろうか」
サンドマンはロンド=ベルの仲間達に問うた。
「ここはだ」
「そうだよな。今はな」
「あの連中を太陽系に行かせたらそれこそ」
「何処かの星を占領されてそこからまた戦争を挑まれるよな」
「そうなったら」
「一般市民に危害が」
彼等のそうした行動を危惧しての言葉だった。
「じゃあここはやっぱり」
「ゲートを破壊して逃げ道を塞いで」
「そのうえで」
「徹底しているな」
それを聞いてのだ、カイの言葉である。
「それはまた」
「けれどカイさんもそう思いますよね」
「ここはやっぱり」
「ゲートを破壊しないと」
「さもないと」
「無論だ。わかっている」
その彼等にこう返すカイだった。
「グラドスの刻印、ゲートの力を考えればな」
「実はです」
エイジが話してきた。
「あの刻印についてですが」
「んっ、何かあるのか?刻印に」
「あのゲートに」
「あの刻印は外見は巨大ですが」
どうかというのである。110
「攻撃には脆いです」
「じゃあ攻撃を仕掛ければそれで」
「それで終わりなんだ」
「一撃で」
「本当に一撃で終わりです」
そうだというのである。
「あの周囲のリングの中央をビームか何かで攻撃すれば」
「壊れる」
「そうだっていうんだな」
「はい、そうです」
また答えるエイジだった。
「ですから」
「よし、なら話は早いよな」
「そうよね」
「それじゃあ」
こうしてだった。彼等の作戦は決まった。まずはなのだった。
「ゲートを破壊して」
「そうしてそのうえで」
「残ったグラドス軍の残党と」
「最後の決戦を」
「それで」
作戦を決めた。そのうえでだった。
ロンド=ベルとゲイルが率いる軍勢はだ。ル=カインの軍勢を偵察により見つけたのだった。
「ゲートの左側だな」
「そこに集結しているのね」
「じゃあその裏を衝いて」
「一気に右側から」
「いや、それもいいがだ」
ギリアムがだ。こう言ってきたのだった。
「それよりもだ」
「それよりも?」
「っていうと」
「何か策があるんですか」
「それは」
「ゲイル殿の軍と我々をだ」
ギリアムはこう話していく。
「二手に分ける」
「そうして一体」
「どうされますか?」
「ここは」
「どういった戦術を」
「よし、それならだ」
「今からそうして」
皆それぞれ言う。
「攻めるか」
「それじゃあ」
こうしてだった。彼等は戦術を決めた。そうしてまた向かうのだった。
そこに近付くにつれだ。エイジもゲイルも。明らかな緊張を感じていた。
それでだ。ゲイルがこうそのエイジに言うのだった。
「大丈夫か」
「はい、何とか」
こう返すエイジだった。
「落ち着いています」
「そうか。ならいいがな」
「ゲイルさんはどうですか?」
「少し辛いか」
これがゲイルの言葉だ。
「どうもな」
「そうなんですか」
「最後の戦いかと思うとだ」
ゲイルはその思い詰めた顔で話した。
「そうならざるを得ない」
「それではですね」
「それではか」
「これはどうでしょうか」
こう言ってだ。エイジはあるものを出してきた。それは。
数枚の札だった。細く薄く小さい。銀紙に包まれたその数枚の札をゲイルの前に差し出してだ。あらためて言うのであった。
「噛んでみますか」
「噛むものか」
「はい、どうでしょうか」
またゲイルに問うたエイジだった。
「これを噛まれますか」
「何だこれは」
「ガムです」
エイジはそれだというのである。
「地球の食べ物です」
「ガムか」
「紙から取り出して」
実際に出してみせるエイジだった。中からコーヒー色の板が出て来た。
「これをですね」
「食べるのか」
「いえ、噛みます」
そうするというのである。
「噛んでそれで甘さを味わうんです」
「飲み込まないのだな」
「はい、噛み続けます」
あくまでそうするというのである。
「それがこのガムなんです」
「面白いものだな」
「地球にあるお菓子の一つで」
「成程な」
「どうですか、それで」
「貰おうか」
こう答えたゲイルだった。
「それではな」
「はい、それじゃあ」
ゲイルはそのガムをエイジから受け取って口の中に入れる。エイジもそうした。そのうえでそれぞれそのガムを噛んでみるとだった。
ゲイルがまず言った。
「ふむ。これは」
「どうですか?」
「いいものだな」
目を細めさせての言葉だった。
「実にな」
「気に入ってくれましたね」
「地球のものはどれも美味いな」
今度はこう言う彼だった。
「このガムは特にだ」
「特にですか」
「いい」6
また言ったのだった。
「緊張もほぐれるしな」
「眠気醒ましにもいいですよ」
「そうだな。噛んでいればそれで眠気が取れるな」
「その為のガムもありますし」
「そうか。それではだ」
「このガムを噛んで」
「戦いに向かうか」
「そうしましょう」
こんな話をしていたのだった。そうしてだった。
ゲイルの軍がだ。ゲートに向かうのだった。それを見てだった。
ル=カインはだ。すぐに決断を下した。
「それではだ」
「はい」
カルラが応える。
「ゲートを守りそしてだ」
「あの愚か者達をですね」
「一人残らず倒す」
こう返すル=カインだった。
「わかったな」
「わかっています。それでは」
「全軍迎撃用意」
ル=カインは指示を出した。
「そのうえでゲートを守るぞ」
「わかりました」
「それでは」
部下達が応えてだった。そのうえでだった。
ゲイルの軍とル=カインの軍が衝突する。ゲートの前でだ。
「ゲートを守れ!」
「ここは何としてもだ」
「いいな!」
こうル=カイン側の指揮官達が言う。
「そうしてだ」
「奴等を退け」
「太陽系に逃れるのだ」
これが彼等の目的だった。しかしだった。
ゲイルもだ。粘るのだった。
「いいか、我々はだ」
「はい」
「どうしますか」
「ゲートを攻めることはない」
それはないとだ。ゲイルは言うのだった。
「それはだ」
「左様ですか」
「そうするというのですね」
「そういうことだ。今はだ」
また言う彼だった。
「彼等を引き付ける」
「わかりました」
「では」
「そうしましょう」
こうしてだった。彼等は防戦に努める。ル=カインの軍は今は守りに専念していたのだった。
両軍の戦いは膠着状態に陥っていた。その中でだった。
ル=カインが前に出た。そしてだった。
「行くぞ」
「なっ、来た!?」
「あの機体が」
「来たぞ!」
彼はブイマックスを発動させた。それによってだった。
ゲイルの軍を蹴散らしていく。一機、また一機とだ。
それを見てだった。ゲイルに指示を仰ぐ声が集中してきた。
「閣下、ここは!」
「どうしますか」
「一体」
「私が出る」
こう答える彼だった。
「それではだ」
「左様ですか」
「では御願いします」
「それでは」
「うむ、そうだな」
こうしてだった。彼が前に出る。そしてなのだった。
両者の戦いがはじまった。ゲイルが攻撃を浴びせる。しかしだった。
ル=カインはかわす。攻撃は当たらない。
「甘いな」
「やはりな」
それを見ても動じないゲイルだった。
「ブイマックスには効果がないか」
「一つ言っておく」
ここでこう言うル=カインだった。
「ブイマックスに効果があるのはだ」
「何だというのだ」
「ブイマックスだけだ」
これが彼の言葉だった。
「それを言っておく」
「そう言うのか」
「そうだ。エイジは何処だ」
こうゲイルに問う。
「今何処にいる」
「それはすぐにわかる」
今は言わないというのだった。そしてだ。
ル=カインとの戦いが続く。その中でだった。
ゲイルのマシンは次第に傷ついていく。劣勢は明らかだった。
「このままではか」
「そうだ、貴様は終わりだ」
こうゲイルに言うル=カインだった。
「それを言っておく」
「そうだな。私では無理だ」
それはゲイルも認める。しかしだった。
ここでだ。彼等が来た。
「し、司令!」
「大変です!」
「後方にです!」
ル=カインの部下達が悲鳴をあげる。
「敵です!」
「あれは」
「まさか」
ル=カインもだ。その顔に狼狽を見せて言った。
「あの者達がここで」
「ロンド=ベルです!」
「来ました!」
「奴等が!」
そしてだった。そのロンド=ベルが後方に姿を現したのだった。
「よし、間に合ったな!」
「これでだ!」
「俺達の勝ちだ!」
「貰った!」
こう口々に言ってだった。敵の後方を衝く。それでだった。
ロンド=ベルはだ。一気に攻めてだった。
グラドス軍を倒していく。その勢いはかなりのものだった。
「くっ、強い!」
「駄目だ、勝てん!」
「勢いが強過ぎる!」
グラドス軍はその数を減らしていく。そしてだった。
カルラが迎撃に出た。しかしだ。
デビットがだ。その彼女のマシンに狙いを定めた。
「終わりだ!」
「何っ!?」
「隙だらけなんだよ!」
こう言ってだった。そのマシンのコクピットを貫いたのだった。
それで動きが止まった。カルラ自身も攻撃を受けだ。ゆっくりと前に崩れ落ちていく。
「お、おのれ・・・・・・」
「これで御前も終わりだな」
「何故だ・・・・・・」
カルラは死相を浮かべながらデビットに対して問う。
「何故我々が」
「御前がやられたのは感情的になり過ぎていたからだ」
「感情的にだと」
「そうだ。だからだ」
それでだというのである。
「狙いを定められた」
「くっ・・・・・・」
「そしてだ」
さらに言うデビットだった。
「御前等が敗れるのはだ」
「それはどうだというのだ」
「その偏見故だ」
「ヘンケンだというのか」
「グラドス至上主義という偏見だ」
それだというのである。
「それ故に敗れたのだ」
「我々こそは」
だが、だった。カルラは断末魔の中でも言うのだった。
「この銀河を」
「それが誤りだ。わからないのだな」
「誤りだと」
「グラドス人も俺達も同じだ」
彼が言うのはこのことだった。
「だからだ。それで敗れるのだ」
「まさか。私が」
「死ぬんだな」
デビットの言葉はあっさりとしたものだった。
「そのままな」
「グ、グラドスに」
断末魔の中で。カルラは言う。
「栄光あれ・・・・・・」
これが最後の言葉になりだ。彼女は爆発の中に消えた。これで戦局はグラドス軍にとってさらに厄介な状況となったのだった。
「し、司令カルラ閣下が戦死されました」
「後方はもう支えられません」
「どうされますか」
「戦線を縮小する」
これが彼の出した結論だった。
「今はだ」
「戦線の縮小ですか」
「今は」
「そうだ。そしてだ」
その言葉が続けられる。
「双方を愛手にする」
「愚か者達も」
「ロンド=ベルも」
「そうだ」
まさにその通りだというのだった。
「わかったな」
「わかりました。それでは」
「今は」
「そうしましょう」
こうしてだった。グラドス軍は少し退く陣を整えようとする。しかしだった。
ここでだ。ユンが言った。
「レーダーに反応です」
「レーダーに!?」
「はい、グラドスのものではありません」
こうレフィーナに報告する。
「これは」
「宇宙怪獣かしら」
「はい、そうです」
まさにそうだというのだった。
「来ました」
「まだこの辺りにいたのね」
「相変わらずしぶといですな」
ショーンもここで言う。
「宇宙怪獣も」
「そうですね。しぶとくなくていいのですけれど」
こんなことも言うレフィーナだった。
「けれど今は」
「はい、彼等ともまた」
「戦いましょう」
「それでは」
彼等とも戦う決意を固める。しかしだった。宇宙怪獣達はだ。妙な動きを取ったのだった。
姿を現すとだ。すぐにグラドス軍の後方に回ってきたのである。
「あれっ!?」
「何でなんだ?」
「グラドスの方に行ったぞ」
「どういうつもりなんだ」
ロンド=ベルの面々はそれを見ていぶかしむ。
「俺達の方には来ない」
「何考えてるんだよ」
「あの連中は」
しかしだった。ここでタシロが言うのだった。
「そういうことか」
「えっ、艦長」
「っていいますと」
「何かわかったんですか!?」
「敵は弱い方から叩く」
タシロは強い声で言った。
「そういうことだ」
「じゃあ弱っているグラドス軍から倒す」
「そういうことなんですね」
「つまりは」
「そうだと思う。まずはグラドス軍を倒し」
タシロはその宇宙怪獣達の動きを見ながら述べた。
「そしてそのうえでだ」
「こっちですね」
「こっちに来ますか」
「それから」
「そうなるな。間違いなくだ」
ここまで予測してからだ。そのうえでまた言う彼だった。
「それではだ」
「はい、それじゃあ」
「ここはですね」
「どうしますか?」
「グラドスとはこのまま戦う」
彼等とはそうするというのだった。そしてだ。
「そして宇宙怪獣ともだ」
「戦いますか」
「そうするんですね」
「それじゃあ」
「そうだ。それでいいな」
あらためてだった。ロンド=ベルの面々に尋ねた。
「異論はあるか」
「いえ、別に」
「やっぱりここはそれですね」
「それが一番ですね」
反論はなかった。誰もがだった。
こうしてだった。宇宙怪獣達を見つつグラドス軍への攻撃を続ける。それはゲイルの軍もでありその戦いの中でのことだった。
ゲイルがだ。ゲートに攻撃を浴びせてだった。
ゲートが破損しだ。派手な爆発を起こしそうして壊れたのだった。
それを見てだった。グラドスの将兵達の間に絶望が走った。
「何と・・・・・・」
「我等の最後の希望が・・・・・・」
「消えた・・・・・・」
こう言ってだ。落胆しきったのだった。
そしてそこにだ。宇宙怪獣達が襲い掛かるのだった。
「う、うわあああああああっ!」
「た、助けてくれーーーーーーっ!」
しかしその絶叫は断末魔でしかなかった。
グラドスの将兵達は一人また一人と喰われていく。そして。
ギウラとズールの乗るディマージュは。
「これで!」
「終わりよ!」
ロアンとシモーヌがそれぞれ攻撃を浴びせてであった。
どちらもコクピットから真っ二つにされ。断末魔の声を出すのであった。
「ば、馬鹿な・・・・・・」
「ここで朽ちるとは・・・・・・」
「野蛮人共に」
「この我々が」
「野蛮、ね」
「その言葉だけれどね」
彼等を屠ったロアンとシモーヌはだ。冷たい調子で返すのだった。
「そっくりそのまま」
「あんた達に返すわ」
「何っ、我等が野蛮だと」
「グラドス人がだというのか」
「そうだよ」
「その通りよ」
やはり二人の返す言葉は冷たい。
「他の文化を認めないで相手を一方的に否定する」
「それこそが野蛮というのよ」
「くっ、この我々を否定し」
「そう言うのか」
「言ってもわからないようだしね」
「話すだけ無駄な連中なのはわかっていたけれど」
それでも話した。そうしてであった。
彼等も死んだ。残るはだ。
グラドス軍の将兵達はロンド=ベルだけでなく宇宙怪獣達からも攻撃を受けていき数える程しか残らなくなった。だがその中にはだ。
ル=カインもいた。その彼はだ。
「まだだ」
「まだですか」
「戦われますか」
「最後の最後まで戦う」
こう残っている部下達に言うのだった。
「偉大なるグラドスの戦いを見せてやる」
「偉大、ね」
その彼の言葉にだ。ギュネイがシニカルな反応を見せた。
「あんたいつもそう言ってたけれどな」
「違うというのか」
「ああ、違うね」
これがギュネイの返答だった。
「あんた達を下劣だとは思ったことはあっても」
「下劣だと、我等が」
「そうさ。偉大とは思ったことはないな」
これがギュネイの彼への言葉だった。
「一度もな」
「一度もだというのか」
「そうさ。あんたもそのお仲間も下らない奴等だよ」
見事なまでの全否定だった。
「取るに足らない下品な奴等だったよ」
「私を愚弄するのか」
「愚弄なんかじゃないわよ」
今度はクェスが忌々しげに告げる。
「事実よ。紛れもないな」
「くっ、貴様等・・・・・・」
「さあ、死にな」
「さっさとね」
二人はそれぞれファンネルでル=カインのザカールの周りの敵機を倒していく。
「それじゃあ後は」
「あんただけだけれどね」
「まだだ・・・・・・」
彼は最後の意地を見せようとする。しかしだった。
その後ろからだった。宇宙怪獣合体型が来てだった。
「!?」
「なっ、あれが来たかよ!」
「ここで!」
一気にだ。左右からサンドイッチにされたのだ。
それも一度や二度ではない。何度もだ。ザカールはそれを避け切れなかった。
「う、うぬううううううっ!」
「死んだか」
「これで」
多くの者がそう見た。
「ル=カインの奴もこれで遂に」
「死んだ!?」
誰もがそう思った。だが。
彼はその攻撃を受けてもまだ生きていた。満身創痍でもだ。
ふらふらになりながらもだ。前に出て言うのだ。
「私は。野蛮人共になぞ」
「そうか、もういい」
その彼の前にだ。エイジが来て告げる。
「ル=カイン、もう御前はだ」
「何だというのだ」
「死ね」
血だらけになっている彼にだ。一言告げた。
「これでだ」
「ま、まだだ」
動けなくなってもだ。彼は言うのだった。
それでだった。何とか前に出ようとする。だが。
エイジの攻撃がコクピットを貫いた。彼の額もまた。
それで動きを完全に止めてだ。ゆっくりと銀河の奥底に落ち。爆発の中に消えた。これが華麗と言われた男の末路であった。
「無様だな」
「そうだね」
「これでね」
ロンド=ベルの面々はその死についても冷たかった。
「最後位潔くしていればいいのに」
「最後の最後まで偉そうに言って」
「それでああした最後って」
「何だかね」
「僕も思うよ」
彼を倒したエイジも言う。
「ル=カイン、下らない男だったよ」
「全くだな」
彼の言葉にゲイルも頷く。
「だが、これでだ」
「はい」
「グラドスの恥は全て消えた」
こう言うゲイルだった。
「その過ちもだ」
「そうですね。グラドスはあらためて新たな道を歩めますね」
「そのことにも気付いた」
ゲイルの声は澄み切っていた。
「それではだ。今はだ」
「そうですね。残っている宇宙怪獣をですね」
「倒そう。そして」
「このグラドスでの戦いを終わらせましょう」
「グラドス軍、完全に消滅しました」
一機もだというのである。副長の報告である。
「残るはです」
「宇宙怪獣だな」
「はい」
副長はタシロの問いにも答えた。
「残るはです」
「そうか、それならばだ」
「後はですね」
「全軍攻撃だ」
こう言ってだった。そうしてであった。
彼等はそのまま宇宙怪獣との戦いに入った。エイジとゲイルは肩を並べて戦っている。
「じゃあゲイルさん」
「そうだな。ここはだ」
「はい、グラドスの為に」
「銀河の為にな。共に戦おう」
こうしてだった。彼等は共闘し無事宇宙怪獣の大軍を倒した。戦いはこれで終わった。
それで終わらせてからだった。彼等は一旦本星まで戻る。そこで整備と補給を受けてだった。
「行くのね」
「うん、行くよ」
エイジはこうジュリアの言葉に頷く。
「三連惑星にね」
「そこに行ってそれで」
「銀河を救いに行って来るよ」
そうするというのである。
「もうね。グラドスでの戦いは終わったしね」
「それでなのね」
「うん、行って来るから」
姉に対して微笑んで話すのだった。
「今からね」
「そう。それじゃあ私達は」
「このグラドスをだね」
「まずはバルマーから独立するわ」
そこからだというのだ。
「そうしてそのうえでね」
「新しい道を歩むんだね」
「バルマーの下で選民思想に染まっていたこそこそが誤りだった」
ゲイルも気付いていることだった。
「だからそれから脱却する為にもだ」
「その為にも」
「そうだ。我々は独立する」
彼は言い切った。
「そうして自分達の力だけで正しき道を歩むのだ」
「そうしていくつもりよ」
ジュリアもまた言う。
「だから。私達は」
「わかったよ」
エイジは微笑んで二人の言葉を認めた。
「じゃあ僕達は離れた場所からね」
「ええ、見ていて」
「これからの我々を」
「そうさせてもらうよ。それじゃあね」
こう別れの挨拶をしてだった。エイジは今は姉達と別れた。そうしてそのうえでグラドスを発ち三連惑星へと向かうのであった。
それは当然ロンド=ベル全軍もである。その彼等がだ。
「しかしな」
「そうね」
「何ていうかね」
まずはこうしたやり取りからだった。
「グラドス人にもいい人がいたって」
「ゲイルさんやジュリアさんみたいな人がいるんだって」
「それがわかるなんてな」
「思わなかったわ」
「だよなあ」
皆あらためてこのことを話すのである。
「ゴステロみたいな奴ばかりじゃなかったんだ」
「普通の人だって沢山いたし」
「他の星の人間や文化を受け入れる人もいる」
「そうだったんだ」
「そして」
そうしてだった。アルマナとルリアのことも考えて話すのだった。
「あの二人だってね」
「バルマー十二支族の人達でも」
「ああいう人達だっている」
「そういうものか」
「そういえばな」
そしてだ。トウマがあることに気付いた。
「バラン=ドバンだって特にな」
「そうね。あの人は」
ミナキも彼のその言葉に頷く。
「人間としてはね」
「見事な武人だよな」
「それは間違いないわね」
「どの星の人間も同じなんだな」
トウマはあらためて言った。
「いい奴もいれば悪い奴もいる」
「そういうことなのね」
「それでだよな」
また言うトウマだった。
「色々なことを考えていかないとな」
「いけないわよね」
「ああ、そう思うよ」
「どの者の心にもだ」
ゼンガーも言う。
「善と悪がある」
「その二つがですか」
「同時にある」
「そうなんですね」
「そうだ。至極稀にどちらか一方が完全に勝っている場合もある」
そうした人間もいるというのである。
「だが、だ。殆んどの者はだ」
「善と悪を一緒に持っていて」
「その中で揺れ動いている」
「そういうものなんですね」
「つまりは」
「その通りだ。だからこそだ」
ゼンガーは腕を組んでだ。そうして語るのだった。
「グラドスもまた、だ」
「善い人もいれば悪い人もいる」
「そうなるんですね」
「俺もこのグラドスに来るまでわからなかった」
そのゼンガーにしてもだというんどあ。
「気付こうともしなかった」
「けれど気付いたら」
「そういうことなんですね」
「見えてくる」
「そうしたことまで」
「その通りだ。見えてきた」
実際にそうだというのである。
「そしてその見えるものはだ」
「はい、それは」
「どういったものですか?」
「いいものだな」
こう言うゼンガーであった。
「実にな」
「そうですね」
エイジがゼンガーのその言葉に頷く。
「見えてきたものがこんなに奇麗とは思いませんでした」
「それがわかった」
また言うゼンガーだった。
「そうした戦いだったな」
「そうですね。それでなんですけれど」
「何だ」
「三連惑星ですけれど」
その話をする彼だった。
「一体どういった戦いになるでしょう」
「それはわからない」
大河が答えた。
「それはまだだ」
「しかしですね」
「それでもですね」
「行かないといけませんね」
「どうしても」
「そうだ、行こう諸君」
大河のその言葉が強くなる。
「我々の今回の旅の本来の目的を果たしにだ」
「長かったな」
凱の言葉には感慨が篭っている。
「ここまで」
「それで凱」
その凱にだ。命が声をかけてきた。
「いいかしら」
「ああ、何だ?」
「護君はどうしているのかしら」
彼女が考えているのはこのことだった。
「今は」
「あいつも戦っているんだ」
凱は少し俯いて答えた。
「あいつの戦いを」
「そうしているのね」
「間違いない」
今度は断言した。
「あいつも。俺達と同じ様に」
「ソール十一遊星主達と」
「その護を助けに行く戦いでもあるんだ」
凱はこうも言った。
「俺達の今度の戦いは」
「そうね。世界を救う為でもあるし」
「護を助ける戦いでもあるんだ」
「一人の男の子を助けられないで」
シローが言った。
「世界は助けられないよな」
「そうね」
アイナがシローのその言葉に頷く。
「それはね。その通りね」
「だから行かないといけないな」
「そうなるわね、やっぱり」
「あの時の護のレプリカは」
凱は地球でのかつての戦いのことも思い出していた。
「尋常な強さじゃなかった」
「ええ、本当にね」
命が彼の今の言葉に頷く。
「あそこまでの強さがあるなんて」
「あれだけのレプリカを作り出せる相手だ」
凱の言葉は真剣なものだった。
「激しい戦いになるな」
「そして苦しいものになるわよね」
「それでも勝つんだ」
決意そのものの言葉だった。
「そうして世界を」
「ええ。何があってもね」
「そうしないとね」
ルネもここで言う。
「悲しんだままの人だっているんだから」
「猿頭寺さんか」
「あの人が」
二人も彼のことに気付いた。
「そういえばあの人は最近は」
「全然喋らなくなったわね」
「色々と思うことがあるんだよ」
ルネもそれがわかっているのだった。
「だからね。どうしてもね」
「言葉がなくなる」
「そうなるのね」
「けれどそれもね」
ルネの言葉は続く。
「もうすぐ終わるよ」
「俺達が戦いを終わらせて」
「それでなのね」
「ああ、それでだよ」
まさにそれによってだというのである。
「わかったらね」
「この戦い、何があっても」
凱はまた言った。
「ソール十一遊星主を倒す」
「その通りだ。では諸君」
大河も全員に告げる。
「最早我々の進路にあるのはだ」
「何もない」
「そうですね」
「三連惑星だけ」
「後は」
「そうだ。そこに行き銀河を救う」
彼は言った。
「この世界をだ」
「長かったね」
ユングの言葉にも感慨が篭っている。
「その間色々なものを見てきたけれど」
「最大の目的が終わるわ」
カズミもだった。感慨を感じているのは。
「遂にね」
「まだバルマーがあるけれどね」
「それでもよ。終わるわ」
「三連惑星のことが」
「遂にね」
「それじゃあですね」
ノリコも言う。
「本当にその為にも」
「ええ、ノリコ」
「行くわよ」
カズミとユングはここでは笑顔になる。
「そしてね」
「護君も助けましょう」
「何か男の子を助けるって」
ノリコはだ。二人とはまた違う笑顔になっていた。
「ヒーローみたいね」
「そうね。女の子だけれど」
「ヒーローになれるのね」
「助けるのはお姫様じゃないけれど」
ノリコはこうも言う。
「それでも。なれるのね」
「そうなるのね。これって」
「何か面白いわね、そう考えると」
「まあそれを言ったらヒーローは凱さんだけれど」
やはり彼だというのである。
「私達も」
「ヒーローの仲間になるかしら」
「この場合は」
「そうですね。それでも」
「ええ、行くわよ」
「そして勝つわよ」
それは絶対にだというのであった。
「この戦い。激しくなるわね」
「いつも通りね」
「激しい戦いは本当にいつもですね」
それはノリコも受け入れていてわかっていた。
「何度死ぬかって思ったかわかりませんよね」
「よくそれで皆今まで死ななかったものね」
「モエラだって生きてたし」
三人でそんな話もするのだった。
「私と似てる子達もそういう娘いるし」
「私もね」
「御二人共そういう娘多いですよね」
「まあそれはね」
「否定できないけれどね」
二人はここで苦笑いになってそれぞれ述べた。
「声のことはどうしてもね」
「何ていうか」
「私もだったりしますけれど」
そして実はノリコもなのだった。
「ハーリー君にミーナさんに」
「ノリコも結構そういう人が増えてきたし」
「そうしたことでも寂しくなくなってきたわね」
「最初は寂しかったですよ」
こんなことも言うノリコだった。
「だって。私本当に一人で」
「私は。確か」
カズミはここで己の記憶を辿った。そのうえでの言葉である。
「ニナさんもいたし」
「私もクェスちゃんがいたわね」
「他にも何人もいてくれてたし」
「そうよね。私達は」
「似ている人って有り難いのよね」
「何かとね」
二人で話していってだ。そうしてであった。
あらためてだ。二人で話した。
「それじゃあ今は」
「その皆と一緒にね」
「行きましょう」
「決戦の場にね」
「はい、それじゃあ」
ノリコも二人の言葉に頷く。
「三連惑星へ」
こうしてだった。ロンド=ベルはその目的に向かうのだった。
決戦の一つがだ。また行われようとしていた。
第八十二話 完
2010・12・15
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