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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第五十三話 ノーザン=クロス

             第五十三話 ノーザン=クロス
 戦いは終わった。しかしであった。
「えっ、オズマさんとキャサリンさんが!?」
「行方不明!?」
 皆その報告を聞いて驚きの声をあげた。
「一体何処に」
「何処に行ったのかしら」
「しかも」
 話はまだ続く。
「グラス大統領が死んだ」
「えっ!?」
「大統領が!?」
「嘘・・・・・・」
「いや、皆」
 ここでキラがその皆に言う。
「残念だけれど本当みたいだよ」
「おい、これ何だよ」
「マジかよ」
 スティングとアウルが自分達の携帯を見て驚きの声をあげた。
「ニュースになってるぜ」
「バジュラにやられたって!?」
「それおかしい」
 だがステラがこう言った。
「フロンティあの中のバジュラはステラ達が皆倒した」
「ああ、そうだよ」
「その通りだよ」
 スティングとアウルはステラのその言葉に応えて言った。
「それもすぐにな」
「大統領官邸まで行った奴はいなかったぜ」
「それもだ」
 今度はロウが言う。
「道にしてもだ。大統領官邸への道にバジュラはだ」
「一匹も来なかった」
 今指摘したのはレイである。
「あくまでコンサート会場周辺だけだった」
「確かに大統領はコンサートに出席しようとしていたぜ」
 霧生もそれはよく覚えていた。
「けれどバジュラが来てすぐに避難したしな」
「安全圏まで車で脱出されていたわ」
 ミスティが証人になる。
「だから。そんなことは」
「どう考えてもおかしいですよね」
 レトラーデは明らかに疑念を抱いていた。
「これは」
「まさかと思うけれど」
 ボビーが不安な顔になって述べた。
「二人はそれに関係して行方不明なのかしら」
「それだったら心配ですね」
 ダバの顔も曇っている。
「ここは御二人を探しましょう」
「じゃああたし行って来るわ」
 ボビーは自分から名乗り出た。
「ダーリンが心配だし」
「あれ、ボビーさんって確か」
 ここでショウがボビーの今の言葉に突っ込みを入れた。
「オズマさんは諦めたんじゃ」
「諦めてはいないわ」
 ボビーはそれは否定した。
「ダーリンはノンケでしょ」
「ええ」
「あたしはそうした相手は見ているだけでいいのよ」
「それだけでいいんですか」
「愛は見守るものよ」
 そしてこうも言う。
「そんな無理強いな愛はもう卒業してるのよ」
「大人なんだな」
「そうだな」
 アレンとフェイはそんなボビーの言葉を聞いて素直に賞賛した。
「あんた、いい男だよ」
「心は成熟したレディーなんだな」
「有り難う、二人共」
 ボビーはその二人に素直に礼を述べた。
「とにかくあたし行って来るわ」
「それなら俺が同行します」
「私も」
 ショウとチャムが名乗り出た。
「一人より二人の方が探しやすいですし」
「それに二人に何かあったら」
「御願いできるかしら」
 ボビーはその二人の申し出にまずは問うた。
「貴方達の力を貸してくれるかしら」
「そのつもりです」
「じゃあすぐに行こう」
「ええ、わかったわ」
 こうしてであった。ボビーは彼等と共にすぐにオズマとキャサリンの捜索に向かった。そしてその頃ミシェルやナナセは。
「俺はまだいいけれどな」
「その傷でか?」
「すぐに復帰できるからな」
 こう病院のベッドから傍にいるクランに言ったのである。
「だからだよ」
「すぐに復帰するつもりか」
「ああ、そうさ」
 また言うミシェルだった。
「そのつもりだよ」
「御前はあくまで戦うつもりか」
「惚れた相手の為にな」
 今度は微笑んでの言葉だった。
「そうするさ」
「全く。御前も案外頑固だな」
「そうかもな。それでなんだけれどな」
「うむ。今度は何だ?」
「あいつは大丈夫なのか?」
 まずはこう問うた。
「あいつは」
「あいつとは誰のことだ?」
「ルカだ。大丈夫か?」
「まずいな」
 クランの顔がここで曇った。
「正直なところな」
「そうか」
「ずっとナナセに付きっきりだ」
 こう言うのであった。
「ずっとな」
「そうか」
「それにだ」
 クランはさらに言う。
「思い詰めた顔になっている」
「そうだろうな、それは」
「何か早まりそうで心配だ」
「見てやってくれるか?あいつを」
 ミシェルはここでこうクランに頼んだ。
「俺が動けるようになるまでな」
「それまでの間か」
「動けるようになったら俺も行く」
 そしてこうも言う。
「だからその間は頼む」
「わかった、それではだ」
「ああ。ランカちゃんも消えたらしいな」
「そうだ、何処にいるのかわからない」
「何かこの戦い色々あったな」 
 ミシェルもここで暗い顔を見せた。
「俺達もフロンティアもこれからどうなるんだろうな」
「私にもわからない」
「俺もだ」
 二人はこれからのことに不安を感じていた。これからの自分達のこともフロンティアのこともだ。それははっきりとした不安であった。
 その中でだ。フロンティアで一つの出来事が起こっていた。
「さて、それではだ」
「はい」
「皆それで納得してくれたな」
「議会だけでなく軍もです」
 美知島がレオンに話していた。
「文官の最高位であり補佐官である貴方が大統領になられることにです」
「暫定ではあるがな」
「それはそうですが」
「しかし大統領であることには変わりない」
 レオンはこう言って口元だけで笑ってみせた。
「この私がな」
「では閣下」
 美知島はレオンをあえて大統領とは呼ばずにこう呼んだ。そのうえでだった。
「今からは」
「うん、やるべきことは多い」 
 レオンは笑みを消して彼の言葉に応えた。
「まずはだな」
「非常事態宣言ですね」
「最高のな。そしてだ」
「はい、そして」
「彼等もだな」
 目を光らせての言葉だった。
「来てもらうとしよう」
「そうしてそのうえで」
「バジュラを倒し新天地を手に入れる」
 こう言うのだった。
「そうするとしよう」
「それではグレイス氏は」
「終わりだ」
 返答はこれだけだった。
「それで頼む」
「わかりました、それでは」
「そしてランカ=リーの代わりだが」
 それについても話す彼だった。
「いるか」
「彼女しかいませんが」
 これが美知島の返答だった。
「最早」
「そうか、やはりな」
「あの混乱の中で小さな事務所に入りそのうえで街で歌っているそうです」
「ほう、そうなのか」
「今テレビにも出ています」
 ここでテレビの電源を入れるとだ。シェリルがいた。
 かつての様に歌っている。だがその雰囲気はだ。前とは違っていた。
 レオンはその彼女を見てだ。興味深そうに言うのであった。
「ふむ、いいな」
「ではやはり彼女ですね」
「データも見た。やはり彼女しかない」
「はい、それでは」
「全ては決まりだ」
 今度も素っ気無い言葉ではあった。
「駒は揃った。後はそれを動かすだけだ」
「はっ」
 美知島はレオンに対して敬礼をした。そうしてであった。
 シェリルは夜にはある場所に戻っていた。アルトもそこに入るのだった。
 だがここでだ。兄弟子である早乙女矢三郎がいた。穏やかな目に淡い茶色の髪の好青年であった。和服が実によく似合っている。
 彼はアルトを見てだ。そのうえで彼に言うのであった。
「ようこそ」
「・・・・・・いたのかよ、兄さん」
「戻って来られて何よりです」
 こう言うのであった。
「本当に」
「・・・・・・そうなのかよ」
「一度は私達と決別して地球に残られたというのに」
「何で宇宙で出会ったのかって思ったさ」
「ですがそれが運命なのです」
 矢三郎はアルトを見たまま話す。
「貴方の」
「運命か」
「話は聞いています。異なる世界にも行かれたそうですね」
「ああ」
「そちらの世界でも戦われこちらの世界でも」
「ずっと戦ってきた」
 アルトの返す言葉はこうしたものだった。
「だから俺は」
「いえ、貴方は役者です」
 ここで矢三郎の目が確かなものになった。
「あの一つの場で全てを支配する恍惚は御存知の筈です」
「しかしそれは」
「貴方は必ず歌舞伎を変えられる役者になります」
 アルトのその才を知っての言葉である。
「ですから。ここに戻って来られたのです」
「けれど今は」
「今は?」
「シェリルはここにいるんだよな」
「はい」
 矢三郎はその問いには静かに頷いて答えたのだった。
「その通りです」
「大丈夫なのか、それで」
「今は安静にしておられます」
「会いたい、いいか」
 切実な顔でかつての兄弟子に告げる。
「それは」
「どうぞ」
 そして彼もだ。それを穏やかに受けた。
「お入り下さい」
「いいのかよ」
「何度も申し上げますがここは貴方の家です」
 だからだというのである。
「ですから。何時でもお帰り下さい」
「それでかよ」
「何度も申し上げますが待っていました」
 そしてこうも言うのであった。
「ですから」
「・・・・・・そうか」
 こうしたやり取りの後でだ。アルトは家に入った。そうしてそのうえでだ。畳と障子の部屋で和服を着て夜の中にいるシェリルと会うのであった。
「アルトなのね」
「・・・・・・ああ」
 シェリルの問いに答えた。
「また歌うんだってな」
「自然にね。そういうことになったわ」
 こうアルトに話すのだった。二人は屋敷の縁側に出て話す。
「そうね」
「そうか」
「そうなの。やっぱり私は歌うのね」
「いいんだな、それで」
 アルトはシェリルの横顔を見て問うた。
「御前はそれで」
「私には歌しかないみたいだから」
 シェリルの笑みは何故か寂しげなものだった。
「だからね」
「けれど御前は」
「話、聞いたの」
「何か悪いのはわかるさ」
 それでだというのだ。
「詳しくは聞かないさ。それでも御前は」
「いいわ、それでも」
 だが、だ。シェリルはこう言うのであった。
「私はね」
「最後まで歌うのか」
「・・・・・・ええ」
 また俯いての言葉だった。
「ただね」
「ただ。何だ?」
「今幸せよ」
「幸せなのか?今は」
「だって。傍にいてくれるから」
 シェリルは今はあえて横を振り返らなかった。
「だからね」
「それでか」
「それでよ。ねえ」
「ああ」
「このままこの時間が続くかしら」
「続くだけ続けたいのか?」
 アルトはシェリルに問い返した。
「御前は」
「そう思ってるけれど」
「ならそうすればいいさ」
 これがアルトの返事だった。
「俺はそう思う」
「そうなの。じゃあ」
「ああ、こうしていたいんだよな」
「ええ」
「いいぜ、そうしなよ」
「有り難う・・・・・・」 
 二人は今は共にいた。そうしてであった。
 シェリルは次の日レオンの執務室でルカと話した。当然レオンも一緒である。
「つまりシェリルさんはです」
「ええ」
「そのウィルスが体内に入っていて」
「それでなのね」
「もう脳に達しています」
 そうなっているというのである。
「そうなればもう」
「楽しい?」
 ここで説明するルカに言うのだった。
「御前は死ぬんだって難しく言って」
「それは・・・・・・」
「もうわかっているわよ」 
 強い言葉だった。
「それはね。けれどそれでも」
「いや、話はこれからだ」
 今度はレオンが言ってきた。
「いいだろうか」
「どうしたっていうの?」
「今の君の歌の発する波長はそのウィルスの影響で変わっている」
「ウィルスのせいで?」
「そうだ。そしてその波長はだ」
「ええ」
「彼女と同じだ」
 こう話してみせた。
「あの我々を裏切ったランカ=リーとだ」
「じゃあ私の歌は」
「はい、切り札になります」
 ここでまた言うルカだった。
「バジュラ用の」
「そうなの」
「はい、それでなのですが」
「頼めるだろうか」
 今度は二人での言葉だった。
「これからのことを」
「このフロンティアの未来の為に」
「フロンティアね」
 ここでだ。シェリルはまずルカを見て言った。
「貴方やアルトは元々ロンド=ベルだったわね」
「はい」
「それでもいいのね」
「そのつもりです」
 覚悟を決めた言葉だった。
「だからこそここにいます」
「そうなの。それでなのね」
「僕はフロンティアの、そして彼女の為に戦います」
「わかったわ。じゃあ私は」
「いいね、それで」
 レオンはまたシェリルに問うた。
「君はそれで」
「いいわ。それじゃあね」
「よし、それでは話は決まりだ」
「最後の最後まで。歌わせてもらうわ」
 シェリルも戦う決意を固めた。また一つ何かが動こうとしていた。
 そしてである。ボビーとショウ達はだ。遂に彼等を見つけたのだった。
「ショウ、ボビーさん、あれ」
「ああ、間違いない」
「やっと見つけたわ」
 二人はチャムの言葉に応えて述べた。
「二人共無事だったんだな」
「まずはそれが何よりよ」
「オズマさん、キャサリンさん」
 チャムが二人に声をかける。二人は物陰に隠れている。
「大丈夫?」
「その声は」
「リリスちゃん?」
 キャサリンはここでついつい間違えてしまった。
「そうだな、その声は」
「来てくれたの、まさか」
「悪いけれどリリスじゃないわ」
 チャムは二人のその言葉にはむくれて返した。
「私の姿見てわかるでしょ」
「ああ、チャムか」
「貴女だったのね」
「そうよ」
 機嫌をなおしてまた応える。
「元気なのね、それで」
「ああ、身体はな」
「けれど」
「けれど?」
「話したいことがある」
 オズマはいささか沈んだ顔で述べた。
「それでいいか」
「はい、お願いします」
 ショウが彼の言葉に応えた。
「それで何が」
「まずは戻りましょう」
 今度はボビーが提案した。
「それからゆっくりとね。どうやら」
「どうやら?」
「ダーリンはまだ大丈夫だけれどキャサリンが」
 彼女を見ての言葉であった。
「だからね。今はね」
「そうですね。キャサリンさんは何か」
「今にも倒れそうだけれど」
 ショウとチャムもここで気付いたのだった。
「それじゃあロンド=ベルに戻って」
「話はそれからね」
「ええ、じゃあ戻るわよ」
 また言うボビーだった。
「ロンド=ベルにね」
「済まない」
 オズマはそのボビーに礼を述べた。
「キャサリン、それじゃあな」
「ええ」
 こうして二人はロンド=ベルに戻った。そうしてそのうえでだ。詳しい話をするのだった。
「そうか」
「おかしいとは思っていたがな」
 まずはレイヴンとサンドマンが話した。
「あの男がか」
「実行犯だったか」
「ああ、そうだ」
 オズマは一同にさらに話す。
「レオン=三島がだ」
「殺した」
「大統領を」
「間違ってもバジュラじゃない」
 オズマはこのことを断言した。
「あいつがやった」
「それでお父様は」
 キャサリンも普段の気丈さはない。
「私達が駆け付けた時にはもう」
「いいわ」
 その彼女にボビーが優しく声をかけた。
「言わなくても」
「大尉・・・・・・」
「一番辛いのは貴女よ」
 目もだ。優しいものになっていた。
「だからね。言わなくていいわよ
「すいません・・・・・・」
「御礼はいいわよ」 
 こう言ってキャサリンの頭を撫でる。
「頑張ったわね」
「・・・・・・・・・」
 キャサリンは何とか涙をこらえた。そのうえでだった。
 大文字がだ。全員に告げてきた。
「諸君、そのレオン=三島からだ」
「はい」
「何かあったんですか?」
「あいつから」
「ロンド=ベルを統合軍に編入させるとこのことだ」
「統合軍と!?」
「まさか」
 皆大文字の言葉にまずは驚きの声をあげた、
「独立部隊の俺達にかよ」
「配下になれ!?」
「冗談じゃないわよ!」
「そうよ!」
 一斉に反論する彼等だった。
「よりによってあんな奴と」
「そんなことできるか!」
「ふざけるんじゃないわよ!」
「諸君等はそう考えているな」
 大文字はこう彼等に言った。
「それは確かに聞いた」
「それでどうするんですか?」
「あの、まさかと思いますけれど」
「本当にレオン=三島にですか?」
「つくんですか?」
「それだが」
 ここでだ。大文字はさらに話した。
「我々は今決断を迫られている」
「あいつにつくかそれとも」
「そういうことですよね」
「そうだ、まずはだ」
 大文字はさらに言った。
「オズマ少佐、グラス中尉」
「はい」
「私達ですね」
「そうだ。君達はその証拠を持っているな」
 大統領暗殺についてのである。
「そうだな」
「はい、それは」
「あります」
 その通りだというのである。
「パソコンには落としてあります」
「何時でも送信もできますが」
「それならそれを送信してくれ」
 大文字の決断は迅速だった。
「ロンド=ベル全員にだ」
「全員にですか」
「それを」
「そうだ。そして」
 大文字の言葉は続く。
「全員に判断をしてもらおう。それぞれな」
「それぞれですか」
「俺達自身が決める」
「そうしろっていうんですか」
「そうするとしよう」
 大文字の言葉は強いものだった。
「だからだ。わかったな」
「ええ、わかりました」
「それならですね」
「今から」
「そうする。いいな」
 こうしてであった。すぐにオズマとキャサリンが全員にそのデータを送信した。それを見てだ。ミシェルとクランが話した。
「そんなことだったなんてな」
「ああ、これは考えなかった」
「まあ今の俺はな」
 ここでだ。ミシェルは諦めた声を出した。
「ここで絶対安静だったな」
「暫くはな」
「動けないからな」
 その諦めた声での言葉だった。
「絶対にな。仕方ないな」
「そうだ。では御前は」
「ここに残るさ」
 これがミシェルの決断だった。
「また縁があればあっちに戻れるしな」
「そうか」
「クラン、御前はどうするんだ?」
 クランに顔を向けて問うた。
「それでどうするんだ?」
「私か」
「ロンド=ベル、好きだろ」
 クランに顔を向けての言葉である。
「だったらな」
「確かにロンド=ベルは好きだ」
 クランもそれは認めた。
「それはだ」
「そうか。それならな」
「それなら?」
「行くんだな、ロンド=ベルに」
 こうクランに告げた。
「今のうちだぜ、行くんならな」
「しかしだ」
 だが、だ。クランはそのミシェルを見て告げた。
「御前はもっと好きだ」
「俺はか」
「そうだ、御前は今動けないな」
「ああ」
「その御前を放って行けるものか」
 濡れた目でミシェルを見てだ。そのうえでの言葉だった。
「そういうことだ」
「そうか。俺の為か」
「今行ったな。縁があればまた一緒になれるとな」
「ああ、行ったさ」
「私も同じだ。ここは残る」
 クランは断言した。
「御前と共にだ」
「わかった。じゃあ俺も今はフロンティアの人達の為にな」
「戻るか」
「他に誰が残るかな」
「それはわからない。だが私は残る」
「そうか。それじゃあな」
「宜しく頼む」
 二人で言い合う。そうしてであった。
 ルカもだ。決断したのであった。
「ナナセさん、ずっと傍にいますから」
 まだ起きない彼女の枕元でだ。こう言うのだった。
 アルトもだった。その己の携帯を見て言う。
「残る、あいつの為に」
 彼も判断した。そうしてであった。
 そしてだ。ギガンティックの面々はだ。美知島に告げられていた。
「君達の場合は問題はないな」
「はい」
「確かに」
 まずは乗っている面々が応えた。
「元に戻るだけですね」
「統合軍に」
「そういうことだ。ではまた宜しく頼む」
 こう彼等に告げる美知島だった。
「そういうことでな」
 ここまで話してその場を後にするのだった。しかしだ。
 彼等だけになるとだ。華都美が全員に言うのだった。
「携帯からメールは受け取ったわね」
「ええ」
「確かに」
 雲儀と走影が応えた。
「補佐官がですか」
「大統領を暗殺して自分が」
「証拠は見たわ」
「今ね」
 リリィとラヴィーナも話す。
「それでどうするか」
「そういうことよね」
「統合軍に戻るか」
「ロンド=ベルに残るか」
 ザイオンとレイもいる。
「それだが」
「一体どうするか」
「また言うけれど補佐官が大統領を暗殺したのよ」
 華都美はまたこのことを話した。
「そして自分が政権に就いたのよ」
「そいつが俺達をか」
「自分の手駒にするつもりか」
 ムハンマドとパパスは明らかに表情を曇らせていた。
「気に入らない話だな」
「全くだ」
「それでどうします?」
 卯兎美もここで言う。
「私達は」
「私はもう決めているわ」
 今言ったのは華都美だ。
「ロンド=ベルに残るわ」
「残るんですね」
「長官は」
「ええ、残るわ」
 レオーネとルクレツィアにも述べた。
「皆は皆でそれぞれ決めて」
「答えは出てるわ」
「私もよ」
 エヴィータとアマリアが立ち上がった。
「私は残るわ」
「ロンド=ベルにね」
 彼女達は残留を選んだ。
「あの補佐官の手駒になるのは気に入らないわ」
「だからね」
「僕もだよ」
「私も」
 セルゲイとタチヤナも立ち上がった。
「フロンティアは統合軍に任せたらいいよ」
「あのオニクスもあることだし」
 二人もこう言って決断を述べたのだった。
「それじゃあやっぱり」
「ここは」
 エレオノールとミハイルである。
「ロンド=ベルに?」
「僕達の行く先は」
「私はそう思うわ」6
 華都美は今度は一同に述べた。
「このまま利用されてもいいことはないわよ」
「大統領を暗殺した男の手駒になったら」
「その行く末は」
「私達もロンド=ベルも同じよ」
 また言うのであった。
「最後には、ね」
「始末されてか」
「それで終わり」
「最後は」
「そうならないと思う人は残って」
 華都美はここで決断を促した。
「フロンティアにね。私は止めないわ」
「答えは出ているわ」
「私もですよ」
 シンシアとダニエルもここで立ち上がった。
「私はロンド=ベルに残るわ」
「そのうえで戦います」
 そしてだった。残っている面々も全て立ち上がった。当然慎悟と真名もだ。
「僕も」
「私も。ただ」
「ただ?」
「神名に会ってきます」
 そうするというのである。
「それであの娘と真人も」
「二人共なのね」
「何とか説得してみます」
 こう言うのである。
「二人共」
「大丈夫なのね」 
 華都美はその真名を見て問い返した。
「二人は」
「できるかどうかわかりませんけれどそれでも」
「わかったわ。それじゃあね」
「いいんですね、それで」
「ええ、貴女が望むようにしなさい」
 穏やかな笑みと共の言葉だった。
「そしてね」
「はい、二人を何としても」
 こうしてであった。真名は二人の説得に向かった。慎悟と卯兎美も同行している。
「真名さん、それじゃあ」
「今から御二人のところにですね」
「ええ、今からよ」
 行くというのである。
「行くわ。場所はね」
「そういえば二人のいる場所は」
「フロンティアの地下深くでしたね」
 慎悟達は言った。
「一体そこでどうしているのか」
「一切わかっていませんよね」
「ランカさんはブレラさんと何処かに行ってしまったけれど」
 このことも話される。
「けれど。それでも二人はまだ残っているから」
「そうですよね。それとオニクスは」
「まだ残っています」
「そして二人も」
 オニクスのパイロット、今から彼等が向かうその相手だ。
「いるわ。だからね」
「じゃあ今から行きましょう」
「二人を説得してそうして」
 こうしてであった。彼等はそのフロンティアの奥深くまで来た。そこはだ。
 完全に機械の部屋だった。床も壁も何もかもがだ。三人はそのさらに奥に入る。そうするとそこにその二人がいたのであった。
「姉さんね」
「ええ、神名」
 真名は彼女に対してすぐに言った。
「私がここに来た理由だけれど」
「何なの?」
「今すぐここを出ましょう」
 こう妹を見て言う。
「そしてロンド=ベルに行きましょう」
「ロンド=ベルに」
「今度大統領となるレオン=三島は貴方達を利用しようとしているのよ」
 真人を見ての言葉であった。
「ただそれだけなの。だから」
「それでここを出てなのね」
「ええ、私達と一緒に」
「その為に来ました」
 慎悟も言う。
「ですからここは」
「いいえ」
 しかしであった。真名は感情が見られない言葉で話してきた。
「私はここから出ない」
「えっ、出ない」
「どうしてですか!?」
「私はオニクスに乗ってそれで戦う」
「それが僕達の使命だから」
 真人も言ってきた。
「だからここに残る」
「フロンティアに」
「だから貴方達は利用されようとしているんですよ!」
 慎悟は彼にしては珍しく強い言葉を出した。
「ですからもうここから」
「出て、それで私達と一緒に」
「行かないわ」
「何を言われてもね」
 しかし二人の無機質な言葉は変わらない。
「ここに残って戦う」
「そうするよ」
「まさか」
 そんな二人を見てだ。卯兎美はあることを察した。
「二人共オニクスに」
「えっ、オニクスに」
「何かあるんですか!?」
「聞いたことがあります。オニクスはギガンティックの中でもとりわけ性能が高いですね」
「ええ」
「確かに」
「そしてその高性能故にです」
 その話が続く。
「乗っているパイロットにかなりの負担を抱えそして取り込んでしまうと」
「じゃあ二人は」
「そのオニクスに」
「まだ確証はありませんが」
 それでもだ。彼女は察していた。
「それでもです」
「じゃあ今の二人は」
「説得は」
「残念ですが」
 それは無理だというのだった。
「仕方ありません。それに」
「それに?」
「今度は一体」
「見て下さい」
 ここでだった。卯兎美の腕時計から警報が鳴っていた。
「あらかじめ進路に警報機を仕掛けておいたんですけれど」
「じゃあここに」
「追っ手が」
「おそらくレオン三島補佐官の」
 卯兎美はこのことも察していた。
「それで間違いありません」
「わかったわ。それじゃあ」
 それを聞いてだ。真名はすぐに動いた。
 今着ている高校の制服を肩に手をかけて一気に脱ぐ。すると忍者のそれを思わせるレオタードとストッキングの姿になったのだった。
「二人共私から離れないでね」
「えっ、真名さん」
「その姿は」
「私はこうした意味でも慎悟君のパートナーなの」
 こう言うのである。背中には刀がある。
「守るわ。何があっても」
「それじゃあ僕達は」
「今すぐここからですね」
「仕方ないわ」
 まだ目の前にいる妹達を残念な目で見ながら述べた。
「また。機会があれば」
「わかりました」
「それしかありませんね」
「行きましょう」
 また言う真名だった。
「それじゃあね」
「はい」
 こうしてだった。三人は止むを得なく神名達の前から去った。そうしてそのうえでロンド=ベルの艦隊のところへ向かう。だが地上に出たところでレオンの手勢に囲まれたのであった。
 四方八方にいる。突破するのは容易ではなさそうだった。
 真名は背中の刀に手をかけた。それで後ろの二人に告げる。
「私が請け負うから二人はその間に」
「いえ、僕も戦います」
「私もです」
 しかし二人は銃を出して留まる態度を見せた。
「真名さんだけ戦わせません」
「絶対に」
「けれどそれは」
「パートナーじゃないですか」
「仲間ですよ」
 二人はここで微笑んでみせた。
「ですからここは」
「三人で」
「有り難う」
 その言葉を受けてだ。真名はつい顔を綻ばさせた。
 そのうえで三人で戦おうとする。しかしであった。
 ここで助っ人が来た。それは。
「三人共、こっちだ!」
「こっちに来い!」
 一矢と京四郎である。その二人だった。
「何か嫌な予感がして来たが」
「ドンピシャだったな」
「一矢さん、京四郎さん」
「来てくれたんですか」
「ああ、早くこっちに来い」
「皆もいるぞ」
「は、はい!」
「わかりました!」
 三人は二人の助けを受けて何をか囲みを突破した。そしてその時グレイスも。 
 隠れている場所を完全に武装した兵士達に取り囲まれた。そのうえで指揮官である将校に対してこう告げられたのであった。
「大統領閣下よりの伝言です」
「何かしら」
「銀河の支配者は一人で充分とのことです」
 こう告げるのであった。
「そういうことです」
「同感ね」
 グレイスはその言葉に微笑んでみせた。そうしてであった。
 レオンは演説をしていた。ボビーがそれをマクロスクウォーターの艦橋のモニターから見てだ。そのうえで苦笑いを浮かべて言うのであった。
「いやーーーんな空気ね」
「そうですね」
「何か」
 ミーナとラムも言う。
「真相がわかると」
「何だか」
「全くだな。さて」
 ここでジェフリーが問う。口にはパイプがある。
「どれだけ来た」
「ほぼ全員です」
 モニカが彼の問いに答える。
「スカル小隊の三人と。クラン中尉はおられませんが」
「そうか、わかった」
「それでは艦長」
「全員乗ったな」
「今慎悟君達がグランガランに乗り込みました」
 ミサトが報告してきた。
「これで全員です」
「わかった。それではだ」
「出航ですね」
「シティも一緒だ。まあ元に戻ったな」
 こうも話すジェフリーだった。
「そう考えると楽だな」
「そういえばそうよね」
 ボビーもここで笑って話した。
「フロンティアから離れてね」
「諸君、いいか」
 ジェフリーはその全員に告げた。
「我々はこれから海賊になる。行くぞ野郎共!」
「おう!」
「行きましょう!」
 こうしてだった。全員で出航した。
 そうしてである。彼等は出航したのだった。しかしだ。
 その後ろからだ。彼等が来た。
「追っ手です」
「フロンティアの軍です」
「そうか」
 ジェフリーはその報告を冷静に受けていた。
「早速追ってきたか」
「そして」
 さらにであった。
「二機います」
「あら、あの二人ね」
 それを聞いてすぐに察したボビーだった。
「坊や達はせっかちなのね」
「艦長、どうしますか」
 キャサリンがジェフリーに問うた。
「ここは」
「決まっている」
 これが彼の返答だった。
「それはだ」
「決まっていますか」
「一戦交えてそれで下がるぞ」
「わかりました」
「ではだ。何人か出撃しろ」
 今回は総員ではなかった。
「それでいいな」
「わかりました。それでは」
「今からね」
 ボビーも頷いてだった。それでだった。
 オズマ他数人が出撃する。オズマはまずはルカに言った。
「どうした?悩んでいるな」
「えっ・・・・・・」
「それで残ったってことか」
「僕は別に」
 ルカはオズマのその言葉を否定しようとした。
「何もありません」
「それならもっと毅然としていろ」
 こうルカに言う。
「悩んでも仕方ない」
「ですがそれでもです」
 ルカは半ば居直ったようにして言ってきた。
「僕は。フロンティアと」
「それが御前の選んだ道なのか」
 オズマはまたルカに問うた。
「それが」
「はい、そうです」
「なら胸を張れ」
 また告げるオズマだった。
「いいな。正しい道だと思うのならな」
「隊長・・・・・・」
「そしてだ」
 今度は赤が入ったバルキリーを見て言うのだった。
「御前はどうなのだ、アルト」
「くっ、俺か!」
「そうだ。御前は何の為に戦っている」
「何であんたがそう言えるんだ!」
 こう言って反論するアルトだった。
「あんたが、何でだ!」
「俺がか」
「あんたは何の為に戦っている!」
 オズマにそのまま問い返す。
「あんたはだ。何の為にだ!」
「それはもうはっきりしている」
「はっきりしている!?」
「そうだ、俺は女の為に戦っている」
 そうしているというのである。
「俺の大切な女達の為にな」
「なっ、女達の」
「あいつは自分の道を選んだ」
 オズマはこうも言うのだった。
「御前はどうなんだ」
「俺はだってのかよ!」
「そうだ、御前は自分で道を選んでいるか」
 交戦しながら問い返す。
「流されてはいないか」
「くっ、それは」
「言っておくことはこれだけだ」
 こう話してであった。
 オズマとアルトの機体が交差した。オズマは機体を逆さにしている。それでだ。アルトを見上げる形になってそのうえで見合うのだった。
「また会おう」
「まただってのかよ!」
「多分な。すぐに会うことになる」
 こう話すのだった。
「それではだ」
「ちっ、何だってんだよ」
 今のアルトは歯噛みしかできなかった。
「どいつもこいつも。ロンド=ベルに行きやがって」
「まさかギガンティックの方々まで行かれるとは」
 ルカも困った顔で話した。
「ロンド=ベルで残ったのは」
「まずは俺達だな」
「それとミシェル先輩とクラン大尉だけですよね」
「ああ、そうだな」
「これからが心配ですが」
「心配しても仕方がないな」
 こう言うアルトだった。
「だからな。いいな」
「はい、そういうことですね」
「俺達はパイロットだ」
 このことを言うアルトだった。
「だからな」
「フロンティアの為に戦いましょう」
「ああ」
 彼等はこう言うしかなかった。とてもである。そうしてであった。
 ランカはだ。宇宙空間に漂っていた。バジュラも一緒である。
 その中でだ。ブレラのハーモニカを聞いていた。
「懐かしい・・・・・・」
「懐かしいか」
「うん、このハーモニカの音」
 それを聴きながらの言葉である。
「とても懐かしい」
「そうか」
「何処かで聴いたような」
 さらに話すランカだった。
「遠い昔に」
「俺もだ」
「ブレラさんも?」
「そうだ、俺もだ」
 彼もだというのだ。
「それでだが。これからは」
「これから?」
「何処に行く」
 あらためてランカに問う。
「これから」
「この子が行きたい場所に」
 あの緑のバジュラを見ての言葉である。
「そこに」
「そこにか」
「うん、そこに行こう」
 こうブレラに話す。
「それは駄目かしら」
「いや」
「いや?」
「わかった」
 これが彼のランカへの返事だった。
「それではそこに行くか」
「有り難う、それじゃあ」
「礼はいい」
 それはだというのだ。
「俺もそこに行きたいからだ」
「ブレラさんもなんですか」
「今行きたくなった」
 そうだというのである。
「だからだ」
「わかりました。じゃあ」
「行くか」
「はい」
 こうしてだった。彼等はそこに向かうのだった。銀河で戦士達は歌に導かれて。そのうえで今は旅路についているのであった。


第五十三話   完


                       2010・8・29
 
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