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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第五十二話 ダイアモンド=クレバス

           第五十二話 ダイアモンド=クレバス
 レオンはだ。不敵なままオズマとキャサリンに対していた。己の席から身動き一つしない。まさに余裕そのものと言ってもいい態度であった。
「さて、これからはだ」
「まさか、貴様」
「既に」
「その通りだ。さて」
 ここでだ。彼はキャサリンを見て告げた。
「キャサリン、残念だが」
「何だっていうのよ」
「婚約は解消だ」
 こう彼女に告げたのである。
「今それを告げよう」
「そんなのこっちからお断りよ!」
 キャサリンも怒った顔で彼に返した。
「誰が、もう」
「久し振りにかつての恋人と会って気持ちが変わったか」
「そうね」
 キャサリンはそのことを否定しなかった。
「実際にそうなるわね」
「そうか、やはりな」
「一回別れてそれで再会して会ったのよ」
 そうだというのだった。
「彼のよさがね」
「やれやれ。愁傷だな」
「愁傷じゃないわ。わかったのよ」
「何がだね?」
「私の本当の心がよ」
 こうレオンに告げる。
「そして貴方という人間もね」
「私もか」
「貴方は。女一人手に入れられない男よ」
 それがレオンだというのだ。
「そして何もかもを手に入れられないわ」
「馬鹿なことを。私はフロンティアを正しく導く」
「そうできると思っているのだな」
「如何にも」
 倣岸そのものの口調でオズマにも返す。
「それは私しかいない」
「そう思っているのなら自分だけそう思っていろ」
 オズマの彼への言葉は冷たかった。
「そうな」
「凡人にはわからないことだ、私の崇高な理想と目指す場所がだ」
「聞いたわね、オズマ」
「ああ」
 二人はここで態度を少し変えた。
「そうしたことを言ってね」
「何かを為した者なぞ一人もいない」
「私は違うのだがな」
 やはりであった。レオンはわかっていなかった。
「それを今言っても仕方ないか」
「貴方と。そして美知島中将」
「即刻裁判所に来てもらおうか」
「そうはいかないと言った筈だ」
 レオンの今の言葉と共にであった。部屋の中に兵士達が雪崩れ込んできた。見ればどの兵士もその手に銃を持ち武装している。
「なっ」
「兵士が。ここに」
「私には同志がいると言ったのは君達だが」
 レオンは二人がその兵士達に囲まれるのを見ながらまた告げた。
「そう、それは」
「美知島中将か」
「彼が」
「そうだ」
 そしてだった。ここでその美知島が部屋に入って来た。兵士達を連れて悠然と部屋に入って来てだ。二人の前に来たのだった。
「私がいることを忘れた筈ではないがな」
「ここにまで来るとはな」
「意外だったわ」
「君達の動きは全て監視していた」
 その美知島の言葉だ。
「だからだ。ここに来たのだ」
「くっ、それでか」
「それでここに」
「さて、形勢逆転だな」
 また言うレオンだった。
「君達を反逆罪で告訴するとしよう」
「生憎だがな」
「甘く見ないことね!」
 ここでだ。二人は周りの兵士達をすぐに倒した。そうしてだった。
 部屋を飛び出る。それはまさに一瞬のことだった。
「し、しまった!」
「逃げられた!?」
「まさか!」
「追うのだ」
 美知島は狼狽する兵士達に冷静に告げた。
「すぐにだ」
「は、はい」
「それでは」
「そして補佐官」
「うむ」
「そろそろですな」
 こうレオンに告げる。レオンもそれに返す。
「報告が入って来る頃です」
「そうだな。それはそろそろか」
「そうかと」
「むっ」
 ここでだ。レオンの席の電話が鳴った。彼はそれに出た。
「私だ」
「補佐官、大変です」
「成功したな」
「いえ」
 しかしであった。ここでこう言われたのである。
「それが」
「まさかと思うが」
「バジュラが突如出て来ました」
「何っ!?」
 レオンの眉が動いた。
「大軍です。狙撃手はそれに襲われ」
「失敗したのか」
「殺されました」
 そうだというのである。電話の向こうの声は。
「それで。作戦自体が」
「それでバジュラはどうしている」
「今ロンド=ベルが迎撃に出ています」
 そうなっているのだという。
「ですから動きは何とか」
「そうなのか。そしてだ」
「はい」
「大統領は」
 このことも尋ねることを忘れなかった。
「大統領は何処だ」
「今避難中です」 
 電話の向こうの声はこうレオンに告げた。
「あの場所に」
「そうか」
 それを聞いて静かに頷くレオンだった。
「わかった」
「はい、それでは」
「後は私が行う」
 彼はこう相手に告げた。
「君達はすぐにバジュラにあたってくれ」
「わかりました、それでは」
「バジュラは何としても退けるのだ」
 彼もこのことは念頭に置いていた。
「わかったな」
「了解です」
 こう話してだった。すぐに電話を切る。そのうえで美知島に顔を向けるとだ。その彼の方から言ってきたのであった。
「やはりこれは」
「彼女だろうな」
「どういうつもりでしょうか、ここで動くとは」
「わからん、だがだ」
「はい。今もまた好機です」
 美知島はここでも落ち着いてレオンに告げた。
「すぐに大統領の先回りをしましょう」
「そうだな。そしてあの二人は」
「既に兵を向かわせております」
 彼もその動きは迅速だった。
「ですから」
「我々は、か」
「大統領に向かいましょう」
「よし、わかった」
 美知島の言葉に頷き。兵士達にも言う。
「それでは行くぞ」
「はっ」
「それでは」
 こうしてであった。彼等は大統領のところに向かう。陰謀はそのまま進展していた。
 そしてである。フロンティアの中では死闘がはじまっていた。
「トオッ!!」
 ドモンが空中を跳ぶ。その蹴りでバジュラを一体粉砕した。
「この程度で!」
「そうだ、やらせはしない!」
 マーグも衝撃波を出してバジュラを撃つ。
「バジュラであろうが何であろうがだ」
「兄さん、俺も!」
 タケルも衝撃波を繰り出した。
「戦う、ここで!」
「そうだ、マーズよ」
 マーグはその弟に対して述べたのだった。
「この戦いは一歩も退けない」
「市民の命がかかっている」
「だからこそだ」
 見れば実際に彼等は市民の盾となり戦っていた。
「ここはな」
「その通りですね」
 ロゼはあの蝶の形の衝撃波を出していた。
「バジュラといえど超能力には」
「超能力がなくてもだ!」
 カミーユは鋭い直感でバジュラの反応を見抜いた。
「いる場所さえわかれば!」
「その通りだな」
「どうってことはないぜ!」
 テムジンとハッターもそこにいた。
「例え市街戦といえどだ」
「ノープロブレム!」
「まずはフロンティあの中のバジュラを一掃しましょう」
 レインも銃を手に戦っている。
「そしてそれから」
「そうね。絶対に外にもいるわよ」
 アレンビーが戦場を舞いながら言った。
「だからそっちもね」
「まずは中だ!」
 またドモンが一体蹴り倒す。
「中を倒してだ!」
「ええ、それじゃあ」
「今は!」 
 彼等はまずその敵を倒した。そうしてであった。
 外に向かう。そしてやはりだった。
「ちっ、来ていやがったか」
「数にして二百万」
「完全包囲ってかよ」
 彼等が外に出たその時にはもうロンド=ベルはフロンティアごとバジュラ達によって包囲されてしまっていた。それも完璧にである。
「中を倒しても外がいる」
「そういうことかよ」
「けれどな!」
 だからといって怯む彼等ではなかった。
「ここ退けるか!」
「一歩も引かないわよ!」
「包囲されていようともされなくてもね!」
 かえって士気をあげる。そうしてであった。
「全軍防衛用意」
「はい!」
「わかりました!」
 皆ブライトの言葉に頷く。そのうえで戦闘に入るのだった。
 その中でだ。クランが言う。
「ここは」
「どうしたんだ?」
「元の身体に戻る」
 こうミシェルに言ったのである。
「いいな、ここはだ」
「メルトランディか」
「中での戦闘は終わった」
 このことも話す。
「それならばだ。そして一気にだ」
「そうだな」
 ミシェルもクランのその言葉に頷く。
「じゃあ今からカプセルの中に行くか」
「それでだ」
 ここでクランの言葉が変わってきた。
「ミシェル、いいか」
「どうしたんだ、今度は」
「御前はアルトに話したな」
「シェリル=ノームとランカちゃんのことか」
「そうだ、それで御前はどうする?」
「俺か?」
「御前の愛は何処にある」
 問うのはこのことだった。
「ミシェル、御前の愛は何処にある」
「・・・・・・さてな」
 ミシェルは少し考えてからこう返した。
「何処かに置いてきたのかもな」
「傍にあるのではないのか」
 クランはさらに問うてきた。
「御前のすぐ傍にだ」
「そうだな。あったらな」
「どうする?その時は」
「この戦いが終わったら言うさ」
 これがミシェルの返事だった。
「それでいいか」
「・・・・・・わかった」
「カプセルのある場所はまだバジュラの大軍がいる」
「まだ中にいるのか」
「あそこだけはな。俺はバルキリーで行く」
 彼の乗るその青いバルキリーでだというのだ。
「御前は今からそっちに向かえ。いいな」
「わかった。それならだ」
「よし、俺が行く」
「僕もです」
 アルトとルカも名乗り出てきた。
「俺達は仲間だ。だからだ」
「反対はしませんよね」
「いいのか?はっきり言って辛い戦いだぜ」
「一人ならそうかもな」
「けれど今は三人ですから」
 笑ってこう返してみせる二人だった。
「大丈夫だ、やれる」
「心配無用ですよ」
「そう言うか。それじゃあな」
「ああ、行くぜ!」
「今から!」
 こうしてだった。三人はバルキリーに乗ってそのうえでフロンティあの中からカプセルのある場所に向かうクランと合流する。そこでも激しい戦いに入る。
 クランが来た。ミシェルはその彼女に問うた。
「市民の人達は?」
「損害は軽微だ」
 こう述べるクランだった。
「ドモンやテムジン、それにタケル達がいてくれたからな」
「そうか。ガンダムファイターはこうした時有り難いな」
 ミシェルはそれを聞いて胸を撫で下ろしていた。
「生身で戦える人間も必要だな」
「そうだな、本当に」
「お陰で市街地の損害も大したことなかったみたいですし」
「それは気にする程ではない」
 クランもそう話す。
「中にいるバジュラもここに潜入した連中以外は全て倒した」
「それでドモンさん達は」
 ルカは彼等について尋ねた。
「今はどうしていますか?」
「うむ、もうすぐ外に出る筈だ」
 こうルカの問いに答えるクランだった。
「外での戦闘もこれで楽になる筈だ」
「そうだな。それじゃあな」
 ここでアルトが意を決した声を出した。そうしてだった。
「ミシェル!」
「ああ!」
「御前のやるべきことをやる為にな!生き残るぞ!」
「おい、聞いていたのかよ」
 ミシェルはアルトの今の言葉に少し拍子抜けしたような顔になった。
「さっきの話を」
「聞こえてたさ」
「僕もです」
 ルカも言ってきた。
「大声で話してましたから」
「それで来たんだよ」
 アルトは少し笑ってこのことも話した。
「だからだ。死ぬなよ」
「絶対にですよ」
「ああ、わかったぜ」
 ミシェルも今は笑った。
「じゃあ生き残るか」
「よし、それならだ!」
「やりましょう!」
 三人は部屋の中のバジュラ達との戦闘に入った。クランも己のカプセルの中に入る。二人の部下はバルキリーに乗って戦っていたが彼女はそちらを選んだのだ。
 そしてカプセルの中で大きくなっていく。だがそこにだ。
「くっ、やらせるか!」
 クランの入っているそのカプセルに一体のバジュラが迫った。
 そのバジュラにだ。ミシェルは狙撃を放った。それでクランのカプセルには近寄らせない。
 だが的は多かった。次々と来る。ミシェルは何時しかクランのカプセルの傍に己のバルキリーを陣取らせたのであった。
「ミシェル、御前」
「言ったろ、答えを言うってな」
 こうそのカプセルの中のクランに告げる。
「だからだ」
「御前は、まさか私を」
「答えは後だ」
 今は何としても言おうとしないのだった。
「それでいいな」
「そうだな。わかった」
 クランもその言葉に頷いた。
「では。後でだ」
「そういうことでな」
 二人は頷き合う。その中で死闘を繰り広げる。まずは前から来た。
「ちっ!」
 ミシェルはその一体を撃ち落した。しかしだった。
「!」
 その後ろからだった。別のバジュラが来たのである。
「ミシェル、後ろだ!」
「何っ!?」
「後ろから来たぞ!」
「くっ!」
 それは避けられなかった。ミシェルのバルキリーをそのバジュラの攻撃が貫いた。
「ぐっ!」
「ミシェル!」174
「くそっ!!」
 それは倒した。しかしだった。
 別のバジュラがクランのカプセルに向かう。ミシェルはそこに突き進もうとする。
「こうなれば!」
「ミシェル!よせ!ライフルだ!」
「弾切れだ!」
 そうなったというのだ。
「こうなりゃこれしかない!」
「馬鹿な、死ぬ気か!」
「惚れた相手の為に命を賭ける!」
 彼もまた言った。
「それが男だからな!」
「ミシェル、御前・・・・・・」
「させるか!」
 そのバジュラに体当たりを仕掛けようとする。しかしであった。
 突如そのバジュラがだ。爆発して四散したのであった。
「何っ!?」
「誰だ、アルトかルカか!?」
 しかしだった。二人はそれぞれの持ち場で手が一杯であった。どう見ても二人ではなかった。
「じゃあ一体」
「誰なんだ、今のは」
「よし、間に合ったね」
 その声はだ。
「間一髪だったけれど」
「マックス中尉」
「中尉なんですか」
「そうだよ」
 見ればだ。カプセルにもう一機の青いバルキリーがいた。紛れもなくマックスのものだった。
「危ないと思って来たけれどね」
「その通りだったわね」
 ミリアの赤いバルキリーもだった。
「けれどこれでね」
「何とか助かったわね」
「折角の見せ場だったんですがね」
 ミシェルはその二人に軽口で返した。
「お株を奪われちゃいましたね」
「あれっ、そうかな」
「その心は見せてもらったけれど」 
 二人もそのミシェルに軽口で返す。
「それで充分だよ」
「それよりもミシェル」
 ミリアが彼に声をかける。
「怪我の方は?」
「そんなのは・・・・・・ぐっ」
 しかしであった。ここで彼は呻き声をあげた。背中から血が流れていた。
「何ともないぜ」
「いや、それは信じられないね」
「傷は深いわね」
 二人にはもうわかっていることだった。
「無理は禁物だよ」
「ここは下がって」
「撤退は」
「じゃあそこから動かないことだ」
「私達が行くから」
「ミシェル、大丈夫か!?」
「先輩!」
 ここでアルトとルカも来た。
「こっちは何とか倒した!」
「傷の方は」
「どうやら休めってことらしいな」
 ここで遂に観念したミシェルだった。
「今の俺は」
「そういうことだよ。よくやったよ」
「好きな相手の為にね」
「それは俺が言おうと思っていた台詞なんですがね」
 苦笑いでミリアに返した。
「アルトとルカに」
「えっ、僕もですか!?」
「ナナセちゃん大事にしなよ」
 そのルカに微笑んで告げた。
「いい娘だしな」
「まさか。そのことまで」
「そうさ。大事にしなよ」
 また言うミシェルだった。
「俺はちょっと戦線離脱になるからな」
「よし、ミシェル」
 ここでクランがカプセルから出て来た。
「済まない、後は任せてくれ」
「ああ」
「そしてだ」
 すぐにメルトランディ軍専用の機体に乗り込みながらまたミシェルに言う。
「御前の言葉だが」
「それか」
「確かに受け取った」
 こう言うのであった。
「そういうことだ」
「そうか」
「とりあえず今は撤退してくれ」
 クランも彼にこう告げた。
「それ以上の戦闘は命にかかわる」
「かもな、これはな」
「御前に死なれたら困る」
 心から心配する言葉だった。
「だからだ。下がってくれ」
「ああ、わかった」
 ミシェルはクランの言葉に最も従順だった。
「それじゃあな」
「うむ、それではな」 
 こうしてミシェルは戦線を離脱した。彼はそのまま入院することになった。戦闘はさらに続く。そしてその中でだった。 
 アルトがだ。バルキリーからあの歌声を聴いた。
「何っ、これは」
「はい、間違いありません」
 ルカが彼に応える。
「ランカさんです」
「あいつ、歌うっていうのかよ」
 アルトはランカの歌声を聴きながら呟いた。
「この状況で」
「いや、この状況だからだよ」
 輝が彼のところに来て言ってきた。
「だからなんだ」
「この状況だから!?」
「そう、今フロンティアも俺達も危機的な状況にある」
 このことは否定できなかった。
「だから彼女は。自分の出来ることをしようとしているんだ」
「それでか」
「アルト、ここはだ」
 輝は彼にさらに言うのだった。
「わかるな」
「その気持ちを汲み取ってか」
「戦うんだ」
 輝はアルトにこう告げた。
「ここは。いいな」
「ああ、わかってるさ」
 アルトもその言葉に頷く。
「それじゃあな!やってやるさ!」
「はい、バジュラの動きが鈍ってきました!」
 ルカが言った。
「ランカさんの歌声のお陰で!」
「それなら行くか!」
 アルトが真っ先に出た。
「フロンティアもそこにいる人達も皆!」
「そうだ、守ろう!」
「その為の歌だから」
 マックスとミリアも続く。戦いは一気に動いた。
 ロンド=ベルの攻撃はランカの歌に支えられてだ。一気に勢いづいた。そうしてそのうえでだ。バジュラ達を何とか退けたのであった。
「やったな」
「ああ」
「何とかな」
 皆まずは胸を撫で下ろした。
「フロンティアの損害も最低限だったしな」
「そっちもよね」
「危うかったけれど」
「けれど」
 ここでだった。クローディアが言った。
「エネルギーや水がかなり出てしまったのよ」
「かなりですか」
「そんなに」
「それが問題になるわね」 
 クローディアの言葉は楽観したものではなかった。
「早いうちに何とかしないと駄目だけれど」
「まあそれは後の話だな」
 フォッカーはそれはまずはいいとした。
「ただな」
「ただ?」
「今度は一体」
「大統領は何処にいるんだ?」
 彼が疑問に思うのはこのことだった。
「今は何処にいるんだ?」
「それなのですが」
「今は」
 美穂とサリーがここで応える。
「わかりません」
「避難されたようですが」
「バジュラにやられたか」
 金竜はこのことを危惧した。
「まさかとは思うが」
「いえ、それはないわ」
 それはレインが否定した。
「中にいたバジュラは全て倒したから」
「じゃあどうなったんだ?」
「無事なのか?それで」
「すぐに大統領と合流するべきだな」
 シナプスの言葉だ。
「人を送るか」
「わかった、それならだ」
「私達が行くわ」
 ロジャーとドロシーが名乗り出た。
「それでいいか」
「私達が大統領のところに行くわ」
「そうだな」
 サンドマンは二人を見て言った。
「君達に頼もう」
「ではすぐに行く」
「大統領官邸に」
「そこですが」
 ルリもその二人に言う。
「秘密の道があります」
「抜け道か」
「それがあったの」
「はい、今わかりました」
 ルリの目が金色になっている。ハッキングの結果だった。
「ですからそこに向かって下さい」
「そうか、それではだ」
「そこに行かせてもらうわ」
「マップは御二人の携帯に送らせてもらいました」
 抜かりのないルリだった。
「では」
「よし、それではだ」
「行って来るわ」
 こうしてであった。二人は大統領のところに向かった。そしてアルトも。
「御前はランカちゃんのところに行け」
「えっ?」
「心配なんだろう?早く行け」
 金竜の言葉である。
「だからだ。すぐにな」
「いいのかよ、それで」
「駄目なら最初から言いはしない」
 こう返す金竜だった。
「そういうことだ」
「そうか。それでなのか」
「さあ、行くんだ」 
 ダッカーも微笑んで彼に告げる。
「待ってるぜ」
「わかった」
 こうしてだった。アルトも向かった。ルカもであった。
「負傷者は多いんだよな」
「残念ですがそちらはかなりです」
 ガムリンがフィジカに答える。
「死者こそ少なかったのですが」
「そうか、大変なのは変わりないんだな」
「ナナセさんも無事だといいのですが」
 ガムリンは彼女のことを心から心配していた。
「激しい戦いでしたし」
「そうだよな。本当に大丈夫かな」
 こんな話をしていた。そしてだった。
 フィジカ達の危惧は当たった。ナナセは病院にいた。
「そんな、大丈夫なんですか!?」
「はい、命に別状はありません」
「それについては」
 医師と看護婦がルカに対して答える。
「ですがそれでもです」
「意識がです」
「そんな、それじゃあ」
 意識不明ということにだ。ルカは絶望を感じざるを得なかった。
「ナナセさんは・・・・・・」
「それでなのですが」
「どうされますか?」
 医師達は項垂れる彼に問うてきた。
「お知り合いの方ですよね」
「枕元に行かれますか?」
「・・・・・・お願いします」
 項垂れたままだったがそれでも頷いたルカだった。
「是非」
「はい、わかりました」
「では。こちらです」
 そのベッドに寝ているナナセと会った。彼女は点滴を受けマスクをさせられていた。そして目を開こうとしないのであった。決して。
 大統領はだ。秘密の自動道路を通って先に進んでいた。
「大統領、もうすぐです」
「ここまで来ればです」
「まずは安心だな」
 ボディーガード達の言葉に応える。
「まずは」
「はい、そうです」
「ですから」
 周りは武装した彼等が護衛している。既に銃を抜いている。
「執務室に入られたら」
「すぐにですね」
「非常事態宣言だな」
 彼も言った。
「ここは」
「閣下」
 そしてだった。タバコを吸おうとしたところで前から声がした。
「御無事でしたか」
「レオン君か」
「はい、御無事で何よりです」
 まずは慇懃に返す彼だった。
「心配しておりました」
「うむ、それでだが」
「はい」
「すぐに非常事態宣言を行う」
 大統領はこう彼に告げた。
「いいな、それで」
「わかりました。ただ」
「ただ。どうしたのかね」
「後は私にお任せ下さい」
 にやりと笑ってだ。大統領に告げた。
「どうか」
「!?どういうことだね、それは」
 大統領が煙草に火を点けた瞬間だった。全ては終わった。
 そしてだ。オズマとキャサリンがその場に向かっていた。
「早く行かないとな」
「ええ」
 キャサリンはオズマのその言葉に頷いていた。
「お父様が」
「ああ、あいつは絶対にやる」
 オズマは確信していた。
「だからだ」
「そして自分が権力の座について」
「そんなことさせてたまるか」
 オズマの偽らざる本音であった。
「絶対にだ」
「ええ、だからこそ」
 こうしてその隠された通路に向かう。しかしだった。
 手遅れだった。もう倒れてしまっていたのだ。
「なっ・・・・・・」
「そんな・・・・・・」
 オズマは呆然となりキャサリンは立ち尽くす。全ては遅かった。
 そしてだ。ランカはだ。今はアルトと共にいた。彼と学園で会ったのだ。
「アルト君、どうしてここに?」
「残っている奴がいないか気になってな」
「それでなの」
「ああ、それで御前がいたんだけれどな」
「ねえ、アルト君」
 ここでそのランカが俯いて彼に言ってきた。
「あのね、私ね」
「どうしたんだ?」
「ずっとあの子探していたの」
「あのペットか」
「うん、それで今さっき見つけたわ」
 こう言うのであった。
「けれど」
「けれど。どうしたんだよ」
「見て」
 するとだった。マンタを思わせる緑の生物が出て来た。それは。
「なっ、バジュラだと!?」
「待って!」
 アルトが銃を構えたところで彼を止めた。
「撃たないで!」
「しかしこいつは」
「この子は悪くないの!」
 こう言ってそのバジュラの前に立つ。
「だから撃たないで!」
「こいつはバジュラだ」
 だがアルトも言う。
「生きるか死ぬかなんだよ、もう」
「けれどこの子は」
「くっ・・・・・・」
「それでね。私考えたんだけれど」
 ランカは再び俯いた。そのうえでアルトに話す。
「これからは」
「どうだっていうんだ?」
「俺と共に旅をすることになった」
 ここでだ。ブレラが出て来た。
「この銀河をな」
「旅!?何を言ってるんだ」
「何もない。旅だ」
 こう返すブレラだった。
「それがランカの為だ」
「そうなの」
「馬鹿な、それじゃあ何処に行くっていうんだ」
「さようなら」
 ランカはアルトに別れの言葉も告げた。
「さようなら、アルト君」
「さよならって御前、本当に・・・・・・」
「この子と一緒に行くから」
 その緑のバジュラを見ての言葉だ。
「だからアルト君、さようなら」
「ランカ・・・・・・」
「今まで楽しかった、本当に有り難う」
「お、おい!」
 だがアルトの最後の言葉は届かなかった。ランカは急に姿を消した。ブレラもあのバジュラもいなかった。全ては夢幻の如くであった。


第五十二話   完


                        2010・8・25
        
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