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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
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SAO
~絶望と悲哀の小夜曲~
  コロシアイ

刎ねる。飛ばす。斬る。砕く。

どれも懐かしく、そして慣れた動作だ。

一瞬の踏込みから腕を振りぬいて即死の凶刃を飛ばす。体とのリンクが切れてしまう部位欠損システムは発動が難しく、そして与える効果が惨い。

なぜならその部位を落とされた者は、自分の攻撃力が減っていくのを目に見えて視認することになってしまうからだ。

手が無くなれば、武器を握れなくなる。

足が無くなれば、回避ができなくなる。

頭が無くなれば、HPバーが無くなる。

だからレンが一撃一撃、確実に相手のHPバーを跳ね飛ばすのは異常としか取れないのだろう。

しかも──

『ァ、アッフ」ハッはハ『ッハ「ハッハはハハハハハハハは」はは『はハハ──』

嗤っているのだ。

さも楽しそうに。

さも可笑しそうに。

ワイヤーを振りぬいた瞬間に目の前のポリゴンが砕かれ、拡散する。

その向こう側から、また新たなプレイヤーが迫り、襲い掛かってくる。

『ソンナニ死ニタキャ今スグ俺ガ殺シテヤルヨ』

その異常な言葉を聞いたラフィン・コフィンの構成員達が一斉に襲ってくる。その数は四。

──少ない。

飛び込んでくる様に突撃系のソードスキルを放ってくる一人目を、ワイヤーの射程圏内に入ったそばから首を跳ね飛ばし、それを避けた二人目をもう片方のワイヤーでぶった切る。

ずるりと縦にスライドしていく二人目を無視し、三人目の四肢を複雑なワイヤーの軌道の過程で両断する。四人目の腰を返しの刃で跳ね飛ばす。

そうしてほぼ同時に襲いかかった四人を殺す。

『足リネェナァ、足リネェヨ』

そう言って、レンだった《モノ》は嗤う。

首を撥ねてまた一人ラフィン・コフィンの構成員を殺す。落ちていく頭が満足そうな顔で消えて行く。

「死ねやァーッ!」

ひときわ高い声が上がる。そちらを見ると、攻略組のプレイヤーがラフィン・コフィンのプレイヤーと一騎打ちしていた。

「っく、死ねるかよぉ!」

攻略組のうちの一人が敵を殺した。

いい流れだ。一人がやればその流れで共鳴し、数人、また数人、と増える。戦闘がこのまま続けば問題なく《全滅》させることができそうだ。

少し離れて、全体を見回す。少し離れたところで、一人倒したら数人で抑え、そして縛って無力化している。別の場所ではリーダーをしている男が一人、切り殺したのが見える。目元から涙を流しているあたり、やりきれないところがあるのだろう。

異常な空間。

異常な戦闘。

異常な空気。

だが、その異常な空間を支配しようとしているのは、明らかに攻略組側だった。

「ォアアアアァァァァァァー!!」

「よくも、よくもォォォァァァァァ!!!」

狂気は――

「死ね!死ね!死にやがれェェェェェ!!」

「がァあァァァー!!」

伝染する。

荒れ狂う戦場を眼下に眺めながら、レンと《鬼》は《会話》をする。

『カッカッカ、懐カシイ空気ダネェ』

「うん」

『……俺ガ出テキタコトガ気ニ入ラネェカ?』

「違うよ。もちろん全くないって言ったら嘘になるけどね。どっちみちキミは、そのうち出てきたことだろうしね」

『ハッ、キミナンテ言葉ハチョーット違ウナァ。俺ハオ前ェデ、オ前ェハ俺ナンダカラヨォ』

「………………………………………」

『カッカッカ、マァ気楽ニ行コォゼ?ドーセ俺ラハ、奴ラト同類ナンダカラヨォ』

「……………でも、僕が殺したのは殺人者(レッド)だよ………?」

『マァダソンナ寝ボケタコト言ッテンノカ?奴ラモ《ヒト》ダゼ?』

「………奴らは、《バケモノ》だよ」

『違ゲェナ。コノ世ハ《ヒト》デ成リ立チ、逆ヲ言エバ《ヒト》シカイネェ。《バケモノ》ナンテイネェンダヨ、最初カラナァ』

「………………………………………」

『俺トイウ存在モ、オ前ェノ脳ガ生ミ出シタ防衛反応ノ塊、虚像デシカネェ。オ前ェニモ解カルヨウニ言ッチマエバ、《二重人格》ッテヤツダ』

「……………………………黙れ」

『マァ、オ前ェガ俺ヲ生ミ出シタノハ、《ヒト》トシテ当然ダト思ウガナァ』

「……………………黙れ」

『オ前ェグライノ年齢ダ。ソリャ、急ニコンナ世界ニ閉ジ込メラレテ平気ダッテ方ガオカシイガナァ』

「……………黙れ」

『ン?カッカッカ。頭ガオカシイ俺ガ言エル義理ジャァネェカ。カッカッカ』

「黙れぇっ!!」

ハァハァハァ…………!

肩で息をする。頬に冷たい汗が滴り落ちる。

「………wow、なかなか楽しい会話じゃねえか」

背後から、異質な何かを含んだような滑らかな声がかけられた。

もちろんその声の源は、真っ黒なポンチョを頭からすっぽりと被り顔は見えないが、濃密な殺気を垂れ流しているような男。

PoH。

「boy……何ぶつぶつ言ってたんだ?」

『「…………おじサんにハ関係のなイ話ダよ』」

ぼそりとレンが呟いた言葉に、PoHの左隣にいたザザが憤慨したようにシュゥゥ!と殺気を含む怒気を吐き出す。

右隣にいたジョニーも喚く。

「ガキがチョーシに乗ってんじゃねーぞ!」

さらに口汚く喚く紙袋フルフェイス男の言葉はとりあえず置いといて、レンは素早く周りを見渡し、状況確認した。

《鬼》との会話に耳を傾けすぎて、いつの間にかラフィン・コフィンのアジトの奥地まで入り込んでしまったらしい。

周りに味方の姿はない。まあ、いたところで邪魔にしかならないのだが。

ふう、と軽く嘆息したレンのことをどう思ったのか、ジョニーがさらに口汚く罵り始める。いい加減うざくなってきたので、そろそろ黙らせようかと思い、手を動かそうとする。

だが、レンのの現実の脳から発せられた運動信号がレンホウと言うアバターの手を閃かせる前に、スッとPoHの手が上がり、ジョニーの口を黙らせる。

「そんなことより、殺りあう前に一つ質問していいかboy?」

殺りあう、という言葉に自然と口の端っこが歪むのを感じる。幸い、そのことにPoHは気付いた様子もなく言葉を、台詞を続ける。

「何で一人で来たんだ?」

ぎろり、とポンチョのフードの奥から、視線が投げかけられる。その視線は、明確に言っていた。

なめてんのか?と。

だが、レンはその空気が心地良いと感じられるほどの笑みを浮かべる。

『「他にモ来て欲シかッた?」』

「…………………チッ」

PoHはレンのその答えが不服だったようで、舌打ちとともに吐き捨てるようにただ一言。

「……まぁいい。それじゃ、こっちもいい加減お預けは我慢できなくなってきたからな――」

PoHはそこで言葉を切り、それまで垂れ流していた殺気が一気に噴き出す。

そして短い一言。

「殺るぞ」

その瞬間、コロシアイの幕が上がった。










ジョニーとザザが一気に突っ込んできた。

双方の目には、どちらとも欠片の揺るぎもない殺戮への衝動と興奮が宿っている。

「ヒャッハッハァー!殺してやるぜェッ!!」

「絶対に、殺す、殺してやる…………!」

それぞれの言葉にも同様の感情が含まれている。

『「クだラない」』そうレンは思った。

PvPの場に於いて、感情は不要だ。感情は動揺を生み出し、動揺は敗北を生み出す。

正式なデュエルであれば命は消失しないが、今のようなコロシアイであれば話は別だ。

敗北イコール、死。

その究極の方程式。これ以上でも、これ以下でもない。

だからコロシアイが始まった瞬間、レンは感情を消した。世界が見る間に白黒の、モノクロの世界になっていく。冷静になったとか、無心になったとか、そんなものではない。《無》感情になったのだ。

無。

完全な無。

だから、不意打ち気味に突進してきたジョニーとザザにレンガ何の反応も現さなかったのは、冷静だったとかという理由ではない。

なぜなら、向かってきた二人に対する感情を現す感情も消したのだから。そう思う感情も消したのだから。

だから、レンは身体に刻み込まれた数多の戦闘の経験に身を任せた。

その結果──

ジョニーが横薙ぎに薙いだ短剣と、ザザが鋭く突き出した刺剣は誰もいない空間を切る。それぞれ、互いに互いの動きを阻害しない完璧なコンビネーション。だが、その完璧なコンビネーションは、完璧になればなるほど避けやすい。

簡単な真理だ。

玄人になればなるほど、玄人には動きは筒抜けになるのだ。

相手になって考えれば、どこをどのように、どんな風に狙うかが自然と解かる。これさえ理解していれば、強敵になればなるほど当てやすいし、避けやすい。まあ、その逆で相手もそれを理解さえしていれば、この芸当はできるのだが。

ヴォルティス卿あたりは、アバターの筋肉の動きから三秒先の世界を見れると言われているが、真偽は不明。

閑話休題。

自慢の一撃を避けられた二人は、当然レンがもっとも恐れた動揺をし、喚く。

「何ィッ!?」

「………………ッ!?」

ジョニーとザザの動きが一瞬、戦闘の中では永遠とも思える一瞬止まる。

それをただ、レンは見る。《無》感情に、《無》感動に。

何も思わず、何も感じず。

ただ命を刈り散らすために、クロスさせるように両手を振り下ろす。

凶刃は狙いたがわず、かつ無慈悲に首に真っ直ぐ向かっている。

だが、レンのワイヤーは空を切った。掠りもせずに空を切った。

普通の者であれば、ここで醜い動揺をし、さも滑稽に体勢を崩す。だが、レンは何の表情も顔に出さずに、ただ《無》表情に、《無》感情に着地する。

音もなく着地し、じろりとPoHのほうを睨みつける。先刻のジョニーとザザの避け方は物理的に不可能だった。ならば、二人の戦いを傍観していたPoHの仕業以外に理由が思い浮かばない。

そして、レンの視界に黒ポンチョ野郎の姿が入る。

そして、レンは《ソレ》を視認する。

動揺しなかったといえば、さすがに嘘になるかもしれない。

なぜなら、ジョニーとザザをいまだ掴んでいる《ソレ》は、本来人間に生えることを赦された物ではないのだから。

《ソレ》は、PoHの背中から生えているそれは──

漆黒の翼だった。 
 

 
後書き
なべさん「はい、始まりました!そーどあーとがき☆おんらいん!!」
レン「えー、今回もお便り紹介コーナー行っちゃうよ♪」
なべさん「へーい、最初のお便りは?」
レン「月影さんからのお便りで、オリキャラが出ないかなーってさ」
なべさん「あー、これはですねぇ。もうちょいしたら出ると思いますんで、勘弁してください」
レン「そんなネタバレして大丈夫なの?」
なべさん「いいんじゃね?」
レン「…………えー、続いてのお便りは、初投稿のでこぼこレンジさんからのお便りです」
なべさん「おっ、初投稿か。嬉しいね」
レン「設定がおかしいです」
なべさん「うっ!」グサッ、とな
レン「そもそもユウキは、レンの後を追ってSAOを買った、というのが設定でしたよね?」
なべさん「お、おう」
レン「コアなネットプレイヤーしか買えなかったものが、なぜそんな簡単に手にはいるのですか?」
なべさん「ぐっ!」ザクッ、とね
レン「………というお便りだったんだけど。どう?」
なべさん「う、運が良かったとか……」
レン「………………はい、月影さん、でこぼこレンジさん、お便りありがとうございました!自作キャラ、感想を送ってきてくださいね♪」
なべさん「違うんだ、別に悪気があった訳じゃ…………」
──To be continued── 
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