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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第四十一話 潜む者達

                  第四十一話 潜む者達 
 シェリルの部屋でだ。彼等は話をしていた。
「ギジェ」
「ああ」
「食事を持って来たわ」
 こう言って彼に食事を出していた。パンにソーセージ、目玉焼き、それにサラダとスープ、コーヒーといった直食のメニューだった。
「これでいいかしら」
「済まない」
 しかしギジェは手を止めていた。シェリルはそれを見て問うた。
「どうしたの?」
「むっ?」
「毒は入っていないわよ」
 それは断ったのである。
「そんなことはしないから」
「入っていても構わんさ」
「それはいいの?」
「ただ」
「ただ?」
「私は敵の施しを受けてまでイデの何たるかを知りたい」
 彼が言うのはこのことだった。
「その己の執着心が情けない」
「それが貴方の密航の理由?」
「既に言った通りだ」
 彼はまた言った。
「イデのことを知りたいのだ」
「それを」
「そうだ、私はあまりにも失敗を重ね過ぎた」
 これはバッフクランでのことである。
「しかしだ。巨神、イデオンと戦えば戦う程だった」
「興味をなのね」
「私はイデオンのこと、イデのことを知りたくなった」
「だからここに」
「そうだ。その為に生き恥を晒そうが構わん」
 こうまで言った。
「フォルモッサ=シェリルよ」
「ええ」
「イデの何たるかを教えて欲しいのだ」
「知ってどうするの?」
 シェリルは今度はこのことを問うた。
「それで」
「どうなるものでもない」
 ギジェは目を閉じて答えた。
「しかしだ。私は善き力の何たるかをイデが示すのならそれを」
「見たいと」
「そうだ、見たいのだ」
「善き地下の示す善き力の示しを」
「そうではないか。善き力は貴方達か」
 そしてだった。
「バッフクランなのか」
「どちらなのか」
「若しかしたら共に悪しきものかも知れないし善きものかも知れん」
 今の彼にはだ。バッフクランでさえも善かどうかわからなくなっていた。
「私はそれを知りたいのだ」
「そうなの」
「そしてだ」
「ええ」
「私のことを上官に報告するのか」
「今のところそのつもりはないわ」
 シェリルはそれは否定した。
「それはね」
「済まない」
「ただ」
 しかしだった。シェリルはここでまた言った。
「私だって考えが変わるかも知れないわ」 
 そのギジェを見ての言葉である。
「それでもいいのね」
「構わん」
 ギジェは短い言葉で答えた。
「生きるも死ぬも貴女に任せた」
「そうなの」
「私は今や捕虜以下なのだからな」
「わかったわ。それじゃあ」
「行くのか?」
 立ち上がったシェリルを見ての言葉だ。
「何処かに」
「ええ、キャラルで死んだ人達の合同葬があるから」
「それでか」
「また。戻って来るわ」
 こうしてだった。シェリルは部屋を後にした。一人になったギジェは目を閉じて。そして言った。
「俺は破廉恥な男かも知れん・・・・・・」
 しかし今はであった。それでも彼は選んだのだった。
 フロンティアの中でだ。その合同葬が行われていた。
「惑星キャラルの市民達に哀悼の意を表して」
 大統領自ら葬儀にあたっていた。
「各員黙祷」
「・・・・・・・・・」
 その言葉に従いだった。全員黙祷する。それが終わってからだった。
 ラポーがだ。心配する顔でファに問うのだった。
「モエラは」
「大丈夫よ、順調に回復しているわ」
「そうなの」
「ただ。もうね」
「イデオンには乗れないのね」
「もうそれは無理よ」
 こうラポーに話すのだった。
「それはね」
「そう。けれど助かったのね」
「何とかね」
「わかったわ」
「じゃあ僕が」
 ここでファードが言った。
「僕がモエラの分まで戦うよ」
「イデオンに乗るのか?」
「できたら」
 そうすると。コスモにも答えた。
「駄目かな」
「そうだな。誰もいなければ」
 その場合はというのだった。
「頼むぞ」
「うん、それじゃあ」
 その合同葬が終わってからだった。竜馬がコスモに問うてきた。
「まさかと思うが」
「キャラルのことか?」
「ああ、あれはイデのせいと思っているか?」
「・・・・・・確かにイデオンがあって」
 コスモは竜馬のその問いに答えて言った。
「それで俺達はバッフクランに追われている」
「ああ」
「結果的にキッチンは死んだ」
 このことは認めた。しかしであった。
「だがな」
「だが、か」
「ああ、俺はそんなものに屈しない」
 こう言うのだった。
「屈してたまるか!イデに取り込まれたことが運命だったとしても」
「それでもだな」
「ああ、それを変える為に戦ってやる!」
「そうか」
 竜馬はここまで聞いて黙った。だが今度はコスモが問い返した。
「待てよ」
「んっ!?」
「人に話を振っておいてそれだけかよ」
 怪訝な顔で問い返したのだった。
「違うだろ?そっちも」
「コスモ、俺達も御前と同じかも知れん」
「どういうことだ?」
「俺達も逃れられない大きな力に翻弄されている」
 こう話すのだった。
「そして武蔵を失うところだった」
「あいつをか」
「そして銀河に出た今俺達はその力に恐怖しつつあるんだ」
「その力はまさか」
「ああ、そうだ」
「そうか、あれだな」
「ゲッター線だ」
 彼等も悩み恐怖を感じていた。そして。
 シェリルはだ。ギジェに問うていた。
「バッフクランではイデをどういったエネルギーと考えているのですか?」
「第六文明人の意志の集中です」
 ギジェは素直に答えた。
「それだと」
「第六文明人の」
「そう、数十億の」
 それだというのだった。
「それではないかと」
「それについてはです」
 シェリルもここで答えた。
「我々も同様の結論に辿り着いています」
「そうなのですか」
「はい、そうです」
「それではですが
 ギジェはここでさらに話した。
「イデは我々の意志さえ取り込んでいっているのではないかと考えています」
「確かに」
 シェリルもそれで頷いたのだった。
「でなければイデオンは動かなかった。
「しかし先日でのイデオンの力は想像を絶するものでした」
「イデオンガンが」
「イデの力があれ程までだったとは」
「戦いが激しくなったからでしょうか」
 シェリルはそれについてこう考えた。
「だからこそ」
「いや、そうではなく」
「違うと」
「はい、この軍にこそ問題があります」
 そうだというのだった。
「ロンド=ベルでしたね」
「はい」
 部隊の名前もここで確認された。
「その通りです」
「この軍の自衛力が拡大したからでしょう」
「ということは」
 ここでだ。シェリルも気付いた。
「自衛本能の強い子供達や赤ちゃんの存在が」
「子供や赤ん坊」
 ギジェもそれに反応した。
「確かに我々にはその発想はなかった」
「試してみる価値はありそうね」
「ええ、確かに」
 二人は頷き合った。そのうえでだ。その胸の中に策が宿った。
 そしてラー=カイラムの食堂ではだ。キースが言ってきた。
「イデオンガン、物凄かったな」
「そうですね」
 頷いたのはトビアだった。
「あれを使いこなせたらかなりの戦力になりますよ」
「そうだな、あれは桁違いだ」
「殆ど戦略兵器だからな」
 ジェリドとヤザンは軍人としての視点から話していた。
「どんな相手でもな」
「倒せるぜ」
「いや、そうだろうか」
 しかしだった。カミーユは懐疑的な言葉を出した。
「本当に」
「どうしたんだよ、急に暗くなって」
「あれは凄い兵器だぜ」
 ジェリドとヤザンはそのカミーユに対して言った。
「それは御前にもわかるだろう?」
「見たんだしな」
「確かに俺達はイデオンガンに助けられた」
 カミーユはそれは認めた。
「だがあの力」
「あの力?」
 コウが問う。
「イデオンガンのあの力か」
「あの力は使っていいのだろうか」
「それはどういう意味だ」
 バニングがそれを問うた。
「一体」
「イデの力が人の意志に反応して」
 カミーユはバニングの言葉に応えて話す。
「その源がイデオンを作った第六文明人の意志というのは」
「そんなのもう」
「言うまでもないだろ」
「そうよね」
「いや、待て」
 しかしだった。ここでハマーンが言ってきた。
「私は感じた」
「えっ!?」
「ハマーンさんが」
「そうだ、イデオンのゲージが光った時だ」
 まさにその時というのだ。
「第六文明人の意志のようなものをだ」
「それは人の怨念でしょうか」
 ナタルは首を傾げながらハマーンに問うた。
「そういったものでしょうか」
「何度も言うが私はまだ二十一だ」
 敬語を使ってきたナタルにまずこう告げる。
「それはわかっていてくれ」
「あっ、これは失礼」
「誰も信じてくれないがな」
「そ、それは」
「まあ今はいい」
 話がややこしくなるからだった。
「そういったものではなかった」
「といいますと」
「どういったものですか?」
「意志自体は我々と同じようなものだ」
 こう全員に話す。
「恨みや憎しみだけに固まったものではなかった」
「しかしあの時のイデは」
 それでもカミーユは言う。ニュータイプの中でも傑出した者だけが感じられるものだった。
「凄まじいまでの怒りのエネルギーに満ちていた」
「ということは」
「コスモの怒りにイデが反応した?」
「そういうこと?」
「おそらくそうだな」
 クワトロもそれで頷いた。
「そうなっていくな」
「そうですか」
「それに反応して」
「しかしよ」
 ここで言うのはモンシアだった。
「あいつの怒りでイデがコントロールできるんなら」
「ああ、そうだな」
「そうなりますね」
 ヘイトとアデルもそれに頷く。
「イデの力は戦力として計算できる」
「そうなりますよね」
「いえ、それは」
 しかしだった。ここでクスハが言った。
「コスモ君の怒り、いえ」
「いえ!?」
「私達の怒りや憎しみがコントロールできるなら」
「クスハ、ちょっと待ってくれ」
 ブリットがそのクスハに問うた。
「それはイデは俺達全体の意志に反応しているってことか?」
「そうよ。そして戦いが続き」
 語るクスハの顔が真剣なものになる。
「私達が怒りや憎しみで満たされたら」
「そうだな」
 今度がアムロが言ってきた。
「イデはあの時以上の力を発揮するだろう」
「それは・・・・・・」
 それを聞いたコウは絶句してしまった。クワトロも言う。
「その力が向けられる先は私達かも知れない」
「そうだな」
 バーンが彼の言葉に頷いた。
「ハイパー化と同じだな」
「そうだ、怒りや憎しみはその者自身を滅ぼす」
 クワトロが指摘するのはそのことだった。
「バーンは助かったがな」
「私は運がよかった」
 バーンは自分でこう言った。
「あの時はまずあのまま死んでいた」
「ジェリルの様にか」
 ショウは彼女を思い出した。
「そういうことだな」
「そうなったイデは」
 カミーユがここでまた言う。
「人間が制御できることはできないだろう」
「しかしよ」
 ジュドーがカミーユの今の言葉に返した。
「今更イデオンを封印するってことも」
「無理だね」
「そうだな」
 キャラとマシュマーの言葉だ。
「そんなことをしたら戦力ダウンだからね」
「バッフクランの者達に遅れを取ることになる」
「どうやら」
 ショウがここまで聞いて言った。
「俺達は銀河に出ても憎しみの環の中から抜け出せないのかも知れないな」
「確かにそれは」
「自分の生まれた星も見えず太陽の光も届かない地に出て見ても同じだ」
 ショウは溜息と共に話した。
「人のエゴは変わらない」
「地球から離れて銀河に出ても」
「それでも」
「人の革新は地球を振り切っても起きないのかもな」
「そうかも知れないな」
 クワトロもサングラスの奥で考えていた。
「地球をなくしても。結局は同じなのかもな」
「そうだな。重要なのは人の心だ」
 アムロはその一点を指摘した。
「それこそが問題だからな」
「しかし憎しみの環なんてな」
「飲み込まれても仕方ないし」
「確かに」
 皆それはわかっていた。
「この広い宇宙の中で生きていくには」
「人と人のつながりが必要なんだ」
 プレアとカナードが話す。
「それがないととても」
「生きていられない」
「他人との関係を求めるから」
 今行ったのはトビアだった。
「エゴが生まれるのかも知れないですね」
「けれどそれを越えたら」
 ウッソも言う。
「何かが見つかりますね」
「じゃあ今は生き抜いて」
「そして人の可能性を」
「戦いの向こうに見える未来を」
「絶対に」
「そうだな」
 クワトロはここで頷いた。
「私達はかつてない試練の前にいる」
「そしてその一歩目を踏み出した」
「そうだ、前に行くべきだ」
 アムロに対しても言う。
「何があっても」
「じゃあイデの力もまた」
「知ったうえで」
「それで、ですね」
 こう話してだった。彼等は進むことを決意した。
 そしてその時だ。フロンティアの片隅でまた話が為されていた。
「姫様」
「ええ」
「やはりこの船団はバッフクランに追われていますね」
「そうね。ただ」
「ただ?」
「ここの人達はやってくれるわ」
 微笑んでいる言葉だった。
「必ずね」
「地球人に心をお許しになるのは」
「いけないのに」
「利用こそすれそれ以上の意味なぞ必要はありません」
「しかし彼等は」
「彼等は?」
「正しいものを持っています」 
 こう返すのだった。
「ですから」
「確かにそうですが」
 相手もそれは認めた。
「ですが姫様」
「ええ」
「今我々はです」
 ここで自分達のことも話すのだった。
「何としても本星へ帰還してです」
「そのうえで、ですね」
「はい、ハザル様の動きとその父君であるシヴァー閣下の件を陛下に」
「御報告しなければいけませんね」
「シュムエルの通信機の修理ももうすぐ終わります」
 こうも話された。
「この注域の我が軍とも連絡が取れます」
「そしてその時が」
 声に悲しいものが宿った。
「私の自由な時間が終わる時なのね」
「はい」
 そのことは肯定された。
「その通りです」
「・・・・・・わかりました」
 無念そうな声だった。そうしてだった。声達は何処かに消えた。フロンティアの中でもだ。多くの者がそれぞれ動いているのであった。
 竜馬はこの時大空魔竜の格納庫にいた。その彼にだ。
「どうした?」
「ゲッターの整備なら終わってるぞ」
 そこに隼人と弁慶が来て言う。
「それでどうしたんだ?」
「何かあったのかよ」
「真ゲッターに異常はないか?」
 竜馬は真剣な顔で二人に問うた。
「それは」
「ああ」
「特に問題はないけれどな」
「そうか」
 そしてだ。彼は考える顔で二人に言った。
「なあ」
「どうしたんだ、急に」
「畏まってよ」
「真ゲッターの力はこんなものだろうか」
 こんなことを言うのだった。
「果たして」
「リョウ、御前」
「俺達は、いや俺は」
 そしてだった。彼はまた言った。
「真ゲッターの力を引き出せていない」
「考え過ぎじゃないのか?」
「いや、違う」
 自分でそれを否定した。
「それは俺の中でゲッター線への疑念が出て来ているからだ」
「だからだってのかよ」
「そうだ、またな」
 こう弁慶にも返す。
「それでだろうな」
「よせよ」
 ここで隼人が彼を止めに入った。しかしだった。
「イデオンを見ろ」
「イデオンか」
「ゲッター線が暴走すればあれ以上のことが起きるかも知れない」
「それは」
「しかし」
「おい、何話してんだよ」
 ここで武蔵も来た。
「三人でよ」
「武蔵か。御前も聞いてくれ」
「?何だよリョウ」
「はじめてゲッターに乗った時はだ」
 竜馬の話はここで遡った。
「恐竜帝国から早乙女研究所やミチルさんを守る為だった」
「懐かしい話だな」
 武蔵もその時のことを思い出して話した。
「あの時か」
「ゲッターは俺達に力を貸してくれた」
「そうだったな」
「それでおいら達はロンド=ベルで戦ってきた」
 隼人と武蔵もそれに頷く。
「あの時はな」
「迷わずにな」
「だがその力は俺達を戦いに駆り立て」
 その武蔵を見て言った。
「御前は危うく」
「おいおい、あの時は仕方ないだろ?」
 武蔵もこう言って竜馬を止めようとする。
「それにおいらは今こうしてここにいるぜ」
「生きてるじゃないか」
「シュウ=シラカワに助けられてな」
「しかし」
 だが竜馬はまだ言う。
「俺は今ゲッター線が怖い」
「リョウ・・・・・・」
「そうなのか」
「ハチュウ人類がゲッター線で滅亡したように」
 言葉は何時しか最悪の事態を想定していた。
「何時か俺達も」
「おい、何でだよ」
 弁慶がすぐに問い返した。
「ゲッター線は人類を進化させる力があるんだぞ」
「若しもだ」
 しかし竜馬の言葉は続く。
「俺達がゲッター線にこの宇宙に相応しくない生物とされたら」
「それは」
「その時は」
「あの光は恐竜帝国と同時に俺達をも滅ぼそうとしていたら」
 こう考えずにはいられなかった。今の彼は。
「俺は・・・・・・」
「リョウ・・・・・・」
「それは」
 こう話している時だった。警報が鳴った。
「敵襲!?」
「バッフクラン!」
「もう来たか!」
「戦いか」
 竜馬は普段の戦いに向かう顔ではなかった。悩みと共に向かうのだった。
「敵、来ました」
「フロンティア、GGG艦隊、シティの退避完了しました」
「わかったわ」
 タリアがアーサーとメイリンの言葉に応えていた。
「では全機発進」
「はい、ただ」
「イデオンは駄目なのね」
「残念ですけれど」
 アーサーも首を捻って述べた。
「今は」
「モエラがもう二度と乗れないからね」
「はい、それで」
「わかったわ。今は仕方ないわ」
 タリアもそれはわかっていた。だからこう言うのだった。
「それじゃあね」
「イデオン抜きで、ですね」
「そうよ。勝つわ」 
 強い顔で述べた言葉だ。
「それでいいわね」
「はい、わかりました」
 こう話してだった。戦闘態勢に入る。そこには竜馬もいた。
「おい、リョウ」
「ああ」
 武蔵の言葉に応える。
「大丈夫なのか?」
「確かに俺はゲッター線を恐れている」
「ああ」
「だが」
 しかしというのだった。
「俺達は戦わないといけない」
「それかは」
「地球で待っている人達の為にも」
 こう隼人にも返す。
「地球を守ることを約束したんだからな」
「ああ、その通りだ」
 弁慶が頷いてみせた。
「それならな」
「今は余計なことを考えるな」
 隼人もこう声をかける。
「わかったな」
「そうさせてもらう。それじゃあな」
「総員迎撃用意!」
 ブライトの指示が下った。そしてそのバッフクラン軍が出て来た。
「ワフト宙域だな」
「はい」
「その通りです」
 ダラムに部下達が答える。
「ここがです」
「まさに」
「厄介な場所で追いついたな」
 ダラムは部下達の報告を受けて一旦溜息混じりに言った。
「ここが巨神との決戦の場か」
「そしてです」
「ハルル様から送られたあれですが」
「うむ」
 また部下達の言葉に応えた。
「あれだな」
「ギド=マック及びガルボ=ジックですが」
「配置につきました」
「ハルルも可愛いところがある。いや」
 すぐに考えを変えてこう述べた。
「違うな」
「違いますか」
「それは」
「おそらくだが」
 こう前置きしてからの言葉だった。
「軍とオーメ財団の間に何かあったな」
「といいますと」
「それは」
「手を組んだということでしょうか」
 一人が言ってきた。
「そういうことでしょうか」
「そんなところだな」
 ダラムはその言葉を受けて述べた。
「ならばだ」
「はい、それならば」
「ここは」
「私の面子の為にもここで勝負をつけよう」
 そうするというのだった。それと共に心の中で呟く。
(その時はハルルの前に胸を張って立つこともできよう」
「ダラム=ズバ」
 ギジェはその彼の兵の動かし方を見て呟いた。
「勝負に出るか」
「各機に告ぐ」
 そのダラムが指示を出す。
「攻撃を開始せよ!」
「はい!」
「それでは!」
「巨神が出ないのなら燻り出してやれ!」
 こうも言った。
「そしてだ」
「そして」
「今度は一体」
「この宙域には鉱物生命体ヴァンテがいる」
 この存在についても言及した。見れば宙域は岩石まみれだ。
「エネルギーを消耗する。短期決戦でいくぞ!」
「了解です!」
「それでだ!」
 こうして彼等はロンド=ベルに向かうのだった。
 それはロンド=ベルも同じだった。その時だ。
「!?ここの岩石は」
「ああ、間違いない」
「生きている!?」
 彼等もそれに気付いたのだった。
「鉱物生命体か!?」
「まさか」
「それなのか」
「しかも」
 万丈の目が鋭くなる。
「この連中は僕達の機体のエネルギーを吸収している」
「まずいな、それは」
 神宮寺もその目を険しくさせる。
「戦闘より前にエネルギー切れになるな」
「そうだね。迂闊にしていたら」
 洸もその言葉に頷く。
「ここはね」
「ジョリバ!」
 コスモはソロシップで叫んでいた。
「イデオンは出せないのかよ!」
「今は無理だ」
「何でだよ!」
「モエラの代わりにBメカを操縦できる奴がいないんだ!」
 だからだというのである。
「だから今は」
「ちっ、他に誰かいないのかよ!」
「だったら俺がやるよ!」
 名乗り出たのはデクだった。
「俺だって越すもの横で戦ってきたんだ!」
「あんたには無理よ!」
 それはカーシャが止めた。
「サブパイロットならともかく」
「そうだ。その気持ちは有り難いが」
 ジョリバの顔は難しいものになっていた。
「それ以前の問題としてな」
「んっ、どうしたんだよ」
「さっきからゲージが全くあがらないんだ」
 こうコスモ達に話すのだった。
「参ったことにな」
「何だよ、それ」
 コスモはそれを聞いてすぐに言った。
「前の戦いでパワーを使い過ぎたっていうのか!?」
「それはわからん」
 ジョリバは即答はできなかった。
「だがイデオンは出せん」
「くそっ!」
 コスモはこう言われて足で床を蹴った。
「これじゃあキッチンの仇を討つこともできないじゃないか!」
「今は耐えるしかないの?」
「残念だがな」
 ジョリバはカーシャにも話した。
「今はな」
「そんな、イデはどうしたのよ」
 そんな話をしているとだった。
「シェリルさん!」
「何、ロッタ」
「ルウを一体何処に」
 こうそのシェリルに問うのだった。
「連れて行く気ですか?」
「これには理由があるのよ」
「理由?」
「申し訳ない、お嬢さん」
 ここでギジェが拳銃を持って出て来た。
「こちらの言う通りにしてもらおう」
「貴方はバッフクランの」
「皆に言ってもいいわ」
 シェリルは覚悟を決めた顔で言ってきた。
「別にね」
「シェリルさん、一体」
「でもね」
「でもね?」
「一つ聞いて」
 こうロッタに言うのだった。
「いいかしら」
「何を」
「イデの力を知る為にはね」
「はい」
「ギジェ=ザラルという人がソロシップにいた方がいいかも知れない」
 こう話すのだった。
「これだけは忘れないで」
「済まない、シェリル」
「けれど」
 ロッタはそこまで聞いて顔を強張らせて言った。
「カララを殺そうとした女よ」
「そうだったわね」
「それでもいいのですか?」
「ええ」
 いいというのだった。
「そんなことはもう問題じゃないから」
「問題じゃないって」
「私はだ」
 そしてギジェもロッタに言ってみせた。
「自分の生死にはこだわってはいない」
「命には」
「だからだ」
 こう言うのであった。
「どうか私を」
「・・・・・・・・・」
 ソロシップの騒ぎの最中も戦いは激しくなる。そして。
「ベス、まただ!」
「今度は何だ!?」
「重力震だ!」
「何っ、じゃあ」
「また何か来る!」
「バッフクランの援軍か!?」
 ベスはこう思った。しかしだった。
 それは違った。今度来たのは。
「宇宙怪獣!」
「こんなところにまで!」
「ちっ、厄介な時に!」
 これには誰もが嫌な顔をした。
「出て来るなんてな」
「相変わらず嫌な時に出て来る」
「ねえ」
 ここでだ。あの少女が褐色の肌の少女に問うていた。
「ルリア」
「はい、アマルナ様」
「通信機の修理は終わらないの?」
「まだです」
 その美少女ルリアがまだ幼さの残る可憐なアマルナに対して答えていた。
「それは」
「そう、今はなのね」
「宇宙怪獣は何処にでも出ます」
「つまりは最悪の場合このまま」
「いえ、そうはなりません」
 アマルナを必死に励ましてきた。
「ですからここは」
「わかったわ。ここは耐えるわ」
「そうして下さい」
 こう話しながらフロンティアに潜み続けていた。そして。
「宇宙怪獣まで出て来るなんてな」
「前門の虎後門の狼ですね」
 神宮寺と麗が話していた。
「そうだな、本当にな」
「まさに」
「この混沌」
 刹那もここで言う。
「混乱の銀河の縮図だな」
「おい、大変だぞ!」
 コスモがここでまた叫ぶ。
「宇宙怪獣まで出て来たぞ!」
「コスモ!」
 ここでシェリルが来た。
「イデオンを出すわよ!」
「えっ、シェリルさんがBメカに?」
「私も行きます!」
「ロッタも!?」
 カーシャの声だ。
「一体どうなってるの、これって」
「気持ちは有り難いが」
 ジョリバがここで言う
「今イデオンは」
「いえ」
「いえ?」
「ゲージが点いたわ」
 カーシャがそれを見て言う。
「今点いたわ」
「えっ!?」
「どういう理屈か知らないが」
 コスモも言う。
「戦えるならそれでいい!」
「それでいいのか」
「ああ、いい!」
 こうそのジョリバに話す。
「シェリルさん、頼んだぞ!」
「さあ、急いで」
「済まない」
「何っ!?」
 ジョリバはその人影を見て思わず言った。
「馬鹿な、あんたは!」
「話は後よ!」
 だがシェリルが強引に進める。
「今は!」
「何がどうなっているんだ」
 ジョリバも唖然としていた。
「これは」
「イデオン出る!」
 コスモが叫ぶ。そうしてだった。
 イデオンが出撃した。誰もがそれを見て言う。
「コスモ!」
「やれるのか?」
「ああ!」
 コスモははっきりと仲間達に答える。
「キッチンの仇を討つぞ!」
「駄目だ、コスモ」
 しかしカミーユは言った。
「それじゃあ・・・・・・」
「行く!」
 しかしコスモの耳には入らない。彼はそのまま戦いに向かう。
 そしてだ。ダラムもまた。
「巨神が出たな」
「はい」
「今ここに」
 部下達が彼の言葉に応える。
「出て来ました」
「間違いありません」
「よし。特別攻撃隊を出せ」
 ダラムはここで命じた。
「いいな」
「了解です」
「それでは」
 そしてそれをイデオンに向かわせるとだった。
「頭痛メカか!」
「ええ、あれよ!」
 コスモとカーシャがその一軍を見て言う。
「また出て来たのか」
「鬱陶しいわね」
「気をつけろ」
 そして、だった。
「奴の発するゲル結界はパイロットの脳を直接攻撃する」
「えっ、貴方は」
「バッフクランのギジェという奴か!」
 カーシャとコスモはその声からわかった。
「どうしてここに?」
「イデオンの中に!」
「コスモ、来るよ!」
 しかし話している余裕はなかった。デクが言う。
「前から!」
「くっ、来たか!」
 そのガルボ=ジックの攻撃を受けてしまった。
「くっ!」
「ああ!」
 するとだ。共に乗っていたルウが声をあげた。
「あう・・・・・・ああん!」
「ああ、ルウ!」
「何ッ、ルウ!?」
 コスモは今度は鳴き声とロッタの言葉でわかった。
「どうしてルウまで!?」
「ああん!」
 ルウが泣きだした。
「ああーーーん!」
「シェリル!」
 ギジェがシェリルに対して問う。
「イデオンのゲージは!?」
「これは」
 シェリルがゲージを見る。すると。
 四段階だった。何とだ。
「パワーが上がっているわ」
「そうか」
「ルウの純粋な防衛本能にイデが反応したんだわ」
「シェリルさん、それだったら」
 ここでロッタもわかった。
「それを確かめる為にルウをイデオンに?」
「ええ、そうよ」
「馬鹿な!」
 それを聞いた竜馬が叫んだ。
「生き残る為に赤ん坊を戦場に連れ出すなんて!」
「そうだな、確かにな」
「それはな」 
 隼人と弁慶も難しい顔を見せる。
「褒められたものではないな」
「そうだよな」
「俺は認めない!」
 竜馬は激昂していた。
「そんなやり方は認めない!認めるものか!」
「おいリョウ!」
 武蔵がその竜馬を止める。
「迂闊に近付くな!」
「うおおおおおおっ!」
 しかし彼はガルボ=ジックの一軍に向かい斧を振るってだ。何機か撃墜してそのうえでイデオンにいるコスモに対して言うのだった。
「コスモ!」
「あ、ああ」
「今のうちに離脱しろ!」
「リョウ、御前・・・・・・」
「赤ん坊の涙でイデを引き出すようなやり方はだ!」
 その竜馬の言葉だ。
「俺は認めない!」
「そう言うのか」
「俺はイデの力やゲッター線がなくても」 
 言葉に迷いはない。
「絶対に皆を守ってみせる!」
「!?一体」
「これは」
「何だ!?リョウの真ゲッターが」
 その真ゲッターにだ。異変が起こっていた。
「このあがり方は」
「尋常じゃない」
「何なんだ。これは」
「何が起こっているんだ?」
「リョウ!」
「落ち着け!」
 そしてだった。竜馬は真ゲッターが放つその光に包まれた。
 気付いた時そこは不思議な空間だった。
 足元がない。緑の光の中にいた。そして目の前に誰かがいた。
「流竜馬」
「誰だ!?」
「聞きたいことがある」
 こう言ってきたのだった。
「御前は幾多の次元で戦ってきたな」
「未来にそしてゴウ達の世界か」
「そうだ」
 まさにそこだという。
「あらゆる世界の御前もだ」
「あらゆる世界の!?」
 竜馬はここからすぐにあることを察した。
「じゃあ他のパラレルワールドの俺もまた」
「そうだ。ゲッター線と共に生きる人間として選ばれた」
 そうだというのである。
「だが何故だ」
「何故!?」
「何故この宇宙での御前は受け入れない」
「ゲッター線をか」
「そうだ。何故受け入れようとしない」
 こう彼に問うてきていた。
「それは何故だ」
「なら教えてくれ」
 竜馬はその存在に対して問うた。
「ゲッター線とは何なんだ!?」
「ゲッター線はか」
「そうだ。俺達はゲッター線に取り込まれた存在なのか!?」
「進化はだ」
 その存在は竜馬の言葉を受けて話をはじめてきた。
「自らの手で勝ち取るものだ」
「自分の手で」
「そうだ。ゲッター線は導き手に過ぎない」
「勝ち取るものなのか」
「ゲッター線は何もしない」
 存在はこうも話した。
「ただ」
「ただ?」
「御前と共にあるだけだ」
 そうだというのである。
「そしてだ」
「そして?」
「急げ」
 竜馬への言葉だった。
「この宇宙にも審判の時が近付いてきている」
「審判の時!?」
「アポカリュプシス」
 彼は言った。
「それに打ち勝つのはゲッター線ではない」
「俺達なのか」
「そうだ」
 まさにその通りだというのだった。
「ゲッター線と共にある人間の心だ」
「しかしだ」
 竜馬は新たに生まれた疑念に対してまた問うた。
「アポカリュプシスとは何だ!?」
 問うのはこれについてだった。
「それは何を意味するんだ!?」
「運命と戦え」
 彼はこの事には今は答えなかった。しかしこう告げるのだった。
「どの次元、どの世界でも」
「どの次元でも世界でも」
「それこそが生命あるものの使命」
 これが彼の言葉だった。
「だからこそだ」
「それでなのか」
「流竜馬、戦え」
 彼はまた竜馬に告げてきた。
「仲間達と共にだ」
「あ、ああ」
 そして戻った。元の世界だった。そこに戻るとすぐにであった。
「行くぞ皆!」
「リョウ!」
「見ていろコスモ!」
 こうコスモに対して言い返す。
「俺はゲッター線に負けない!」
「いけるんだな!」
「ああ、俺はゲッター線と共に運命に立ち向かう!」
 これが今の彼だった。
「行くぞゲッター!」
「よし、リョウ!」
「やってやろうぜ!」
 すぐに隼人と弁慶が声をかけてきた。
「ここはな!」
「派手に行こうぜ!」
「ああ、真シャイイイイイイイイイインスパアアアアアアアアアアアアアアクッ!!」
 巨大な緑の光の球を放った。それでだった。
 バッフクランの敵軍を一撃で部隊単位で吹き飛ばしたのだった。
「すげえ・・・・・・」
「どうやらこれはな」
 武蔵がそれを見て言う。
「リョウと一緒に真ゲッターも吹っ切れたようだな」
「隼人、弁慶、武蔵」
 竜馬はその武蔵にも声をかけてきた。
「俺はもう迷わない」
「わかったんだな」
「何かが」
「俺はゲッター線に」
 まず言うのはやはりゲッター線についてだった。
「宇宙の定めた運命にあがらってみせる!」
「ああ!」
「わかった!」
「そうするんだな!」
 三人もそれに応える。
「そして宇宙怪獣もバルマーも」
「何もかもだな」
「そうだ、その為にだ」
 竜馬の言葉は強いままである。その為の力を貸してくれ!」
「おう!」
 最初に応えたのは弁慶であった。
「その言葉待ってたぜ!」
「リーダーは御前だ」
 隼人も言う。
「俺達は地獄の底まで御前と一緒だからな」
「勿論だ!」
 武蔵も言う。
「そんなの最初からな!」
「そうか、来てくれるか」
「HAHAHA、そんなの自明の理デーーーーーーーーーース!」
 最後にジャックが叫ぶ。
「全員でやっつけるデーーーーース!」
「けれど」
 だがここでカーシャが言った。
「今Bメカにはバッフクランが」
「カーシャ」
 そのカーシャにシェリルが言う。
「ギジェは純粋にイデの行く末を見たいだけなのよ」
 こう主張するのだった。
「それに彼の力は」
「どうだっていうの!?」
「イデオンにとっても重要な筈よ」
「そんな筈ないじゃない!」
 しかしカーシャはそれを信じようとしない。
「何言ってるのよ!」
「止めろカーシャ」
 コスモも見かねて止める。
「そいつだって半端な気持ちでイデオンに乗った訳じゃにだろうさ」
「じゃあいいっていうの?」
「ロッタ、いいな」 
 しかしロッタにこうも告げた。
「監視は任せた」
「監視ね」
「ギジェが少しでもおかしな真似をしたら」
 その時はというのだ。
「躊躇わず撃て!」
「え、ええ」
 ロッタもその言葉に頷く。
「わかったわ」
「ロッタさん」
 ギジェもここで言うのだった。
「私のことで気に入らないことがあればだ」
「その時は」
「一発とは言わない」
 言葉には覚悟があった。
「十発でも二十発でも撃ってくれていい」
「ええ、そうさせてもらうわ」
 ロッタは彼のその言葉にも頷いてみせた。
「その時はね」
「手間をかける」
「ギジェ、いいな」
 コスモはギジェにも声をかけた。
「死にたくないのなら手を貸してもらうぞ」
「その時はだな」
「そうだ、相手が同じ星の人間でもな」
 それでもだというのだ。
「そうさせてもらうからな」
「その覚悟はできている」
 ギジェも真面目な顔で応える。
「既にだ」
「当てにさせてもらう!」 
 こうしてだった。敵の数機を瞬く間に撃墜した。
 ここでだ。カーシャがギジェに対して問うた。
「どう!?」
「どう、とは?」
「自分と同じ星の人間を撃墜した感想は」
「カーシャ!」
「私は生き恥を晒してまでここにいる」
 だがギジェはこう言うだけだった。
「今は自分の目的の為に戦うだけだ」
「そうだっていうのね」
「そうだ」
 また答えるギジェだった。
「それだけだ」
「・・・・・・わかったわ」
 カーシャも今は黙った。そうしてだった。
 コスモはイデオンをダラムの機体の前に進ませた。
「姑息な先方が通用するかよ!」
「馬鹿な」
 ダラムはそのイデオンを見て驚きの声をあげた。
「ワフト宙域にあってもこれだけのパワーを!?」
「驚いているみたいね」
「そうですね」
 ダラムの驚愕はシェリルとロッタにもわかった。
「今のイデオンに」
「はい、間違いなく」
「この様な巨神はだ」
 ダラムは狼狽しながら言う。
「この世にあってはならん!」
「行くぞ!」
 コスモは突撃する中で叫んだ。
「敵の旗艦を静めれば勝負はつく!」
「死なば諸共ーーーーーーーーーっ!!」
 こう叫んでイデオンに特攻する。しかしだった。
「コスモ!」
「ああ、あれだな!」
「そうよ、イデオンガンよ!」
 カーシャが告げていた。
「それしかないわ!」
「そうだな。よし!」
 イデオンにそのイデオンガンを構えさせた。
「これで!」
「ええ、撃って!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーっ!!」
 光が襲った。それでだった。
 既に激戦で戦力の殆どを失っていたバッフクラン軍はほぼ消滅した。ダラムもまた。
「馬鹿な・・・・・・」
 旗艦もイデオンガンの直撃を受けてしまっていた。
「これだけの戦力を集めても巨神とロゴ=ダウの異星人には勝てぬのか」
「閣下、最早」
「脱出も」
「わかっている」
 部下達の言葉にも覚悟を決めた言葉で返す。
「済まない、ハルル」
 これが最後の言葉だった。
「私はやはり君に相応しい男では・・・・・・」
 こうして炎の中に消えた。戦いはこれで終わった。
「ダラム=ズバ・・・・・・」
 ギジェは彼の死を見届けたうえでその名を呟いた。
「これで終わりか」
「バッフクランの旗艦が沈んだな」
 バニングも言っていた。
「これでな」
「そうだな。これでまずは終わりだ」
 シナプスもそう見ていた。
「バッフクラントはここではな」
「後は宇宙怪獣ですね」
「まだかなりの数がいます」
 パサロフとジャクリーンが言ってきた。
「今度はそちらに全力を向けましょう」
「すぐに」
「わかっている。それではだ」
 シナプスも二人のことばに頷く。そうしてだった。
 今度は宇宙怪獣に向かう。その時にだ。
「行くぞ、リョウ」
「今度は宇宙怪獣だ」
 隼人と弁慶が竜馬に言ってきた。
「敵はまだまだ多い」
「だからな」
「ああ、わかっている」
 竜馬も二人のその言葉に頷く。
「それじゃあな」
「むっ!?」
 この時だった。ギジェはそのゲージを見て思わず声をあげてしまった。
「これは!?」
「ゲージがあがった!?」
 シェリルもそれを見て言う。
「まさか、これって」
「イデがゲッター線というものに反応しているのか!?」
 ギジェは驚きを隠せなかった。
「まさか」
「うっ!?」
「どうしたのい、洸」
 マリはいきなり声をあげた洸に対して問うた。
「何か感じたの?」
「あ、ああ」
 彼は頭を右手で押さえながらマリに答えた。
「ライディーンからの警告!?」
「ライディーンからの!?」
「イデとゲッター線のことか!?」
 すぐにこう察したのだった。
「まさか」
「なにっ、これは」
「何が起こるんだ!?」
 竜馬もコスモもこれからのことは全く予想できなかった。
「ゲッターの力が上がっている」
「一体」
「!?コスモ!」
 カーシャが言ってきた。
「イデオンガンが!」
「どうしたんだ!?今度は!」
「凄いパワーよ!」
 イデオンガンに篭っていくそのパワーを見ての言葉だった。
「まさか、これって」
「一体何が起こるんだ!?」
「ま、真ドラゴン!」
 ゴウもここで思わず声をあげた。
「どうしたんだ!?この力の上昇は」
「真ドラゴンもかよ」
 武蔵の乗るブラックゲッターもであった。
「ゲッターの力があがってる。何だってんだ!?」
「わからん、ただこれは」
「そうですね、好機です」
 ジャクリーンがシナプスに対して答える。
「宇宙海獣達に攻撃を仕掛け」
「一気に壊滅させる!」
 彼は言った。
「イデオンガンを撃て!」
「それで宇宙怪獣を」
「そうだ、そしてその後でゲッターを中心として全軍で攻撃を仕掛ける!」
 そうするというのだった。
「わかったな。それでだ!」
「了解!」
「それなら!」
 こうしてだった。まずはイデオンガンが放たれた。
 そこからゲッターを中心として宇宙怪獣に突撃を仕掛けてだ。戦いは終わった。
 そして戦いを終えてもだった。彼のことは終わりではなかった。
 カララがだ。彼を何度もひっぱたいていた。彼は身動き一つしない。
「・・・・・・・・・」
「カララ、止めろ!」
 ベスがカララを止めに入った。
「いい加減に」
「ベス、やらせなさいよ!」
 しかしカーシャがそのベルを止める。
「バッフクランなのよ!」
「だからだというのか」
「そうよ、バッフクランのギジェ=ラザルなのよ!」
 カーシャはあくまでこう主張する。
「死刑にすればいいのよ!」
「しかしそれは」
「どうしたっていうのよ!」
 戸惑うベスにさらに言う。
「この人自分から言ったじゃないの!」
「それはそうだけれど」
「それでも」
「私達と一番戦った人よ!」
 カーシャはこうも行った。
「一番強敵だった人よ!なのにおめおめと生き恥を晒して」
「そしてだというのか」
「敵に許してくれって来る破廉恥な男なのよ!死刑にして当然でしょ!」
「何を言われようと構わん」
 そのギジェの言葉だ。
「イデの力が現われるということはどういうことか」
「それをどうだっていうのよ!?」
「それを見たい」
「死んじゃえ!」
 カーシャはギジェ本人に対しても言った。
「あんたなんか自分で死んじゃえ!」
「笑ってくれて構わん」
 ギジェは静かに目を閉じて述べた。
「イデが現われるまでは生き延びさせてくれ」
「そうしてくれっていうのか」
「今は」
「そうだ。諸君等は私にとってそういう敵だったのだ」
「イデは善き力によって現われる」
 ベスはここで言った。
「伝説にはそうある」
「・・・・・・・・・」
「しかしだ」
 ベスの言葉は続く。
「私達の貴方への憎しみはどうなる」
 彼はこのことも言った。
「憎しみも悲しみも晴らせぬ我々は貴方と同じに」 
 ギジェを見ながら話す。
「苦しく、惨めでもある」
「すまない・・・・・・」
 ギジェは今はこう言うしかできなかった。
「だが今の私は償う術を知らないのだ」
「コスモ君」
 マイヨがここでコスモに問うた。
「君はどう思う」
「ギジェのことですか」
「そうだ」
 まさにその彼のことだという。
「どう思う」
「少なくともパイロットとしての腕は認めます」 
 こう答えるコスモだった。
「さっきの戦闘でも随分と助かりました」
「そうか」
「冗談じゃないわよ!」
 カーシャは今のコスモの言葉にすぐに言い返してきた。
「あいつはバッフクランなのよ!」
「それを言えばだ」 
 そのマイヨがカーシャに言ってきた。
「私はギガノス軍にいたが」
「けれど」
「俺はティターンズだったしな」
 ジェリドも出て来た。
「随分とやりあったんだがな」
「そうだな。私もだった」
「私もだな」
 バーンとギャブレーも出て来た。
「敵味方は流転する」
「そういうものではないのか」
「それにカーシャ」
 エマもカーシャに対して言う。
「彼に裏切る気があったらね」
「あったら?」
「その機会は幾らでもあったんじゃないかしら」
「けれどそれは」
「いや、僕もエマ中尉に同感だ」
 万丈も言ってきた。
「それにあの涙」
「涙!?」
「同じ男として信頼に値するな」
「そんなセンチメンタリズム」
 カーシャはあくまで強情である。
「あたしには理解できないわ」
「星が違うのもいいんじゃないのかい?」
 万丈はまたカーシャに言ってきた。
「今更」
「今更って?」
「タケルやマーグをどう思うんだい、カーシャは」
「仲間よ」
 はっきりと答えた。
「それ以外の何者でもないわよ」
「そういうことさ。仲間だろ?星は違っても」
「けれど」
「そういうものさ。そんなことはもうどうでもいいんだよ」
「そうだな」
 コスモが遂に頷いた。
「そろそろすっきりさせようぜ。そうだな」
「そうだな?」
「っていうと」
「コインでも投げてな」
 こう皆に言うのであった。
「表が出たらギジェは味方、裏が出たら」
「下らないことを!」
「あのな、もういい加減にしろよ」
 エイジがうんざりした顔でカーシャを止めてきた。
「違う世界の俺達なんか本当にどうなるんだよ」
「それとこれとは話が別よ」
「まあいいじゃないか」
 コスモはそのエイジも止めた。
「これですっきりするんだからな」
「コインでだな」
「さっきの話の続きだけれどな」
 コスモは言う。
「裏が出たら裏切り者だ」
「そうか」
「それでいいな」
 コスモは周りを見回して全員に問うた。
「それで」
「ええ、いいわ」
 頷いたのは小鳥だった。
「公平だしね」
「疑わしきは罰せず、だな」
 ベスも言う。
「俺達は凡人だ、どちらかにはっきりさせたい」
「それじゃあな。行くぜ」
「わかった」
 最後にギジェが頷いた。そうしてだった。
 投げられたコインが落ちた。その面は。
「表だ」
「ああ」
「あんたは仲間だ」
 ギジェを見ての言葉である。
「これではっきりしたな」
「こんなことでいいの、大事なことを」
「じゃあまだ裏切り者っていうのか?」
「それは・・・・・・」
 さしものカーシャも口ごもってしまった。
「もう」
「俺は信じるさ」
 コスモは言った。
「今のギジェはな」
「済まない、コスモ君・・・・・・」
「では行こう」
 ブライトが最後に言った。
「我々の目指す先に」
 あえて多くは言わなかった。そのうえで次の戦場に向かうのであった。


第四十一話   完


                                      2010・6・30        
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