スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十話 イデへの心
第四十話 イデへの心
「いいな」
「はい」
「今からですね」
「後詰でバラム隊が来る」
ギジェの率いる軍だった。それが星に来ていた。
「それまでに我々だけで異星達を討つ」
「そして巨神を」
「我等の手で」
「そうだ」
まさにその通りだと。ギジェは部下達に告げた。
「それでいいな」
「はい、それでは今から」
「総員攻撃開始!」
ギジェの指示が出された。これが合図になった。
ロンド=ベルも出撃する。しかしソロシップだけは。
「むっ!?」
「閣下、どうされました?」
「何か」
「巨神が出ていない」
ギジャが最初に気付いた。
「それにあの艦もだ」
「そうですね。動きませんね」
「一隻だけ」
「何があった?」
そのソロシップではだ。ベスがハタリに対して問うていた。
「まだか!?」
「駄目だ、ゲージがあがらん」
「イデオンは!?」
ベスはイデオンについても問うた。
「イデオンはどうなんだ!?」
「まだだ」
ハタリはイデオンに対しても答えた。
「コスモの出撃準備がまだだ」
「何かあったのか!?」
光はそれを聞いて本気で心配した。
「コスモさんに」
「どっかで油売ってんじゃないの?」
アスカは光とは違っていた。
「どうせね」
「そう?怪我とかじゃ」
「先程の怪我が悪化していなければいいのですが」
海と風はそうではないかと心配した。
「そうなったらね」
「大変ですけれど」
「大丈夫よ、それは」
何故かここで必死に否定するアスカだった。
「あいつそんなにヤワじゃないわよ」
「だった何でそこまで慌てるんだ?」
闘志也が聞かなくていいことを聞く。
「一体全体」
「何でもないわよっ」
アスカは闘志也に対してムキになって返した。
「別にね」
「そうか?」
「そうよ。とにかく何処に行ったのよ」
「あのキッチンって子のところじゃないかな」
斗牙の言葉だ。
「多分だけれど」
「何ですって!?」
それを聞いて怒ったのはルナだった。
「この非常時に何エイジみたいなことやってんのよ!」
「おい、何で俺なんだよ!」
「だってあんたいつもお姉ちゃんお姉ちゃんって」
「姉ちゃんはもう見つけたから言ってねえだろ!」
「この前までそうだったじゃない」
「一体何時の話なんだよ」
二人はグラヴィオンの中で喧嘩をはじめた。
「一体全体」
「あのさ、二人共さ」
その彼等のタケルが言ってきた。
「ここはさ」
「あっ、そうか」
「そうよね」
言われてやっとはっとした。
「バッフクランの奴等を」
「何とかしないと」
「何時言おうかと気になっていたが」
ビリーもこれには実は頭を抱えていたのだ。
「タケル君、よく言ってくれた」
「よし、不死身のパトリック様出撃だぜ!」
「撃墜されるなよ」
カティは部下にこう言う。
「何かと危ないのだからな」
「大丈夫ですよ、大佐」
しかしパトリックの返答は能天気なものである。
「今日も大活躍してきますよ」
「全く。どうしていつもこうなのだ」
「とにかくだ」
オズマが言う。
「まだキャラルに多くの市民が残っているぞ」
「そうだよな」
キースがその言葉に頷く。
「とにかく今は戦わないと」
「各機に告ぐ!」
クワトロの言葉だ。
「街を守れ!」
「了解です!」
「それならば」
アポリーとロベルトが応えた。
「ここは市街と」
「そしてソロシップと」
「あの頭痛メカもいる」
アルフレッドは素早く敵のマシンを見ていた。
「用心しろよ」
「そうですね。それじゃあ」
「散開して行くぜ!」
キラとシンが応えてだ、戦いに入った。
そしてだ。市街地ではだ。キッチンとコスモがいた。
「また来たのね」
「キッチン!」
コスモが顔を歪めさせるキッチンに対して告げた。
「生き残った人を連れてソロシップに行くんだ!」
「ソロシップに?」
「そうだ、今すぐに」
こう告げるのである。
「さもないと」
「御免」
しかしだった。キッチンはここでコスモに対して謝罪するのだった。
「そうするべきなんだけれどね」
「じゃあどうして」
「あたしこの星を捨てる訳にはいかないのよ」
「えっ!?」
「だってね」
微笑んでだった。そのうえでの言葉だった。
「キャラルはあたし達の星だから」
「だからか」
「うん、だからね」
それでだというのだった。
「それで。悪いけれどね」
「そうか・・・・・・」
「御免ね、あたし何があっても残るよ」
微笑んでコスモに言うのだった。
「このキャラルにね」
「・・・・・・わかった」
ここまで聞いてだ。コスモは頷いてみせた。
「それならな」
「それなら」
「守ってやるよ」
こうキッチンに対して言うのだった。
「このキャラル!身体を張って守ってやる!」
「コスモ・・・・・・」
「安心してくれ、俺は戦う」
強い声でキッチンに対して告げた。
「それじゃあな」
「御願い・・・・・・」
走り去るコスモへの言葉だった。そして。
激しい戦闘がはじまっていた。ソロシップにも攻撃が加えられる。
「くっ、まだか!」
「まだだ、イデオンもだ!」
「くっ、コスモ!」
攻撃を受ける中でだ。ベスはハタリの言葉を受けながら言っていた。
「早く戻って来い!そしてだ!」
そして中では。
「きゃあっ!」
「怖い・・・・・・」
アーシュラとファードが泣いていた。
「怖いよ・・・・・・」
「ロッタ、リン」
レイカが二人に対して言っていた。
「子供達を安全な場所に」
「そうね。こっちよ」
「来て」
二人はそれを受けてだ。すぐに子供達を連れて行く。
「アーシュラ、ファード」
「こっちだから」
「リン」
ロッタはその中でリンに対して言った。
「ルウを御願い」
「ええん、じゃあ」
「ファード、行きましょう」
ラポーがファードの手を取った。
「こっちよ。急いで」
「で、でも・・・・・・」
「行こうよ」
アーシュラもファードに対して言う。
「早く」
「けれど・・・・・・」
「何やってんだよ!」
トッポがそのファードにたまりかねて言った。
「腰でも抜けたのかよ!」
「怖い、怖いよ!」
「そんなこと言ってる場合じゃないわよ」
ビューティがそのファードに対して言った。
「今は」
「おいファード!」
そこにだ。偶然モエラが来た。そうしてファードに怒った。
「御前はさっきの話が何もわかってないのか!」
「モエラ・・・・・・」
「アーシュラだって頑張ってるのに御前は!」
「モエラ!」
「でも、でも・・・・・・」
「そんなことでどうする!」
「モエラ、待って!」
ラポーがここでも注意した。
「小言ばかりじゃファードみたいな子は」
「こいつを見てるとイライラしてくるんだ」
しかしモエラはまだ言う。
「昔の俺みたいでさ」
「順々に教えていかないと」
「駄目だっていうのかい?」
「ええ」
そうだというラポーだった。
「だからね」
「くっ、わかったよ」
モエラも今は頷くしかなかった。そうしてだ。
ファードに顔を向けてだ。こう告げた。
「アーシュラに負けるなよ」
「・・・・・・・・・」
「負けないわよね。ファード」
ラポーはここでも優しかった。
「そうよね」
「う、うん」
「バッフクランが俺が叩く」
モエラはまたファードに対して告げた。
「ファード、御前は皆を頼むぞ」
「うん、じゃあモエラ」
ファードはここでだ。モエラにあるものを差し出した。それは。
「これ持って行って」
「これは」
モエラはその人形を見てだ。すぐに気付いた。
「ファードが大事にしている人形じゃないか」
「うん、これがなくてもね」
そして言うのだった。
「僕、頑張るよ」
「いいのか?」
「うん」
モエラに対してこくりと頷いてみせた。
「大丈夫だからよ」
「よし、わかった」
モエラもだ。意を決してその人形を受け取った。
「なら行って来る」
「行ってらっしゃい」
「はじめは辛いかも知れないけれどな」
ファードの心を見てだ。モエラもここで優しい顔になって告げた。
「頑張るんだ」
「うん」
「そうよ、ファード」
ラポーもファードに対して告げる。
「男の子だからね」
「わかったよ、ラポー」
「じゃあ皆を頼んだぞ」
「うん、モエラもね」
「頑張ってきてね」
「ああ、それじゃあな」
モエラは二人の言葉を受けてだ。笑顔で戦場に向かった。そうして。
ファードはモエラがいなくなるとだ。ラポーに対して問うた。
「ねえ、ラポー」
「どうしたの?今度は」
「ラポーってね」
そのラポーを見ながらの言葉だ。
「モエラのこと好きなの?」
「えっ!?」
「それはどうなの?」
こう彼女に問うたのである。
「それは」
「それは言わないでね」
ラポーはくすりと笑ってファードに告げた。
「今はね」
「今はなの?」
「そう、今はね」
今はこう言うだけだった。
「それで御願いね」
「うん、わかったよ」
ファードはよくわからなかったがこう返した。
「僕今は黙っているよ」
「この戦いが終わったら」
ラポーは一人決意していた。
「きっとね」
そしてだ。コスモがようやく来たのだった。
「済まない!遅れた!」
「何遅れてるのよ!」
そのコスモにカーシャが怒る。
「キッチンなんて子と!」
「あれ?ヤキモチかよ」
「おふざけじゃないの!今戦争してるのよ!」
こう言って感情を隠す。
「あんたもそれわかってない訳じゃないでしょ!」
「ま、まあそれはな」
「本当に何やってるのよ」
また怒るカーシャだった。
「いつものコスモじゃないみたいよ」
「悪い、本当に」
「よし、行くぞ」
二人にモエラが言ってきた。
「出撃が遅れた分は戦いで取り戻すぞ」
「え、ええ」
「そうだな」
「俺がいる限りだ」
モエラの言葉が強くなる。
「ソロシップは守り抜いてみせる!」
「どうしたんだモエラ」
コスモは彼が普段と様子が違うことに気付いた。
「急にそんなことを言って」
「何かおかしいのか?」
「守り方が気に入らないのか?」
怪訝な顔でモエラに問うのだった。
「今の守り方が」
「いや、そうじゃないがな」
「じゃあどうしたんだ?」
「俺は今まで人間の運命を悪い方に考えていた」
「運命?」
「ああ、悪い方に考え過ぎていた」
ラポーやファードとの話を受けてのことである。
「だがそれももう止めた」
「何をなの?」
デクが問うた。
「よくわからないんだけれど」
「俺はいい運命もあることがわかったんだ」
微笑んでの言葉だった。
「だからな」
「いい運命が?」
「ラポーなんて子がいることに気付かなかった」
今度の言葉はこれだった。
「今までな」
「ラポーのことが好きなのか」
「駄目か?」
「いや」
コスモはそれはいいとした。しかしだった。
「ただな」
「ただ。何だよ」
「いきなりだったからな」
それで驚いていたのである。
「それでな。ちょっとな」
「おかしいのかよ」
驚いている顔のコスモに対しての言葉だ。
「それが」
「まあいい。じゃあ行くか」
コスモが言った。
「それならな」
「そうね。とにかく今はね」
「行こう、皆を守りに」
カーシャとモエラは彼の言葉に頷いてだった。
そのうえで出撃した。すぐに竜馬が言ってきた。
「コスモ、大丈夫か?」
「ああ、勿論だ」
コスモは微笑んで彼の言葉に返した。
「キャラルは俺が守ってみせる!」
「何かコスモまで張り切ってるね」
デクも当然イデオンの中にいる。
「何か別人みたいだよ」
「巨神、来たか」
ギジェがそれを見て言う。
「ならばだ。行くぞ!」
「キッチン、見ていてくれよ」
コスモはギジェのマシンを観ながら呟いていた。
「俺がキャラルを、君を守ってみせる!」
「コスモ、来たわよ!」
「ああ!」
そしてカーシャの言葉に応えだった。戦いに入るのだった。
「やらせるか!」
「むっ!?」
ギジェはイデオンの攻撃を受けてだ。まずは驚いた。
「このガルボ=ジックでさえもパワー負けするのか?」
「よし、あの頭痛メカはイデオンに任せて!」
「俺達は他の奴等を!」
「やりましょう!」
イデオンの参戦を受けたロンド=ベルは一気に攻勢に出た。
そのうえでだ。攻撃を加えているとだ。不意にサイがマリューに言ってきた。
「艦長、敵です!」
「バッフクランなの?」
「はい、機体識別反応はそれです」
「大気圏外から降下してきます!」
ミリアリアも言う。
「数、かなりです!」
「そう、いつものパターンね」
マリューももう敵の援軍には慣れていた。
「それならね」
「このまま戦闘ですよね」
「動きますか?」
カズイとトールがこのことを確認する。
「敵の援軍に対しても」
「場所は変えますか?」
「戦闘は当然継続よ。場所はこのままでいいわ」
マリューは素早く二人に返した。
「それよりも。数は」
「かなりですね、これは」
マヤの苦い声が聞こえてきた。
「百万です」
「また随分来たなあ」
トールがそれを聞いてぼやいた。
「百万って」
「いつものことだけれどね」
ルナマリアもこう言うがぼやきが入っている。
「それでも。百万はね」
「戦うしかないですね」
「そうなんだよな」
サイは前を見ているがカズイは少しうんざりとした顔になっていた。
「結局そうしないと」
「キャラルの人達に迷惑がかかりますしね」
「本隊はこちらのようですね」
ノイマンも言う。
「どうやら」
「そうね。ソロシップはまだ動けないし」
マリューはソロシップをモニターで見ながら言った。
「それならここは」
「戦うしかありませんね」
「正念場ね」
マリューは微笑んで言った。
「これで何度目かわからないけれど」
「はい、まさしく」
「皆、いいわね」
マリューはあらためて全員に告げた。
「正念場よ、気合入れて戦って」
「了解!」
「百万、もう慣れたぜ!」
「慣れたくはなかったけれどね!」
何気に本音が出ていた。そうしてその新手の大軍にも攻撃を向けるのだった。
その中でだ。ダラムがギジェに対して問うた。
「敵は強いか」
「申し訳ありません」
「いや、いい」
それはいいというのだった。
「だが。攻撃目標を絞るぞ」
「巨神とロゴ=ダウの艦にですね」
「そうだ、ここで勝負を決する」
彼は言った。
「それでいいな」
「はい、それでは」
「全軍かかれ!」
ダラムは命じた。
「そのうえで戦いを終わらせるぞ!」
「やらせてなるかよ!」
しかしコスモはその迫り来る彼等とも果敢に戦う。
「やらせて!」
「コスモ・・・・・・」
キッチンもそれを見ていた。彼女はその他のものも見ていた。
「くっ、こいつ!」
「巨神、確かに強いな」
ダラムはギジェと共にイデオンを攻撃しながら言った。
「しかしだ」
「これまでの重機動メカよりも動きがいい!」
「軍のくれるメカと同じだと思われては困る!」
ダラムは笑いながら言った。
「ましてや私はガンガ=ルフに慣れている!」
「くっ!」
「これで終わらせる!」
そのままイデオンに突き進む。しかしであった。
ロンド=ベルの他の者達はイデオンに突き進むその大軍に総攻撃を仕掛けたのだ。
「コスモ達をやらせるか!」
「私達を無視できる筈ないでしょ!」
こう言ってだ。側面から総攻撃を浴びせ切り込む。これで敵の数を減らしていた。
それによってバッフクラン軍は今にも崩壊しそうになる。しかしだった。
「まだだ!」
「まだ戦われるのですね」
「そうだ」
ダラムはこうギジェに答えていた。
「ここで退いては私の男が立たん!」
「では閣下、今は」
「決めてやる!」
こう叫んでだ。イデオンに突進した。
「コスモ、来るぞ!」
「くっ、何てしぶとい奴だ!」
「遅いぞ巨神!」
そうしてだった。イデオンに攻撃を浴びせたのであった。
「くっ!」
「Bメカにダメージよ!」
モエラが声をあげカーシャが叫んだ。
「モエラ、テクノ、大丈夫か!?」
「俺は大丈夫だ」
まずテクノが言ってきた。
「しかしモエラが!」
「余計な心配はするな!」
ここでそのモエラが言ってきた。
「奴を倒す方が先だ!」
「それにコスモも!」
今度はデクが言ってきた。
「大丈夫なの?」
「そんなことを言っている場合じゃない!」
自分の怪我はいいとしたのだった。
「今は!」
「コスモ、また来たわよ!」
無事だったカーシャが叫ぶ。
「あのでかいのがまた!」
「また来たか!」
「もらったぞ巨神!」
「舐めるなーーーーーーーーーーっ!!」
ミサイルを浴びせた。それによってだった。
「ダラム様、大変です!」
「どうした!?」
同乗する兵士の言葉に問い返す。
「重機動メカのコントロールが効きません!」
「くっ、止むを得ん!」
それを聞いてだ。ダラムも決断を下した。
「機体は破棄する!」
「はい!」
こうして破棄されたマシンがだ。ある方向に向かった。
「まずい!」
「あそこにはキャラルの人達がいる!」
ルネと凱がそれを見て言う。
「このままでは!」
「誰か止めろ!」
「行こう!」
「ああ!」
すぐにヒメと勇が向かおうとする。
「ブレンなら!」
「届いてむせる!」
それで行こうとする。しかしだった。
間に合わなかった。それよりも先だった。
「!!」
「何っ!」
「キッチン!」
街に落ちてしまった。そうして。
「そんな・・・・・・」
「こんなことって・・・・・・」
「キッチン・・・・・・」
ロンド=ベルの面々は誰もが愕然としていた。時にコスモはだ。
「嘘だろ・・・・・・」
「けれどコスモ」
カーシャも何とか気を使う。
「けれど」
「キッチンーーーーーーーーッ!!」
「!?イデのゲージが」
「最高に!?」
「いけるぞベス!」
それを見てハタリが叫んだ。
「ソロシップのパワーも上がっている!」
「いけます!」
そしてベスも言った。
「脱出するなら今です!」
「よし、敵もかなり倒した!」
百万以上いた敵も半数以上を失っていた。大河がそれを見て言った。
「総員帰還!」
「は、はい!」
「わかりました!」
「DSドライブでキャラルを離脱する1」
「待ってくれ!」
だがここでコスモが叫んだ。
「キャラルの人達はどうするんだよ!」
「駄目だ・・・・・・」
そのコスモに万丈が首を横に振って応えた。
「生存者はいない」
「そ、そんな・・・・・・」
カガリがそれを聞いて唖然となった。
「誰一人もか」
「私達のせいなのか?」
グラハムも暗い顔になってしまっていた。
「この星に降りた為か」
「けれどそれでもだ」
万丈もその言葉は何時になく重い。
「ここで足を止める訳にはいかない」
「バッフ=クランはまた来る」
マーグが言う。
「だから今は」
「くっ、異星人め逃げる気か!」
ギジェがそれを見て言う。
「私は行く!」
「!?閣下」
「一体何処に」
「私は巨神を手に入れる!」
こう部下達にも言うのだった。
「まだだ!」
「ぐっ・・・・・・」
「おいモエラ!」
テクノはモエラに必死に声をかける。
「しっかりしろ!」
「俺は大丈夫だ」
まだこうは言えた。
「それよりソロシップを」
「ソロシップをか」
「そうだ、早く」
こうテクノに言う。
「今のうちに」
「わかった、そうだな」
「話は聞いた」
ジョリバがすぐにテクノに返してきた。
「コスモ!」
「ああ!」
「イデオンガンを使え!」
「イデオンガン!?」
「ソロシップに積まれていたものだ!」
こうコスモに答えた。
「どうやらイデオンの武器らしい!」
「しかしジョリバ」
だがここでテクノが言う。
「テストもまだなんじゃ」
「構うものか!見るんだ!」
「くっ、またか!」
テクノはまた来たバッフクランの大軍を見て歯噛みした。
「また来たか!」
「バッフクランの奴等をやれるなら何でも使ってやる!」
「そうだな」
コスモはテクノのその言葉に頷いた。
「今は」
「それならコスモ」
カーシャがそのコスモに対して言う。
「今は」
「そうだ、モエラもそれでいいな」
「ああ・・・・・・」
傷を抑えながら何とか頷いたモエラだった。
「それでいこう」
「!?巨神め」
ギジェはそれを見て言った。
「何をする気だ?」
「ニューロ加速器よし!」
モエラが言う。
「発振係数!」
「八十五パーセント、良好!」
カーシャも言う。
「波動ガンセット!」
「いけーーーーーーーーーーーーーっ!」
イデオンが持つその巨大な砲が攻撃を放った。それでだった。
バッフクラン軍は消え去った。その一撃でだ。
「ば、馬鹿な・・・・・・」
「あれがなのか」
ギジェもダラムもこれには呆然となった。
「あれがイデの」
「発現なのか」
「恐ろしいな」
「全くだな」
アムロも宙も驚きを隠せないでいた。
「一撃であれだけの部隊をか」
「あれがイデの力なのかよ」
「無限力・・・・・・」
シェリルもそれを見て呟いた。
「あれこそが」
「バッフクランが後退していくぞ」
しかしだった。ギジェはまだ突っ込む。
「まだだ!」
「くっ!」
しかしだった。彼はイデオンの拳を受け撃墜された。
「ギジェ!くっ、駄目か」
ダラムは彼が死んだと確信した。その機体はもう四散していた。
「止むを得ん、今は」
「何、まさか」
しかしギジェは生きていた。そして脱出したところで自軍の撤退を見たのだ。
「私は見捨てられたのか。・・・・・・ダラムめ」
そして彼はだ。咄嗟に行動を取った。
「こうなってはな」
「おい、モエラ!」
テクノは笑顔でモエラに声をかけていた。
「やったぞ、俺達は生き残った!」
「・・・・・・ああ」
モエラは青い顔で彼の言葉に応えた。
「この光が」
「ああ、この光がだ」
「俺達の運命を変えていく光だ」
こう言って微笑み。そしてだった。
「おいモエラ!モエラ!」
モエラは目を閉じた。眠るようにして。
「モエラーーーーーーーッ!!」
返答はなかった。これで終わりだった。
「じゃあモエラは」
「一命は取り留めたわ」
リオがリョウトに話していた。
「けれどもうパイロットとしては」
「無理なんだね」
「生きているだけでも奇跡だって話よ」
リオはこうリョウトに話す。
「普通はね。ああなったら」
「生きていられないんだね」
「当分絶対安静でもう二度とイデオンはおろかパイロットにもなれない」
「そこまで酷い怪我なんだ」
「だから生きてるのが不思議な位よ」
リオはまたこう話した。
「そんなのだから」
「そうなんだ」
「助かっただけでもよかったわね」
エレナは顔を伏せてこう述べた。
「まだね」
「そうか。そういえばコスモは大丈夫なのか?」
タスクがふと言った。
「あいつも怪我してるよな」
「今輸血してるわ」
カーラが話した。
「カララさんが血液型が同じだったから」
「何っ!?」
ユウキはそれを聞いて驚きの声をあげた。
「カララさんのか」
「さっきの戦闘で怪我人がかなり出たじゃない」
カーラはそのユウキに対して話した。
「それでO型の血が不足していてね」
「それでか」
「検査したらカーラさんの血は私達と同じだったってわけなのよ」
ユウキだけでなく一同にも説明する。
「地球人のO型そのものだったのよ」
「そうだったのか」
「まさか別の銀河の人が」
ブリットとクスハも驚きを隠せない。
「俺たちと同じ血だったなんてな」
「そうよね。けれどカララさんも」
「僕達と同じなんだね」
リョウトが微笑んで言った。
「つまりは」
「そうね。そうよね」
リオはリョウトのその言葉に頷いた。
「完全にね」
皆そのこともわかった。そうして。
ジョリバがカミーユ達に話していた。
「イデオンも随分と傷付いちまったな」
「ああ、それでも」
カミーユはジョリバのその言葉に応えていた。
「あのイデオンガンの力は」
「凄かったな」
「あまりにもな」
「イデオンガンは誰かが隠したみたいにソロシップの中にあったわ」
シェリルがここでこのことを話した。
「これを間違った使い方をすればね」
「その時は」
「そうなるんですか?」
「私達は不幸になるんじゃないかしら」
こう二人に言うのだった。
「そんな気がするわ」
「いえ、シェリルさん」
だがここでカミーユはその彼女に話した。
「今は自信を持って下さい」
「自信を?」
「はい、俺達は今は敵を倒してでも進まないといけないんですよ」
こう話すのだった。
「だから今みたいなことを言わないで下さい」
「不幸とかね」
「そうです。皆が不安になります」
だからだというのである。
「ですから」
「そうね」
シェリルもカミーユのその言葉に頷いた。
「気をつけるわ」
「はい」
「そうね」
ここでリツコも言ってきた。
「イデの調査では貴女が一番なんだから」
「私がなのね」
「そうよ。この武器の使い方も含めてね」
「ええ」
「期待しているから」
微笑んでの言葉だった。
「頼んだわ」
「そうさせてもらうわ」
「じゃあシェリル」
ジョリバが言ってきた。
「俺達はイデオンのメンテに入るからな」
「わかったわ」
「イデオンガンの調査は任せるからな」
「ええ、それじゃあ」
「ただしね」
ここで言ってきたのはマーベットだった。
「仕事熱心もいいけれど」
「何?」
「あまり根を詰め過ぎないでね」
こう言ってきたのである。
「それは気をつけて」
「どういうこと?それは」
「一つのことに熱心過ぎる人って不意に崩れる時があるから」
マーベットはこう話すのだった。
「だからね」
「それでなの」
「それは気をつけて」
「そうならない為にはな」
加持が笑いながら言ってきた。
「酒がいいな」
「お酒ね」
「あれを飲んで気晴らしするといいんだよ」
「そうね。そういう時のお酒だからね」
シェリルもそれはわかった。
「それじゃあそうさせてもらうわ」
「疲れた時とかはな」
「そういうことね。じゃあね」
こう話してだった。シェリルは別れた。そのうえで一人でイデオンガンを見ていた。そうしてそのうえで難しい顔になっていたのである。
「とはいってもこの力は」
イデオンガンの力はもう見た。そのうえでの言葉だ。
「人が使うには巨大過ぎるかもね・・・・・・んっ!?」
ここで気付いたのだった。
「誰!?」
「心配する必要はない」
誰かが出て来た。それは」
「大人しくしてくれれば手荒な真似をするつもりはない」
「貴方は確か」
シェリルも知っている者だった。
「カララを追っていたバッフクランの」
「ギジェ=ザラルだ」
ギジェは自ら名乗った。
「バッフクランの者だ」
「まさかまたカララを連れ戻す為に」
「違う!」
だがギジェはそれを否定した。
「私は知りたいのだ」
「えっ!?」
「私は知りたい、イデの何たるかを」
それをだというのだ。
「そして」
「そして!?」
「イデが示すという善き力をだ」
「それを知りたい為に」
「私はここに来た」
こう言うのだった。
「あえて。ここにだ」
「ギジェ=ザラル・・・・・・」
「私も偽りを言うつもりはない」
彼はまた言った。
「頼む、それではだ」
「・・・・・・・・・」
また運命に導かれた者が来た。運命はあらゆる者を巻き込みそのうえで。巨大な渦を作りその中でまた何かを動かしているのであった。
第四十話 完
2010・6・25
ページ上へ戻る