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問題児たちが異世界から来るそうですよ? 召喚士の軌跡

作者:ブレイア
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第3話 ご対面ですよ?

黒ウサギに連れられて黒ウサギの所属するコミュニティのリーダーの元へと歩いている
飛鳥、耀、修也の三人。何故十六夜がいないのかは「ちょっと世界の果てを見てくるぜ!」といって
どこかへ行ってしまったためである

「ねえ、修也」

「なに?」

耀が修也に話しかける

「私の友達になってくれる?」

「別にいいけど…なんで?」

「私は友達をつくりにここへ来たから」

耀はまっすぐな瞳で修也を見る

「わかった。じゃあ俺はこの世界で出来た友達1号だな」

「にゃ、にゃー(よかったな、お嬢……お嬢に友達ができて、ワシも涙が出るほど嬉しいわ)」

「おいおい、そりゃ言いすぎだろ?」

「えっ? 三毛猫の言葉、分かるの?」

「まあ、たいていの動物とは意思疎通が可能だけど?」

「にゃー(ワシと話せるやつがお嬢いがいにも出来て、ほんまに嬉しいわ。兄ちゃん、ワシとも友達に なってくれるか?)」

「いいぜ」

そうして、耀には修也が、修也には耀と三毛猫が、三毛猫には修也という友達ができた
そうこうしているうちに4人は黒ウサギの所属するコミュニティのリーダーの元へと着いた

「ジン坊ちゃーン! 新しい方を連れてきましたよー!」

黒ウサギが駆け寄ると、ジンと呼ばれた少年ははっと顔を上げた。

「お帰り、黒ウサギ。そちらの皆さんが?」

クルリ、と3人を振り返り

「いぇーす! こちらの4人様が―――って、あれーもう一方は」

カチン、と固まった。
1人足りない。逆廻十六夜の姿がなかった。

「ああ、十六夜君のなら? 彼なら 「ちょっと世界の果てを見てくるぜ!」 と言って駆け出してい ったわ」

「な、なんで止めてくれなかったんですか!」

「 「止めてくれるなよ」 と言われたもの」

飛鳥が言う

「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」

「 「黒ウサギには言うなよ」 と言われたから」

飛鳥に続き耀が言う

「嘘です、絶対嘘です! 実は面倒くさかっただけでしょうお2人さん!」

「「うん」」

飛鳥と耀の声が重なる

「しゅっ修也さんは」

止めようとしてくれたんですよね?という期待のこもった目で修也を見る

「俺も行こうとしたけど耀に止められた」

黒ウサギはガックリとうなだれた後、耀に大声で言う

「耀さん! なんで修也さんを止めたのに十六夜さんを止めなかったのですか!」

それに何故かキラーンと目を光らせた耀がはっきりと言う

「なんとなく!」

「にゃー(同じくや!)」

イェーイとハイタッチをする2人と1匹
それに黒ウサギは両手両膝をつける体勢、orzになる

「くっ黒ウサギ、世界の果てには…」

「分かってます。ジン坊ちゃん。お3人様の御案内をお願いします。黒ウサギは…問題児を捕まえに参り ますので!」

ザン!と黒ウサギの青い髪は桜色に変わる

「箱庭の貴族と謳われるこのわたしを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやるのですよ!」

そう言って黒ウサギは走り出し、あっという間に見えなくなった

「箱庭の兎は随分早く跳べるのね」

飛鳥の言葉にジン坊ちゃんと呼ばれた少年が黒ウサギについての簡単な説明をする

「ウサギたちは箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが……」

「まあ、それはおいといて、箱庭の案内をしてくれるか?ジン坊ちゃん」

「ジン ラッセルです。どうぞ、こちらへ、箱庭の中をご案内します」

そう言ってジンは3人と1匹を連れて、箱庭の中に入った

「ここが…!」

「箱庭」

「へえ、なかなかきれいなところだな」

「外から天幕に入ったはずなのに、太陽が見えてる」

耀が空を見ながら言う

「箱庭を覆う天幕は、内側になると不可視になるんですよ。そもそも、箱庭の天幕は太陽の光を直接受 けられない種族の為に設置されていますから」

「あら、この都市には吸血鬼でもいるのかしら?」

「え?いますけど」

「へえ、そいつは面白そうだ」

あっけらかんと言うジンに対し何故か目を輝かせる修也

「まだ、ここに召喚されたばかりで落ち着かないでしょう。詳しい説明は食事をとりながらでもいかが ですか?」

そう言ってジンは手近にあった『六本傷』の旗を掲げている店に入った。
注文を取るために店の奥から素早く猫耳の少女が飛び出てきた。

「えーと、紅茶を二つと緑茶と…」

「にゃー《ネコマンマを》!」

「はいはーい。ティーセット三つとコーヒーを一つ、ネコマンマですね~」

「三毛猫の言葉、分かるの」

耀が驚いたように猫耳の少女に訊く

「そりゃあ分かりますよ、私猫族なんですから」

猫耳の少女はあっけらかんと言う

「にゃ、にゃにゃう、にゃーにゃ(ねーちゃんも可愛い猫耳に鉤尻尾やな。今度機会があったら甘ガミ しに行くわ)」

やだもーお客さんお上手なんだから♪」

「箱庭ってすごいね。私や修也以外にも三毛猫の言葉がわかる人がいたよ」

三毛猫を抱き抱えて耀が弾んだ声で言う。

「ちょ、ちょっと待って。あなたもしかして猫と会話できるの!?」

珍しく動揺した声の飛鳥に、耀はこくりと頷いて返す。

「雀、鷺、不如帰。水族館でペンギンとも話した。他にもイルカ達とも友達」

その言葉に言葉を失うジンと飛鳥

「あれ?さっきあなた修也とも言ったわよね。もしかして修也も猫と話せるの?」

「まあ、話せるけど?」

「どんな動物と話したことがあるの?」

「それ、私も気になる。修也が向こうでどんな動物達と友達だったのか」

飛鳥と耀に言われ若干渋りながらも修也は言う

「ああ、たとえば鷲、虎、獅子…とまあ色々だな」

「その動物達は動物園にいたの?」

「動物園…?は知らないけど全部野生だ」

「そう……春日部さんと修也くんは素敵な力があるのね。羨ましいわ」

感心された耀は困ったように頭を掻き修也は無反応だ。対照的に飛鳥は憂鬱そうな声と表情で呟いた。
その様子は、出会って数時間の耀にも、飛鳥の表情はらしくないと思わせるものだった。

「久遠さんは」

「飛鳥でいいわ。よろしくね、春日部さん」

「う、うん。飛鳥はどんな力を持っているの?」

「私? 私の力は……まあ、酷いものよ」

飛鳥が口を開こうとした時、ドンと大きな音がした

「おやぁ? 誰かと思えば東区画の最底辺コミュニティ“名無しの権兵衛”のリーダー、ジン君じゃないですか」

不躾な声が分けいった。
みれば、二メートルを超える大柄な体を窮屈そうにタキシードで包んだ変な男がいた。

「…ガルド」

ジンは大柄な男性を睨みつけ、呟く

「あなたの同席を認めた覚えはありませんよ。ガルド=ガスパー」

「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ。そう思わないかい、そこな紳士とお嬢様方?」

ガルドと呼ばれた巨体の男は3人を見下ろす
あまりにも失礼な態度に3人は冷ややかな態度で返す。

「失礼ですけど、同席を求めるならばまず氏名を名乗った後に一言添えるのが礼儀ではないかしら?」

「おっと、これは失礼しました。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ『666の獣』の傘下である「烏合の衆の」コミュニティのリーダーをしている、って待てやゴラァ! 誰が烏合の衆だ小僧ぉ! 俺のコミュニティは『フォレス・ガロ』だ!」

「へえ、においが獣だな。ところでジン、今ガルドさんが指摘した私達のコミュニティが置かれてる状況……とやらを説明してもらえるか?」

「そ、それは……」

 ジンが言葉につまる。修也はジンの動揺を見逃さず、畳み掛けるように話しかける。

「お前は自分のことをコミュニティのリーダーだと名乗った。なら、黒ウサギと同様に新たな同士として呼び出した俺達にコミュニティというのはどういうものなのかを説明する必要がある。違うか?」

 追求する声はナイフのように冷ややかで、鋭いものだった。その様子を見ていたガルドはここぞとばかりに含みのある笑顔と上品ぶった声音で話しかけた。

「ジェントルメン、あなたの言う通りだ。コミュニティの長として新たな同士に箱庭の世界のルールを教えるのは当然の義務。しかし、彼はそれをしたがらないでしょう。あなたがよろしければ、『フォレス・ガロ』のリーダーであるこの私が、コミュニティの重要性と小僧──ではない、ジン=ラッセル率いる『ノーネーム』のコミュニティを客観的に説明させていただきますが」

「……そうか。じゃあ頼もう」

「承りました。まず、コミュニティは読んで字のごとく複数名で作られる組織の総称です。受け取り方は種によっても違うでしょう。人間はその大小で家族とも国ともコミュニティを言い換えますし、幻獣は群れとも言い換えられる」

「それぐらいはわかるわ」

飛鳥が言う

「はい、確認までに。そしてコミュニティは活動する上で箱庭に名と旗印を申告しなければなりません。特に旗印はコミュニティの縄張りを示しています。もし自分のコミュニティを大きくしたいと望むのであれば、あの旗印のコミュニティに両者合意で『ギフトゲーム』を仕掛ければいいのです。私のコミュニティは実際にそうして大きくなりましたから」

 自慢げに語るガルドはピチピチのタキシードに刻まれた旗印を指差した。

 そこにあったのはこの辺りの商店や建造物にも同様に飾られていた紋章だった。

「その紋様が縄張りを示すというのなら……この辺りはあなた達のコミュニティが支配してると考えていいのかしら?」

「ええ。残念なことにこの店のコミュニティは南区画に本拠があるために手出しはできませんが、この2105380外門付近で活動可能な中流コミュニティは全て私の支配下にあります。残すは本拠が他区か上層にあるコミュニティと……奪うに値しない名も無きコミュニティくらいですね」

 くっくっく、と嫌味を込めた笑いを浮かべるガルド。対照的にジンは顔を背けたままローブを握りしめる。

「さて、ここからがレディ達のコミュニティの問題。実はあなた達の所属するコミュニティは……数年前まで、この東区画最大手のコミュニティでした」

「あら、以外ね」

「とはいえ、当時のリーダーは別人でしたけどね。ジン君とは比べようもない優秀な男だったそうですよ。ギフトゲームにおける戦績で人類最高の記録を持っていた、東区画最恐のコミュニティだったそうですから」

 ガルドが一転してつまらなそうな口調で語る。まあ、現状この付近で最大手のコミュニティを保持している彼からすれば心底どうでもいいことなのだろう。

「彼は東西南北に別れたこの箱庭で、東の他に南北の主軸コミュニティとも親交が深かった。いやホント、私はジンの事は毛嫌いしてますがね。これはマジですげえんですよ。南区画の幻獣王格や北区画の悪鬼羅刹が認め、箱庭上層に食い込むコミュニティだったというのは嫉妬を通り越して尊敬してやってもいいぐらいにすごいのです。まあ、先代は、ですが」

「…………」

「人間の立ち上げたコミュニティではまさに快挙とも言える数々の栄華を築いたコミュニティはしかし! 彼らは敵に回してはいけないものに目をつけられた。そして彼らはギフトゲームに参加させられ、たった一夜で滅ぼされた。『ギフトゲーム』が支配するこの箱庭の世界、最悪の天災によって」

「天災?」

「そんなすごいコミュニティがたかが自然災害で壊れるとは思えねえけど……」

「いえいえ。天災と言っても自然のものではありません。が、しかしそれは決して比喩にあらず。彼らは箱庭で唯一最大にして最悪の天災……俗に魔王と呼ばれる者達です」

 それからガルドは魔王という存在がどういうものなのかを説明した。

「なるほどね。大体理解したわ。つまり、魔王というのはこの世界で特権階級を振り回す神様etc.を指し、ジン君のコミュニティは彼らの玩具として潰された。そういうこと?」

「そうですレディ。神仏というのは古来、生意気な人間が大好きですから。愛しすぎた挙句に使い物にならなくなることはよくあることなんですよ」

 ガルドはカフェテラスの椅子の上で大きく手を広げて皮肉そうに笑う。

「名も、旗印も、主力陣の全てを失い、残ったのは棒来な居住区画の土地だけ。もしもこの時に新たなコミュニティを結成していたなら、前コミュニティは有終の美を飾っていたんでしょうね。今や名誉も誇りも失墜した名も無きコミュニティのひとつでしかありません」

「…………」

「そもそも考えてもみてくださいよ。名乗ることを禁じられたコミュニティに、一体どんな活動ができます? 主催者ですか? しかし名も無き組織など信用されません。ではギフトゲームの参加者ですか? まあ、それなら可能でしょう。では優秀なギフトを持つ人材が名誉も誇りも失墜させたコミュニティに集まるのでしょうか?」

「そうね……誰も加入したいとは思わないでしょう」

「そう。彼は出来もしない夢を掲げて過去の栄華に縋る恥知らずな亡霊でしかないのですよ」

 タキシードが破れそうなくらい手を広げ、品のない、豪快な笑顔でジンとコミュニティを笑う。

「もっと言えばですね。彼はコミュニティのリーダーとは名ばかりで殆どリーダーとして活動はしてません。コミュニティの再建を掲げてはいますが、その実態は黒ウサギにコミュニティを支えてもらうだけの寄生虫」

「…………」

「私は本当に黒ウサギの彼女が不憫でなりません。ウサギと言えば『箱庭の貴族』と呼ばれるほど強力なギフトを持ち、何処のコミュニティでも破格の待遇で愛でられるはず。コミュニティにとってウサギを所持しているというのはそれだけ大きな箔がつく。なのに彼女は毎日毎日クソガキ共のために身を粉にして走り回り、僅かな路銀で弱小コミュニティをやりくりしている」

「……そう。事情はわかったわ。それで、ガルドさんはどうして私達にそんな丁寧に話してくれるのかしら?」

 飛鳥は含みのある声でガルドに問う。ガルドもそれを察して笑う。

「単刀直入に申し上げます。もしよろしければ黒ウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか?」

 
 

 
後書き
お分かりですよね?主人公の口癖は「へえ、」です
何の説明だ

 
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