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100年後の管理局

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第九話 床抜、実行

 
前書き
今回の話は続きものになります。短めです。 

 
正史管理第六課の設立が決定してから早一ヶ月。新部隊の設立にはかなりの時間を要するために、いまだ高町誠也、アリス・T・ハラオウン、八神ひさめは本来の部隊で自分たちのなすべきことをなしていた。


本局340部隊隊長室
そこでは栗色の髪の少年――高町誠也と、壮年の白髪が見え始めた男性――340部隊隊長がかなり焦った様子で会話がなされていた。
「S級ロストロギアが狙われている!?」
そんな焦った様子の誠也から出てきた言葉は、もしかしたら次元世界が滅びかねないほどの物騒な内容だった。
「ああ。現在138管理世界グラールにて遺失物管理課が黒ずくめのテロリストたちと交戦中だ。遺失物管理課の奴が相手の通信妨害圏内を脱出してこちらに連絡してきた。相手の戦力は少なく見積もってもAAランク相当が2名、AAAランク相当が1名だそうだ。」
それを聞いた誠也はその表情がかなりひきつったものになる。
管理局内において魔導師の能力についての単純な指標である魔導師ランクの平均値は大体C+~B-程度である。
大体の部隊がそれくらいのランクの魔導師を中心として構成されている。
つまり、Aランクは管理局内で見れば優秀な部類に入り、AAランクはエースと呼ばれる部隊における切り札のようなレベルになってくる。
つまり相手のテロリストはエース級二名に超エース級一名という、もしかしたら簡単な武装組織を数時間で壊滅させられそうな超実力者集団と言うことだ。
「分かりました。すぐに現場に急行します。」
「ああ。この部隊で奴らを何とかできるのは総合SSのお前くらいなんだ。頼んだぞ。」
「了解!」
誠也はすぐに身をひるがえし駆けだした。


『誠也!』
本局の次元転送ポートに向かって全力で走る誠也の横から、グレイルがモニター越しに呼び掛ける。
誠也はそれだけで大体察したようですぐさま要求を繰り出す。
「グレイル!転送可能地点の割り出しは!?」
『すでに終了してる!転送地点についての入力も終了済みだ!』
相手がテロリストであるならば、確実に戦闘地点は転移妨害の結界が張られているだろう。
それを踏まえた上でのグレイルへの要求だったが、グレイルも心得たものですでにその作業を完了させていた。
「仕事が速くて助かる……!レイジングハート!」
『Stand by ready. Set up.』
誠也は走りながら己の戦闘服―白のバリアジャケットに換装する。
そこから少し走った後、管理局の次元転送ポートに到着する。
『誠也!転送地点は地上だ!飛んでいくんじゃねえぞ!』
「分かってる!飛んで行ったら間に合わない!」
誠也は138管理世界、グラールへと転送された。


転移の時の独特な感覚が無くなり目をあけると、十キロほど離れた地点に見えたのは、先日ひさめが案内されたような白い研究所らしき建物であった。
『誠也。目の前にあるのが事件現場のスクライア第三研究所だ。S級ロストロギアはこの建物の最奥にあるらしい。』
「了解!」
全身に身体強化をかけ、全力で走りだす。
その速度は十キロをわずか二、三分で駆け抜けるほどだった。
「ここが入口か………。こちら高町誠也。これより事件現場に入る。」
『了解。ただ、建物内には通信妨害の結界も張られている。こちらからの支援はないと思え。』
「了解。」
誠也は入口の扉を開き、内部へ潜入する。
そこにあったのは長さ一、二キロもある長い廊下だった。
その両脇には多くの扉があり、いくつかの扉を開くと、そこには生活感あふれる光景があり、ここで多くの人が生活していることをうかがわせた。
誠也はそこを慎重かつ迅速に駆け抜けていく。勿論全ての扉を開くのも忘れない。
ただ、そこには特に階段があるわけではなく、しかも戦闘音も聞こえてこない。
「くそ……。一体どこにあるんだ……。」
転移妨害の結界が未だに張られている時点でまだ戦闘は完全に終了していないはずなのだが、その肝心の戦闘音が全く聞こえてこない。
そして先ほどから長い廊下の全ての扉を開いてもそれらしいものは一切なく、しかも階段のようなものすらどこにもない。
施設の全容が分かっていないと完全に詰みの状況だった。
「通信妨害がなければ何とかなるのにっ……。」
このような重要な研究がおこなわれている研究所の設計図と言うのは違法組織でない限り管理局に提出するのが義務であるため、オペレーター側と通信が可能ならば、建物内部のスキャンに解錠コードの解析など様々な手段をとることができた。
「仕方ない……。レイジングハート、WAS起動。」
『All right. Wide Area Search.(了解。広域探査起動)』
レイジングハートの紅い宝玉の部分から桜色の波動が溢れる。
その波動は床や壁を貫通して、建物内の状況を誠也に伝えていく。
「よし!」
その結果、戦闘場所は地下100メートルほどで、戦闘はほぼ遺失物管理課側の敗北でほぼ終了。一部の管理局員が誠也の存在に気付き、転移妨害の結界を維持しているという状態であった。
テロリスト側も転移妨害の結界のため転移ができず、また目的となるS級ロストロギアを厳重封印した上で、外部魔力を遮断する箱に入れているところであった。
「レイジングハート、床抜、行くよ!」
床抜
これもまた高町家に代々伝わる狙撃法の一種である。
曽祖母がJ・S事件において壁越しの離れた相手に自らの砲撃で壁をぶちぬいて狙撃したことに由来する業である。
その武勇伝を聞いた誠也の祖母が息子や孫に伝え、その結果高町家の伝統の業の一つと化してしまった。
なおこの業にはきちんとした適性を必要とするが、誠也にはその適性が問題なく備わっていた。
誠也は現場のほぼ真上の位置に当たる場所へ移動し、レイジングハートを下に向けて構える。
その構えのまま、誠也のできる限りの最大チャージを始める。
「カートリッジロード!」
ガキン!ガキン!と二つの薬莢がレイジングハートから排出される。
それと同時に、収束させていた魔力が膨れ上がり、その大きさは直径1メートルほどにもなった。
「ディバイン―――」
『Divine buster』
「バスタ―――!!!!」
どんな笑みであるかは予測がつかないが、誠也の顔には笑みが浮かび、桜色の閃光は100メートルの深さをぶち抜いていった。
 
 

 
後書き
高町家伝統の業、壁(床)抜 
解説
原理そのものは作中の通りです。この業を使用するのに必要な素質は砲撃魔導師に高い適性を持つという物です。ちなみになのはさんの血を継ぐ子孫は程度の差こそあれ、やろうと思えばみんなできますw 
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