ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~
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赤眼の狙撃手
「くっ……」
強い。以前SAOで見たときよりも遥かに
死銃……いや、ここではザザと呼ぶべきか。ザザがどこから出したのか知らないがエストックを抜いたのには驚いた
銃剣とかその類いだろうが柄の部分にテーピングをしたそれはエストックそのものだった
「クックック……そんな得物じゃ満足に戦えないだろう」
「チィ……」
かなり近くまで接近させたのが間違いだった。俺が牽制で撃った弾はエストックで弾かれ、後ろに下がってもピタリとついてくる
そして放たれるエストックの鋭い突きを俺はピースメーカーの側面を滑らせることでかわしているが、徐々に間に合わなくなってきている
エストックというのは漢字で書くと刺剣と書くことからわかるように突きのように面ではなく点での攻撃が得意である。点が得意ということは防御が弱いということでもある。剣速は最速だろうがそれに反比例するかのように剣自体の強度は低い
だからエストック使いと戦うときは守勢に入らず常に攻勢に出なければならない
しかし、どういうカラクリかは知らないがザザの持つエストックは銃弾を受けても折れる気配はない
折るというのは期待できないようだ
「クックック……おまえにいいことを教えてやろう」
攻撃の手を緩めずに突然そんなことを言ってきた。俺には答える余裕はなかったが、ザザは気にせずそのまま続きの言葉を口にした
「今回のターゲット。その中に……」
そこで言葉を切ると笑いだした。普通のではなく不気味な笑い
「おまえの守りたいやつがいるぞ」
「なっ!?」
今回BoBに出ているプレイヤーで俺が知っているのはシノンただ一人
「動揺しているぞ?」
「チィ……!」
動揺したからか肩に一発もらってしまう。幸い一撃死するほどのダメージはなかった
「クックック……おまえは守りたい者がいる時強くなるんだったな。ならば見せてみろ。あの日あの時の狂気の剣を!」
俺は思いっきりエストックを弾くと距離をとった。ザザはついて来なかった
「確かにあの時の剣は狂気に満ちていたさ。だがな……俺はもうそんな剣はとらない。俺は俺の剣で守りたいやつを守る!」
「ならばその剣を打ち砕いてやろう。狂気の剣がな!」
地を這うように体勢を低くしてザザが走ってくる。こちらが放つ銃弾は全て弾かれる。ならば力を貸してもらうぞ、キリト!
俺はピースメーカーを一丁ポケットにしまうと懐からキリトの光剣を取り出す
スイッチを入れるとブゥンという音を立てて刃が出る
「それがおまえの剣か?」
「いいや……キリトに託された剣だ。俺とキリトでおまえを倒す!」
「ならばその剣ごと断ち切り、あの日の復讐を成し遂げてやる。……今戦いたいのは山々だがそろそろ他のプレイヤーが集まってくるだろう。今は引こう。次に会ったときに必ず……」
声には出していなかったがやつの口が殺してやると言った
そして、ザザの姿は消えた。比喩表現ではなく本当に消えたのだ
システム上は人の動体視力を上回るような速度は出せないはずである
ならば透明になるような装備があるのか、と聞かれればそんなバランスブレイカーな装備はほぼ無いと言えるが
……どちらにせよ、早く移動しないと死銃を倒す前にやられるな。時計を見たらサテライトスキャンがあったばかりで今の俺の場所はバレバレだからな
「リン!」
「よう、シノン」
一息ついたところでシノンが崖の上から顔を見せた
銃でペイルライダーを狙っている
……そういえばいたな。ペイルライダー
「ペイルライダー……でよかったか?」
「ああ……」
BoB本戦において死亡するとアバターはその場に残る。その状態で殺せるかは不明だが命がかかっている以上賭けにでるわけにはいかない
「状況はどこまでわかっている?」
「私が死銃と呼ばれるプレイヤーに殺されかけた……というぐらいだ。信じたくはないがな」
戦闘中の俺らの会話からそこまで正確に読み取れたのか。この人は案外人格者かもしれない
「とりあえず移動しないか?やつの言った通りこの場にいると格好の獲物にされるぞ」
「同感だな」
ペイルライダーは立ち上がると俺の後ろからついてくる
後ろから撃たれる心配はない
先ほどの会話からシノンが俺と敵対関係にはないことがわかってる
撃とうとした瞬間撃たれることがわかっているのだ
「リン。こっちよ」
俺とペイルライダーはシノンについてその場を離れた
「大体理解した。つまりリンは死銃にこれ以上人を殺させないためにここにいる。そしてシノンはそれに協力していると」
「ああ……それの認識でいい」
「あってるわ」
「……なら俺は単体行動をしよう」
「えっ!?」
「一緒に行動した方が安全じゃないか?」
驚きの声をあげるシノン。そんなシノンに聞こえないように俺の耳元に口を寄せる
「シノンだろ?大事な人ってのは?」
「なぜわかった?」
「ただの協力者ってだけじゃない近さを感じたのさ。お前とシノンの間にはな」
「……そうか」
まさかバレバレだとは思わなかった。……カマをかけただけかもしれないが
「俺じゃなくてシノンだけを守ってやれよ。二兎追うものは一兎も得ず、だ」
俺が知る由もないが、ペイルライダーは妻と子。二人を同時に救けようとしたがどちらも救けられなかった過去を持つ
「……わかった」
「それでいい」
そう言うとペイルライダーは俺の耳元から離れた
「……そろそろいいかしら?」
なんか微妙に不機嫌なシノン。仲間外れにされたことを怒っているのか?
「自分の目で見ても信じられないんだけど死銃は<<メタマテリアル光歪曲迷彩>>っていう能力を持っている装備を使っているんだと思う」
メタマテリアル光歪曲迷彩とはGGOでも高ランクボスMobだけが持っていると言われている能力で、名前の通り光を湾曲させ透明になることができるのだ
しかもスキャンに映らない
狙撃手垂涎の能力だな
「それはやっかいだな。……じゃあ、俺はそろそろ行かせてもらう」
「わかった、気をつけろよ」
「気をつけて」
そしてペイルライダーは去って行った
……俺はシノンを守らないとな
「……なに?」
シノンを見ていたら首をかしげられた。長く見すぎたか
「なんでもない。それより行くぞ。残り人数を減らせばそれだけやつが仕掛けてくる可能性が増える」
「そうね」
田園地帯でも行ってみるかね
後書き
蕾姫「短くてすみません……」
リン「もうちょっと長く書けよな」
蕾姫「……」
悩んだ末ペイルライダー生存。性格は渋い親父化。重い過去あり
変な設定すみませんでした
感想その他お待ちしています
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