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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百六十五話 クローン達

              第百六十五話 クローン達

「さて」
アーチボルトはある場所においてほくそ笑んでいた。
「まずはこれでよしです」
「いいとは?」
「はい、データは揃いました」
こうレモンに話すのである。
「全てです」
「データは全て揃ったというのか」
「そうです。ロンド=ベルの全てのデータはです」
揃ったというのである。
「これをイーグレット達に対してインプットします」
「そしてどうするつもりだ?」
「勿論彼等を倒す為に使うのですよ」
慇懃無礼な笑みと共に出された言葉であった。
「それは当然のことです」
「ロンド=ベルをか」
「そしてです」
彼はさらに言葉を続けてきた。
「あの三人だけではありません」
「三人だけではない?」
「そうです。数は力です」
よく言われる言葉であるが彼も今それを出したのである。
「だからこそです」
「まさか」
「はい、まさかです」
不敵な笑みと共に出された言葉だった。
「それをします」
「そこまでしてなのか」
「何か不都合でも?」
相変わらずその態度は慇懃無礼である。
「それが」
「いや、それは」
そう言われるとだった。レモンにしろ返答に窮するものだった。実際に彼女は今アーチボルトに対して返す言葉に困ってしまっていた。
「そう言われるとだ」
「そうですね。勝てばいいのです」
余裕は見られる言葉であった。
「では私もまた」
「どうするというのだ?」
「新たな機体に乗ってです」
こうも言うのである。
「出撃します」
「貴殿もか」
「貴女はどうされますか?」
態度だけは恭しく彼女に問うてきた。
「それは」
「いや、私は今はだ」
だがレモンは今はその言葉のキレを鈍いものにさせた。
「別の任務がある」
「別のですか」
「博士に命じられたのだ」
ヴィンデルのことである。
「だからだ。今はだ」
「そうですか」
「貴殿達だけで行くといい」
こう彼に告げるのだった。
「そして勝利を収めてくるのだ」
「はい、それでは」
表面だけは恭しい言葉が続く。
「出撃してきます」
「健闘を祈る」
一応言葉の表面はそうである。そうして彼は出撃するのだった。そしてその頃ロンド=ベルはキールにおいてまたこれからの戦いに備えていた。
その中で、であった。ふとブリットが言った。
「何か最近俺はどうも」
「どうしたの?ブリット君」
「蝙蝠になったようが気がするんだ」
こうクスハに言っていた。
「何故かはわからないけれどな」
「そうだな」
レイヴンも彼の今の言葉には納得した顔で頷いた。
「私も恐竜になった気がする」
「私も。実は」
プリシラもだった。
「翼竜かしら」
「俺はナレーションだったか?」
カイも言う。
「それで何だったかな。死神になった気もするんだよ」
「ああ、あれでごわすな」
大次郎が彼に頷いてきた。
「銀色の髪と目の」
「あんたも魔法がどうとかでナレーションだったしな」
カイは大次郎にも言葉を返す。
「そんなの多いよな」
「それを言えばわしもじゃ」
兵左衛門もなのだった。
「猫になった気がする」
「俺は鮫なのか?」
タケルが言った。
「それだと」
「私は蝙蝠か」
クワトロまでだった。
「これだと」
「俺象か」
今度は甲児であった。
「何か心当たりあり過ぎるんだけれどな」
「ああ、そういえば」
今度言ったのはカーラだった。
「ユウキ、あんたこの前ぞよとか語尾につけてなかった?」
「いや、それは」
そう言われると困った顔になるユウキだった。
「御前も歌を歌ってただろ」
「そんなことがあったような」
「俺もな」
ジェオも出て来た。
「なりとか言ってたな、何かな」
「おじゃるだけ?いないの」
カーラはさらに言った。
「何か他の世界と関わりある人達って多いのね」
「あっ、私そういえば」
「そうそう」
「そうですわね」
ミスティとニナとマリーメイアが頷いた。あとクロやラーダもいた。
「デュオ君と何処かで何かあったような」
「シャンプー?」
「それとムース?」
「僕もだけれど、それは」
今言ったのはデュオではなくマサトだった。
「何でかラーダさん達と何かあった記憶が」
「そういえばだ」
レイも言う。
「ラーダさんやミスティさんと似ていたのだったな」
「うん、そうだよ」
マサトは声が似ているそのレイの言葉に頷く。
「シ=アエンとね。声がそっくりだったんだよ」
「あとあれですよね」
今言ったのはハーリーだった。
「アマノカズミさんとも」
「その通りだニャ」
今頷いたのはクロだった。
「私達は本当に雰囲気が似てるニャ」
「そういう人多過ぎなんだニャ」
シロも言う。
「おいら達の中は」
「あっ、そういえば」
「僕達も」
ウッソとザッシュもここでお互いに気付いた。
「何か似てるような」
「そうだよね」
「全く。どうなっているんだ?」
アンドレイがそのことに首を捻っている。
「僕にしても勇やサイと雰囲気が似ている」
「世界は違うというのにだな」
ロックオンが今の彼の言葉に頷く。
「ビリー、あんたはこれについては」
「否定できない」
これは彼もなのだった。
「何しろ僕にしてもだ」
「俺ビリーさんと他人の気がしないんだけれど」
アキトだった。
「何でだろう」
「俺なんか全然個性が違う筈のな」
「その通りだ」
リョーコとノインだった。
「何で気が合うんだ?」
「同じ人間の様にだ」
「話がわからなくなってきてるけれど」
フレイがいい加減言った。
「私なんかそういう人多過ぎだし」
「私もだよ」
これはチャムもだった。
「ラーダさんだってそうだしドモンやマサトだってそうだし一杯いて」
「俺なんかどうなるんだ」
特に一矢はそうだった。
「何人なんだ?一体」
「まあ言いだすとキリがないけれど」
今言ったのは小鳥だった。
「とりあえずこれからは」
「次は何が出て来るんだ?」
闘志也が続く。
「どの勢力が出て来るんだ?」
「アインストかシャドウミラーじゃないの?」
それではというエクセレンだった。
「そのどっちかが」
「ゲストやインスペクターもあるんじゃないかしら」
美和が言う。
「彼等の勢力もまだ強いし」
「つまり何が出て来てもおかしくないな」
宙が言った。
「本当にどいつが出て来てもな」
「何時何処に出て来てもだ」
今はキョウスケの言葉である。
「おかしくない」
「臨機応変だな」
ギリアムが彼の今の言葉に頷く。
「何が出て来てもだ」
「よし、それなら」
今言ったのはまたエクセレンだった。
「何が出て来てもやっつけましょう。それだけよん」
「簡単過ぎません?それは」
今の彼女に突っ込みを入れたのはクスハだった。
「あの。出て来たらっていうのは」
「しかしそれしかない」
カイが言って来た。
「出て来たその勢力と戦うしかだ。今はな」
「それじゃあ」
今度はリオが言った。
「今はスタンバるってことね」
「そうだよね。今はね」
リョウトが今の彼女の言葉に頷く。
「そうしよう」
「よし、じゃあ」
「とりあえずはトレーニングをして」
タスクとレオナは前向きだった。
「英気を養っておくか」
「そういうことね」
こう話をしていくのであった。そして次の日であった。
アルプス山脈だった。そこに出て来たのである。
「それでどの勢力が!?」
「出て来たの!?」
「インスペクターです」
八雲が皆に答える。
「彼等が出て来ました」
「インスペクターが」
「多分それだけではないな」
遥にクリフが続いた。
「まだ出て来るだろう」
「だとしたらその相手は」
「今度は何処でしょうか」
「それはまだわからない」
それについてはこう皆に返すクリフだった。
「しかしだ。どちらにしろ戦うしかない」
「そうですよね。ここは」
「まずアルプスに」
「全軍アルプスだ」
大文字は話した。
「いいな、行こう」
「はい、じゃあ」
「今からアルプスに」
こうしてアルプスに向かう彼等だった。そこではもうインスペクターが布陣していた。
「来たか」
「確かヴィガジっていったね」
その彼の乗るガルガウを見て言う万丈だった。
「今回は君が指揮官ってわけだね」
「その通りだ。ここで君達の相手をしよう」
こう言うのである。
「それでいいか」
「悪いって言っても戦うんだね」
「結果としてそうなる」
それは否定しないヴィガジだった。
「ここに布陣したのはだ」
「我々を誘き出す為だな」
そう察しをつけたのはリーだった。
「そうだな」
「如何にも」
まさにその通りだと彼にも答えるのだった。
「我等も君達のことは研究している」
「へえ、それは光栄だな」
カズマはいささか皮肉を込めて応えてみせた。
「俺達も人気者になったものだぜ」
「そして地球のこともだ」
それも研究しているというのだった。
「アルプスは守りに易い」
「へえ、わかってるじゃない」
万丈は彼の今の言葉を聞いても笑ってみせた。
「そこまで勉強したなんてね」
「大したものよね」
「確かにね」
ビューティとレイカもそれは認めた。
「かなりね」
「本当に研究しているのね」
「茶化す必要はない」
ヴィガジは真面目に彼等に返した。
「だからだ。ここに来たのだ」
「アルプスに」
「来たっていうのね」
「さて、どう攻める?」
あらためて彼等に問うてみせた。
「このアルプスに布陣した我々を」
「それはもう言うまでもないよ」
白と青の美しい山々に布陣する彼等を見ても万丈は態度を変えない。
「もうね」
「というとだ」
「そうだ。攻めるだけさ」
それだけだというのである。
「じゃあ皆」
「ああ」
「わかってるわ」
皆万丈の言葉に応える。そうしてだった。
全軍でそのインスペクター達に向かった。空と陸からではなかった。
「リョウ、ここはだ」
「ああ、頼む」
「それでな」
竜馬と弁慶が隼人に対して言っていた。真ゲッターは真ゲッター2になりそのうえで地中に潜伏した。ゲッター2の特殊能力である。
「これでだ」
「先に進もう」
「まずはな」
彼等は実際にそれで進む。そうしてだった。
ロンド=ベルもまた地形を利用して徐々に進むのであった。
「よし、このままだ」
「このまま進んでいって」
「戦うわよ」
「考えたものだな」
ヴィガジは自分達も地形を利用してやって来るロンド=ベルの軍を見て述べた。
「やはり地球にいるだけあってわかっているということか」
「そういうことだよ」
万丈は今はダイターンを戦車形態にさせていた。
「これなら互角だね」
「それはどうか」
今の互角という言葉にはすぐに反応を示してみせた。
「果たしてな」
「数じゃ勝ってるから言うのかい?」
「それだけではない」
こう言うと、であった。
不意にロンド=ベルの周りに無数の砲座とミサイルが現われてきたのだった。
「何だいきなり!」
「罠ってわけかよ」
ダイゴウジとサブロウタがそれを見てそれぞれ言う。
「まさかこんなところでな」
「今回は随分と手が込んでるんだな」
「君達の強さはわかっているつもりだ」
ヴィガジはここでも冷静であった。
「備えておくに越したことはない」
「その通りだね」
万丈は彼の今の言葉もよしとした。
「今回はかなり戦いがいがありそうだね」
「ここで君達を倒す」
ヴィガジの言葉は冷静なままえあった。
「ここでだ」
「それなら」
いよいよ両軍は激突した。まずは砲座とミサイルの援護を受けたインスペクターの大軍が向かって来るロンド=ベルに対して迎撃をはじめたのである。
「今度こそ!」
「やってやる!」
インスペクターの将兵達は口々に叫びながら攻撃をはじめる。
しかしそれは地形を利用しているロンド=ベルの軍勢には全くと言っていい程効果がなかった。効果がなかったのは地形のせいだけではなかった。
「よし、いけるな」
「大丈夫だ」
彼等はインスペクターの攻撃を見切っていたのである。
次々にかわし切り払う。技量の差が出ていた。
そうしてであった。反撃を加え彼等を徐々に倒していくのだ。
「これでだ!」
「終わりよ!」
言いながらビームライフルで撃墜していく。ミサイルも放つ。
「よし、このままだ!」
「先に!」
「ミサイルを優先させて撃墜する!」
実際にまずミサイル達から撃墜されていた。次々と空中で爆発していく。
やがて砲座やミサイルランチャーまで射程に入れそれも破壊していく。そうしてそれからインスペクターの軍に本格的に攻撃を浴びせた。
「これで!」
「どうだ」
ジュンとナガレが目の前のインスペクターのマシンに攻撃を加え撃墜する。
「よし、いけます」
「このままだ」
地形も彼等の狙いをあまり妨げていなかった。彼等の技量の前にはそれもあまり意味がないものだった。
そのうえで徐々に進む。一時間程度でヴィガジの本陣まで迫っていた。
「くっ、アルプスの地形もか」
「甘いんだよ!」
今言ったのはラウルだった。
「この程度じゃな!」
「私達を止められないわよ!」
フィオナも一緒だった。
「次はあんたの番よ!」
「くっ、まだだ!」
しかしであった。ヴィガジはまだ諦めない。そして今度は。
「私が行く!」
「何っ、この禿」
「今度は自分自身で?」
「容赦はしない」
その恐竜そのままの姿のマシンが動く。
「一気残らず倒してやろう!」
「来たかい」
万丈はその彼を見てまた述べた。
「それならこっちもね」
「万丈が行くの?」
「ダイターンで」
「そうだよ」
こうビューティとレイカに返すのだった。
「このダイターン3でね」
「万丈様」
ギャリソンも彼に言ってきた。
「お帰りになられたらです」
「どうしたんだい、ギャリソン」
「ダイターンのワックスがけをとりわけ念入りに行いたいので」
言うのはこのことだった。
「ですから早いうちに御願いします」
「わかったよギャリソン」
笑って彼に返す万丈だった。
「それじゃあね」
「はい、それでは」
「何か随分と余裕だな」
真吾はそんな彼を見て言った。
「まあそれがらしいな」
「そうだな。万丈はそうじゃないとな」
キリーも言う。
「らしくないからな」
「その通りよ。私達もこの乗りじゃなかったな」
レミーはいつも通りだった。
「何か皆から言われるしね」
「俺達のモットーはいつも明るく楽しく」
「それがグッドサンダーチームだからな」
「そういうことね」
「何かそういう乗り好きよ」
エクセレンも笑って三人に言ってみせた。
「やっぱりいつも明るく楽しくじゃないとね」
「それでもエクセレンさんもグッドサンダーチームも」
それに突っ込みを入れたのは沙慈だった。
「何かいつもそれだから」
「だがそれがいい」
刹那が言ったのだった。
「明るいのがだ」
「明るいって刹那が言っても」
「だがそれでもだ」
彼等はそれでいいというのである。
「あの人達はそれでいい」
「そういうことなんだ」
「では俺達もだ」
パートナーとして沙慈に告げた言葉だった。
「行くぞ」
「うん、それじゃあね」
彼等もヴィガジの前に出ようとする。しかしここで、だった。
グレイターキンが戦場に出て来た。それに乗っているのはやはり。
「メキボスか」
「ああ、俺だ」
そうだった。彼が来たのである。
「ヴィガジ、ここは下がれ」
「何っ!?」
撤退を言われて眉を顰めさせる彼だった。
「いきなり何を言うのだ?」
「ウェンドロ様の御命令だ」
「だからか」
「そうだ。だから今は撤退しろ」
あらためて彼に告げるヴィガジだった。
「わかったな」
「わかった」
不本意ながら頷いたのだった。
「それではだ」
「今だと損害もそれ程多くはない」
見ればまだ七割も失っていなかった。
「下がるのにもいいタイミングだ」
「私としてはまだ戦いたいのだがな」
ここで本音も言った。
「しかし。命令とあらば仕方がない」
「では退くぞ」
「うむ、わかった」
こうして撤退に入るインスペクターの軍勢だった。彼等はすぐに姿を消した。
「これで終わり!?」
「何か今回は」
「あっさりっていうか」
ロンド=ベルの面々はいささか拍子抜けしていた。
「これで終わりなら」
「もう帰ろうか」
「そうね」
しかしであった。ここで。
「レーダーに反応です」
「何っ!?」
「となると」
皆今のミヒロの言葉に反応した。
「来た!?ここで」
「一体どの勢力が」
「アルプスはこの世界でも奇麗なものですね」
彼であった。
「アーチボルト!」
「貴様か!」
「はい、私です」
言葉はここでも恭しかった。
「私もここで、です」
「来たか」
「なら今度こそここで!」
「やっつけてやるわよ!」
「それは私の台詞です」
余裕に満ちた顔でこう返すのだった。
「その為にこの機体を選んだのですから」
「!?その機体は」
「何よ、それ」
「ジガンスパーダですよ」
その機体の名前を言ってきたのである。
「これは」
「ジガンスパーダって」
「何かジガンスクードに似てるな」
エレナとタスクがそれぞれ言った。
「そうよね、何か」
「けれど違う部分もあるな」
それがあるのも察したのだった。
「ジガンスクードは接近戦用だけれど」
「あれは砲台みたいな感じだな」
「その通りですよ」
二人のその察したことを余裕に満ちた声で認めるアーチボルトだった。
「さて、この砲撃に耐えられますか?」
「耐えてみせる」
ゼンガーはそれを聞いても全く臆してはいなかった。
「その巨大な剣に対してもだ!」
「いいでしょう。では我が愛するイーグレット達よ」
今度のアーチボルトの言葉に応えてだった。
イーグレット達が出て来た。しかしそれは三人だけではなかった。
「三人だけじゃない!?」
「嘘・・・・・・」
「十六人も!?」
「そうだ、俺達はだ」
「全てイーグレットだ」
その十六人のイーグレット達がロンド=ベルの面々に対して語ってきた。
「この俺達がだ」
「御前達を倒す」
「覚悟するのだ」
声は全て同じものだった。やはりそれはイーグレット達だった。
「クローンだな」
「そうだな」
ギリアムとレーツェルはすぐに察した。
「それで増やしたのか」
「よくあることだがな」
「ふふふ、その通りですよ」
また慇懃にその通りだと認めてきたアーチボルトだった。
「こういった趣向は如何でしょうか」
「悪趣味ね」
「何度見てもいい気持ちはしねえぜ」
ゼオラとアラドが忌々しげに言葉を返す。
「大体ね、何でアラドなのよ」
「俺の気持ちも考えろよ」
「相手の気持ちを考えませんと」
シャインも言ってきた。
「嫌われますわよ」
「それはいいことですね」
シャインの今の言葉に反応しての言葉だった。
「敵に嫌われてこそですから」
「敵に嫌われてだと!?」
「糞っ、確かにその通りだけれどな」
敵に嫌われることがいいことだというのは彼等もわかっていた。それを受けての言葉である。
「しかし、それでだ」
「手前は嫌らしいんだよ!」
「そうよそうよ!」
こうアーチボルトに返すのだった。
「そのやり方がね!」
「いつもむかつく奴だぜ!」
「その腹立たしさもだ」
またゼンガーがアーチボルトに言う。
「ここで終わらせる」
「そうね」
「御前ともこれで終わりだ」
ラミアとアクセルもゼンガーに続く。
「ここでの戦いで」
「一つの決着を着ける」
「それではですね」
それを受けてまた言うアーチボルトだった。
「戦いをはじめましょうか」
「望むところよ!」
「来やがれ!」
ロンド=ベルの闘争心はかなり激しいままだった。
「ここで倒してやるわよ!」
「手前はな!」
「面白いですね。それではです」
そしてアーチボルトも彼等の言葉を受けた。
「参りましょう」
「よし、やるぜ!」
「やってやるわよ!」
アーチボルトとイーグレット達が率いるシャドウミラーの軍勢がロンド=ベルに向かう。こうしてアルプスでの戦いが再びはじまったのであった。
シャドウミラーの先陣がロンド=ベルに襲い掛かる。しかしゼンガーのダイゼンガーはその巨大な剣を横薙ぎに振るい忽ち先頭の数機を両断してみせたのだった。
「むんっ!」
「うわ・・・・・・」
「いきなりまとめて斬るなんて」
「流石少佐」
「造作もないこと」
斬ったゼンガーは前に複数の爆発を見ながら冷静に応える。
「この程度のことはだ」
「この程度ですか」
「心が備わっていればどうということはない」
だからだというのだ。
「来るのだアーチボルト=グリムズ!」
「私ですか」
「来ぬのなら俺の方から参る!」
そして実際にダイゼンガーを前に出してきた。そうして剣を振るい敵を切り倒していく。
その都度爆発が起こり敵が倒れていく。そのまま突っ込んで行く。
「少佐、何か」
「今回は特に凄いわね」
アラドとゼオラも今のゼンガーには絶句していた。
「まさかこのままアーチボルトのところまで」
「一機で行くっていうの?」
「そうみたいだな」
トウマが彼等の言葉に答えてきた。
「少佐は本当に一機だけでもな」
「トウマ、だったら」
ミナキがそれを察して言ってきた。
「私達も」
「そうだ、だからミナキ」
「行きましょう」
彼女も既にそのつもりだった。
「このまま」
「ああ、わかっている」
「少佐!」
「私達も行きます!」
トウマが動くとアラドとゼオラもだった。
「こんな奴等!」
「幾らいても!」
三機もまたシャドウミラーの軍勢を薙ぎ倒していく。そうしてそのまま進む。
ロンド=ベル全軍がそれに続く。戦いは彼等の突撃とそれに対するシャドウミラーという形になっていた。
「よし、このままだ!」
「行け!」
「突き進んでやるわよ!」
勢いは完全にロンド=ベルのものになっていた。
そのまま進む。しかしその前にだった。
「来たな」
「ああ、それなら」
「こっちは!」
「ロンド=ベル、俺達が相手だ!」
イーグレット達が出て来た。そうしてだった。
十六人全員で襲い掛かる。これでロンド=ベルの勢いを止めてしまった。
「何っ、やっぱりこいつ等」
「強い!?」
「何だよこれ」
その攻撃の勢いの前に動きを止められてだった。
「これまでの連中とは違う」
「アラドっていうよりは」
「ああ」
「何か別の」
そうしたものを感じているのだった。
「手強い、それに」
「獣か!?」
そうした人間離れしたものも感じていたのである。
「どうする?この連中」
「このままだと動きが」
「どうしたら」
「案ずることはない」
だがここでゼンガーが言うのだった。
「何もだ」
「何も!?」
「何もって」
「突き進むのみ!」
彼は今はそれしかなかった。
「そしてあの男を倒す!」
「えっ、少佐」
「ここでもですか!」
「参る!」
その剣を手にイーグレット達に突き進むのだった。実際に。
「まさか、そんな」
「手強いですよ、連中!」
「例えどれだけ強かろうとも!」
ゼンガーは後ろを振り返らなかった。
「今の俺の剣を止めることはできはしない!」
「そうだな」
今のゼンガーの言葉に最初に頷いたのはククルだった。
「志があればそれを止めることはできはしない」
「志があれば」
「それで」
「そうだ。これで答えを見せてもらった」
ククルも言った。
「私も行こう」
「ククルさん!」
「貴女も!」
「そうだ。ゼンガー=ゾンボルトよ」
そのままゼンガーに声をかける。
「私も参ろう。貴様と共に!」
「くっ、無謀だ!」
「けれどユウキ」
顔を顰めさせるユウキにカーラが言う。
「ここはそれが一番よ」
「一番いいっていうのか!?」
「そうよ、幾ら連中が強くても」
そのイーグレット達を見ての言葉である。
「怯んではいられないのよ」
「そうだな」
カーラのその言葉は真実だった。勇気も認めるだけの。
「それなら俺達もか」
「ええ、行きましょう」
あらためて彼に告げる。
「私達もね」
「わかった。それではだ」
「僕も行くよ!」
「私も!」
リョウトとリオも前に出た。
「少佐だけは行かせない!」
「ククルさんも!」
こう言ってだった。彼等は突き進む。そしてそれに他のメンバーも続いた。
イーグレット達も残っているシャドウミラーの軍勢も前に立ちはだかる。しかしであった。
「な、何っ!」
「この強さは!」
ゼンガーを先頭とするその攻撃を受けてだった。
最初のイーグレットが撃墜された。
「う、うわあっ!」
「よし、まずは一機だ!」
撃墜したのはタスクだった。
「あと十五機だな!」
「そうよ、あと十五機」
「楽勝だぜ!」
こうレオナに応えて叫ぶ。
「この程度の相手な!」
「そうね。前に進めば」
レオナもそれに応えて言う。
「幾ら手強くても相手にできるわ」
「そうだよな、前に出ればな」
「それなら!」
レオナもここでレールガンを放った。
「うわっ!」
「私も一機!」
彼女も撃墜したのだった。
「やったわよ!」
「よし、レオナ!」
「これで残るは十四機」
「いけるぜ!」
「何っ、この連中」
「急に勢いが」
二機撃墜されて戸惑ったのはイーグレット達だった。
「戻った!?」
「しかも強い」
「少なくともだ」
今度はククルが来た。
「貴様等に倒される我々ではない」
「俺達にだと!」
「馬鹿を言え!」
ククルのその言葉を否定しようとする。
「俺達は戦う為に作り出された」
「その俺達に倒せない相手なぞない!」
「そうだ!」
こう反論する。しかしだった。
ククルが一機に襲い掛かった。そして舞を舞う様に攻撃を加えると。
「う、うわあっ!」
「これが返答だ」
一機撃墜したうえでの言葉だった。
「私のな」
「何だと、また一機か」
「まさか本当に俺達よ」
「ゼンガーよ」
ククルはここでゼンガーに告げた。
「ここは我等に任せろ」
「そしてか」
「そうだ。あの者を斬れ」
こう告げるのだった。
「よいな」
「かたじけない」
こうしてゼンガーはアーチボルトの前に向かう。それも一直線であり気付いた時には彼の前にいるのであった。
そうして剣を構え。彼に対して言った。
「いざ、勝負の時!」
「そうですね。私としてもです」
アーチボルトも彼の言葉を受けて返してきた。
「そろそろと思っていました」
「貴様を斬る」
こうアーチボルトに告げた。
「覚悟はできておろう」
「いえ、それはありません」
ここでも余裕の表情で返す彼だった。
「何故なら」
「どうだというのだ?」
「勝つのは私だからです」
だからだというのである。
「勝つ側が覚悟を決めるというのはおかしなことではありませんか?」
「今の言葉で全ては決した」
アーチボルトのその言葉を聞いてこう言ったゼンガーだった。
「アーチボルト、敗れるのは貴様だ」
「ほう、私ですか」
「そうだ、何故ならばだ」
その理由も述べてみせるのだった。
「貴様は今覚悟は必要ないと言ったな」
「はい、その通りです」
慇懃無礼な態度で応える。
「それが何か」
「覚悟せずして勝利はない!」
ゼンガーは断言した。
「だからこそだ。貴様に勝利はない」
「ではそれを見せてもらいましょう」
余裕に満ちた声でゼンガーに告げてみせたのであった。
「果たして勝利を収める者に覚悟が必要なのかどうか」
「参る!」
ダイゼンガーがその巨大な剣を構えた。
「今ここで!貴様を斬る!」
「では。私は」
ゼンガーのそのダイゼンガーに照準を合わせるのだった。
「これで貴方を倒しましょう」
「我が名はゼンガー」
構えながら名乗る。
「ゼンガー=ゾンボルト!」
両手に持ち前に突き出すその巨大な剣が輝く。
「悪を断つ剣なり!」
「さあ、死ぬのです」
ここでアーチボルトが攻撃を開始した。次々に砲撃を加えてくる。
「この私の手によって」
「推して参る!」
しかしであった。ダイゼンガーは翻りその攻撃をかわした。その厳しい姿からは想像できないまでの素早さを見せたうえで、であった。
「何っ、私の攻撃を!?」
「これで終わりだ!」
ゼンガーは反転し突進しながらアーチボルトに告げる。
その剣が振り被られる。そして」
「斬艦刀、雷光斬り!」
「なっ!!」
その速さ、そして威力は。アーチボルトとてかわせるものではなかった。
「でええええええええええいっ!!」
気合と共に両断された。今アーチボルト自身も。
「我が斬艦刀に断てぬものなし!」
「ば、馬鹿な・・・・・・」
アーチボルトは断末魔の中で呻いていた。
「何故この私が」
「言った筈だ!」
ゼンガーはその彼に告げたのだった。
「貴様は覚悟を忘れていた」
「覚悟を」
「戦いには覚悟が必要だ。だが勝利に驕る貴様はそれを忘れていた」
こう告げるのであった。
「だからこそ。俺は勝ち貴様は敗れたのだ」
「それで私は」
「そうだ、敗れたのだ」
このことを告げるのだった。
「この俺にだ」
「私が・・・・・・ここで」
「滅びよ、アーチボルト=グリムズ!」
言葉はこのうえなく峻厳なものだった。
「それまで犯した罪と共にだ!」
「うおおおおおおおおおおおおっ!」
アーチボルトは炎に包まれその中に消えた。そしてその時には戦いは完全に終わっていた。
ゼンガーの元にククルが来た。すぐにその彼女に問うた。
「イーグレット達はどうなったか」
「安心しろ」
まずはこう彼に述べてみせるククルだった。
「全て倒した」
「そうか、それは何よりだ」
「残ったシャドウミラーは撤退した。我等の勝利だ」
「うむ、わかった」
「そしてアーチボルトは」
「死んだ」
それは今はっきりと確認したことだった。
「斬った。それで終わりだ」
「そうか。これであの男も」
「これ以上罪を犯すことはない」
アーチボルトに対する言葉であった。
「それにより多くの者が災厄を被ることはだ」
「なくなったな」
「その通りだ。それではだ」
「うむ、帰るとしよう」
あらためてゼンガーに言うのだった。
「これでな」
「うむ、それではだ」
こうしてまたキールに戻る彼等だった。ロンド=ベルは遂にアーチボルトを倒した。ゼンガーは己の敵を一人倒すことができたのであった。
その頃別の世界では。ヴィンデルがレモンから報告を受けていた。
「そうか、死んだか」
「はい」
静かに述べるレモンだった。
「アーチボルトはこれで完全に」
「わかった」
それを聞いて静かに返すヴィンデルであった。
「使える男だったがな」
「あまりにも行動に問題がありました」
「だが我等の理想に適していた」
こうアーチボルトを評するのだった。
「見事にな」
「だからよいのですか」
「そうだった。死んでしまってはそれを言っても詮無いことだがな」
「わかりました。それでは」
「うむ。そしてだ」
さらに言うヴィンデルだった。
「次の作戦はだ」
「どうされますか?」
「既にイーグレット達は全滅したな」
「はい」
今度はこのことをレモンに確認したヴィンデルだった。そしてレモンはその問いに対してすぐにその通りだと答えてみせたのであった。
「その通りです」
「だがもう一人いる」
こう言ってみせるのだった。
「あの者を使おう」
「といいますとやはり」
「そうだ、ヴォータン=ユミルさ」
彼だというのである。
「出撃させよ。よいな」
「わかりました、それでは」
「そしてだ」
ヴィンデルの言葉が続く。
「御前も行くがいい」
「私もですか」
「そうだ。そしてだ」
さらに言うのであった。
「ラミアとアクセルを処分するのだ」
「あの二人を」
二人の名前を聞いてはっとなったレモンだった。
「処分するのですか」
「不要になった機械はいらぬ」
だからだと返すヴィンデルであった。
「だからだ。よいな」
「は、はい」
戸惑いながらも応える。
「わかりました、それでは」
「私もまた」
「博士も」
「そろそろ決着をつけるべきだと考えている」
その言葉が強いものになっていた。
「ロンド=ベルとはな」
「左様ですか」
「次の戦いで駄目だったならば私が出よう」
そして今宣言した。
「私がだ。わかったな」
「はい、それでは」
「ロンド=ベルの力さえあればだ」
ヴィンデルは語る。
「我等の理想が実現できるのだ」
「全ての世界を移動でき」
「そして人類が正しく進化する世界がだ」
それが実現するというのである。
「永遠に戦いそれにより進化する世界だが」
「彼等の力があればこそ」
「戦うには力が必要だ」
ヴィンデルの言葉が続く。
「だからこそだ。わかるな」
「はい」
応えはした。しかし今のレモンの返答は何処か虚ろなものであった。しかしヴィンデルがそれに気付くことはなかった。彼はそのまま言うのであった。
「それでは」
「全軍を集める」
また言葉を出した。
「そしてだ。いいな」
「はい、ロンド=ベルを」
今そのことを言い合う二人だった。シャドウミラーとの戦いもいよいよ正念場を迎えようとしていた。

第百六十五話完

2009・11・11
 
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